──加賀美リョウ。
転生者としてのメタ知識でいえば、その名は公式の漫画に出てくる
「神薙ユウ」よりも前。
故に、ある意味──加賀美リョウという名は、「始まりのゴッドイーター」に相応しい。
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ペイラー・榊の証言。
「加賀美リョウ。彼はソーマが生まれる前に、『始まりのゴッドイーター』と畏怖されていた人物でね。ただの人間であるにも関わらず、最初期の神機を手に、何体ものアラガミを討伐していた偉人……いや、超人だよ」
「当時、アラガミという人類にとっては未知数であり恐怖の象徴だった生物に対し、とても興味津々だった様子をよく聞いているね。また不思議なことに、彼が呼んでいたアラガミ名が、現在のフェンリルでも採用されているものと一致していたらしい。彼は一般家庭の出で、フェンリルとも、軍とも、なんの繋がりもない青年だったというのに、だ」
「そんな彼は、2053年……そう、『マーナガルム計画』が行われた年に、
「彼が倒したのは『キツネ型のアラガミ』というが、それは今でも確認されていない未知のアラガミだ。ともかく、持ち帰ったコアを研究し、当時の技術者たちは一つの神機を作り上げた」
「だが、せっかく初めての大型アラガミのコアを用いた神機だったが、肝心の適合者がいなかった。故に、長らく神機保管庫の奥で封印され、無用の長物と化していたところ──アキ君が現れた、ということさ」
「あの神機のコアは、非常に特殊なオラクル細胞でね。まだ名前はないが……要は他のオラクル細胞よりも混じりっ気のない、純粋な細胞──『レトロオラクル細胞』とも言うべき代物だ。まぁ、時間も予算もなく、神機の量産を優先されていた時代の作品だから……今もなお、アキ君の『神機さん』に起きている事象は詳しくは分からない。君も私も、お互い時間がとれれば、是非ともじっくりと研究してみたいものだけどね?」
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エントランスで捕まえた百田ゲンの証言。
「リョウ……あいつか。ああ、知り合いさ。友人だった。あいつはとにかく変な奴でなぁ……その辺、お前さんにも似ているかもな、アキ」
「誰もが恐怖していたアラガミを見て、目を輝かせるような奴だった。『すげー! アラガミだー!』ってな。頭のおかしい奴だと思って初めは敬遠されていたが、その異常な戦闘能力は本物だった」
「当時の人類の希望の星。エース中のエースさ。当時の主武装はピストル型神機だぜ? そいつを持って、嬉々として接近戦に持ち込んで、ズドンだ。あいつに救われた命は多かっただろうぜ。まさに英雄だよ」
「ま、本人はそんなこと微塵も気にしてない風だったけどな。軍のお偉いさんに登用の誘いが来ても、『じゃあもっと神機の質上げてください、予算はそっちに回してください』一点張りよ。とにかく前線に出たがる奴だった。なんかもう、アラガミと戦うのが楽しくて仕方ないって様子でな」
「そんな時、奴はいつしか大陸に渡りたいって言い出してな。なんでかと聞いたら、『大型と戦いたい』ってよ。ヤベェだろ。まぁ当時、チラホラ出てきた中型を十分足らずで仕留めてた奴だからな。上層部はその希望を呑んで、音信不通になった大陸の偵察を正式に依頼した」
「そして──半年後に奴は帰って来た。そこそこにボロボロでな。侵蝕も進んで……先は長くないのは明白だった。だが本人はすっげー満足気でな、『最強を証明したぜ』っつって、大型のコアを持ち帰ったわけよ」
「んで、お察しの通り、その苦労して手に入れたコアはお偉いさんに没収、即研究材料にされて神機として作られて……そうそう、皮肉にも長いこと適合者が見つからなくってなぁ。だからアキ、お前さんがあの神機を使ってるって聞いた時は驚いたし、嬉しかったんだぜ?」
「ようやく──あいつの遺してくれた希望を、繋いでくれる奴が現れたんだ、ってな」
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先人の転生者(推測)がヤバすぎて私が一気に霞んだ件について。
ヤバイ。ヤバいとかってレベルではない。凄すぎてドン引くレベルだ。
小動物サイズのアラガミのコアしか転用できていなかった、ピストル型神機を手に?
単独で? 大陸を渡り? あのキュウビを倒してコアを持ち帰ったって? それホントに人間かね?
