あべこべ世界で襲われたくないのでフルアーマーで暮らしてます。 作:ダイコンハム・レンコーン
「……っ、何が目的!」
短い髪の少女は、その目を怒りに染め上げこちらに向かってくる。単純明快に地雷を踏み抜いたのは分かるだろう。だがこちらも煽りに来た訳ではない。
「目的か。私の友人がタチの悪い詐欺に遭ったらしくてな」
「……っ!」
「それの礼をしたくなった──が」
私は少女が庇う様に翳す手の後ろに立つ少年を見る。少女が何を考えていたのかは分からないが、間違いなく彼女の行動の理由にはあの少年が絡んでいるに違いない。孤児院に入っていない理由も、それで説明がついてしまう。
私達の孤児院の園長は男だった。だが時たま外から不審者がやって来ては孤児院の少女達がこれを撃退していた。そのせいである程度鍛えられたものだが、今はきっと少女達が不審者となり次代の孤児達を鍛えている事だろう。蠱毒だな。
そんなつまらない考え事をしている内に、彼女の顔色は沈んでいく。
「……2人だけで話をさせて」
すっかり焦燥し切った様子の彼女は、俯きながらそう言っていた。
「お姉ちゃん。この人、別に悪い人じゃ──」
「黙ってて!」
「……いいだろう」
場所を変え、地下から地上に足を運ぶ。少女は男の格好をしたままだ。身体のラインを隠すローブに身を包んでいる。
「私が騙した連中の仕返しってこと」
「仕返しと言うほど大それた事じゃない」
「……私はただ、アイツらの身勝手な欲望を満たしてあげただけ」
夜風が2人の間を駆ける。少女は張り詰めた雰囲気だが、対して私の中の熱は徐々に収まっていた。
「私からすれば、この世界の連中は全員獣よ。馬鹿で、愚鈍で、見境ない。この世で人と呼べるのはあの子しか居ない」
「それはまた、極端な話だな」
話の分かる連中は探せば幾らでも居る。だがそれを言うのも酷な話だろう。子供にとっての世界など、限られたものでしかない。
「さあ、やりなさいよ。この手を切り落とす? 生きたまま皮を剥ぐの? それとも目を抉る?」
少女は、挑発的な態度でこちらに食い掛かる。その額に冷や汗が無ければ様になっていたものを。少女は恐怖を殺し切れていない。引き攣った口角を無理やり笑みにしようとする様は、痛ましさすら覚える。
だが何よりも気に掛かるのは、目の前の少女が必死に死を受け入れようとする事だ。
「しない。そんな事は」
「やりなさいよ私を! それで全部終わりにして……」
「姉が死んだら、弟は悲しむぞ」
彼女は金を集めていた。恐らくは彼女の弟の為に。弟はどう稼いでいたのか、知っている様子でもなかった。もし娼夫を騙って金を稼いでいたと知っていたら、そんな危ない綱渡り、私なら必死に止めていたろう。
そして今、彼女は男……正確には弟の見た目をして、死のうとしている。
「顔以外は分からなくなるくらいにぐちゃぐちゃにして、道端に捨てれば……」
彼女は今も破れかぶれになったフリをして、思考を誘導しようとしている。
「ならお望み通りにしてやろう」
恐らく彼女がなろうとしているのは、弟の身代わりだ。でなければ危険と分かっていながら男の格好を晒して街を歩く理由が無い。だからエルフに襲われたのだ。エルフ相手にはどんな娼夫も寄り付かない。
そうして弟の格好で娼夫をし、噂になって派手に死ぬ。そうすればどうか。1人の女が死ぬだけで、1人の男の消息を消す事が出来る。おまけに稼いだ金は男に遺せる。
こんな話は聞いたことがない訳じゃない。だから、分かった。
「……っ!」
私が翳した手に、少女が覚悟を決めて目を瞑る。
そして私は両手を少女の頭に置き、ガシャガシャと撫で回す。
「っ?! ちょっとっ! な、何よ!? 止めなさい……って!」
ついでに両手を少女の腋に突っ込み、ワチャワチャと指を動かす。
