──その戦闘を全員が見ていた。
バイタルを削られ、動けないながらも、意識を取り戻した面々は起き上がりつつ、目撃した。
「なぁお前『帝王』だろ!? 帝王だよなァ! 牙牙牙血晶神帝の順でドロップするんだよ!! 帝王なんだからなぁ!! 黒毛ばっか落とすなよこの換毛期!! オラ結合崩壊! 翼生えたのに飛べないとか恥ずかしくないワケェ!?」
狂人だった。
刃翼を振り回す黒いアラガミに、容赦なくインファイトを仕掛ける狂人だった。
完全に攻撃を読み切っているような動きで、少女の姿をしたゴッドイーターはロングブレードを振りかざし、時に神機を銃形態にして、ロクにエイムも合わせず引き金だけ引いている。
だが射出された弾丸は自動的に天を上り、三弾ずつ着実にアラガミへダメージを与えている。そのたびに凄まじい着弾音が響き渡り、黒いアラガミがのけぞった。
「グォォォオオ──!!」
地面に赤い雷撃の予兆が奔る。
宙に跳んでいた彼女は空中を蹴ることで自らの座標をズラして回避するが、敵の宙返りの後退と同時に放たれた雷球が襲い来る。
「
構わず前へ飛び出した悪魔は、それをバックラーで
着地すると神機をブレードに戻し、敵の攻撃を誘発する立ち回りで、彼女は同じ作業を繰り返す──
「……相っ変わらずだな……」
苦笑するリンドウはあの戦闘で何が起こっているのかを理解していた。
アラガミの動きの
完全に戦闘の主導権を握り、ひたすら作業的に蹂躙する周回光景。
それが悪魔──幻代アキの戦闘スタイルのおかしいところだと思い出した。
自分たちと彼女ではどこか、戦闘の動きを見る時の視点にズレがあるのだ。アラガミの──しかも新種の──動きを完全掌握して立ち回るなど、ただの熟練ができる域を軽く超えている。
「……デタラメが」
うつ伏せの状態で顔を上げたソーマは、そう呟いた。
心なしか、その帰還を祝福するように。
「あの子が……、」
横向きに倒れ込んだままのサクヤは、天地を縦横無尽に駆ける姿に見惚れていた。
……立ち回りはともかく、彼女が何を言っているかは到底理解できないまま。
「…………スゴっ……」
仰向けに転がっていたコウタは、上下がひっくり返った視界で観戦していた。
──なるほど、あれは確かにゴッドイーターの形をした“悪魔”かもしれない……と、至極まっとうな感想を抱きながら。
「────、」
気合で膝をついた体勢まで起き上がった神薙ユウは、ただ、見ていた。
何を思うこともない無心状態。それはまるで、“悪魔”と呼ばれる彼女の一挙手一投足を、
「──…………?」
仰向けに横たわっていた少女が僅かに目蓋を開けた視界は、ぼんやりとしていた。
遠くで音が聞こえて、首だけを動かしてその方角を見る。
あの大きい影は、自分の両親と、親友を食い殺そうとした化物か。
でもだとしたら、ずっと動き回っている小さい人影は何者なのか。
そこで少女──アリサは思い至る。
──ああ……これは夢なんだ。
あの日、両親を守りに行った親友が上手く立ち回っていたらという、自分に都合のいい幻覚なのだと解釈し──再び、その意識は精神の奥底へと沈んでいった。
「これでフィニッシュ!!」
ダウンしたアラガミにトドメの一撃がもたらされる。
赤雷が消え、死ぬ寸前まで健在だった強大な気配が失せていく。
「グォ……ォォ……」
うめき声を上げ──そこで完全に黒いアラガミは沈黙した。
──勝った。
あんまりな強敵の末路に観戦者たちが絶句する中、勝者だけはいつも通り、神機の捕食でアラガミの素材を採取する。
「──────、」
そして倒れた。
フッ、とまるで糸が切れたかのように。
「ッ!? アキ!? 大丈夫か!?」
やはり見えないところで負傷を──とリンドウが慌てて駆けつけると、少女が倒れ伏したまま、言った。
「爪だけだった……クソが……ッ」
「……お前、ほんっと、変わんねぇなぁ……!」
──こうして、悪魔は極東に戻って来た。
▼
あらすじっ!!
