──ラスボス・アルダノーヴァ。
プレイヤー時代はその神々しいビジュアルに心を撃ち抜かれたものだ。鳴き声は「アットウテキナチカラ!」とか「ハッ!」とかそういう感じ。他に……なんかなかったんか?
クレーンが動き、ヨハネスの姿がその男神の背に向かおうとする。
原作ではそのまま彼は男神に飛び込み、このアラガミと一つになる──のだが。
「あ、チェンジで」
「ぐはッ!?」
一瞬でその場から跳躍する。神速ハンニバル先輩の瞬発力、それにゲーム3時代の“ダイブ”という戦闘技能をイメージした跳躍で一気に近づき、今まさに男神の内部へ飛び降りようとしたヨハネスを空中で蹴り飛ばす。
流石にこの瞬間の襲撃は予想だにしなかったのか、空中キックは彼に直撃し、きりもみ回転しながらヨハネスが鉄床に叩きつけられる。素人め。なんかちょっと向こうの片腕が折れた感触がしたが、まぁ安い代償だろう。
さっきまでヨハネスが立っていたクレーンの上に降り立ち、床に転がった憐れな支部長を見下ろす。
「何を勝手に融合合体ついでに自殺しようとしてんだテメー。私の言葉聞いてた? 息子さんをくださいっつってるのに、なんで無視するの? 生きていてもらわないと困るんですけど……」
「……なんなんだ君は……一体なにを考えて生きている……?」
「黙って無様に生き永らえて人類の礎になれカスっつってるんだよ!」
こちらの言い分に、顔を上げていたヨハネスの表情が絶望したものになる。“生きろ”って言われてそんな顔する奴、初めて見たよ。
「……っ、では戦いに来た、というのは──」
「──いやそれは本当。私はヨハネスさんと戦いに来たわけじゃないってだけ。そら、そこのお前だよお前! アルダノーヴァア!! いつまで棒立ちしてやがる、決戦の時だぞ!」
男神に開いた穴──ヨハネスが飛び込むはずだったそこへ、バレットを叩き込む。
思いっきり内部から破壊の衝撃が走り、アルダノーヴァが倒れ──そうになるところで持ち直し、素早くこちらから距離をとるようにして勝手に動いた。
「な──ッ? 馬鹿な、私はなにも……」
「所詮はアラガミだろ。特異点様を前にすれば、涎垂らして襲い掛かってくるのが自明さ」
神機さんのコアが青く輝く。だがそれも完全ではなく、青くなったかと思うと、元の金色に戻ってしまう。
それを見たヨハネスが、まさか、と呟く。
「まさか──君の特異点反応は、その神機から──」
「そうだよォ! ばーかばーか支部長! この勘違い野郎! 人間が特異点になれるワケないだろバァ──カ!!」
「ッ……!!」
支部長から青筋を立てる気配がする。息子とそっくりか?
「ま、そこで傍観してろよシックザール。アンタほどの人物の計画を横取りにしに来たんだ、こっちだって本気の本気だ。アンタの思い描く理想を遥かに超えた救世劇を見せつけてやるからよ」
『────』
人型を持つアルダノーヴァは、ロクに反応なんかしない。
ま──所詮は物言わぬアラガミってことだろう。
さて、んじゃまあ。
「──かかってこいよアルダノーヴァ。この極東の悪魔が相手してやるぜ」
そう敵のような口上を吐き捨てると、神機さんを手に最後の決戦へと飛び出した。
▼
アルダノーヴァ──ノヴァの守護兵器。乗り込んで制御もできるという、夢とロマンが詰まったアラガミだ。P73偏食因子持ちのゴッドイーター以外が入ると死ぬってこと以外は最高の存在だ。
その弱点属性は、火、氷、雷、神──全て。攻撃属性は神属性。
こっちの神機さんの刀身は火以外の三属性。銃身は火と雷の二属性。装甲は対神属性のみ。
──ただの愛機だったというのに、なんか対ラスボス兵装になっているのだ。ふっしぎー。
こいつを倒せば全て終わる。
なので全力で、一切の手加減抜きで、油断など微塵もなく──確実に殺す。
「“日煌天切刀”寄越せェ──ッ!!」
開戦一番、銃撃した。天輪にバレットが炸裂する中、女神が右の手の平を伸ばし、光弾を放ってくる。それを回避しながら一気にアルダノーヴァの背後に回り込み、男神に剣戟を叩き込む。
「──ヌッ!?」
「無駄だ……」
転がってるヨハネスから不穏な呟き! 同時に、男神へ食い込ませたハズの一刀が、ほとんど手応えなく弾かれる瞬間を見た。素早く退避し、距離をとる。
こいつ──やはりッ!!