転生者としてのチート能力でもあったっていうんだろうか。むしろあってほしいくらいだが。
まぁ、まだそう確定したわけじゃないけど、あの時代の人類でアラガミに目を輝かせるって充分に「そういう事」なのでは? むしろそうであってほしいくらいなんだけども!
……って、だから私が入隊した当時、もうボルグ・カムランとかが極東に上陸してたってこと!? 原作改変はとっくの昔に始まっていた!? もう大型出てるんだー、素材集めやすいなー、って思ってた過去の己の浅慮を殴りてぇ気分だぜ!
つーか全然知らなかった。加賀美リョウ。名前ではなく、偉人という意味で。
そういえばターミナルで、主人公系の名前を検索したこともなかった。
私の他にも転生者がいる可能性──それは一番最初に思いつくべき可能性であったのに。
完全に素材周回に脳を焼かれていた。オーケイ、認めよう。私は末期だ。それでいいな!?
「レトロオラクル細胞ねー……」
また2要素じゃねぇの、加減しろって馬鹿ァ! そりゃつえーよ!!
えーと確か、混じりっけのないオラクル細胞で、「周辺環境の変化に高速で対処する」っつー、オラクル細胞の単一の特徴に特化してるオリジン細胞だったっけ? 勝手に機能が付け足されていってたの、レトロ君が頑張ってたってこと? いやぁいつもすみませんね、ありがとな……
いや、っていうか早く研究させた方がいいぜ、神機さん! ホントはソーマ博士の功績になるところなんだけど! 人類の技術躍進のために、こいつを今すぐ研究材料にした方がいいぜ!
でも神機さんがいないと私は周回できないわけで……
私が周回できないと、任務の循環にも不都合をきたすわけで……
ままならないものよ。
「よーっし、本日の第一部隊は二チームに分かれての別々の任務だ。俺とサクヤは新型二人と組む。そっちはアキとソーマとコウタの三人だ。いいな」
──というリンドウさんの指示のもと、本日はそういうことになった。
そして例によって、新型──神薙ユウが作戦室に来る前に、私たち三人は出撃させられた。絶対に会わせてやるものかという執念を感じる。
そうして私たちがやってきたのは、愚者の空母だった。
「ゴハンのじかんー!」
────シオ様を連れて。
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シオ様のお散歩はリスクが伴うため、必然的に支部長が出張中の時期くらいにしか決行できないのである。
外部への持ち運びはもちろん神機さん──ではなく、流石にそこはサカキ博士が特殊なコンテナを作ってくれた。更にはミッションを「博士からの依頼」と偽装している。本当にありがたい。
とはいっても、お食事用の素材は潤沢なので、別に必須な外出でもないのだが──
「閉じ込めっぱなしってのも、ねぇ? いやぁ、良い狩り日和だなぁ!」
「ビヨリだなー!」
「そこの問題児二人。絶対に作戦範囲内からは出るなよ」
後ろのソーマから圧をかけられる。少しでも不審な行動をしたら、チャージクラッシュ一閃かもしれない。
「ていうか俺、疑問なんすけど。アキさん、シオって戦えるんですか?」
「そりゃアラガミですしー。この私と二年間も旅をしてたんだぜ? 折り紙つきよ」
「不安しかないんだが?」
などと話しつつ、四人でアラガミのいる位置へと忍び寄っていく。
目標はボルグ・カムラン堕天──の、ハズだったが。
「グォォォォン……」
そこには!
カムラン君をモグモグしている 帝王くんの 姿が !
「素材だぁぁぁぁぁ──!!」
一瞬で神機を銃に変形させて引き金を引きまくる。
スキル:トリガーハッピー。なんか神機さんがそういうのを覚えたらしく、あらあら不思議、脳天直撃のバレットがメテオのように降り注ぎますのよー!!
「グォォォォ!?」
帝王の赤い目がこちらを見る。認識する。
その瞬間──一瞬で背中から両翼を生やし、私目がけて突っ込んできた。
「血晶ァ!!」
叫びながら飛んで顔面を
バースト移行! 翼の振り下ろしを回避し、ザクザク斬ってOP回復。バレット射出。降るメテオ。捕食捕食、斬撃斬撃、回避斬撃捕食バレット回避回避バレット──そうして帝王くんが倒れたので素材を回収する。
「神帝翼!! まぁ……許そう!」
「許すのか……」
「うーわ、マジで一方的……」
「ゴハンー」
退避していたソーマたちが顔を出す。
帝王に関しては完全にこっちに丸投げる方向性らしい。実に正しいッ!
