【完結】爆弾魔系呪術師   作:平々凡々侍

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誤爆

 

 何故、こんなことになってしまったのか。

 

 まだ十数年しか生きていない、世の中を知らない若造の私だがそう思ったことは一度や二度じゃない。きっと他の皆もそうだろう?

 

 落ち着いて原因を思い出そうとしても皆目見当がつかない不測の事態が人生の中では間々起こる。私は爆発は起こせるが別に未来予知なんてできない。なら未来で予期しないことが起こるのは何もおかしくはない。むしろ自然とすら言える。

 

 しかし、今、目の前で起きている不測の事態はそんな考えを持つ私からしても「何故?」「どうして?」と頭を捻るしかないものだった。

 

「──あああああ! 頭に来たッ! そっちがその気ならこっちだって本気でやってやるよ! 泣いて謝ってもおせぇからな筋肉ゴリラァ!!」

 

 私は内心で首を傾げながら思考する。

 何故に目の前に対峙する私と似た制服を着た、同級生と思われる白髪の少年は激昂しているのか。不可解で仕方がなかった。どうして彼は顔を真っ赤にして怒っているのだろうか?何だろう……私もサングラスをしているからキャラ被りが気に食わなかったから?それとも私の方が身長が高かったから?

 

 ………考えれば考えるほど激昂する程の理由ではないような気がしてならない。さっぱり分からない。

 

 また分からないといえば、何故に私は彼と「東京都立呪術高等専門学校」の校舎前で対峙して殴り合いをして、どうしてそれを担任教師の丸刈り頭の男と同級生二人が外から観戦しているのかも意味不明であった。

 

「やめろ! 術式は使うなっ!!」

「外野は黙ってろ! 出力最大!」

 

 丸刈り頭の男──夜蛾正道の制止の声を聞かず、白髪の少年は両手を前に突き出し術式を展開しようとする。その様子を見ながら私は脳内で高速で回想を始める。

 

 何故、こんなことになってしまったのか。

 

 今一度、ここに至るまでの己の経緯と言動と行動を振り返ってみよう。

 

 それら全てを振り返れば何か見えてくるかもしれない。

 

 ───────────────────────

 

 2004年 8月。

 呪いを爆発させるため、いつも通り訪れた廃校で私は家入硝子という少女と遭遇。彼女の得意とする「反転術式」で爆発で負った外傷を治癒してもらった。以後、私は彼女からの「ここで会ったのも何かの縁ってことで」という提案から奇妙な交流を持つことになった。

 

 2004年 10月。

 中学校の教師と硝子の指摘を受け、私は私がいかに自身の将来・未来に興味関心がないのか再認識した。人生設計など今まで一度たりとも考えたことがない。……いや「呪いを爆発させたいから今日の夜廃校に行こう」という考えが人生設計と言えるなら考えたこと自体は何度もあったかもしれない。私はただただ今をどう楽しく気持ちよく生きるかを優先的に考えていた。硝子からは「わあ、刹那的〜」とも言われた。

 そんな刹那的な人間だからか碌に進路も決めていない、ノープランだった私は呪いを爆発させる日々を送りながら己の進路について珍しく思考。今までは特に気にもしていなかった「呪術師」という選択肢を思い浮かべた。

 

 しかし、私はそれからも自由気ままに呪いを爆発させる愉快な日々を送っていた。わざわざ「呪術師」になる理由が見出せなかったからだ。呪術師になれば任務(しごと)として呪いを爆発させることで収入を得られる。だが任務ということは今までにはなかった制約が付きまとうことになる。それは少々楽しくない。気持ちが悪いとすら思っていた。

 

 縛られるのが嫌、自由がいい、気持ちよく生きたい、なんて私もまだまだ子供なのだろうか?だがきっとこれは私が大人になったとしても変わらない本音だ。

 

 ◼️◼️◼️◼️◼️

 

 私の父は遺書曰く「呪術師」だったらしい。普通の人には見えない呪いを祓い人知れず人々の平穏を守る。遺書に書かれた父の説明を鵜呑みにすれば随分と格好のいい、まるでスーパーヒーローのような存在だ。だが呪術師というものがそれほどまでに立派で綺麗な存在でないことを私は子供ながらに何となく理解していた。

 

 ちなみに親戚である父の弟、叔父から遺書を渡されたのは父が亡くなって一月ほど経った頃。つまり既に私が初めて呪いを祓った後だったこともあって内容は何となく読み解けた。まぁ当時の私はまだ術式が使えなかったので遺書に書かれた「起爆術式」という文言だけは術式が使えるようになるまで理解できなかったのだが。

 

 閑話休題。

 

 呪い相手との常に死を感じる戦い。私にとっては爆発できる楽しさに加えてスリルに気持ちよさも味わえる、旨みしかない行事ではあるが一般的な職業に比べれば「命の危険がある」はいいとしても「いつ死んでもおかしくない」というのは明らかに異色だ。そんな呪いを祓うことを仕事にしている職など碌なものではなさそうである。

 

 それにもう八年近く前のことだから鮮明には思い出せないが、父はいつも帰りが遅かったり、早朝から家を空ける時もあれば電話に出て直ぐ夜中に家を飛び出していく時もあり、随分と多忙そうな様子だった。

 