「
「誰かさんの大活躍のお陰で、極東支部の周回率は世界一だ。ノヴァの育成、その『アルダノーヴァ』の研究と開発に費やせた
──まぁ、予想はしていた。極東支部で回収されたアラガミのコアの多くは、「エイジス建設のため」という名目で、裏では支部長の計画に使われている。アルダノーヴァが原作より強くなっているだろう、というのは、前から予想していたことだ。
だからプレイヤー時代再現も兼ねて、メタ特攻で三属性も攻撃属性のあるケーニヒスベルクを作ったのだが。
どうやら対策してきた甲斐はあったらしい。
「なるほどな……つまりコレは──極東支部の全体周回数と私の個人周回数を競う決戦でもあるってワケか……!!」
「言葉にされるとそういう事になるが、どうも釈然としない認識のされ方だな……」
それが現実だ。どうか粛々と受け止めてほしい。
アルダノーヴァが動く。女神が右手を伸ばしたままのその予兆から次の行動を予測するが──瞬間、女神の周囲には七つほどのオラクルの光が展開し、光線が放たれてきた。
知らない動きッ! だがイレギュラーへの対応は加賀美パイセンに習ったぜぇ!!
「日天比礼! 日天鋼! 日天刀髪! 日天神鎧! 日天神酒──ッ!!」
相手がどんな予想外の動きをしようと、どんな技を使ってこようとも。
──それを凌駕して押し潰してしまえばいいだけのこと。
光線の雨の合間を駆け抜ける。射出スピードは大して速くない。止まって見えるぜ、数だけの攻撃で圧倒されるほど、易しい死地を潜り抜けてはいない──!
だから全ての攻撃を回避し、側面から男神を攻撃しにいく。強度はさっきの接触で判っている。故に次に行うのは──とりあえず捕食に限る。
「
一撃。ブレードを男神に叩き込む。弾かれなかった感触は先ほどはまるで違った。ひとまず最低限のダメージは通る──つまり、殺せる。
「ハッハッハァ──! ここからはいつも通りってことだなぁ──!」
そこで男神と女神がそろって身体を大きく回してきたので、回転の際に生まれる隙間に入ることでそれをやり過ごし、再び男神の背後にまわって神機さんで切り刻む。
狙うべき部位は女神の天輪と男神だ。
女神の頭上にある輪っかはどんな攻撃でも通るし、男神を先に倒せば女神に剣が非常によく通りやすくなる。どれほど強化されていようが、ダメージが通る以上、プレイヤー時代とやることは何も変わらない……!
