ミリシアル最終聖戦記   作:NO SIGNAL…

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国家的義務

クレイハム1人が地下司令部の廊下を歩いている中、走ってくる音が彼女に迫って来た。

 

「クレイハム閣下!」

 

「スシリア君か。どうした?」

 

クレイハムはスシリアの名前を呼ぶ。

 

「遂に大審判作戦を始めるのですか!ずっと理解を深めようとしましたが不可能でした。第四の国家綱領…あれは狂気そのものです!」

 

スシリアはシュミールパオの娘が盗んだ第四の国家綱領にアクセスできるアンロックキーで第四の国家綱領の内容を見てしまったあの日からも悩みながらも理解しようとしていた。

 

「どちらの資料も私が許可した者にしか閲覧権限を与えていなかったはずだが…今は置いておこう。既に最終決定が下され大審判は実行される」

 

彼女に言葉にスシリアは絶望の表情を浮かべた。

 

「君には祖国のために最後まで貢献する事を期待する」

 

「随分も前に作戦内容も確認しました…数万両の戦車、数万機の回転翼機、天の浮舟、大艦隊、そして何百万の兵士によるラヴァーナルへの突撃が行われる大審判作戦には、国家敵復讐兵器の毒性瘴気魔法、生物兵器、そして戦争の最終手段としてコア魔法の積極的運用が記載されていた事に…」

 

「このようなラヴァーナルとの全面戦争を引き起こせば、世界が火の海に包まれてしまいます!」

 

彼の脳裏には祖国や世界中の名だたる都市がコア魔法で火の海に包まれるのを想像していた。

 

「コア魔法同士による報復…その先にあるのは人類の滅亡のみです!」

 

ミリシアルがコア魔法でラヴァーナルを攻撃すればラヴァーナルもミリシアルに対してコア魔法で報復攻撃を行うのは当然だ。

大陸間戦争時のラヴァーナルと連合がそれを証明したのだから。

 

「クレイハム閣下、作戦中止を具申します…!」

 

「それは無理だ」

 

「いくら付き合いが長いとは言え情報局長の要望を聞き入れる事はできない。それにこれらの計画はミリシアルの再建運動前から決まっていた。この作戦を実施するため我々は今日まで戦って来たのだ。今から変更する事もできない」

 

「世界の人々も、ミリシアルの人々も、こんな計画があるなんて知らないのです。クレイハム閣下もメリマキサ閣下もドミスト閣下も勘違いしているんです」

 

「それ以上言うな」

 

クレイハムはスシリアに初めて強く止めるように命令する。

 

「そもそも、シュミールパオ閣下かこんな事を望んでいなかったはずです。何故なら、狂気的に増大したオルクスの復讐心に絶望し自殺してしまったのですから!」

 

「君は今すぐ黙った方が良い」

 

彼女は再度強く命令する。

 

「シュミールパオ閣下が自殺したことなんてミリシアル人はみんな知っています」

 

シュミールパオの死因は国家機密として公表されてなかった。

内部関係者が漏らしたのだろう。

 

「復讐なんて内戦下の限られた心の自由で生み出した一つの解決策に過ぎません!大陸間戦争から30年以上が過ぎたのです。我々は自分達の国家を取り戻しました。自分達の境遇を受け入れて戦争ではなく、ミリシアルを平和に向けて前進させるべきなんです!」

 

スシリアは復讐ではなく平和に向けて国家を再生すべきだとミリシアル国民を代表して強く主張した。

 

「今と昔とでは状況が違います。日本、グラ・バルカス、ムー、セレネア、アニュンリールと言った国家にラヴァーナルは刃先を向けられている上、ラヴァーナルは内戦で疲弊し国内は厭戦気分になってますから」

 

ラヴァーナルは敵対国に対抗するため軍拡による軍事費の増大、富士山の大噴火によるパラソル効果で農業の保護、内戦でボロボロになった帝国本土復興するため膨大な復興費で財政負担が増し物価や税も急激に上昇しラヴァーナル臣民の生活は非常に苦しい状況だった。

厭戦気分は臣民のみならず実業家、貴族、政治家にも波及していたのだ。

 

「我々もこの流れに乗ってラヴァーナルが自重で崩壊するのを待てば良いのです。復讐になんて囚われる必要はないのです!」

 

「それ以上言ったら後悔するぞ」

 

クレイハムの言う事も聞かなくなったスシリアに彼女は苦しい表情を浮かべていた。

 

「まだ間に合います!狂気の復讐から世界を救えます!」

 

「クレイハム閣下もメリマキサ閣下も騙されているのなら、私自身でこれらの真実を世界に発表して計画を頓挫させます!」

 

「やめろヤめろヤメろヤメロ…!」

 

彼女も限界に来たのか思わずうずくまってしまった。

 

「そうです!放送局から世界にこれを発表すればクレイハム閣下やメリマキサ閣下、ドミスト閣下自身が大審判の狂気に気づく事ができるはずです」

 

彼の声は大きくなり彼女の辞めろと言う声は耳に入らなかった。

 

「まだ間に合う!こんな馬鹿馬鹿しい復讐なんて行う必要はないn…」

 

 

 

 

 

パァン!!

 

 

 

 

 

彼の声を遮るように銃声が響いた。

そこには尻餅をつきホルスターからミルトフ拳銃を抜き構えていたクレイハムと、胸から血を流し倒れたスシリアであった。

 

「君は一度落ち着くべきだった…」

 

スシリアの説得から解放されたクレイハムは冷静さを取り戻し立ち上がったいた。

 

「ク、クレイハム閣下…」

 

「大陸間戦争から30年以上、数千万のミリシアル人が戦場で、爆撃で、拷問で、飢餓で、奴隷労働で死んでいった。あまりにも多くの人が死にすぎた。平穏を忘れる程に」

 

「い、今からでもなんとか…」

 

撃ちどころが悪く致命傷を受け彼の命も後僅かだった。

 

「私は死んでいった彼らが無駄死にではなかったと、偉大な勝利のための犠牲であり意味あるものであったと証明したい。いや、このような大量の死など意味ある犠牲でなければならない」

 

彼女の脳裏には大陸間戦争で死んだミリシアル臣民の他に、爆殺したシュミールパオ・エレナ、統一戦争で自分の命令で死んでいった敵兵や味方兵、カイオスをはじめとする制圧した軍閥の指導者達の顔がフラッシュバックする。

 

「彼らの死を見捨てて平和を享受することなどできない。犠牲に見合った偉大な勝利こそがミリシアルができる彼らの弔いであり、成し遂げなければならない国家的義務である」

 

彼女はラヴァーナルに対する大審判の目的が何であるかを明かす。

 

「勝利がなければ彼らの死に向き合えなくなる」

 

「わ、わたしは…」

 

それでも彼はクレイハムを止めようと最後の力を振り絞った。

 

「大丈夫だ、スシリア君。私は君の犠牲も忘れない。一人で聖戦から抜け駆けをするような事はしない。そう遠くない時に会えるさ」

 

クレイハムは命の灯火が消えていくスシリアを安心させるため声をかける。

 

「君も私もルヴァルハまでの道案内を頼んだぞ」

 

スシリアは消えゆく意識の中、彼女の死期はそう遠くないと察した。

 

「大祖国戦争で死んでいった英霊達を英霊たらしめるべく」

 

「聖なる戦いで」

 

「偉大な勝利を勝ち取るのだ」

 

 


 

 

怪物を止める者は排除された

 

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