転生神機使いは狩り続ける   作:時杜 境

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彼女と彼の災難 #4

 こんなMIAの仕方は私も予想外だったわ……

 

 ハロー、エブリィワン。私、幻代アキ──ただいま、()()されています。

 誰にって? 外の世界にはびこってる武装カルト教団にだよ!!

 

「動くな。殺されたくなければ、おとなしくしてもらおうか」

 

 ちっす強面のあんちゃん。そのバンダナ、髑髏が描いててロックだね。

 銃口さえ向けられてなければ、そんな軽口も叩けたのだが、流石に口を閉じておく。

 

 随分と長く眠っていた気がする。場所は──どこかの廃墟、廃倉庫のどこかのようだ。手足を縄で縛られ、転がされている。

 それにテロリスト以外の人の気配もある。目だけ向ければ、あらら、同じく拉致されてきたっぽい難民さんらしき人々が、怯えた様子で寄り集まっているではないですか!

 

 てか、なにがあったんだっけ……そう、緊急任務が入って、一人で出撃してアラガミを狩っていたら、どこからか撃たれたんだよな。えーと、左肩近くに一発、右の脇腹に一発。そんで後は麻酔銃か? 見かけたゴッドイーターをさらう計画でも立てていたんだろうか。

 

 終わってんなぁ、終末世界治安…………

 

 いや久々に味わったよ。しばらくアナグラで生活してたから忘れてた。人類の脅威はアラガミに留まっていなかった。

 

 人間の最大の敵は人間!! 人生の基礎だね。頼む、いい加減にしてくれ。

 

「助けを呼んでも無駄だぞ。昨日の内に腕輪のビーコンとやらもこちらで壊させてもらった」

 

 MIA案件やんけ──!! またツバキさんに怒られる!

 い、いや今回は被害者だからね? 罰は……軽いものだと、イイナァ……

 

 昨日ってことはもう一日経ってるんだろうか。つかビーコンって腕輪内蔵なんだけど。腕輪壊されたらアラガミ化一直線なのがゴッドイーターだけども……うん、別に身体に変な感覚はないし、そこはセーフっぽい? 腕輪の構造に詳しい教団員でもいたのか……スパイか?

 

 てか、まず把握したいのは相手の正体だ。テロリストっぽいから、どうせどっかのカルト教団だろうけど──

 

「我々は“五番目の月(テシュカトル)”! 光栄に思え、ゴッドイーター。我らが神の贄に選ばれたことを!」

 

 ……あー……

 外伝コミックのー……おまけ短編でぇー……ソーマくん一人に壊滅させられてた人たちかァー……

 

   ▼

 

 こんな末期世界でアラガミに信仰心を向けることができるそのタフさには感心するものがあるが、しかし尊敬はできない。てめーら正気か?

 

「さて……とりあえずカルト教団を壊滅させたのはいいが……」

 

「っが……ば、馬鹿な、我々がこんな小娘一人に劣るなどと──ッ!?」

 

 まだ喋る雑魚がいたので頭を踏みつけて気絶させておく。

 倉庫内、そして外を警戒していた人員全て、残らず打倒完了。こちとら年がら年中、アラガミ先輩相手に戦ってる狩人やぞ! 手負いとはいえ、ただの一般人に後れを取るとでも!? 縄なんてゴッドイーターの筋力で千切れるしな!

 

 身体の傷? そんなの回復錠食っとけば治る。痛みを無視して動けば制圧は容易だった。

 帰るまで「痛い」って言っちゃダメだぞ。痛くなるから。

 

 ひとまず目についた教団員は一か所で縛り上げ、見つけた麻酔銃を打ち込んで念入りに身動きを取れなくしておく。ゴッドイーターの私が丸一日がっつり眠るほどの効力だ、こいつらが次に起きた時はもう監獄の中だろう。

 

「えーと、神機さんは……あったあった」

 

 空間の隅に隠されることもなく立てかけられてるのを発見。ザルい。……なんか神機さん、コアがいつもより強めに光ってない? 気のせい? まぁいいか。とられていたらしい携行品もあったので、まとめて回収しておく。

 

 後はテスカトリポカを降臨させれば万事解決! ぐらいの単純思考だろうか。お前らどうやって結成したんだよカルト教団。発生経緯が謎なんだけど。

 

「あ、あの……! た、助けてくれたん……ですよね?」

 

 と、声がけしてきたのは、難民さん集団の一人。

 彼らの視線はこちらを英雄視するものばかりではない。フェンリル憎し! こいつ何? こわ……ほんとに人間? 信用していいのか? そんな目を感じるぜ。

 