『──』
女神の両腕と髪が伸びる。両腕の先にはオラクルの光弾が接続されており、髪は刃そのものとなってこちらに襲い掛かる。それをぐーるぐる回りながら振り回してくるので、回避がまぁメンドい。
しかも同時に男神の方も別の行動をとり始める。胸の穴から光弾を、あの今は亡き帝王くんのような射出速度で連射してきた。
「所詮は等速ッ! 二倍速になって出直してこい!」
それらの攻撃全てを読み切って回避する。
女神の腕は単純に避けて、髪刀の方は男神の光弾のタイミングを計ってまとめて斬り払い、空中へ移動する捕食スタイルで二者を食いながらその上空まで跳び上がり、男神を狙ってブレードによる攻撃を集中する。
と、そこで足元からオラクルの気配がした。空中を二回蹴って射線から回避し、次の瞬間、光柱が発生するのが見えた。
アルダノーヴァがこちらを振り向き、女神が蜘蛛状に四肢を引き延ばしながら、こちらへと突進してくる。もはやスライドと言っていい速度だ。男神の方も身体を回転させてきて、もう殺意しか感じねぇ。
「はいよっと」
くるっとその場で、空中──地面に張り付いた女神と、浮遊する男神の隙間を通り抜けるように、横向きに身体をひねり、すれ違いざまに上スレスレを通っていった男神に回転剣撃を叩き込んでいく。
着地した瞬間に鉄床を蹴り飛ばし、突進直後の硬直、姿勢制御の動きに入っていたアルダノーヴァの背後からブレードを浴びせる。完全にこちらに振り向く瞬間に一度捕食してバーストを維持。銃形態にして横へ走りながらトリガーを引いて溜まっていたオラクルをバレットに変えて吐き出していく。
ガガガガガッ!! と良いダメージ音。ウ、だか、グッ、だかとアルダノーヴァからうめき声のようなものが聞こえ、着実なダメージ量に安堵する。
「な──馬鹿な、知っているというのか、アルダノーヴァの──私の作ったアラガミの行動を……!?」
「見れば! そんなものは分かるッ!!」
ヨハネスさんの疑問には、余計な追及を潰すためにムチャクチャな回答をしておく。
ここで他の奴なら、大体そこで思考がストップするものなのだが、
「いや……知っている。君は知っている……! その躊躇いの無さが証明だッ! どこでアルダノーヴァについて知った!?」
彼は追及を止めない。こんな時でも勉強熱心なことで。
その姿勢にはちょっとだけ感心しながら、フィールドを大きく移動したアルダノーヴァが放った置き球を切り飛ばす。すぐ傍で光柱がいくつも発生し、視界が遮られる。その中を、加賀美式ハンニバルとの戦闘で培った高速移動で駆け抜け、我ながら座標転移じみた動きで敵に肉薄する。
──ま、事ここに至ったのなら、もはや転生者だのプレイヤーだのという意識は関係がないか。
レッツ衝撃のカミングアウト!
「
叫びながら、やはり男神の巨腕を狙って、一瞬の間に連続斬撃を繰り出す。別にブラッドなアーツではない。純粋に技術だけで再現したものだ。むき出しになっているその白い筋繊維が、ごりごり削り取られているのが目視できる。
「──馬鹿な。いや、そんな……そんなことがあるのか!? だが、まさか加賀美リョウ……そうか、彼もまた君と同じッ……!」
ヨハネスさんから聞こえたそんな言葉に、戦闘の動きを一瞬も鈍らせないまま、目を見開く。
おやおやぁ? 頭良いからこっちの真実に気が付いちゃったかなー?
「支部長ってもしかして頭良かったんですかァ!?」
「これでも研究の第一人者だが!!」
叫び返してくるヨハネスに笑い声を漏らす。なんだよアンタ、全然元気じゃねーか。
アラガミにしておくには勿体ないぜ。
「──通るッ! 活性化したか!」
そこで男神に追撃を入れると鮮血が飛び散った。再びぐるんと二神まとめて回ってくるので、空中を三段ジャンプしてそれを回避する。
「これも神の意志だというのか……? 世界を変革する存在、俯瞰した視点を持つ者を遣わすことによって、別の可能性を導き出そうとしている……?」
「なんか頭良いような推測展開してるトコ悪いけどォ! こちとらそんな崇高な考えで動いちゃいないぜぇー!?」
「では何のために戦う! 君は私の計画の顛末さえも知っているのだろう……それを踏まえて、今、何を変えようと足掻いているのだッ!!」
そこで女神がやや高く浮かび上がり、天輪から強大なオラクルを圧縮した光線をフィールド全体に放ち始める。男神は女神を浮かばせる制御に入っているのか動きはない。
なので攻撃など無視して後ろに回り込み、隙だらけすぎる男神に、捕食ついでにガンガンダメージを与えていく。
「たった一人の少女の運命さ──そんでついでに世界も救うッ! 以上だ──!!」
『ウ──』
アルダノーヴァの動きが一瞬硬直する。だが男神の復帰が早い。拳をこちらに振り上げてくるので回避すれば、拳の放たれた位置の下から光柱が奔っていく。ひえー、おっかない。
すれ違うように男神の上を跳び上がり、一撃一閃。そこで遂に、男神に結合崩壊が発生する。
男神、終了。女神の方の属性耐性が下がる。ターゲット変更。次は女神だ!
