転生神機使いは狩り続ける   作:時杜 境

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12 射出式邂逅

 ──流石に入隊から十年も経つと、子供だった身長体重も変化する。

 

 P73偏食因子の影響か色素の薄い髪色と肌。出撃ばっかしているので髪は長めで、普段からハーフアップにしている。瞳の色は違法実験の後遺症か、光の加減によってはガーネットに見えなくもない。ハイライトは見えにくいので一見、暗い印象になるかもだ。

 

 かつては美少女、ならぬ美幼女だとこの外見を表現したが、身長が一般女性の平均くらいにまで伸びると、もう立派な美少女だなぁと自賛するくらいには美少女として成長していた。胸囲? 自分で見た感じはアリサちゃんほどはないんじゃね?

 

 一応はこれでも二十代になるのだが、まだ十代にも見える。二次元補正ッ!

 

 顔立ちは良いので、黙って独り廃墟に佇んでいれば、新手の人型アラガミか人外っぽく見えるかもしれない。

 

 ──そう、アナグラ内の自分の部屋にあった鏡を見ながら思った。

 

「うむ……まるで転生前に自分で作ったが如く好みのアバター。もしや特典ってコレ……?」

 

 そんな事を思いながら、極東での生活が数年ぶりに再開する。

 

 

 タイムアタック(TA)周回の戦果。

 

 目標外アラガミの小型中型大型、計八十二体の討伐完了。内、セクメト、テスカトリポカ、アイテールの三体を含む。

 

 討伐目標ディアウス・ピター、座標特定範囲内で、二体を確認。いずれも討伐。

 収穫物──帝王黒毛、帝王爪、帝王牙、帝王翼、帝王大翼、帝王黒曜毛。

 古王ノ冠──ナシ。

 

 周回の終わりはまだまだ遠い。

 

「────とゆーワケで、帰還道中で偶然にも出くわしてきたアラガミ、また『新種の黒ヴァジュラ』──ディアウス・ピターの戦闘ログレポート、対処法レポ、弱点属性検証データ、結合崩壊部位データ、採取素材データ、もろもろNORNに提出しときましたー。あと遅れましたけど、幻代アキ殲滅兵中尉、ただいまアナグラに帰還いたしました!」

 

 イン極東支部内──第一部隊集合部屋、作戦室。

 私は帰って来た! この最前線に!

 敬礼した目の前には頭痛をこらえるような表情のツバキさん。そして周囲に第一部隊の面々──ユウとアリサを除いたメンバーがそろっている。

 

「……MIAからの無事の生還、見事だ中尉。ところで貴官はミッション『蒼穹の月』において第一部隊メンバーから目撃情報が多数寄せられており、また当時の部隊の窮地を救ったとも聞いている。なにか知っているか?」

 

「さぁ? そこに新しい素材を落とすアラガミがいただけでは?」

 

「えぇ!? なんで誤魔化すんすか!?」

 

 コウタ君の方を振り向く。

 

「なんだい新人クン。そりゃ多少は不可解なことは起きたミッションだったかもしれないけど、結局こうして完遂できたんだからそれでいいじゃない。全員無事生還! 隊長の命令はちゃんと遵守された。ですよねー、雨宮少尉?」

 

「ん、まあ……な。上が何を考えていようと、俺たちゴッドイーターの仕事は変わらない。証拠もなしに論じても──」

 

「──ふざけるな。殺されかけたんだぞ、お前も。俺たちも」

 

 ソーマがリンドウさんを睨む。声は静かだったが、“有耶無耶にするな”という怒りがこもっている。

 

 支部長ォ! ごめんねぇ! 原作だったらリンドウさんMIAで皆そっちに大体気を取られてたんだけど、全員生き残っちゃったから、対立タイミングがすげー早いっす! このままじゃ原作主人公・ユウ君が何も知らないままでシナリオ進んじゃーう!!

 

 くっ……! なぜ黒幕でも何でもない私が黒幕のプランの心配をしなくちゃならないンダ! 第一部隊メンバーにはこの後、まだ重要なイベントがあるでしょーに!!

 

「野郎はどこだ。すぐに問いただして──」

 

「──支部長ならエイジスの視察に行っている。しばらく戻らない」

 

「……コソコソするのだけは上手いようだな」

 

 チ、とソーマが舌打ちする。

 流石はヨハネスさん、きたない。視察先で第一部隊全員生還の報せを聞いたら、どんな顔してるんだろうか?