アマテラスの残骸にたかってきたザイゴートの群れの一体をサリエルに強制進化させつつ、物理式調教して海を飛んだが死なせてしまい、シオ様が呼んでくれたグボロ・グボロをコアを掴んで脅して運んでもらい、陸上に着くと同時にコア摘出して殺して、見かけたオウガテイル君をシオ様が偏食場式洗脳して乗り物化させて、どうにか贖罪の街に辿り着いて、オウガテイル君はシオ様のゴハンになり、そこで戦闘音が聞こえたので原作カナーと、とりあえずシオ様とはいったん別れ、覗いてみたらシナリオブレイクしてたので介入してみた。
なんかディアウスさんいるのにリンドウさんが教会から脱出してたり、メインの第一部隊が死屍累々になってるの、ナンデー?
もうこれ原作ルート壊れてるな?
ってことはもう、この時点で
つーわけで、やった。反省はするけど後悔はない。だが爪は許さん。カスめ、二度と帝王を名乗るな……!!
「久しぶりだな、アキ」
倒れた状態から起き上がると、割とボロボロな状態のリンドウさんがそう言ってくれる。バイタルギリでスタミナだけある、って感じだ。当然、その手首の腕輪は傷一つなく健在だ。
バースト編、終わったァ……せっかくシオ様連れてきたのにィ……
「……アキ? ショックなのは分かるが、素材ってそんなもんだろ? それより来てくれて助かったぜ、あのままじゃ第一部隊全滅の危機だったからな……」
「なんでだよ第一部隊。信じて極東に取り残したのに……」
「ハハッ、そこは『任せたのに』って言うところだろ?」
第一部隊が極東以外のどこで活躍するんですか!? まだクレイドルでもないのに!
などという身も蓋もねぇメタ発言は抑え、さて、と周りを見渡す。
「これ全員リンクエイド待機民?」
「ああ、思いっきり初見殺しかまされちまってな。あ、サクヤは俺がやっとくので、お前は他よろしく」
そう言って足早にサクヤさんの元へ向かっていくリンドウさん。
なんでや! そこは彼氏面……いや旦那面かい! なんでや!
明らかに隔離されている気配がする。そんなに私を関わらせたくないのかね、この心配性!
しっかし第一部隊が初見殺しって……
いやそっか、一応は強敵か帝王って。シナリオ的にも因縁多いし。そういや有翼種ってリザレクションから出てきたリファイン個体だっけか。そりゃ翼が出てきた時の速度、初見じゃかわすの大変なんだわ。リアル環境だし。
──ちなみにリファイン前との個体の大きな違いはその討伐報酬にある。
リザレクにおいて“天なる父祖”と呼ばれるリファイン前が出るクエストは、クリアすると「古王ノ冠」という素材を貰えるのだ。しかも確定。優しいね。代わりに強制的に一対一するのだが。
そして! その「古王ノ冠」で出来る武装こそが、ケーニヒスベルク! 黒色にも銀色にも金色にも薄緑色にもなる、鋭い刀身がクソカッケェ装備だ。なお私は金色派。
それが私の目指す最終究極装備ロングブレード。
この素材一個で出来るのはリザレクション時代だけで、バースト時代はまず“レーヴェベルク”という装備から強化せねばならない。派生もあるのだが、その派生の特徴──氷、雷、神属性三つ──をも統合した究極体が、リザレク時代の「古王ノ冠」から出来るケーニヒスベルクなのだ。
……マァその肝心のミッション、「ワン・オン・ワン」はメインの全クエストを制覇しないと出てこないほどの最終クエストでな。ミッションリストの最下層ってぐらいのラストミッションでな。
果たしてこの「蒼穹の月」というシナリオ序盤で、“天なる父祖”なんて出てくるのか?