「はひっ!? あはははっ! ちょっ、やめ……はははっひゃ!」
ひとしきり少女を笑わせた私は、手を止め、少女と目線の高さを合わせた。少女の髪も、涙で顔もぐちゃぐちゃだ。
「私が嫌いな言葉がある」
「……ひっ、ひぃ、な、何よ、それ」
息も絶え絶えの少女は、目元を赤くしてこちらを見上げる。
「自己犠牲だ」
「……気付いてたの」
彼女は私から目を逸らす。気付けば先程までの彼女の怒気は消えていた。
「ああ、執拗に死のうとするのを見て察した」
「なら、一思いにやってよ。
まだ彼女の考えは変わらないらしい。ここまで頑固だといっそ尊敬する。だがそんな形でしか信用を見せないのはどうかと思うぞ私は。
それに頼めば人殺しをする様な奴に思われている事も心外だ。
「……いいや」
「何よ、何かあるのまだ?」
「何故そこまで追い詰められているか、話を聞かせてもらえたら考えてやらない事もない」
「聞いた所で、どうしようもないのに」
少女は苦い顔をした。そして、話し始めた。
「全ての始まりは──"童貞狩り"よ」
そうして私は、彼女の話を聞いた。彼女達の身に起こった事について。
「あの女……私達の親が突然『男狩りに出掛けてくる』と言って行方不明になってから暫くして、それは現れた」
「それが、"童貞狩り"か」
私はその言葉のインパクトを飲み込み、嚥下する。
私はその"童貞狩り"について心当たりは無いが、その悪い冗談みたいな
二つ名がつくものは、旅の芸人が歌に語る様な英雄や戦士以外にも居る。
それは、人々を恐怖に陥れる大罪人だ。
「私達の前に現れたZランクの冒険者、それが彼女"童貞狩り"だった」
Zランク、それはSランクとは鏡写しにあるものだ。どれだけ過ちを犯そうとも落ちられない場所にあるランク。
これもまた冒険者ギルドの創立時に出来て以降、人の増えていないランクである。中身は戦時中以前の凶悪犯罪者達を強制力のある魔法の首輪"隷属の輪"で服従させ、ギルドで強制的に労働をさせられるランクというもの。
こんな事が何故起きたのかと言うと、発足当初の冒険者ギルドが人手不足であった事が一つあるが、それだけでは凶悪犯罪者達が娑婆に出る理由としては薄い。最大の理由としては、冒険者ギルドのトップであるエルフが、元々は全国の奴隷商人達の元締めであった事が理由だ。
そのエルフは他のエルフとは異なる見た目で、エルフ達からすると異様な性的嗜好の持ち主であった為に爪弾き者になり、流れ着いた先で奴隷商人として成り上がったと言われているが、100年も前の話で、真実かどうかは定かではない。
だが奴隷商人達のトップであった事は事実で、重犯罪を犯して奴隷になった者達に隷属の輪を掛け、労働をさせているのは確かだ。
「Zランク? ならその冒険者は犯罪の一切を禁じられている筈だ。それが君達に何か出来た訳ではないだろう」
「違う。あの時、あの女の首には──"隷属の輪"が無かった」
「それは……」
衝撃的な事実に、私は言葉を失った。あの首輪は凄まじい硬度を持つ上、無理に外そうとすれば首を一瞬で焼き切り爆散する殺意の塊の様な道具だと知っている。
「そんな女に私だけじゃなく、弟の姿まで見られた」
少女は、はち切れんばかりに拳を握りしめていた。
「……それから少しして、親の居ない家に手紙が届いたの。そこにはこう書かれてた。『貴方が食べ頃になった時、それを頂きに参上いたします』って」
「人に対して食べ頃、か。……変態がよく使う言葉だ」
「私は急いで彼女について調べた。そしたらすぐに見つかった。かつて13歳を迎えた男達の前に突然現れ、貞操を奪う狐の獣人女"童貞狩り"だって」
童貞狩り。そんなふざけた二つ名をしている理由はZランク冒険者だからだろう。決してそんな奴にならない様に、蔑め、欲に駆られた末路として使い潰されていく様を見せる為にそうしている。