 

「とにかく、この件についてはここまでだ。……本当に、全員無事でよかった。各々、拾った命を大事にしろ。お前たち一人一人の代わりはいないんだ。そのことをよく肝に銘じておくんだな」

 

 ──そう言って、どこか安心したような顔でツバキさんは退室していった。

 あの人にこの短期間で降りかかったことといえば、私MIAに第一部隊全滅の危機か。そりゃあ一番の心労役だろう。とても心配と迷惑をかけたと思う。

 

 だが申し訳ないがMIA中の自主周回については何も後悔はない。

 というか、アレもアレで必要だったのだ、もちろん素材以外の目的で。第一部隊と合流した時点でそのままアナグラに戻ってしまったら、報告書三昧や任務で、しばらく自由になれなかっただろうし──なに、既に自由だって? まぁな!! だけどイベントは早めに起こしておきたいのだよ。

 

「はぁ……」

 

 と、珍しく深い溜息を吐くリンドウさん。

 どこか疲れているような顔だ。いやまぁ、この人はこの序盤時点で支部長がクロいぜ! と裏で知っている人なので、その諸々で顔色が優れないのは仕方ないのだろうが──

 

「……リンドウ、大丈夫? 帰って来てからこっち、なんだか元気ないわよ?」

 

 と、指摘したのはサクヤさん。横乳がお見えになっているその格好、寒くないんですかと尋ねることは果たして、この世界の住民外の生命と見なされるだろうか? 哲学に等しい難題だ。

 

 ちなみに私はそこまで露出は激しくない服装をしている。具体的にはどうかって? じゃあ“スイーパーノワール”という黒コートな衣装でも想像しておいてくれ。あれプレイヤー時代のお気に入りだったんだ。まだこっちでは開発もされてないけどな!

 

 ……ところで衣服問題といえば、ソーマさんのフードがずっと脱げてるのはバグだろうか? 昔も原作も被ってるのがデフォじゃなかったっけ?

 

「いや……別に大したことじゃない。うん……ちょっと今まで少しずつ積み上げた作品が、こう、朝起きたら丸ごと捨てられてたって気分なだけでな……」

 

「作品……? リンドウ、貴方がなにかを作ってたところなんて見たことないけど」

 

 パン! とそこで私はこの空間に響くよう、思い切りそこで一つ拍手した。

 一瞬で皆の意識がこちらに向くのを感じ、さっきまでツバキさんがいた位置に歩いていく。

 

「──今日。第一部隊ってお休みだよね?」

 

「は……? ああ、そりゃあな。アリサは医務室に篭り切りだし、ユウもそれにつきっきりだ。俺たちも、数日は安静にしてろって言われてるよ」

 

「じゃあリンドウさんもサクヤさんもソーマもコウタ君も、今日はヒマってことでいいよね?」

 

「……何に付き合わせるつもりだ」

 

 警戒の色を帯びたソーマが身構える。

 ここで逃げ出さない辺り、逃げても無駄だということを経験則から知っているらしい。実に英断! 素晴らしい!

 

「なに、別に仕事手伝えだの、周回だのと言うつもりはないよ。ほら、私ってしばらく海外出張してたじゃん?」

 

「……何が言いたい」

 

 その言葉を待っていた。

 ニヤッと私は口元に笑みを浮かべる。

 

「──お土産があるんだよ」

 

 さぁ、ここからは私のターンだ。

 

   ▼

 

「大丈夫だったかいアキ君!? MIAになったと聞いた時は心配したよ!!」

 

「すすってるそのカップ麺を完食してから言ってもらってどうぞ、ファーザー」

 

「はっはっは! いやだからファーザーはちょっとねぇ!」

 

 ──サカキ博士のラボに行くと、そこにはモニターに囲まれた席でお食事中の父上(後見人)がいた。

 タイミングがアレだっただけで、言葉は本心なのだと思う。ああ博士、眼鏡曇ってますよ。

 

「あんたら、まだその漫才続けてるのかよ……」

 

 呆れているリンドウさんの声にカッと目を見開く。

 

「漫才って言うなよ! こういうやり取り普段からしとけば、いつか来る真面目(シリアス)な場面で良い演出できるだろうが!」

 

「そうだよ! 『アキ君……君のことは本当の娘のように想っていたよ……』とか、『私も博士のような人を父親にできて良かったです……』とか、感動的なシーンになるじゃないか!」

 

「違いますよ博士。そこは『ああ……サカキ博士こそが私の父親だったのですね……』ですよ」

 

「き、記憶が捏造されてないかいソレ」

 

「どっちにしろ、今のやり取りで『いつか来る』その時の感動は台無しになったと思いますけど……」

 

「「そんなー」」

 

 コウタ君の鋭い意見に、二人でがっかりする。

 まるで打ち合わせていたかのような一体感だ。もしかして本当にサカキ博士って私の肉親だったのでは? 違う? はい。

 

「無駄話を聞かせるだけってんなら俺は部屋に戻るぞ」

 

「待てよソーマ君。この前、言っただろ? 『次は良いニュースを持ってくる』ってな」

 

「……?」

 

 眉をひそめるソーマ、並びに他の面々。

 そんな中、私はラボの奥の部屋に繋がる赤い扉を見やる。

 