 大方、極東支部に受け入れてもらえなかった人々の集まりだろう。GE世界の闇! そりゃ人類皆平和に、とか遠すぎる夢だろう。

 

「成り行きだよ。自己防衛の一環だ。助けてくれたって思うのは個人の自由。じゃ、私は近くにいるだろうアラガミを駆逐してくるんで、ほとぼり冷めたら移動しなー」

 

「ッ、待て! ゴッドイーターなんだろう!? 俺たちを助けてくれないのか!?」

 

「そうよ! 極東支部の人なんでしょ!? なんとか上にかけ合ってよ!」

 

 小首を傾げる。

 

「住むところ、ないんです?」

 

「あるわけないだろ! こんな、意味のわからない連中に連れてこられて……集落もアラガミに壊された……もう行く先なんてないんだよ!」

 

 一般民からの熱烈な絶望コール! 場がシリアスだぜ。

 普通の神機使いならここでお手上げだが……、ま、これも何かの縁か。導きくらいはしておこう。

 

「ふーん。なるほど、大体分かったよ。じゃあちょっと周辺の地理を見てくるから、良いお知らせを聞きたい人は待っててね」

 

 

 ──周辺把握、完了。どうやらここは贖罪の街からやや北西に逸れた座標のようだ。

 あちこちにまだ小型のアラガミがうろついているが、教団員がある程度は対処していたのだろう、倉庫から半径五十メートル範囲は安全そうだ。その向こうには、ざっと三十~五十体近くのアラガミ先輩たちがうろついているが。

 

 倉庫に戻ると、ひそひそと話していた難民たちがぱっと顔を上げた。

 人数は先ほど見た時と変わっていない。およそ三十六人。子供は少なく、壮年の大人が多い印象だ。

 

「この場所の位置は大体分かった。君ら、ここから百キロくらい徒歩の旅をする覚悟はある?」

 

「な、なんだ。どこへ連れていくつもりだ」

 

「連れて行かない。私は貴方たちにはついていかない。私がこれから言うことを信じ、そこへ行くかどうかは貴方たちで決めろ。新天地のために、最後のひと踏ん張りをする根性と気合と意地があるならな」

 

「新天地……?」

 

 神機さんのブレードの切っ先で、床に簡易的な地図を描く。

 

「ここが今いるポイント。ここから百キロほど西に行けば、独立拠点があるはずだ」

 

「……根拠は?」

 

「企業秘密。『何かある』だろうってことは確かだ」

 

 難民の方々が不安そうに顔を見合わせる。

 ……私だって未来を確約できるわけじゃない。徒歩百キロ先の女神の森(ネモス・ディアナ)。一週間以内には辿り着けるだろうが、その間に何人が食い殺されるか分からない。

 

「食料なんかは教団の持ってるものをパクればいいだろう。──ここからは情報だ、よく聞け。卵みたいに浮いてるアラガミは目が良くて、猿みたいなデカいのはとにかく耳が良い。立ってる蛹みたいなのには絶対に近づくな、狙撃もしてくる。他のアラガミからは全力で逃げるか隠れるかをおすすめする。デカいのは大体ヤバイ。私が持ってる閃光弾とトラップは全部ここに置いていく。黄色はホールド、紫は毒な。出来る支援はこれだけだ」

 

 こんなところか。これ以上、私が彼らに出来ることは何もない。

 せいぜいさっさと周辺のアラガミをできるだけ多く片して、悲劇の発生率を下げることくらいだ。

 

「健闘を祈る」

 

 末期世界の住人たちにそう一言告げて、私は倉庫から飛び出して行った。

 

   ▼

 

 ──が、流石に血を流し過ぎたらしい。

 

「なるほどな……一つ分かったぜ、『スタミナは血液からなる』ッ……! そういう仕組みだったんだな……!」

 

 いくら回復錠を叩き込んでも体調が回復しないハズである。バイタルマックスのままスタミナの上限だけが削られてる気分。人体、やはり血液がないと生きていけないらしい。脇腹の傷が想定より深かったか。

 

「ハアッ……はぁ……ハァ……」

 

 息が乱れている。視界が狭窄する。

 難民の進路方向を重点的にアラガミを殲滅したが、いやはや、まさか教団の信仰心というやつだろうか、私の目の前には五体ほどのテスカトリポカが群がっていた。

 

 挑発フェロモンまで駆使して、倉庫地点から北の方にまでアラガミを呼び寄せ、戦闘音を聞きつけた奴から片っ端に叩き潰していたのだが、最後の最後にテスカトリポカラッシュである。誰かケツァルコアトル呼んでこい。

 

 ────そういえばトウモロコシといい、ダスティミラーといい、この世界、割とアステカ要素入ってるよなぁ……

 

 マズイ、余計な思考が入り始めた。集中が切れ始めている証拠だ。

 

「「「「「ヴォォォ────!!」」」」」

 

「うるさいぃぃぃぃ!!」

 

 五体同時にその鳴き声を合唱すな! 黒板を爪でキィーッとしたぐらいの不愉快さだよ!!