「少女……? いったい何の話を……」
「本物の特異点さ。アンタは私に夢中で知らなかっただろうがなッ!」
「ッ!?」
ヨハネスさんの脳が壊れる気配がする! ハッハッハァ──ざまぁねぇ!
女神のいる位置に辿り着く。地上から一番近い脚部と髪を狙って連続剣撃を叩き込んでいく。再びその腕にオラクル球が接続され、振り回しの予兆が見える。それより早く、神機さんでオラクル球を両断し、女神の頭上へと逆さまに跳躍し、髪ごと首を狙って斬撃をぶち込んだ。
「だがそれを用いたとしてもアンタの野望は叶わねぇ! 終末捕食は発動する直前で月へと飛ばされ、この世界には十数年後もアラガミが溢れ続ける!!」
「────、──っ」
「──どころかフェンリルの権威も失墜する。ソーマくんも大変だぜ!」
「!? ソーマに何があったんだ!?」
即座に息子の安否を聞いてくる辺り、マジお前さぁ……、という心地になるのであえて回答を遅らせる。こっちは戦闘で忙しいんだよ!
「チ、」
男神が両腕を振り回してくるのを避ける。女神の守護神気取りか。邪魔くせぇ。
どうやらこの男神サンは結合崩壊させても止まってくれないようだ──ならば!!
「ちょーっと黙っててもらおうかァッ!?」
アルダノーヴァから一気に距離をとる。それと同時に向かったのは、「ノヴァ」の手前で止まっているクレーンだ。ヨハネスくんの元飛び込み台。そこへ急ぎ、台座を持っている腕部を、神機さんの捕食形態で食い千切る。
重量が一気に襲い掛かってくるが、バースト3の身体能力の前ではデメリットにもならない。
距離ヨシ、角度ヨシ、風向きヨシ──そこで射出するように、思いっきりクレーンをアルダノーヴァへと投擲した。それは女神のすぐ横を掠め、クレーンを食い千切った鋭い箇所が、男神の胴体の中央炉心を勢いよく貫いていく。
叩き込まれた質量に男神が吹き飛ばされ、女神から離れる。ソイッ、今のうち!
「蛮族の戦い方そのものだな……! 幻代アキ! 質問に答えろ、未来で何があった!?」
「計画を組んだ相手に裏切られるのさぁ! 世間からは大災害の首謀者として追われ続ける! ああ、それを思うと、こんなドデカい計画を一人で実行しようとしたアンタは、間違ってなかったのかもな!!」
女神の背後へ、例の高速機動で接近し、脚部へ斬撃を入れていく。そこで女神の動きが変わった。中空に浮いたまま足技を繰り出し、伸びた髪刀をも駆使して、徒手空拳してきやがる。
あらゆるゴッドイーターたちの戦闘技能まで織り込み済みか。戦う女神、悪くないセンスだぜヨハネスくん!
『────』
髪刀からオラクルの波が放たれてくる。それを切り捨て、振り抜かれてきた左脚のキックをこれ幸いとブレードで迎撃する。続けざまの右ストレート! 一気に体勢を低くし、浮いている足元の下を抜け、背後に回った瞬間に膝裏を切り刻んでやる。
と、おとなしかった天輪が動く気配がし、ステップで距離をとる。天輪からレーザーが連続で放たれ、鉄床を焦がしていく。自律機能も搭載してるんですかソレェ!?