「博士ー。預けた私の神機ってあっちですか?」

 

「ああ、例の『捕食フォーム』で固まってしまったってやつだね。今夜中にも、リッカ君を呼んで二人でなんとかしようと考えていたんだけど──」

 

「か、固まった……?」

 

 リンドウさんが信じられないような目でこっちを見てくる。

 

「遂に周回の数に神機が匙を投げたか……末期だな」

 

「神機さんに失礼なこと言うなよソーマ。私の神機さんは健啖家なんだよ。喰われても知らないぞー」

 

 と言いつつ、私は部屋に入って──行こうとしたところで止まり、振り返ってこの部屋の配置──もっと言えば人物の配置を見た。

 

「──リンドウさんとサクヤさんはこっちのソファに座って。ハイ、博士とコウタ君は反対側の席ね。で、ソーマはそこで待機。立ってろ」

 

「なんでだよ」

 

「上官命令。イエスと答えろ」

 

「なぜそこで今まで使ったこともないような命令を……」

 

 完全に馬鹿を見る目を向けられつつも、他の皆も首を傾げつつ従ってくれる。

 ──よろしい。準備はこれで整った。

 

 奥の部屋へ踏み込むと、そこには神機ケースにも収まり切らず、作業台の上に乗せられたままの神機さんの姿があった。

 今はまるで、バグったかのように捕食フォームで完全に機能を停止させている。

 

(──行くよ?)

 

 心の内だけでそう呟き、神機さんの柄を手に取って皆のいる空間へ戻る。

 神機さんの有様を見て一同がぎょっとするが、それも一瞬のことだ。

 グッと力を込めて神機さんに接続すると──カッとそのCNSが閃光弾のような光を放った。

 

「ぬわっ!? アキ君!? 一体なにを──!」

 

 博士が声を上げる中、ガバァッ! と神機さんが蠢き、その口が開く。

 途端────

 

「ッ──ガ!?」

 

 どさっ、と人が倒れ込む音とうめき声。

 神機さんの口から飛び出してきた人影が、ソーマに衝突したのだろう。

 その人影とはもちろん────

 

 

「こん、にちわ!」

 

 

 真っ白な少女。

 私の拙い技術で作った白パーカーの衣装で申し訳ないが、遂にご対面。

 

 そう! このためにMIA中の無法周回が必要だったんですねぇ!!

 あえて第一部隊と合流して一緒に帰投せず! 彼女と共に周回の旅に出て、こっそり神機さんにばくっとしてもらって、アナグラに持ち込み完了!!

 

 原作では特殊なコンテナを使って運び込んでいたが(小説版参照!)、まさか神機さんがその役目の位置になるとはなぁ。まさに僥倖、というやつだ。

 ああ、偏食場問題は、彼女自身が誤魔化す小技を習得していた。神機さんの中に入っているとき限定だけどね。

 

「こ、こ、これは──」

 

 息を呑む博士。

 

「え……子供……!?」

 

 びっくり顔のサクヤさん。

 

「……まさか」

 

 何かを察したらしいリンドウさん。

 

「……ダレ?」

 

 虚を突かれつつも、当たり前の疑問を口にするコウタ君。

 

「……なん、だ、お前は──?」

 

 ぶつかった衝撃で倒れ込み、白い少女に乗り上げられた体勢で目を見開いているソーマ君。

 イイネ! 主人公&ヒロインの邂逅って感じで実にいい!! ──そんな私の荒ぶる内心をよそに、彼女はにぱっと笑って言った。

 

「しお! オナカ、スイタ!!」

 

 挨拶それでいいんけ!? いいンだよ! シオ様の御言葉はぜったーい!

 ぎぎぎ、とソーマが倒れ込んだまま、神機さんを担いでいるこっちを見てくる。

 

「おい……説明しろ……なんだこいつは……」

 

 二人の傍に近寄り、シオ様の頭に手を置く。

 光栄にも、嬉しそうに手の平に頭を押し付けてきてくれる。実に可愛い。

 

「史上初の人型アラガミさ。海の向こうで会って仲良くなったから、連れてきたんだ!」

 

 ──良い笑顔を作って、私はそう言った。

 




ソーマ・シックザール(18)
 お喋りな友人ができた影響かは不明だがフードログアウト。周囲の評判も原作より軟化している。というか「死神」の意味が変わってる。悪魔の監督役、ストッパーとしての希望の星である。
 このたびフライングの運命の出会いをした。


 出会っちまったな……シーズン1。
 なおシーズン2は周回狂と周回廃。

 序盤の突然の主人公外見描写は、感想欄で幾人か興味をお持ちだったので、この機会にねじ込みました。ハーフアップはイイゾ……

 お気に入り・評価・感想・ここすき、いつもありがとうございます!!
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