 叩き込まれてくるミサイル群。もうずっと光ってばっかりの大地! 炸裂する硝煙! むせ返る弾薬の匂い! 大気を焦がす炎の熱量! 殺到してくる機械群! ……ここはルビコンだった?

 

「一体……!」

 

 前面装甲に斬撃を入れ、コアを摘出する。続いて飛び掛かってくる奴をよけて、矢継ぎ早のミサイルの雨の中を気合で駆け抜ける。こっちを()いてくるように突進してくる奴も避け──たところで、死角に見逃していた四体目のトマホークが視界に入り、咄嗟に装甲でガードする。

 

「づッ……!!」

 

 吹き飛ばされる。MIA中だから総計被弾はノーカン! だが運の悪いことに、朽ちかけの建物の壁に背を叩きつけられた。がはっ、と血反吐を吐き出し、重力に従って地面に倒れ込む。

 

 …………~~ッッ、ぎぎぎぎぃ、この覇王油どもめッ! なんでこういう時にフィーバーするんだい!? 普段から狩られまくってる恨みかなッ!? やめてくれよ! もっと他にタイミングあるだろがいッ!! これが確率の収束なんですの!?

 

 ──なんてふざけてる場合ではない。手に神機さんは……ヤバイ、取り落としている。這って取ろうとするが、あれ、なんか、身体動かないというか、これやばい……?

 

「……ぁー」

 

 終わりだな、とそこで冷静な思考が結論する。

 

 おとなしく助けを待てばよかった。なんで安全圏から飛び出した? 難民たちに詰められたくなかったからか? 早く帰りたかったからか?

 ……いや、単純なことだ。私の根っこは昔から──なにも、成長なんかできていない。

 

 

 自分はここに本来いないハズの存在なんだから、いつ死んだっていい。

 

 

 シナリオがある。規定された路線がある。人が一人、どれだけ暴れたところで結末は変わらない。

 ……そう思っている自分がいる。ハッピーエンドは目指したいけれども、自分なんかが辿り着けるなんて思えていない。

 

 精鋭集団である第一部隊の人員の入れ替わりは激しい。ソーマが来る前だって、幾人か知らない顔が入ったが、皆、戦場で散っていった。──きっと私も、いずれその一人になる。

 

 それだけの話だ。

 転生できたのは良いけれども……、まったく、生きていく覚悟なんて、全然できていなかったのかもしれない。

 

「────ッ!!」

 

 咆哮が響き渡る。

 戦車がくる。

 ()かれる。

 

 ──視界を覆い尽したライトの光を思い出す。

 ──青信号だったのに。

 ──そしてなす術もなく、鉄塊はこちらに突っ込んだ。

 

 ()()()()()()()()()

 

 

「────ぁあああアアアアッッ!!」

 

「──!?」

 

 

 瞬間、上から雄たけびが聞こえてきた。

 轟音と震動。舞い上がる砂塵。

 それの落下と同時、目の前の戦王が文字通り叩き潰された。

 

 ……この破壊力を知っている。こんなことができる神機使いは、一人しか心当たりがない。

 

「ソーマ……!?」

 

 視界が晴れた先に見えたのは、イーブルワンを肩に担ぐ少年兵の背中だった。

 

 ……お、お前ッ……お前……!? は、はぁあ────!?!? そんなカッコいい登場が許されるのか!? 主要人物補正ですか!? 強襲兵じゃん! 超カッケェじゃん!! 今のムービーもう一回再生できませんかッ!? なぁアーカイブさん! 頼むよ!!

 

「待ってろ……すぐに片付ける」

 

 いやカッコよすぎるて! ライン越えですよ!! お前……許されるのか!? そんなことが!

 

 なんて完全に呆気に取られていると、ソーマの姿が消える。

 こっちに向かってきたテスカトリポカをチャージクラッシュの一閃で薙ぎ払い、他の個体に叩きつけるのが見える。降ってくるミサイルを避けて一瞬で射手に到達すると、神機の一閃が結合崩壊を発生させる。

 そこへ突っ込んできた最後のもう一体をすれ違いざまに捕食し、バースト化した身体能力で重い一撃を背後から喰らわせた。

 

「……つ、つえー……」

 

 まるでプロモアニメ。それを直接目にしている気分だ。今まで一緒に戦闘するばかりで、最近はあんまり注視したことなかったが、あいつ結構私の戦闘スタイルを真似て学習しているな?