だがそれが成立しているかは首を傾げたくなる所だ。昔一緒に仕事をしていた奴はZランクにしてはおかしな程清楚だったが、実は国家転覆を図った政治犯であり、妙にシンパが居たのを覚えている。どれだけ臭い鍋に蓋をしても、臭いは漏れてしまうものだ。
「逃げる事は考えなかったか」
「逃げたわよ! 何度も、何度も! その先にまた手紙が来たの!」
今回は臭いが漏れ出すどころか中身まで出て来てしまった案件らしいが。
「それで今、君の弟の年齢は?」
「……明日で、13歳を迎えるわ」
「時間は無いな。誰かに相談は」
「出来るわけないでしょ!? 弟は男なのよ!」
当たり前の話だが、この世界では将来を確定させる悪夢の響きである。
どんなに真面目に生きようが、男の魔力と言うのは人生を狂わせかねない。
だから男の相談をする相手は最低限男であるべきだが、男という生き物は大体この世界ではどこかに囲い込まれているものだ。冒険者ギルド然り、娼館然り。あえて人目に晒し手出しを防ぐ、どうせ人の口に戸は立てられないからだ。だがそれは後ろ盾あってのもの。
幾ら個人として男が必要でも、集団としては地雷になり得る存在を易々と入れるほどどこも甘くはない。
だが、どういう因果かここに男の私が居る。
「なら、私には何故話せた」
「っ? 何で私、こんな事──」
ほら見た事か、男と悟られなくともこの世界じゃ男の魔力は女を狂わせる。臭いには蓋が出来ない訳だ。
おかげで余計な事を聞いてしまった。単純な子供のおいたで済ませるつもりがZランクの冒険者? 冗談じゃない。が、然るべき場所へ相談するにも時間が無いし、その然る場所すら男相手では安全と言えるか定かではない。あるとすれば、クラウベルに事情を隠して童貞狩りにぶつける位か。
分が悪い、だが──
「ここまで聞かされて『はいそうですか』で終わりは、見捨てる様で後味が悪い」
「な、何よ、私に文句?」
「弟を守るのに力を貸す、と言ったんだ」
「…………はぁっ!?」
少女の目は点になり、暫くして驚きの声をあげた。
「どうして──」
「ただし条件がある」
「っ、そんな事だろうと!」
私は少女を手で制する。まだ話は終わりじゃない。
「一つ、私の友人に謝ってもらう事、二つ、これに成功した時には娼夫を騙って稼いだ金は全て冒険者ギルドに送る事。──過ちを正すと言うのなら、私は信じて力を貸す。良く考えろ」
手を下ろす。私の言いたい事は短いが全て言った。
他にすぐ取れる手段は、弟を歓楽街で娼夫にするか、セクハラ祭りになる事を覚悟で冒険者ギルドに入れるか。前者でも命の危険はある、後者はまだ命の危険は無いが、精神衛生的に宜しくない事が起き得る可能性がある。本当にロクでもない世界だなここは。
まあ、後は彼女が選ぶか選ばないかだ。
「……何よ。今更遅いわよ」
「遅くない。まだ弟はピンピンしてそこに居るだろう」
「勝てる保証が無いわよ」
「無いと判断したなら金を持って逃げれば良い。何も死ぬつもりでやる気は無い。時間は稼いでこちらも逃げるだけだ」
「……でもっ」
「疑い続けるのも、疲れるだろう」
──少女は、悩んで悩んだ。
幾ら時間が掛かろうと、もはや私は待つ気でいた。
私だって男だ、それに関わってしまった以上他人ではない。
「──私達を、よろしく、お願いします」
悩んだその末に、少女は私に頭を下げた。
「ああ、任された。ならば自己紹介をしよう。私はリリー、Aランクの冒険者だ。君の名前を聞かせてくれ」
「私の名前はプルート。弟の名前はカロンよ。ここまでしておいて逃げたら一生恨んでやるから。責任取りなさいよ」
「──責任重大だな」
そうして私は少女を連れて、イルシュの居る宿屋に戻った。
