転生神機使いは狩り続ける   作:時杜 境

2 / 54
02 初陣

 Hey、起きたら文明感あふれるベッドの上だったぜ。ひゃっほー。

 ここはフェンリル極東支部内。無事に回収・保護完了である!

 

 ここがようやくスタート地点。きっとここから本当のセカンドライフ!

 さぁ、さぁ、さぁ、さぁ! ささっと適合試験をやって明日からアラガミぶっ殺しエブリデイを始めようぜ!!

 

「違法実験体なので処分対象ですね」

 

 意識を取り戻して数日。本部? からやってきた偉い人っぽい男の人がそう言った。

 なんでも、私がしていた腕輪が問題らしい。

 違法研究所の実験体である証だ。ゴッドイーターっぽ~い(白目)で流していたアクセだったが、どうやら世間的には厄ネタだったらしい。

 

 生き延びたと思ったらやっぱり二段構えのデストラップシナリオ。

 処分。そりゃまぁそうだ。

 違法なアラガミ研究ってのはリスクが高い。こうして私が理性を保って人間らしくいられてるのも奇跡的で、フェンリル管轄下にない「実験体」は、アラガミ化して暴走する前に殺処分するのが通例らしい。

 

 そらあしょうがないぜお前。

 こればっかりはカス研究員どもが悪い。拉致られた時点で詰みだこんなの。

 

「──なら適合試験を受けさせてからでも遅くはないんじゃないかな?」

 

 と、ここで助け船を出してくれたのはペイラー・榊。生のネームドキャラだ!! スゲ──!!

 黒幕感溢れる主要人物の一人だ。博士ポジションな人で実際に博士の人である。

 

「適合試験をパスすれば彼女は神機使いとして貴重な戦力になりうる。適合率も悪くない、むしろ良いくらいだ。どうかな?」

 

 こっちにキツネっぽいその細い目を向けてくる博士。

 一見、「どうせ殺すくらいなら戦力にしちまいなyou」という外道激ヤバ提案だが、それくらいしか私の生きる道は残されてないのだろう。

 

 神機使いとして生きるか、実験体として「処分」されるか。

 これは博士なりの温情ってやつだろう。

 

 もちろんその答えは──決まり切っている。

 

   ▼

 

 実験体としての証としてはめられていた腕輪のあった位置には、赤い腕輪がはめられている。

 

 ゴッドイーター!! デビュー完了ッッ!!

 

 ちなみに痛みはなかった。痛みがないほど適合率が高いって聞いた! これは期待できるゾ、じゃんじゃんアラガミ狩っていこうぜエブリデー!

 

「うん、目を輝かせているところ申し訳ないんだけども、前にも言った通り君の身体は特殊でね。体内のオラクル細胞の調整が終わるまで、しばらく研究所生活だ。すまないね」

 

 ……流石に出自がアレなので、まずはそういう事らしいがッ!

 ともかく私は、極東支部直轄のひみつ研究所で、しばらく訓練と演習と座学漬けの日々を送ることになった。前線が遠いぜちくしょう。

 

「202号……改め、今日から君の名は『幻代(げんだい)アキ』だ。分かったかい?」

 

「Yeah、マイファーザー」

 

「ファーザーはちょっとなぁ」

 

 どういう事情の流れなのか、サカキ博士を後見人にしてゲット!

 まだまだ11歳のガキんちょなので、面倒を見るべき大人が必要だと思われたのだろう。博士なら願ったり叶ったりだ。じゃんじゃんデータをとって研究に活用してほしい。

 

 ……マ、大人の事情側からすれば、「危ない実験体を監視・研究できる人材」としてペイラー・榊が最適解だった、って感じなんだろーが。

 

 くくくく、僥倖ッ! まさに僥倖! ネームドキャラを後ろ盾に展開するセカンドライフ! これは運命来てるぞ!! 早く原作主人公入隊しろッ!

 

 ここで神機紹介ッ! ブレード&バックラーの旧式装備!! 新型だったらアサルトも欲しかったけど、まだ新型は開発もされてないから先の話だね! 座学は前世の知識で無双したので語ることは特にねぇ!

 

 身体の動きはすこぶる良かった。適合試験でP53偏食因子を打ち込まれたせいなのか、研究所での「調整」とやらのおかげなのか、放浪生活をしていた数週間前と比べても、段違いに人間離れした動きが可能になっていた。

 

 ゲーム時代のような動きも、やろうと思えばできるし。

 勝手にプレデタースタイル! 空へ跳び、空を飛び、滑空し、神機さんがモグモググチャー! 鮮血!! 宙を蹴って曲芸じみた気持ち悪い動作で演習アラガミをバッサバッサ! バースト維持継続ッ! ヒャッハァー!! ゴッドイーターはこうでなくっちゃなァ!!

 

「君、ゴッドイーターとしての才能ありすぎない?」

 

 演習が終わると博士にやや引かれながらそう言われた。

 ヒャァ! 新鮮な観察対象だぁ! って言われるかと思っていたが割とまともに困惑されていた。

 そうか……この人って観察厨だけど立派に大人だったな……変なジュースは作るけど……なんで変なジュース作る……?

 

 

 ──とまぁ、ゴッドイーターとしての基礎をみっちり叩き込まれ、早一年後。

 西暦2062年。ワイ12歳。

 研究所生活からようやく卒業する時がきた。

 

 念願の! 実戦投入である!