がぶがぶとシオ様が帝王の胴体にかぶりつく。が。
「…………びみょう」
「味まで採点するのか……」
「ぐ、グルメっ子……!!」
極東民、戦慄。だがシオ様はお残ししないため、渋い顔をしながらも、食べられる部分はきっちり完食していく。
「あ、そうだー。そーま! いっしょにたべよー!」
──素早くサイレントに潜伏し、完全にその場から自分の気配を遮断する。
原作にあった台詞! 原作のシーン! 遂にくるのか、見れるのか!! 隙あらば転生者ムーヴさせてもらうぜ!
「おいおい、シオ。俺たち人間はアラガミを食べないんだよ」
コウタ君のパーフェクトアンサー。オーケイ、台本通り。
「そーなのか? でも、ソーマのアラガミはたべたいっていってるよ?」
スゥ──……っと、ソーマから細く息を吸い込む音が聞こえた。
「──おい責任者。どういう教育してやがる」
「私に矛先向けるんですの!?」
「他に誰がいるんだ、誰が。隠れてねぇで出てきやがれ。ぶった斬るぞ」
ちぇー、とがっかりしながら姿をあらわす。
キレ気味のソーマに鋭く睨まれるので、降参に片手を挙げた。
「別に私はなにもしてないぜー? 『私のアラガミ』は神機さんの餌になってるらしいし。でもソーマは違うんだろ?」
「お前と神機の関係、どうなってるんだよ……」
「んー? たべないのか?」
「喰うか。てめぇと一緒にするんじゃねぇ。不愉快だ」
静かにそう言い放ち、ソーマはその場から立ち去ろうとする。
──が、それより先に、新たなアラガミの気配を感じた。
「キシャァァァアア!!」
ボルグ・カムランの通常種くんだった。
獣道の高台から飛び降り、こちらに向かってくる。
いやぁ、一歩二歩と進めば大型種に出くわす極東、やっぱ素晴らしい周回環境だねぇ!
「チ、おい下が──」
ソーマが神機を構え、応戦に出ようとする。
──が、彼が動き出す前に、ポンと肩を叩いて押し留めた。
「まぁ、ちょっと見てなって」
「あ? 何を……」
シオ様が立ち上がり、ボルグ・カムランに相対する。
その白い右腕から武器のようなものが生えていく。それはアラガミとして神機を模倣した能力。原作ではショートブレードとアサルトを真似たものだったが、このシオ様は違う。獲物を見据えたまま、彼女はその腕から生やした神機の形を、
──ガトリングガンに変形させた。
「ハ?」
「どかーん! だぞー!!」
ガガガガガガガガ!!!! と鳴り響く銃声音。
しまいには爆破バレットっぽいのを撃ち放って、爆音と閃光の後、ボルグ・カムランくんは真っ黒こげになって倒れて沈黙した。
「神機じゃ!! ないじゃん! もう!!」
騒ぐコウタ君の横で、ガッと私はソーマに掴みかかられた。
「──……お前の罪を教えろ……ッ!!」
「い、いやぁ、昔のアニメとかを見せてね? あははは、いやぁ自衛能力は大切だよねー」
「シオ、えらかったかー?」
「お前もお前でなんでも学習するな!! クッソ、俺が鍛え直してやる! そこになおれ!!」
なにかのスイッチが入ったらしいソーマがシオ様に指を突きつける。シオ様は「はえ?」という顔だ。ははははは、仲が良くて大変けっこう。
そろそろー……っとそこでこっそりコウタ君がこちらに寄ってくる。
「あのー……アキさん。ソーマって……?」
「ああ、私とソーマはP73偏食因子ってやつを持ってるゴッドイーターなんだよ。アラガミにより近い身体でねー。私はともかく、ソーマはその辺、色々と悩んできた奴なんで、まぁ、適切な距離をとりつつコミュってれば平気だよ」
「あー……了解っす」
コクリ、と頷いたコウタ君はそこで追求をやめる。戦闘経験はまだ浅いが、対人コミュにおいて彼ほど優秀な人材も貴重である。即座にこちらの言いたいことを理解したらしく、やり取りする二人を眺める位置に落ち着いた。
──そんな三人を横に、海の方へと目を向ける。
そこには一つの建設中の人工島がある。エイジス。シナリオ最終決戦の場。いつか必ず行くことになるであろう、運命の地。
カタカタと手の中の神機さんが微かに震えている。もう反応するようになったのか。だが──
(……まだだ。まだ。ラスボスに挑む時は、完全に準備を終えてからじゃないとなぁ?)