「あっ、貴方この前の娼夫……って何でリリーと一緒にいるの!? まさか見せつけに──」
「静かに頼む、少し厄介な事に巻き込まれてな」
「……またぁ?」
退屈を持て余していた様子のイルシュはやいのやいの騒ぐが、私の一言にすっかり声を抑えた。慣れた様子である。
そうして静まり返った部屋に少女はローブを脱ぎ、下着も脱ぎ始めた。私は目を逸らし、壁のシミを見ている。
「……私は貴女を騙していたの、ごめんなさい」
「ちょっ、全裸土下座ってリリー何仕込んだのこの子に?」
床が軋む。私は知らないぞそんな事。少女の誠意という奴だろう。
「ちょっと! 身体が汚れちゃうでしょ、ほら服着て」
慌てたイルシュが少女に服を着せ終わった所で、私はイルシュに振り向いた。
「悪かったなイルシュ、私も想定外だった」
「騙してたって、まさか。ああ、調べてた噂の娼夫は、実は女の子だったって訳ね。はは……アタシも見る目なかったのか」
「落ち込む事はない。私も最初は分からなかったからな」
イルシュが半眼でこちらを見る。
「……で、厄介事ってそこ関連?」
「当たりだ」
「やっぱりかぁ」
彼女はため息をついた。
「まあリリーは昔から妙な事に首突っ込むし、今更か」
だが、彼女は仕方ないと笑った。
「で、何を用意すれば良い?」
「Zランク冒険者を倒せる力、ないし時間稼ぎ出来る武器と技量だ」
「なら、アタシが適任って訳。流石リリーちゃんはお目が高い」
ベッドから起き上がった彼女は、プルートの前に立つ。
「リリーちゃんってぶっきらぼうな所あるから怖かったでしょ。でも心配しないで、やると言ったらやる女だから。勿論アタシも」
いつもの様にウィンクするイルシュ。お前はそういう事をするから
「でさ、リリー。私達以外に誰か居る訳?」
「ここに寄る途中で孤児院に行って、あるSランクの所在を尋ねたんだが、
「態々そう言うって事は、今のところアタシ達だけってコト?」
「そうなるな」
「ならアタシが居なかったら1人で行くつもりだったでしょ。ま〜ったくリリーちゃんは危なっかしいんだから」
「イルシュ程ではない」
イルシュが私の首に絡みつきながら会話を進めていると、少女の目は胡乱なものを見る目になっていく。別に普段からこんな調子だから問題は無いのだが。
「……その、本当にこの人で大丈夫なの?」
「ああ、ここに居るイルシュは"飛燕"と名高いAランク冒険者だからな」
「そ、そうなの?」
「そうそう、アタシとリリーが揃えば大丈夫だから。安心してお姉さん達に任せちゃいなさい」
今回の出来事、信用して協力を頼めるのは身内にも中々居ない。男が絡むだけでこうもやりにくくなるのが、この世界のどうしようもなさを反映しているだろう。
取り敢えず、目下の脅威を排除しなければプルート達が自由に動く事もままならない。その後の事はその後だ。
「いつ相手するの、そのZランク冒険者と」
「明日だな」
「なら今日の内に魔法弾作っておくから、必要な弾丸を教えて」
「今回は対人用のあの長銃剣に使える弾丸で良い。氷の魔法に減音魔法も掛けてくれ」
イルシュは高い技量を持ったマジックスミスでもある。マジックスミスとは魔法を掛けた道具を作る職人の事で、あの蛇腹剣は幾つかの魔法を自ら掛けて作った代物だ。私が扱う弾丸も大抵は彼女の作品である。
「はいは〜い、チャチャッとやっちゃうから」
そうして工作道具を取り出して準備を始めたイルシュに、メモを差し出す。
「私達は先にスラムの下水道に行っておく。弾丸が出来たら後で来てくれ」
「りょ〜かい」
私も隣の自室へ戻り、2丁の重銃剣を置いて、1m近くはある長銃とそのバレルの長さに並ぶ刃渡りの剣を銃身の左右に備えた
