ミリシアル最終聖戦記 作:NO SIGNAL…
1673年3月1日
オルクス
南部国境沿い
旧イルドラフ州と接するこの地では、オルクスの連盟軍とエヴァンギャドル・ミリシアル軍との間で既に戦闘が勃発していた。
どちらかと言えば、旧イルドラフ州を支配するエヴァンギャドル・ミリシアル軍が、国境沿いに展開しているオルクスの連盟軍に対し、一方的に攻撃している。
後方に展開しているエヴァンギャドル・ミリシアル軍砲兵部隊の、開放天蓋式の203mm自走魔導砲をはじめ、150mm自走魔導砲や数少ない日本製の自走多連装ロケット砲が放つ砲弾やロケット弾がオルクスの地を耕していく。
神聖ミリシアル連盟地下司令部
ミリシアル統一戦争司令部では、ドミストをはじめクレイハムやメリマキサ、連盟軍将校や司令部要員が集まっていた。
「状況は?」
スシリアが状況の説明を始める。
「現在南部国境沿いにて、敵から激しい砲撃を受けています。恐らく我が軍の侵攻の出鼻を挫いて逆侵攻をする計画だと思われます。敵と通じていた内通者が敵に情報を渡していたのが原因です」
「敵と通じていた内通者はどうした?」
「はい、敵と内通していた参謀総長は国家反逆罪で逮捕し即日処刑しました」
「なるほど。クレイハム司令官、我が軍の損害は?」
「最初の砲撃で侵攻部隊に損害は出ていますが、工兵部隊が構築した地下壕や塹壕に部隊が待避し損害は抑えています。侵攻作戦への支障は許容範囲で済んでいます。いつでも我が軍は反撃可能です」
スシリアに続き、ミリシアル統一戦争司令官のクレイハムが答える。
「ドミスト閣下、作戦開始のご命令を」
「遂に統一戦争の火蓋が切られた。我々は今亡きシュミールパオ閣下の約束、ラヴァーナルへの復讐を実現するため、我が軍は前進を開始する。死を恐れるな。そして、憎悪を忘れるな」
ドミストは命令する。
「全部隊に通達、反撃を開始せよ」
神聖ミリシアル帝国の運命の日から14年が経った中央暦1673年3月1日、ドミストの命令によりミリシアル統一戦争の火蓋が切られた。
連盟軍の対砲レーダーによって探知された敵の砲兵陣地に対し、爆装した戦闘攻撃型天の浮舟“オスカー”や戦略爆撃型天の浮舟“シズラー”が滑走路から飛び立つ。
オスカーとシズラーが搭載する魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの出力は上がり、音速の2倍で敵地に浸透していく。
展開していた敵前線部隊が連盟軍の航空部隊を探知し、対空弾幕を貼り自軍の砲兵陣地への侵入を阻止するため、20mm魔光砲や88mm対空魔光砲で対空弾幕を張るが、音速の2倍で飛行する天の浮舟に対して満足な火器管制装置もない敵防空部隊の弾幕が当たるはずもなかった。
連盟軍航空部隊は敵砲兵陣地を発見し、爆撃を開始した。
オスカーやシズラーから、爆弾、クラスター爆弾、焼夷弾が敵砲兵陣地に向けて投下され、爆風、子弾、火炎が敵砲兵部隊に襲いかかる。
身を隠せる場所もない平野だったのが災いして、敵砲兵部隊は大損害を出し砲兵戦力は損失。
砲撃が止み、連盟軍地上侵攻部隊は地下壕や塹壕から出て、隊列を速やかに組み旧イルドラフ州に向けて、魔導戦車“アマルガⅤ”を先頭に、歩兵を乗せた装甲兵員輸送車や装甲トラックが、その後に続き前進する。
対する敵前線部隊も、アマルガⅢや日本製の90式装輪戦車を押し出し、連盟軍のアマルガⅤに対して攻撃を開始。
しかし、連盟軍が持つアマルガⅤは、地球で言うところの第3世代主力戦車に匹敵する性能を有しているのに対し、敵のアマルガⅢは第2世代主力戦車並みの性能な上、90式装輪戦車は対戦車戦闘を想定していないため、アマルガⅤの強靭な装甲を前に攻撃が効くはずもなく、逆にアマルガⅤの強力な火力を前に一方的に撃破されていった。
