【完結】爆弾魔系呪術師   作:平々凡々侍

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爆誕

 

爆発

 

 それが初めて目の前で起きた時、不幸にも巻き込まれた私──朝木(あさぎ)(つな)は死の淵を彷徨った末に他の人には見えない「呪い」が見えるようになった。

 

 そして、どうやら私にはその「呪い」を祓い除ける力が有り、それを知った日に私は私が何故この世に生を受けたのか。己の存在意義を、己の果たすべき使命を明確に理解した気でいた。

 

爆発

 

 それを初めて目の前で起こした(・・・・)時、私は私の視界に広がった景色に、見る人によれば事故現場にも見える現実に初めてこの世界を綺麗だと思えた。

 

 同時に驚くほど「気持ちいい」と感じていた。

 存在意義。果たすべき使命。

 そんなもの全てが瑣末な事に思えてならなくなる程に。

 

 数瞬まで私にとって揺るぎない恐怖の対象だった筈のものが誰でもない私自身の手によって、目に焼きつく鮮やかな閃光を発せられ、此方が吹き飛びそうになる程の爆風が吹き、最後に声一つ発せずに耳に心地よい爆音と共に跡形もなく爆散した。

 

その全てが、只管に私の心を震わせ踊らせた

 

「はっ」

 

 楽しいという快感で胸が一杯になった私はその日、生まれて初めて心の底から笑えた。

 

 戦えない人々に代わって命を懸けて「呪い」と戦い、これを祓い除ける。

 それが存在意義?それが果たすべき使命?

 

 否、否、断じて否だ。

 そんなどうでもいいことなど知ったことか。馬鹿らしい。嗚呼、私は、私は───。

 

 

 

 

 

今はただただ この世界が 心地良い

 

 

 ◼️◼️◼️◼️◼️

 

 この世には「爆発オチ」という言葉が在る。

 

 そう爆発オチ。

 漫画、映画、アニメ、ドラマなどの創作物につけられる結末(オチ)。文字通り最後に何らかを派手に爆発させて、強引に、勢いのままに物語を締め括るという数ある結末の一種だ。

 

 私事だが、私は爆発オチが好きだ。

 世間的には賛否両論あり、というか一般的にはギャグ的な物語のオチとして使われるのが大半らしいが私はそうは思わない。

 

 爆発はいい。

 跡形なく、後腐れもなく、全てを吹き飛ばせる爽快感。その気持ちよさと言ったら私の持ち合わせる語彙では言い表せないものがある。

 

 ……まぁ、何が言いたいかというとだ。

 何かを終わらせるのに爆発は最適で最高ということ。

 

──起爆術式

 

 だから、任務でとある建物にいる呪霊を爆殺した私は建物から出た後、入ってきた時は気付かなかったが出てきた時に建物自体に含まれた呪力を感知してドカンと「起爆」した。そうドカンと。気軽に。

 

「……ふつくしい……」

 

 我ながら音も威力も悪くない、久々に納得のいくレベルの爆発が起き当然ながら建物だったものは跡形もなく粉々に爆破。建物が立っていた場所には巨大隕石が落下したかのような見事な大穴(クレーター)が生まれていた。それこそ我ながら思わず感嘆してしまうほどの。だというのに、

 

「……綱、また随分と派手にやってくれたな? 弁解があるなら聞こう」

 

 何故か任務を終えた私は担任の教員──夜蛾正道に正座させられていた。どうしてこんな事をさせられているかは皆目検討がつかない。しかし教員ともあろうものが無意味に生徒を正座させる筈はないのでとりあえず従った。それよりも弁解?私が彼に?

 

「? いや、特にはないと思うが」

「………そうか。なら反省しているんだな? 目的は呪霊を祓うことだけだったにも関わらず、呪霊のいた建物まで爆発させた件。死者が出なかったのは幸いだが、予定にない修繕費に必要のない隠蔽まですることになったことを」

 

 続いて先生は溜息を吐いてからよくわからないことを言ってくる。反省?

 建物自体は既に廃墟。周囲に補助監督意外の人はいない。帳は降りていた。この三点からむしろ「爆発させない」という選択肢を選ぶ方が私としてはあり得なかった。私に反省することは何もない。心当たりなどあろうはずがなかった。

 

「15、これが何の数か分かるか?」

 

 それから私にとって不可解な問答は続く。唐突に提示される数字。どうしたのだろう。彼は呪いに頭でもやられてしまったのだろうか?とりあえず相槌を打って考えるだけ考えてみる。

 

「はぁ………私が初めて呪術高専に来た時の年齢?」

「違う! ……いや違くはないがその数じゃない。これはお前が今月受けた任務の数だ。そしてお前が全ての任務で何かしらを派手に爆発させるせいで爆発事故や隕石の落下として隠蔽する羽目になった事件の数だ」

 

 ……そうか。一々数えていなかったが今月だけで私はもうそんな数の任務をこなしていたのか。まぁそれはわかったがどうして彼は額に筋を立てているのだろうか?むしろ爆発オチという数ある結末の中でも最高の結末を選んだ私を賞賛して欲しいところなのだが……

 

「わかるか? 15件、15件だ! 言ってしまえば三週間連続で爆発事故のニュースが流れたようなものだ! おかしいと思わないか!? 隠蔽にも限度というものがあるんだぞ!?」

「……………」

「もう一度聞くぞ綱! 反省しているんだな!?」

 

 本気で怒っているらしい先生相手にそんなこと言うのは逆効果だろう。私は慎重にかつ正直に言葉を選んで告げた。

 

「いや、反省はしていないし後悔もしていない」

 

 久しぶりに思い切り爆発できて気持ちよかった。

 

 そう告げるとどうしてか私は頭に拳骨を受け、同級生の三人からは爆笑された。

 

「解せぬ」

 

 私は何も間違ったことはしていないのだが??

 





朝木(あさぎ) (つな)
歴史の浅いとある呪術師の家系に生まれた男。
幼少期に巻き込まれた事故だか陰謀だかによって呪術師としての才能が覚醒。そこから術式の影響もあって爆弾魔みたいになったナチュラル狂人。

鈍感で抜けている部分がある上にマイペース。普通に話が通じない部分があるが本人は至って真面目。見た目は2m近くある筋肉モリモリマッチョマンの変態(東堂みたいなもの)。

成り行きで呪術師をやっているものの何か一つ違っていれば普通に呪詛師かテロリストにでもなっていそうなレベルで問題児。なおコレと問題児三人を同時期に担任することになる夜蛾の胃は死ぬ。
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