ミリシアル最終聖戦記 作:NO SIGNAL…
財閥による不正で経済が崩壊しかけているグラ・バルカスや富士山の破局噴火で国難を迎えている中、旧ミリシアル領では技術者集団の軍閥バネタが神聖ミリシアル連盟との無血併合、オルクスでラヴァーナルの空中戦艦パル・キマイラを撃墜したと言う衝撃が各地を走った。
バネタを狙っていた周辺軍閥は、軍事目標を軍事的劣勢だったバネタから軍事的優勢な神聖ミリシアル連盟に変えざる得なかった。
ラヴァーナル空軍が保有する空中戦艦パル・キマイラは、オルクスの地を低空で飛行しながら爆撃していた所、要塞砲に転用された連盟軍の霊式80cm魔導列車砲や霊式38.1cm3連装魔導砲が迎撃のために砲撃し80cm砲弾が1発と38.1cm砲弾2発がパル・キマイラに命中。
制御を失いながらオルクスに墜落し、オリジナルのパル・キマイラを分析するため反重力魔導エンジンやアトラタテス砲などの兵装や技術はオルクスの連盟軍に回収され、救出された捕虜の光翼人はその場で無惨に処刑された。
オルクス
神聖ミリシアル連盟地下司令部
クレイハム執務室
クレイハムが執務を執り行う執務室には、部屋の主であるクレイハムと内務指導官のメリマキサが居た。
「バネタを併合して怖い物なしになったよ、やったねたえちゃん!」
「そんなクレイハムには悪いんだが、ウチはまだ弱小軍閥なんだよなぁ...」
旧ミリシアル領には51個の軍閥が群雄割拠しており、コルマラスはその中でも弱小軍閥に分類されている。
最大閥を誇るのが、魔導戦艦カレドウルフを旗艦とする残存ミリシアル艦隊22隻の“自由ミリシアル艦隊”、700両以上の魔導戦車など強力な陸上戦力有する“カンブリット抵抗戦線”、ミリシアル臣民と竜人族の同君連合の“ミリシエント二重帝国”、共産的社会を目指す“中央人民委員会”の4個である。
「メリマキサ、逆に考えるんだ。そこに大きい栄養があるとね」
「おい、誰かこの頭がめでたい奴を更迭してくれ」
「と、とりあえず、それらの軍閥と渡り合えるように強化して行かないとね。その為の改革だし」
「おっ、そうだな」
「開戦が避けれないのはカンブリット抵抗戦線、ミリシエント二重帝国、中央人民委員会だね。自由ミリシアル艦隊は交渉次第ではウチと併合できると考えても良いかもね」
「なるほど?」
「大艦巨砲主義の海軍は戦艦しか頭になさそうだし、新型戦艦ぶら下げとけばホイホイ着いてきて単純そうだからね」
「言いたい事は何となく分かったが、とりあえず遺書を書いて夜道に気をつける事だな」
「対艦誘導魔光弾作って照準を自由ミリシアル艦隊に」
ノックの後にドアを開ける音がした。
「失礼します」
そこに、先日設置されたバネタ兵器工廠のヒルカネ・バルぺ工廠長が入って来た。
元対魔帝対策省兵器分析戦術運用部部長でバネタ軍閥指導者だった男である。
「ヒルカネ工廠長か。待ってたよ、さぁさぁ座って」
ヒルカネはクレイハムに促され席に座った。
「今日ヒルカネ工廠長を呼んだのは軍事改革の一つ、“兵器の近代化”について。コルマラスは神聖ミリシアル帝国の再興とミリシエント大陸から忌まわしきラヴァーナルを駆逐する事を目標にしている。今の装備では13年前と同じ轍を踏みかねないから、兵器の性能をラヴァーナルと同等かそれ以上にしたい」
「なるほど、理解しました。我々に兵器研究をしろと言う事ですね」
「話が早くて助かったよ。前にある紙の束は軍が欲している兵器の仕様書だよ」
「…人を殺せそうな程の量ですね。拝見します」
ヒルカネは辞書並の厚さの仕様書を手に取り読み始める。
「…え?」
ヒルカネは思わず声を出した。
仕様書には、120mmもしくは140mmクラスの魔導砲と複合魔導装甲を搭載した魔導戦車、51cmクラスの魔導砲を搭載した魔導戦艦、500mクラスの双胴魔導空母、艦載型対空魔導システム、コア動力潜水艦、音速の2倍で飛行可能な多種多様の天の浮舟、高性能な各種誘導魔光弾、射程2000〜16000kmの弾道魔光弾など、挙げたらキリがない程の量だった。
「それら全てを研究し実現可能にする事、量産体制の確立から実戦配備を含めて早くて7年以内を目標にしている」
仕様書に載っている兵器は、ラヴァーナルはもちろんのこと日本やグラ・バルカスなどの国家に匹敵する性能の兵器達だ。
今のミリシアルは地球で言う所の冷戦初期の技術力を有している。
7年と言う限られた時間で60から70年先の技術にまで成長しようとしているのだ。
「見ている限り、幾つかは併合前の研究していた物もあったのですが、それでも多いですね…いくら技術者集団とは言え骨が折れますよ」
「我々も出来る限り要望には応えるつもりだから、何か足りない物があったら言ってくれると嬉しいよ」
「分かりました。では、可能な限り人材をこっちに寄越してください」
「分かった。最善を尽くすよ。そうだ、君にはこれも渡しとかねば」
クレイハムはそう言い机に引き出しから専用の箱を出す。
「この中には機密文書が入っている。これに目を通してくれ」
クレイハムから紙の束を渡されたヒルカネは恐る恐る中身を見る。
「こ、これは…正気なのですか?」