「そん──な、そんな……! では私は何のために……!」
こっちのことなど知らずにヨハネスくんは勝手に絶望している。この状況で絶望できるのはある意味、才能かもしれない。
「だからこうしてずっと介入してきたんだよ! ヨハネス・フォン・シックザール! 一人の実験体をゴッドイーターにすると決めたアンタの判断は大正解だったってワケさぁ!」
神機さんを銃身に変える。光線とインファイト体勢になった女神の接近を避けながら、スタミナを犠牲にしてトリガーを引き続ける。バレットの直撃に、髪と天輪が一気に砕け散っていくのが見えた。ヒャッホゥ!
決戦も終わりが近い。
「──クラァァアッシュ!! そろそろ倒れてもらおうかなァ、アルダノーヴァさんよォ!!」
『────』
刀身形態に戻しながら捕食形態で滑走し、接触ついでに捕食して、結合崩壊した部位に容赦なく連続剣撃を食わらせる。
ガクッ、とそこで女神がその場に崩れ落ちた。ダウンだ。最高の攻撃チャンス! スタミナもバイタルも削る勢いで全力攻撃を仕掛ける。ドンドンその美しい造形が、おそらくはアイーシャ・ゴーシュに似た造形が、見る影もなく破壊されていく。
「おットォ!? 流石に復帰してきたか! ハハァ、伴侶の危機に駆けつけるとはドラマチックじゃねぇかぁ──!!」
クレーンを捕食し終えた男神が飛び込んでくる。その突進を回避して距離をとれば、再び男神が女神の背後につくのが見え、
──同時に女神が男神の片腕を掴み、ハンマーよろしくこっちに振り下ろしてきた。
「それは堕天さんの技だろが──ッ!?」
「えっ……そんな機能は搭載していないハズだが……」
「開発者ァア──ッ!!」
設計者が言っちゃいけないことゆった! じゃあなんだよコレ、向こうがこっちの戦闘を学習した結果だっていうのか!? やっぱりアラガミじゃねーか!! そうだよ!!
男神の拳が床に叩きつけられ、光柱が嵐のように発生していく。回避回避回避。空中へ跳び上がって捕食! そら、脚も壊れるんだよ! そうやって女神の脚部に刀身を叩きつければ、最後の結合崩壊が発生する。
だがまだアルダノーヴァは倒れない。今度は男神が女神の部分を剣のように薙ぎ払い、刀身で弾きながら、足元に次々と発生してくる光柱から逃れていく。
「君は──なにを、成すつもりなんだ……!?」
ヨハネスの声には半ギレしながら答える。
「自分がそうやって助かってる時点で気付けッ! お互いここまで来たんだ──一緒にハッピーエンドを見届けようぜ!?」
最初は助けるつもりなんて無かった。アルダノーヴァと融合し、命を使い果たすのは彼の選択だ。そこに部外者である私が介入する権利も資格もない。
だが
『──アットウテキナチカラ──』
アルダノーヴァが大きく後ろへと下がり、女神が空高く浮かび上がっていく。すげぇ!? 生でその台詞を聞けるとは思わなんだ!!
光線と光弾の雨が降り注ぐ。その合間を縫って前へと飛び出す。下から光の柱が飛び出してくる。それをかわして男神を蹴り飛ばし、更に空中ジャンプと最後のバーストの勢いで一気に女神の浮かぶ高所にまで辿り着く。
「リザレクションッ!!」
上から黄金刀身を振りかぶり、頭部を打ち砕きながら地上に叩きつける。
渾身の一撃。
そこでアルダノーヴァから赤色のオラクルが吹き出し、気配が一気に衰弱し──倒れ込む。
女神も男神も。両名、機能を停止した。
──蹂躙完了。決戦は終わった。
着地すると、いつものように捕食する。さて、戦果はいかが?
「…………鎧だけって……おまえ……」
決戦でも相変わらずのクズ運っぷりに、私はちょっとうな垂れた。
▼
続いて本命──コアの摘出に入る。
アルダノーヴァ、その女神の方の胸を貫くと、青いコアが露出する。
バクッと神機さんがそれをいつものように捕食すると──そのコアの色が、黄金から、真っ青な色に完全に塗り替わった。
「──協力、感謝するよヨハネス。これで特異点が完成した」
神機さんが大きく震え始める。ノヴァの近くにいるからだろう。
お望み通り──予定通り、私は余裕をもって歩いて──ではなく、素早くダッシュでノヴァの方へと向かう。
目的達成を前に、悠長になんかしてられないぜ! ゲームとか映画とかで演出上そういうのがあるけど、見てる側からしたら「はよやれや」ってシーン、割とない!?