(呪術師、呪術師か……)

 

 呪いを祓うのは全くもって構わない。しかし、あの日見た父のようにいいように扱き使われるのは気に食わない。私は私のやりたいように、好きなように、自由に呪いを祓う。今までもこれからも。

 

 でも、それはそれとして父が生前就いていた職に何の興味もないかと問われたらそんなことはない。私の中には爆発の興味に比べれば塵芥の如きだが、呪術師に対しての興味自体はあった。

 

 それもこれも父のことが最後まで分からず終いだったことが原因だ。

 何故あの日、あの場所に父がいて私と同じく爆発事故に巻き込まれたのか。呪術師としての仕事だったのか?そうじゃないのか?残された遺書を読めば父が自分の死を予感していたことだけは確かだが。

 

(東京都立呪術高等専門学校)

 

 略して呪術高専、だったか。

 廃校で助け、助けられたあの少女──家入硝子から後日聞かされた話を思い出して私は呟く。字の如く呪いについて学ぶ場所、呪術師の育成場、呪術師の要……などなど。他にも何か言っていたような気がするがさして興味を惹かれなかったので大した内容ではないのだろう。

 

 重要なのはそこに行けば呪いや術式に対する理解が深まるのか。理解が深まれば私は今よりももっと呪いを巧く爆発できるようになるのか。もっと気持ちよくなれるのか。それと最後に以上に比べれば重要度は酷く霞むが父もかつてはそこに通っていたのかどうか、だ。

 

(……一度通ってから考えるのもありか)

 

 通ってみて気に食わなければ辞めればいい。別に呪術高専に入ったからといって必ずしも呪術師の道に入らなければいけない訳でもないだろう。ならば試しに入学してみるというのも手かもしれない。

 

「…………」

 

 即断即決。

 一つの考えに至ったならあとは容易い。行動あるのみだ。私はとりあえず呪術高専の住所も入学方法も不明なので来年そこに入学予定の者、家入硝子に連絡をとった。もしも入学試験などがあれば対策が必要だ。

 

 ………という経緯で私は呪術高専への入学を果たすことになった。それからはあっという間だ。入学当日にはまず学長の話を聞かされ、次に呪力の登録を行い、教室に向かう途中で担任の夜蛾正道と少し話をして、最後に何の問題もなければ四年間これから共に学んでいくことになる同級生たちと教室にて顔合わせをした。

 

 教室で顔合わせした同級生は二人。

 

「よっ昨日ぶり〜。まぁ今後ともよろしく」

 

 一人目は既に顔見知りの少女、家入硝子。担任が目の前に居るという状況で煙草に火をつけるとは大した胆力だ。即没収されたが。

 

「初めまして。私は夏油傑。これから四年間仲良くしてくれると嬉しい」

 

 二人目は長髪に目につく前髪と胡散臭い笑顔が特徴的な少年、夏油傑。胡散臭さのせいでこちらにすっと差し伸べられた手を取るのに一瞬躊躇したが握手はした。

 

 それと教室に置かれた席が四つあるのを見るに同級生はもう一人いるらしいのだが諸事情でどうやら遅刻してくるという話だった。

 

 今居る同級生二人との自己紹介を済ませた後、担任の夜蛾正道からこれから四年間この学校で何を学びどのように過ごすか心構えのような長々とした退屈な話をされ、私はそれを適当にぼーっと聞き流していた。

 

 ……と、私が明確にできる回想はここまでなのだが。

 

 ◼️◼️◼️◼️◼️

 

──術式順転

 

 ──一体どうしてこんなことになっているのだろうか??

 

(……まるで意味がわからん)

 

 回想を終えた後になっても白髪の少年の怒りの理由も何も理解できなかった私は疑問を抱えながら目前で起こる事象を冷静に観察する。蒼い球体上に見える何かは少年が操作しているらしく、手元を離れたそれは途端に大きくなり少年の周りを回るように移動しながら周囲にある寺や足場などの物体を吸引し破壊していく。あれに巻き込まれればただで済みそうにはない。

 

「…………」

 

 出来る限りの分析をした私は両腕を構えた。

 ここに至るまでの事情は一切合切不明だが、私は少年に呪力込みで攻撃された影響で体の節々に痛みを感じていた。理由も分からないのに殴られ蹴られたのだ。少年ほどではないにしろ私だって多少は頭に来ていた。

 

 このまま訳も分からずにやられるのは御免だ。それは気持ち良くない。やられるならせめて派手に一発打ち上げて気持ち良くなってからにしよう。

 

──起爆術式

 

 両腕に目一杯の呪力を込めた私は歩き出す。直後に白髪の少年の発生させた蒼い何かに引き寄せられそうになり、最初は抵抗しようとしたが少年との距離を詰められるならばと抵抗を止めた。

 

 瞬間、私は白髪の少年のもとに勢いよく引き寄せられ宙を舞う中で両腕を前に突き出す。白髪の少年は「馬鹿が」と言いたげに表情を歪め蒼い何かを移動させて此方に真っ直ぐ飛ばそうとした。

 

──『蒼』

──起爆拳

 

 白髪の少年が投げ飛ばした蒼と私の両腕の大爆発が接触したのは全くの同時だった。

 





次回。爆弾魔以外の視点で何が起こっていたかについて。
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