ミリシアル最終聖戦記 作:NO SIGNAL…
バネタ州
リネス空軍基地仮設本庁舎
応接室
質素な部屋に、暫定統治政府のクレイハムとメリマキサが、帝政セレネアの使者と相対していた。
使者は、グレーに近い色の肌を持ち、5人の内半数が女性が占めていた。
「はじめまして、私は帝政セレネアの情報機関“スキュラ”の、アリア・アレネアと申します」
帝政セレネア情報機関“スキュラ”の職員アリアは、クレイハムとメリマキサに自己紹介をする。
「中央ミリシアル暫定統治政府のクレイハムです」
「同じくメリマキサです」
クレイハムとメリマキサも、アリアに自己紹介をする。
「早速ですが、貴国が遠路はるばる、この地に来た理由を教えてください」
クレイハムが本題に入る。
「分かりました。その前に我が国を知ってもらう必要があります」
「おっしゃる通りです。貴国に関する事を教えてください」
「帝政セレネアは、ミリシエント大陸より南…失礼、南には
この世界の列強と地域大国の人口は、列強の大ラヴァーナル帝国は11億3000万人、日本が4億2000万人、グラ・バルカス帝国が7億5000万人、ムー連邦が3億5000万人、アニュンリール共和国が4億6000万人を、地域大国のロデニウス王国連邦が5200万人、パーパルディア共和国が2500万人、アルタラス王国が2800万人、パンドーラ大魔法国が1800万人、マギカライヒ共同体が6000万人、ニグラート連合が7800万人の人口を有している。
帝政セレネアの人口は地域大国並みである。
「この世界の広さに関しては、ある程度認識していましたが、高度な文明を築いている国家があるとは思いもしませんでした」
「この世界は、私達が思っている以上に広いです。エリュシオニア大陸の南にも、別の大陸がある事が分かっています」
日本によって、ミリシエント大陸他11大陸が属する第一世界以外にも、複数の大陸と文明がある事が確認されている。
クレイハムとメリマキサは、その国家が帝政セレネアが高度文明国家と言う事までは予想だにしなかった。
「我が国は、ラヴァーナルが転移する前の時代に勃発した黒魔大戦で生き残った黒月族が、エリュシオニア大陸で築いた国家で、黒月民族残存戦線と呼ばれてました。当時の黒月族は、ラヴァーナル対して強い憎しみと恐怖を抱いていました。そんな中、ラヴァーナルに対し報復しようと画策してました。その過程で、エリュシオニア大陸統一戦争が勃発し、圧倒的軍事力で大陸の原住民族を制圧し併合し力をつけていき、エリュシオニア大陸の統一を成し遂げ、エリュシオニア帝国として建国しました」
クレイハムは驚いていた。
今のミリシアルと昔の帝政セレネアの状況が、驚くほど一致しているからだ。
「エリュシオニア帝国が建国してから20年後に、ラヴァーナルは本土のラティストア大陸ごと時空跳躍魔法で未来に転移しました。ラヴァーナルへの報復を国家の歯車にしていた黒月族は、その大義を失いました。それに呼応するかのように、併合した原住民族が帝国から独立しようと、独立戦争が勃発。結果は原住民族側が勝利し、複数の独立国家が興りました。領土縮小、独立戦争による国内の疲弊、大義を失った事による民族精神の崩壊により、エリュシオニア帝国は大幅に衰退しました。それからは、エリュシオニア帝国から帝政セレネアに国名を変えました。エリュシオニア時代に行った所業で周辺国とは軋轢がありましたが、そこは時間が解決し周辺国とは和解の道を歩み、今の帝政セレネアと周辺国に至ります」
クレイハムはある重要な事を思い出す。
ラヴァーナルが、いつまた未来へ転移するかもしれない事に。
1回目の転移は、神々の意思で大隕石を落とされかけ、未来へ転移した。
日本やグラ・バルカスなどの超大国の脅威もあり、それらから逃れようと未来へ転移する可能性もある。
「帝政セレネアになっても、ラヴァーナルへの報復は諦めてませんでした。しかし、時が経つにつれ報復への意識も薄れた事、凶暴な民族性も丸くなった事、その時に即位した皇王がエリュシオニア大陸外への不干渉政策に転換した事など…要因は他にもありますが、自分達の境遇を受け入れ、帝政セレネアの発展への注力と周辺国との共存共栄の道を歩む事になります」