 

 ……しかしロクな実戦研修もないとはなんて時勢だ。人員不足の世知辛い現実が伺い知れる。流石はリアル環境、チュートリアルなんて甘い工程は消し飛んでいるようだぜ。

 

『さて! 初陣早々すまないが、君には戦線にいるゴッドイーターたちの退路を開いてほしい。──雨宮ツバキ、雨宮リンドウ。中型種の討伐任務に行った二人なんだが、予想外の大型種が現れてね、まさに窮地といったところだ。やってくれるかな?』

 

「Yes、マイマスター」

 

『うーん、マスターもちょっとなぁ』

 

 じゃあなんて呼べばいいんじゃい!

 などと、ヘリの中で榊ファーザーと談笑していると目的地に着いた。

 

 開いたドアから風が入りこむ。見下ろした荒野の下界には、ゲーム……いや、正確には前世で見たことのある人影が二人。雨宮姉弟だ。地上何十メートルもあるのによく見える。ゴッドイーターの視力すげぇ。

 オウガテイル四体、コンゴウとシユウを相手にしながら、彼らの背後からはヴァジュラが迫ってきていた。まさに世紀末って感じだ。

 

「降下しまーす」

 

 緊張感はほどほどに。

 とうっ、と私はヘリを飛び出し、地上の地獄へ出撃した。

 

   ▼

 

 ──P73偏食因子というものがある。

 

 アラガミ研究の最初期に発見された始まりの因子。

 それを投与された人間は、その身体構造・強度をアラガミに限りなく近いものへと変えていく。だが同時に、アラガミとしての本能に精神が侵蝕され、これを後天的に投与された者で、まともに生き延びている事例はほとんど存在しない。

 

 その実験体が見つかるまでは。

 

「意識、脈拍共に異常なし。体内の偏食因子、小康状態を維持。彼女のような後天的投入の成功例はほとんどゼロに等しい。まさに奇跡のような存在だ」

 

 先日、「贖罪の街」で発見されたその少女の手首には、“202号”と刻まれた白い腕輪が取り付けられていた。

 非公式のアラガミ研究などろくなものではないし、ろくな場所ではない。道徳倫理を無視した非道な行いが蔓延しているような場だ。そこから生き延び、こうして自己を保ったまま、安定している「彼女」は、皮肉にもその研究所が唯一生み出した「成果」だった。

 

「……近いうち、本部から『迎え』が来るだろう。この小康状態もいつまで続くか分からない。彼女は時限爆弾のようなものだ。いつアラガミの本能に侵蝕され、アラガミ化するか……」

 

「だからといって、安易に決めるのは許されないだろう、ヨハン。他ならぬ私たちが」

 

 ペイラー・榊。

 ヨハネス・フォン・シックザール──フェンリル極東支部の支部長。

 

 支部長室で話す彼らは、アラガミ研究の第一人者だ。P73偏食因子を発見したのは榊であり、ヨハネスは八年前、それを用いた「マーナガルム計画」──偏食因子の転写実験で事故を引き起こしている。

 

 彼らは、「傑作」と呼べる少女のこれからの待遇に頭を悩ませていた。決してそれは哀れな被害者へ向けた温情などではない。

 研究者としてのサガ。この貴重な成功例を、みすみす殺処分するなど()()()()という心持ちからだ。

 

「使い物になると思うか?」

 

「彼女次第だ。だがP73偏食因子に適合した彼女なら、言わずと知れたことじゃないかい」

 

「腕輪をつけるだけの適合検査になりそうだな」

 

「彼女には、追って真実を伝えよう。その前に飲み込まれないよう、導くのが私たちの仕事であり、義務だ」

 

「では面倒は君が見るんだな、博士」

 

 部屋を出ようとしたペイラーの動きが止まる。

 

「……私に子育てができると思うのかい……?」

 

「仕事であり、義務だと君が言った。それに君にとってもいい観察対象だろう、星の観察者(スターゲイザー)。もっとも、彼女が復讐心を抱いたのなら、真っ先に狙われるのは私か君だろうがね」

 

「うむ……どちらにせよ自分の不始末は自分でつけるべき、か。了解したよ。父親らしいことなど、できるとは思えないけどね」

 

 

 そして──現在。

 榊は、この拾われた「元実験体」の潜在能力を前に言葉を失っていた。

 

「……神々が贈ってくれた祝福(ギフト)かもしれないね、彼女は」

 

 他者に友好的。学習能力も優秀。社会規範に則り、命令にも従順。

 まるで数十年を生きてきた成人並みの精神で、まるで子供とは思えない──それが一年間、研究所で彼女を観察した結果、導き出された最終結論だった。

 

 傑作。

 或いは天才。

 懸念点があるとすれば、戦闘時には好戦的な動きが顕著になる点だが、他の成績を踏まえても些事に等しい。

 

 以って投入された作戦は──苛烈な初陣だった。

 演習でも卓越したデータを記録していた彼女は、実戦においても新兵とは思えぬ戦闘結果を叩き出した。

 

 小型種は捕食のついでに切り裂かれ。

 中型種は開放(バースト)した斬撃で半身を裂かれ、胴を貫かれ。

 大型種は雷球を形成する間もなく空中へ叩き飛ばされ、コアを剥離されて絶命していった。

 

 速戦即決。電光石火。

 人間どころかゴッドイーター離れした戦闘記録は、観測していた者全てを愕然とさせた。

 

 

 ──極東の悪魔、幻代アキ。

 そう彼女が呼ばれ始めるのは、そう遠くない未来の話である──

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。