戦車や砲兵を失った敵に対し連盟軍は掃討戦に移り、補給を終えた連盟軍航空部隊も加わり、敵は陸と空からの猛攻を受け壊走。
恐れを知らぬ連盟軍は敵首都を目指し前進する。
前進する連盟軍を阻止しようと、敵は首都までの間に防衛戦線を構築。
対する連盟軍は、敵の継戦能力を喪失するため、レーダーサイトをはじめ防衛戦線にまで繋がる鉄道や街道、補給部隊への空爆を実施。
更に新設された連盟軍降下猟兵団による、敵物資集積所に対する奇襲作戦も開始。
空爆により敵の補給速度は停滞、敵の物資集積所では軍事物資が不足し、敵部隊の補給状況が滞り始め満足に戦闘できるか曇りがかってきた。
3月30日、連盟軍侵攻部隊は遂に敵防衛戦線に到達。
連盟軍10万と敵防衛部隊5万の軍勢が衝突。
激しい攻防戦の末、連盟軍は敵防衛部隊を撃破し、敵の首都まで僅かとなった。
4月10日、連盟軍侵攻部隊は敵の首都に到達。
圧倒的物量で首都防衛部隊を撃破し、敵指導者を拘束しエヴァンギャドル・ミリシアルは連盟軍に降伏。
エヴァンギャドル・ミリシアルは解体され、旧イルドラフ州はオルクスと併合した。
4月23日、神聖ミリシアル連盟はオルクス北のアポステア同胞団に宣戦布告。
連盟軍侵攻部隊は、オルクス北に侵攻を開始した。
連盟軍10万と言う物量に、アポステア同胞団は持てる力全てを出した総力戦を展開。
5月3日、アポステア同胞団は、連盟軍の圧倒的物量と火力を前に戦力の大半を喪失し軍は壊走。
敵首都は陥落、指導者は首都陥落の報を受け取った後に拘束される前に自害し、アポステア同胞団は連盟軍に降伏。
アポステア同胞団は解体され、北部地域はオルクスに復帰した。
5月15日、アポステア同胞団に続き、オルクス東の聖エルフ騎士団に宣戦布告。
連盟軍侵攻部隊は、オルクス東に侵攻を開始。
連盟軍統一戦争司令部は、当初アポステア同胞団と同様に1週間足らずで、オルクス南は陥落すると意気込んでいたが、聖エルフ騎士団の予想打にしない徹底抗戦を受ける。
聖エルフ騎士団のハイエルフが操るイクシオン・レーザーがアマルガⅤの側面装甲をぶち抜き大爆発を起こし、ヘル・ファイアが装甲兵員輸送車や装甲トラック内の兵士を炭に変え、イトニング・テンペストが車両から下りていた兵士を黒焦げの屍に変えて行った。
ハイエルフの戦闘魔法に連盟軍の損害は増し、戦線は停滞するが連盟軍の兵士に後退と言う文字などない。
5月30日、連盟軍は多大な犠牲を払いながらも遂に敵防衛部隊の撃破に成功。
敵首都目前にまで前進したが、先の戦いで喰らったエルフの戦闘魔法がトラウマとなり、連盟軍は砲兵や天の浮舟による敵首都に対するアウトレンジによる攻略を開始。
連盟軍砲兵部隊の150mm自走魔導砲や280mm自走魔導砲をはじめ、工兵部隊が敷設した線路で投入された霊式80cm魔導列車砲の砲撃、オスカーやシズラーから投下される爆弾、クラスター爆弾、焼夷弾が、敵首都でハイエルフの聖地と自称する“神林”を砲爆撃していく。
中には、爆弾の生産が追いつかなかったのか、はたまた兵士の悪ふざけなのか、爆薬と信管を取り付けたトイレや浴槽も混じり投下された。
爆風や炎で神林の木々は木端微塵に燃やされ、敵首都は機能不全となり、6月10日に聖エルフ騎士団は連盟軍に降伏。
東部地域もオルクスに復帰した。
今戦争の目標である中央ミリシアル地方の統一は目前で、残るは旧ラドロコ州のルガル山岳戦線への攻勢のみであった。
聖エルフ騎士団が降伏してから2週間後に、ルガル山岳戦線が神聖ミリシアル連盟への降伏を申し出る。
これに対し連盟は、ルガル山岳戦線の賢明な判断を尊重し、降伏の受け入れ準備に入る。
ルガル山岳戦線との交渉の末、7月14日、連盟はルガル山岳戦線の降伏を受け入れ、旧ラドロコ州はオルクスに併合。
4ヶ月続いた戦争は、ルガル山岳戦線の無血開城で幕を降ろし、神聖ミリシアル連盟は偉大な勝利を収めた。