私の何年も前からの野望は叶うのだろうか? 極東くんにもう望みをかけるしかない。もう全てのディアウス・ピターを狩り続けるしかない。
────解説ここまで。
「ソーマただいまー! こっちは新人くんかな? お初でーす! 君もよろしくー!」
リンクエイドリンクエイドリンクエイド!! ソーマ、コウタ、原作主人公君の順で回る。原作主人公──推定・神薙ユウ君は、目が合うとペコリと頭を下げてくれた。無言系かな? いいっすねぇ。
最後にちらっとサクヤさんの方を見ると、リンドウさんが助け起こしていた。二人の世界作ってやがる。おい!
「……チッ、やっぱり詐欺だったか。お前、海に墜落したんじゃなかったのか」
そう言いながら起き上がってくるのはソーマ君。
原作通りに紺色のコートを着た、白に近い髪色を持つ褐色肌の青年に成長しておる。フード脱げてますよ、大丈夫?
「墜落したよ? そんでぶつかってきたアラガミの死体に群がって来たザイゴートを捕まえて──」
「分かったもういい。察した」
「待ってくれ。創意工夫があったんだよ。ザイゴートって進化系にサリエルがいるじゃん?」
「もういい。充分だ。おかえり」
「え!?」
「なんだよ」
どうしたソーマ・シッククール君! 語呂悪いなこれ! でも君、そんなこと言ってくれるキャラだったかね!?
一体彼になにがあったというんだ……私が極東に与えた影響といえば、そう、エリック上田を転生させたぐらいで──あ。
そういうことか……
親友、できたんだね、君……
そりゃあんな激烈にキャラ変した奴につきまとわれてたら、多少は丸くなるか。
これは……まぁ……プラスの影響として考えておく、か……?
「あ、あのー。アキさん、ってさっき呼ばれてましたよね……?」
と、復帰してきたコウタ君がやってくる。
おお……生のフラグブレイカーだ……この世界では度々思うけど、感慨深いな……
「イェア。私が幻代アキだ。知っているのかい、まだ名も知らぬ後輩くんよ」
「ふ、藤木コウタっす。あの、助けてくれてありがとうございました……ほんと死ぬかと思って……えと、応援に来てくれたんすか? 確かMIAになってたって聞いたんすけど……」
「まさにMIA帰りだ。通りがかっただけだよ」
「……マジか……じゃあ先輩がMIAになってなかったら、俺らヤバかったってこと!?」
ソーマの方を見る。
「ヤバかったの?」
「煽りか? というかお前も新種相手になんで戦えたんだ」
「海外も極東に負けないぐらいの強敵さんがいたからねー」
そういう事にしておく。
何年も前から動きを全部知ってましたなんて言えねぇや!
「んで、向こうの彼は同期かね?」
ちょっと離れた場所で、アリサちゃんを介抱している茶髪の少年を見る。
デフォルト主人公。神薙ユウ。ヒロイン優先とは中々主人公してるじゃないか。偉いゾ!
「あ、ああ、まぁ……あいつは神薙ユウっていって、女の子の方はアリサです。……今回のミッション、俺たちでも不明な点が多くて……リンドウさんに聞けば、何があったか多少は分かるかもなんですけど……」
「あー、噂の新型か」
初見先輩っぽいリアクションをとっておく。
途中加入してきた新キャラムーヴ、今こそ発揮すべき時ではないか?
そこで挨拶だけしに行こうとユウ君の方へ歩き出そうとし──後ろから、いつの間にか立ち上がって近づいてきていたソーマに首根っこを掴まれた。
「なんだね」
「会うことを禁ずる」
「なんでぇ!?」
ホワイ!? 突然の隔離案件! まだ何もしてないのに!