あの島の奥にいる存在に意識を向けながら、思う。
──絶対に蹂躙してやるから待ってろよ、と。
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一週間、二週間とすぎて、アリサちゃんが第一部隊に復帰した。
彼女はユウ君といる時間が多いらしく、必然的に私も遠ざかっていた、のだが。
「──あっ。こ、こんにちは」
ばったり。新人区画をうろついてユウ君に会えないカナーと思っていたところ、部屋から出てきたアリサちゃんと出くわした。
「ちゃーっす。アリサちゃん、これから任務?」
「……はい。だいぶ、戦闘の勘も取り戻してきたので……えっとそれで、アキさん、でしたよね」
そこでアリサちゃんが深く頭を下げた。
「──リンドウさんからいただいたディスク、見ました。届けてくださって、オレーシャを……パパとママを、助けてくれて、ありがとうございました……!!」
「あー、いいのよいいのよ。めぐり合わせが良かっただけさ。でも感謝されるのはとても嬉しいので、どういたしましてと言っておこう!」
「はい……本当に、本当にありがとうございます……!」
やっぱアリサちゃん、素直になるととても良い子だね。いや、ツン期の彼女も見たかったといえば見たかったんだが……おのれ支部長。
「昨日、ロシア支部から連絡があって……パパとママ、意識を取り戻したらしいんです。本当に中尉の……アキさんのおかげです……」
「お、そっか。そりゃ良かった」
よかったジャン! 引っかかってた小骨が取れた気分だ。アリサちゃん周りの事情は、これで大体片付いたってところカナ?
「……あっ、すみません、自分のことばっかり……ええと、ユウ……に何かご用ですか? なんだか、リンドウさんやソーマが会わせないようにしているらしいですけど……?」
「それねー。私もよく分かんないなんだよねぇ! 神薙くん、どこにいるか知ってる?」
「……す、すみません、『絶対に言うな』と強く口止めされてまして……あ、私これから防衛班の方たちと合同任務なので。えと、引き留めてしまってすみません! 本当にありがとうございました!!」
最後までペコペコと頭を下げつつ、アリサちゃんは急いでエレベーターに乗っていった。
口止め……そこまでしているのか、あの二人。もうガッチガチのガチじゃねぇか。これシナリオ終盤まで会えない可能性まで出てきたぞ……
「しゃーねぇ。博士パパに会いにいくかー」
エレベーターを使ってラボラトリ区画へと足を向ける。
そんな中、頭の中で今日の第一部隊の予定を振り返る。
リンドウさんとソーマは討伐任務。
サクヤさんとコウタ君は別の部隊の応援。
アリサちゃんはさっき言ってた通り、防衛班と合同任務。
「──それで主人公だけが不明、と。徹底してるなぁー」
呟きながら、ラボに繋がる扉を開く。
博士の姿はなかった。そういえばこの時間は神機整備の方に行ってるんだっけ──と思考が回る前に。
「! アキー!」
嬉しそうにこちらに駆け寄ってくるシオ様の姿を認める。
そして──その背後に立っていた、おそらくシオ様の相手をしていただろう人物を見た。
「「──あっ」」
思わず上げた声が重なった。
そこには茶髪の少年がいた。コバルトブルーのフェンリル制服を着た少年がいた。
──完全フリー状態の神薙ユウが、そこにいた。
シオ様
悪魔による英才教育の結果、オーバーパワーを手にするに至った。二刀流で戦うこともある。
ただしコレをやると「とてもオナカがへる」ので、ゴハンがある時にしかやらない。
一応は人間の進化を進んでいるので、飛行はしない。ビームも撃たない。この後ソーマによる指導により、神機使いっぽくはなる。
出会っちまったな……シーズン2!
ちなみに作者は電王しか履修してない。
本日もお読みいただきありがとうございます!