ミリシアル最終聖戦記 作:NO SIGNAL…
最初の統一戦争で、偉大な勝利を収めたオルクスの神聖ミリシアル連盟。
連盟は戦争の戦後処理、併合した地域での政策など、中央ミリシアル地方統一に向けて奔走していた。
1673年7月28日
オルクス
神聖ミリシアル連盟地下司令部
統一戦争後初の会議が開かれていた。
「4ヶ月に及ぶ戦争。南オルクス戦でのハイエルフの予想外の攻撃で一時はどうなるかと思ったけど、連盟軍が勝って良かったよ。皆んなお疲れ様」
クレイハムは、会議に参加している将校に労いの言葉をかける。
「さて、早速だけど、統一戦争で得た戦利品に関して報告をお願い」
クレイハムの言葉に、統一戦争戦後処理委員会委員長が報告を始める。
「承知致しました。先の統一戦争にて、オルクス東部地域と南部地域、旧イルドラフ州、旧ラドロコ州をオルクス領に併合。オルクスは統一戦争前の3倍の領土を手に入れました。更に人口も120万から640万にまで増加し労働力の確保が容易になりました」
「そんなに増えるの?」
「はい。各軍閥の人口の割合は、エヴァンギャドル・ミリシアルが280万、アポステア同胞団が60万、聖エルフ騎士団が80万、ルガル山岳戦線が100万となっています」
「なるほど、続けて」
「はい、エヴァンギャドル・ミリシアルが支配していた旧イルドラフ州ではオルクスの倍以上の軍需工場を発見しました」
「あれだけの機械化歩兵戦力を揃えたのは膨大な人口と軍需工場群が原因だったのか」
「そうなります。これにより我が連盟の工業力は強化しました。ただ、余剰分が発生したため一部工場は民需工場にする方針ですが」
「構わないよ。旧イルドラフ州の軍需工場も足せば、十分な量だからね。余剰分は民需工場として活用しよう」
「分かりました。次にアポステア同胞団に関してですが、奴らはラヴァーナルの帝国情報軍と繋がってました」
委員長の報告にクレイハム達は動揺を隠せなかった。
「オルクス東部地域の占領時に東部地域国境から脱走を試みた者達を見つけ捕縛したところ、ラヴァーナル帝国情報軍所属の光翼人である事が判明。尋問にかけたところ、アポステア同胞団に対して、ここ旧ミリシアル領のラヴァーナルへの併合を条件に、ラヴァーナルでの名誉光翼人の地位と生活の保証、ラヴァーナル製兵器の供与と軍事顧問団の派遣、ラヴァーナル技術の供与を交換条件に、アポステア同胞団と他のミリシアル軍閥での代理戦争を目論んでいたようです。しかし、ラヴァーナルが内戦状態に突入した事により、他国に構ってる余裕もなくなり、この計画は見送られたようです」
「…あの傲慢なラヴァーナルが諜報戦を繰り広げていたのは意外だね。もし、ラヴァーナルで内戦が起きてなかったらと思うと、今頃負けてただろうね」
クレイハムの言葉に将校達の顔は顔面蒼白になった。
「とは言え、光翼人は良い戦利品だ。我々は勿論の事世界中はラヴァーナルと言う国の実態を完全に把握できてない」
クレイハムの言う通り、大ラヴァーナル帝国と言う国家は、完全に把握できてないのが現実である。
日本をはじめグラ・バルカス帝国やムーは、彼の宇宙から偵察衛星で国内に情報機関の工作員を潜り込ませ、実態を暴こうと画策しているが、ラヴァーナルの防諜対策が完璧すぎて難航している。
光翼人の捕虜は間違いなく価値ある物だ。
「前回は、現場の感情で捕虜の光翼人を殺してしまったが、今回は運が良かったね。そいつらが知り得ているラヴァーナルの情報を全て聞き出そう。手段は問わない。それが、人の道から外れようとね」
「…承知致しました。その方針で捕虜の光翼人を活用します」
クレイハムの意味深な言葉に、委員長は何かを察したが、何か意見する事もせず彼女の指示をそのまま受け入れる。
「次に聖エルフ騎士団とルガル山岳戦線です。ハイエルフの膨大な魔力と獣人の高い体力は、連盟の基礎部分強化に繋がります」
「ハイエルフは高度な魔法技術の開発に寄与、獣人族は工業や農業から軍役まで幅広い分野で活躍できそうだね。これらの人材を効率的かつ適切に配置したいね。専門の部署を設ける必要が出てくるから、あの構想を一度練り直す必要が出るな」
クレイハムはそう言い、殴り書くようにメモをする。
「次に各軍閥を統治していた運営上層部に関してですが、我が連盟が変わって統治するにあたり、統治の障壁になると判断しました。彼ら彼女らの処遇に関しては未だ決まっていません」
「ルガル山岳戦線は降伏してきたし協力的だから除外になるね。エヴァンギャドルと聖エルフは強制収容所行き、アポステアは忌まわしきラヴァーナルと繋がっていたから処刑が良いかもね」
「分かりました、それで行きましょう。私からの報告は以上になります」
「次に軍務長官、統一戦争での我が軍の損害は統計できたかな?」
クレイハムは戦後処理委員長に続き、軍務長官に報告をするように促す。
「今時戦争における連盟軍の損害は、陸軍戦力の損害が占めています。歩兵20000、戦車を含む戦闘車両200両を損失しました。空軍戦力に関しては目立った損害はありません」
勝利を収めた連盟とは言え、その代償は小さいとは言い難い物だ。
連盟は軍の損失の補填が急務であり、次の戦いに備えなければならない。
「国家再生委員会が打ち出しているプロパガンダの効果も相まって、軍への志願者数は増加し損失分は早く補填できると思います。ただ、既存部隊とは練度の差が出てくるが懸念事項ですが」
「新兵の練度に関しては仕方ないね。軍務につかせば、その内慣れるよ。新兵と熟練兵は良い塩梅で配置して欲しいかな」
「分かりました、注意を払いながら配置します」
「頼むね」
「次に今回の戦争では、南オルクス戦で高い魔力を備えた少数のハイエルフ相手に大きな損害を出しました。それを教訓に軍から、エレニウム計画の推進、歩兵戦闘車や専用の攻撃型回転翼機をはじめ、火炎放射車両、対物狙撃銃、毒性瘴気魔法や生物兵器などの積極的配備を提言します」
「毒性瘴気魔法と生物兵器って、旧ミリシアルの遺産だよね?あれはミリシアル崩壊時に研究データや資料は焼却処分されて残らなかったって聞いたけど...」
毒性瘴気魔法は、人体の神経伝達を阻害する兵器の事でサリンやVXガスなどの化学兵器に相当する兵器である。
当時のミリシアル軍部が日本から
その後、ラヴァーナルとの戦争に突入し、神聖ミリシアル帝国は崩壊したため、コア魔法の開発は勿論の事、毒性瘴気魔法や生物兵器の研究は機密保持のため、資料の大部分は焼却処分された。
「その事に関してですが、研究に携わっていた研究者や軍人の多くが、旧イルドラフ州に逃げ込んでいました。エヴァンギャドル・ミリシアルが、それに目をつけて長年研究し実用化レベルにまで漕ぎ着けてたようです。生産設備さえあればすぐにでも試作品が作れますが」
「公衆衛生が崩壊しているミリシアルにとっては良い兵器ね。わかった、軍務長官の提言通りに装備品の拡充や専用の生産工場の建設も進めよう」
「分かりました」
統一戦争後初の会議は終了した。