つーか天下の原作主人公様だぞ、私程度の木っ端が関わったくらいじゃあ、主人公性は揺らがんよ! あんなに美しいヒーロームーヴしてるじゃないの! メールで私に似てるとか言ってたけど、あっちは真っ当な主人公に決まってるだろうが!!
「うん、アキさん。貴方の噂というか伝説は俺も知ってます。なのであえて言います。ユウとは関わんない方がいいっす!! マジで!! っつか、お願いします!!」
「ええ…………」
コウタ君は両の手を合わせて、頭まで下げている。
なんでそんな懇願するほど……一体、何を恐れているというんだ…………
と、そこで懐の通信端末に連絡のバイブ音があったので取り出す。
どれどれ、ふむふむ。よーしっ、次の予定が決まったぞぉ。
「……何してるんだ?」
背後で怪訝な声を上げるソーマに、私は答えた。
「は??」
こっちを拘束している彼の手首を掴んで自然に引きはがし、歩き出しながら私はプログラムが導き出した座標を確認する。
倒したアラガミのオラクル細胞は霧散し、やがて再集合して新たなアラガミとして永遠無限に生まれ続ける。それがこの世界の常識だ。なので、どれだけアラガミを殺しても、アラガミを滅ぼし尽くすことは不可能とされている。
けれどもそのアラガミの「次に生まれる地点」を特定できたらどうなるだろうか?
人類の安全圏、比較的アラガミが生まれない地域の発見……逆にアラガミの巣窟となっている座標の特定により、偏食場観測装置のみを頼っている現在の状況は大きく変わるだろう。
だがそんなことは些事だ。これが最も大きな革命をもたらすものとは、すなわち、そう。
蘇生後即討伐── リ ス キ ル 周 回 が可能になるということだッッ……!!
「──寺か。良し、じゃあ私は周回に行くけど……誰か一緒に来る?」
「行かないが。いや待て。その前にアナグラに戻れ。報告書を書いてからだろ」
「私まだMIAなんで。MIA状態だと何が出来る? そう──連続出撃を超えた、反則の合法無限周回だッッッ……!!」
「コイツ……! 待てッ!!」
一切のためらいなくソーマが神機を振ってくる。
それをサッと距離を延長したステップで回避し、近くのビル壁を一気に駆け登り、頂上から下界を見下ろした。
「まったねぇー!! 次は良いニュースを持ってくるからよ、楽しみにしてろよなー!」
「アキィ──!!」
背後から怒りの声が聞こえるが周回に勝るものなし。
笑いながら、ささっと私は一気にその場を離脱して、十字街のあるエリアに向かう。
「おわったのかー?」
そこには両手を上げて待っていたシオ様ちゃん。傍には洗脳状態にされ、うな垂れている、哀れなヴァジュラ君がいた。
洗脳の原理。なんかシオ様が、アラガミのオラクル細胞内の偏食因子が発する
「挨拶はした! 後は捜索隊が来る前に、どれだけ周回数を稼げるかだ……行っくぞぉー! 今日は一心不乱の帝王周回だ──!!」
「ゴチソウ? ゴチソウ、だな!」
共にヴァジュラの背に乗り、アラガミの走行速度で廃墟街を出発する。
──俺たちの周回はここからだ……!!
幻代アキ(21)
遂にMIA状態を活用する周回を編み出した周回狂。MIA認定続行中のタイムアタック周回だ! 行くゾォ! なおソーマはキレ、リンドウは倒れる。悪魔はいつも通りのまま進化していた……!
リスポーン座標算出アプリは自作。主に倒したアラガミの偏食場を利用する試用段階のもので、実用化されたらマジでゴッドイーターの狩りの常識が変わる。周回、あらゆるものを解決しすぎである。
なおその後の支部長室の報告風景。
>幻代中尉が生きておりました
>ほう……
>そして周回へと旅立ちました
>ええ……
ヨハネス支部長もこれには困惑の模様。
今回のNo Way Back、サブタイは「周回からは逃げられない」ってところで。
いつもあらゆるご支援ありがとうございます……!