「んじゃあ神機さん、後はヨロシクゥ!」
そして──ぶん投げる。
ノヴァの額へ向けて神機さんを──この十年近く、ずっと共に戦ってきた相棒を、ゴッドイーターとしての記録全てともいえるものを、一切のためらいなく投げ飛ばす。
それを、ノヴァから伸びた髪のような触手がキャッチする。
神機さんは青い光を輝かせたまま、額に空いた空洞へと吸収されていった。
セットヨシ! 勝利確定です。お疲れ様でしたァ!!
「特異点……あの神機が、という話だったが……それはどういうことだ……?」
膝をついていたヨハネスさんが右腕を押さえつつ立ち上がってくる。もうこちらに対する敵意も猜疑心もない。まぁ、至高の傑作が目の前で粉砕されたら、色々とやけっぱちになるのかもしれない。
それでも疑問を問うてくる辺り、やっぱ研究者気質なんだろうが。
「ああ、『レトロオラクル細胞』っつってな。私の神機さんは原種のオラクル細胞製なんだよ。最初は知らなかったけど、使ってる内に違和感があってな──『なんかコレ進化するっぽいぞ』って。だからルフス・カリギュラ、アマテラス、ヴィーナス、ゼウス、マガツキュウビ……海外に行ってる間も、アンタに黙って色んなアラガミを狩って、コアを食わせて、高密度な情報集積体──特異点に進化させたってわけさ」
マガツ戦は辛かった。そういえばアレを倒してからだったろうか、神機さんが再生機能とか自動体力回復とか覚えだしたの……元になったコアがキュウビのだから、かなりそこで進化していたのかもしれない。
「──……そうか。加賀美リョウの獲得したコアから生み出された神機だったな……運命は、私が動き出すよりも前から、定まっていたということか……」
「悲観的ダナー。ヨハネスくんは運命あるって信じる方なの?」
「人生を賭した計画を目の前で破壊した者がただの人間だった上に、どうやら死ねないらしい現実に直面すれば信じたくもなるさ」
「ご、ごめんね……?」
「謝意は不要だ。私の予想全てを凌駕したことを誇りたまえ。それで──この後、どういう終末捕食が起きるんだ?」
「ああ、それは──、ッ!?」
と、そんな良いタイミングで、エイジス島が揺れた。
ゴガッシャァァァン!! と、巨大なものが隕石のように──天井から落ちてきたのだ。
瓦礫と砂塵が場に散り、視界が晴れた先に見えたのは、
「……ウロヴォロスさんじゃあん」
ぐったりとエイジス中枢に不時着した巨体は、ピクリとも動かない。ズシャッ、とコアを引き抜く音が聞こえた。この手法を、私はよく知っている。
そしてその背中から、数人の人影──見知ったゴッドイーターたちが降りて来るのが見えた。その中のコバルトブルーの制服を着た茶髪の少年が、一目散にこちらに駆け寄りながら、叫ぶ。
「師匠!! 無限周回のために終末捕食を使うのはマズイですよ!!」
「流石に歴史リセットからの周回は想定してねぇよ!!!!」
幻代アキ(走者・解説・実況)
後はエンディング(終末捕食)を迎えたらタイマーストップです。お疲れ様でした。
ヨハネスしぶちょー(NPC)
チャートを奪われた敗北者。生存ルートに入ったからギャグ落ちした。
Deo Volente、GE戦闘曲の中で一番好き。あの神々しい響きがたまらない。
連載開始から一か月。途中、休み休みではありましたが、読者様がたの応援のおかげで、ここまでくることができました。本当にありがとうございます。
ラストまでどうか見届けてくださると嬉しいです!