「貴国の事についてはは分かりました」
クレイハムは、ラヴァーナルへの報復戦争を急がせようと考えていた。
アリアは待ってましたと言わんと、本題に入る。
「ここから本題です。我が国は、貴国に対して支援する用意があります」
「支援でありますか…理由は何でしょう?貴国が我が国に望む物は何でしょうか?」
クレイハムは相手の意図を探ろうとする。
「我が国は、長い間エリュシオニア大陸外への干渉を避けていました。しかし、15年前にラヴァーナルが復活した事により、ラヴァーナルの脅威に晒されるようになりました。大陸外への干渉を進めるべきと言う主張が出始めました。更に5年前に今の皇王が即位し、大陸外への不干渉政策を破棄し、大陸外への積極的接触と対ラヴァーナル政策に方針転換しました」
セレネアは、実に10000年ものの間、エリュシオニア大陸外への干渉を避けていた。
264年間、ヨーロッパ諸国や東南アジアに対する鎖国体制を敷いていた、日本の江戸幕府より遥かに長い。
「そうなると、貴国は連合に加盟するのですか?」
メリマキサが連合に加盟するか聞く。
「国家独立維持連合ですか?あそこは、対ラヴァーナル戦略での行き違いや有力国が国家級災害と経済不況で、まともに機能していません。なので、連合への加盟は時期早々と見ています。我が国は、連合とは別の暫定的な対ラヴァーナル連合を発足する予定です」
分裂状態でまともに機能していない連合に、アリアは少し呆れ顔でいた。
「ミリシエント大陸で、ラヴァーナルの支配が及んでない旧ミリシアル領は、ラヴァーナルに最も近い最前線です。そして、貴国は数あるミリシアル軍閥の中で、高い軍事力と将来性があると判断したからです。貴国には、ラヴァーナルから、この世界の国家の独立と自由を守る防波堤としての役割を務めてもらいたい。勿論、それ相応の支援をする事は約束します」
「なるほど」
クレイハムは、窓の外を見る。
外に係留している飛空艦を見ても、帝政セレネアは高度な魔法技術を持ってる事が見て取れる。
帝政セレネアからの技術支援を受ければ、暫定統治機構軍が大幅に強化し、ミリシアルの統一とラヴァーナルへの報復の実現できる。
しかし、クレイハムは同時に複雑な心境を抱いていた。
ミリシアルは、また大国の思惑に踊らされるのか、と。
祖国崩壊時は、大国によって他の国家の独立を守るため、生贄にされるかのようにミリシエント大陸はラヴァーナルの手に落ちた。
今度は、ラヴァーナルに対する防波堤にされようとしていた。
かつて、祖国は世界最強の国家と言われていたのが、信じられないような有様だ。
クレイハムの頭の中に、あの時の祖国をもう一度と、よぎる。
だが、今はミリシアルの統一とラヴァーナルへの報復が最優先事項だ。
そんな事は、全てが終わってからでもできる。
彼女は、その事を頭の片隅に置き、目の前にある現実に戻った。
「クレイハム、どうするんだ?」
「ドミスト閣下からは、決定権与えられてる。アリア団長、我が国は貴国の提案を受け入れます」
「クレイハム殿の英断、感謝します。それでは第一段階はセレネア製兵器の供与は如何でしょうか?」
「ありがとうございます。セレネア製兵器の供与以外に、我が国は技術供与とインフラ整備の一部協力も希望します」
「技術供与とインフラ整備ですね。技術供与に関しては一度本国で検討させてください」
「分かりました、良い返事をお待ちしています。早速、支援物資の受け取る準備を行います」
「契約成立ですね。兵器運搬はスキュラが秘密裏に行います。では、こちらにサインを…」
「一点、失礼ながら、訂正をしなければなりません」
アリアが言い終わる前に、メリマキサが言葉を遮る。
「貴国はラヴァーナルの世界支配の阻止を望んでいるようですが、それは我々の目標と相反するものです。我が統治機構の目標は、ラヴァーナルの完全破壊ですから」