横に伸びる刃のせいでマトモに構えられず狙いを付けられない欠陥品として叩き売られていた長銃剣と言うカテゴリの武器だが、私は鎧のおかげで問題なく使えた為愛用している。弾速と射程に優れ、刃の程よい重みが心地よい。
私は魔法が使えない分中長距離戦の手数がない為、扱う武器は悉くこんな色物になるのだ。
それに冒険者をやり始めた当時は金が無かった。
だが身体を売る訳にもいかず、マトモな武器を買う金が無かった為、叩き売られていた色物武器ばかりを使っていた。そのせいでマトモな武器を扱おうとすると身体が違和感を覚える様になっている。
それを見たプルートはドン引きしていた。
「何これ──こんなモノで戦うの? 変態冒険者じゃない」
「否定させてくれ」
貧すれば鈍するとは言うが、私は貧した結果変態武器の愛好者の様になってしまった。
他にも撃つと相手と反動で自分が死ぬせいでワンショットツーキルなんて呼ばれてた格安のパイルバンカーとかも手元にある。とにかく安ければ取り敢えず買っていたが……もしかすると、本当に変態なのか私は。
「いや、否定出来ないな」
「否定しなさいよ……そこは」
──そうして武器を選んだ帰り道。
人気の無い暗い路地を共に歩く少女は不安げな顔を隠していなかった。それは不信からくるものと言うよりは、信用しかけているからこそ、晒しているのだろうとは思う。或いは単に思い上がりで、暗闇で見えていないと思っているからか。
やや少年にも見える端正な顔立ちも、弱々しく歪んでいる。
「ねえ」
「忘れ物でもしたか、プルート」
「……私が服を脱いだ時、何で目を逸らしたのよ」
「何を」
「もしかしなくても貴女、女が好きなんでしょ」
「……いや、そんな事はない」
突然の事で返答に少し間が空いた。
だが私の様子など気にせず少女は何かを決心した様子で口を開く。
「私、まだ貴女を信じられない」
「それは、そうだろうな」
「だから、私に貴女を繋ぎ止める何かを頂戴」
少女は、私の足にしがみ付く。
「私を好きにして良いから。私から全部奪っても良いから、カロンからは何も奪わないで」
「……そうか」
私は、少女の手を取り握る。そうして頭を撫でる。
「これで十分だ」
「なんで!」
少女は絶望した様子でいたが、私は初めからそんなつもりでここまで来た訳じゃないのだから当然だ。
「相手が男であれ、女であれ、同じ事情なら同じ事をするまでだ」
男女の立場が変わった所で、私の考え方が変わる事はほぼない。そんな事で変わるなら、私なんて元々無かったようなものだ。生まれ変わったからといって、イカれた世界に馴染むのが当たり前とは呼べないだろう。
「君はカロンにとってただ1人の姉だ。その姉の全てを奪うという事は、カロンから君を奪うという事だ。筋が通らない」
「……貴女は、何なの?」
「私は私だ。プルート、君はどうだ?」
少女は、私に話した。
「私は──私でありたい。もう二度と、あんな事したくない」
私は少女と手を繋ぎ歩き出す。この調子だと夜が明けてしまう。
「なら、それで良いだろう。もっと自分を大事にする事だ」
最後に私はそう言った。少女は俯いていたが、不穏な空気はもはや無い。
「でも、貴女になら──」
彼女の俯く背中から小さく聞こえたその声を、私は努めて聞こえないフリをした。
女嫌いの女の子を落とす女(男)
Tips1:イルシュはリリーの類友である為、結構な女の子の性癖を歪ませている。
Tips2:リリーが贔屓にしている色物武器の製作者は同じである。
Tips3:贔屓にしてもらった製作者はリリーがその武器でAランクに駆け上がった事で知名度を得たが性癖を歪まされた。
Tips4:イルシュは男にモテるから前衛になったとリリーに言っているが、前で1人戦うリリーを見ていられず前衛に転向した事は秘密にしている。