ミリシアル最終聖戦記 作:NO SIGNAL…
1680年
魔法と科学で分断した世界は1680年を迎えていた。
黒月族の末裔である帝政セレネアの台頭により、国家独立維持連合ではラヴァーナル開戦派の日本陣営と穏健派のグラ・バルカス陣営による冷戦が終結しつつあり、世界はラヴァーナルの光翼人史上主義と世界征服の波に対抗する動きが再燃し、その中で最も活発化した地域がミリシアルであった。
1659年のラヴァーナルによるミリシエント大陸侵攻で、大祖国戦争で敗戦した神聖ミリシアル帝国は崩壊し、臣民は思想と武器を片手に離散した。
しかし、ラヴァーナルに対抗するためには、歴史から消えた“神聖ミリシアル帝国”と言う統一国家を再建する事が不可欠であった。
1672年の年の瀬、ラヴァーナルが慣習を無視した皇位継承を端に二つ巴の内戦に突入し、ミリシアルでは国家再統合戦争が開始した。
様々な謀略、クーデター、戦争を経由し1675年にミリシアル国家再生政府が、ミリシアル4大軍閥の一角だったメテオスのミリシアル解放戦線軍を解体し、北部ミリシアル地方を除く旧ミリシアル領全土の統一に成功した。
旧ミリシアル領の大半を手中に納めた彼らが、最後の軍閥であるミリシエント二重帝国が支配する北ミリシアル地方を制圧するのは時間の問題だろう。
この政府の運営者は大ラヴァーナル帝国の完全な破壊を掲げるドミスト・ヤフ将軍である。
ラヴァーナルに敵対する国家からはラヴァーナル本土に接している戦略的地政から、軍事・技術・インフラなどの支援を受け国家として発展していった。
だが国内に目を向ければ、国民皆兵を引き男女問わず全て徴兵、労務動員によって大量の武器と弾薬を生産、工場の全てを国家が所有し、犯罪者や敗戦国の戦犯を使った人口増加政策の実施、国家保安局による強力な情報統制と監視体制を敷いた監視国家を築き上げていた。
ミリシアルに住む知識人や有権者は、ミリシアル国家再生政府が掲げるこれらの政策はラヴァーナルからの攻撃を避けるための抑止力であると考えていた。
しかし、実際はそうではない。
恐怖と狂気の軍国主義国家をドミストが作り上げたのは、光翼人の手によって穢されたミリシエント大陸の解放と大ラヴァーナル帝国を完全に破壊するための第二次大祖国戦争に挑むための準備であった。
彼はコア魔法による最終戦争を恐れていない。
それによる人類の滅亡も恐れていない。
コア魔法、毒性瘴気魔法、生物兵器を装備したミリシアル国家再生政府の白服の軍隊は1659年の大祖国戦争で味わった敗北に復讐するため、世界を地獄の業火に巻き込む大戦争に挑むだろう。
そこで初めて、黒いベールに包まれた国家の目標を世界の人々は知る事になる。