 

 とりあえず敵の攻撃はもう気にしなくてよさそうだ。歯を食いしばって、うつ伏せだった状態からどうにか起き上がり、後ろの壁に寄りかかる。うわー、出血やべー。一応、教団が雑に止血していた跡があるが、戦闘中に傷が開いていたようだ。気付かなかった。……これ、痛覚麻痺してる?

 

 持ってる最後の回復錠を飲み込む。少し怠さが取れた気がするが、血が止まらん。これって……死ぬやつ?

 

「──アキッ!」

 

 お、テスカトリポカ軍団を殲滅し終えたソーマくんが走ってくる。

 それに右手を上げようとして──上手く動かないことにビビる。なんか鉛のように重いんですが、先生コレはッ!?

 

「クソ……血が止まらねぇ!」

 

「いや、生きてる生きてる……大丈夫だって……」

 

 左脇に座ったソーマくんは、持ち込んでくれた包帯で止血を試みてくれているが、なんかあれ、ヤバそうだぞ。

 しかもちょっと眠くなってきた。この感覚は──覚えがある。前世で似たような感覚を味わった気がする……いつのことだったっけ?

 

 と、そこで左目の視界が消えた。おや? 目に血が入った? これもしかして頭からもどこか出血してる? もしかして私、自分が想定してる以上に重傷っぽい見た目かな? なんかほら、ソーマくんも心配そうな顔になってきてるしさ。

 

「アキ……おい、アキ!!」

 

「きこえてるって……げふっ」

 

 ごぽっと口から軽く吐血した。あー、これはもしかしてかなりマズそうだなぁ、と思い始める。

 ……痛みがないほどヤバイってなんかで聞いたな。じゃあもう身体が痛覚を遮断するレベルの深手ってこと? そんなぁー……

 

「ま、待て……ダメだ、それは駄目だ。アキ、目ぇ開けろ!」

 

 あまりにも必死な叫び声に、自分が目蓋を一瞬閉じてしまっていたらしい事に気付く。

 ……ここで寝るのは、流石に、バッドな選択肢な気がするぜ……

 

「えーと……そうだ、なにか喋ろう……意識があるってことは生きてるってことだ……」

 

「救命部隊早くしろ! 早く……!」

 

「よし……じゃあ死んだ時用に遺言でも考えて……」

 

「こんな時にまでふざけてんじゃねぇ! くたばるなんて許さねぇぞ!」

 

「……供え物は素材以外で……アニメデータやCDだとなお、良し……」

 

「アキ! 目ぇ閉じるな! 起きろッ!!」

 

 がくがくと揺さぶられる。ぐぁぁぁぁっ、脳がゆーれーるー。

 そこでどうやら、横から抱き締められているらしいことに気が付いた。カタカタとこっちの背を支えて持つ手が震えている気がする。

 

 ……確かに、ソーマの前で死ぬわけにはいかん。幼少の頃の同僚の死なんてトラウマ以外の何物でもない……が、眠い。…………そうだ、回復錠……

 

「か、回復錠くれ…………」

 

「ッ……」

 

 少し間があった後、口の中になにかを突っ込まれる。がりがりと噛み砕けば、よし、ちょっと、寿命が延びた気がする。

 

「すぐだ……すぐにヘリが来る……持ちこたえろ……!」

 

「ううー……ねむいー……」

 

「寝るな! 叩き起こすぞ!!」

 

 早く、早く楽になれという肉体の抵抗を眠気として感じる。

 ここで死ぬわけにはいかない──いかないのだが、そんな意志とは関係なく、やはり肉体がダメになれば人は死ぬ。よく知っていることだ。

 

「……大丈夫さ。わたしがくたばっても……ソーマには、仲間がいるから……」

 

 っていうかできるから! 全ての死亡フラグをクラッシュする脅威の新兵、ロシアのツンデレカワイイ美少女、全てが未知数の無二の親友・原作主人公! 君の未来は君が思っているよりも明るいのだ。あ、月からありがとね案件は私のハッピーエンド主義的に除外で。アレ切なすぎ──

 

「ふざっっけるな!!」

 

 キーン、と鼓膜にくる。超怒られた。超怒るじゃん? 命を大事にしない奴は許さんという形相だ。ご、ごめんて……

 

「お前はお前しかいないだろうがッ! 代わりなんているか! そんな思い込みしたまま勝ち逃げできると思ってんじゃねぇぞ……!」

 

「──、」

 

 固く目を閉じたソーマが俯く。まるで、祈っているように見えた。

 

「はは……君が祈るなよ」

 

「……祈ってなんかねえ。お前に心底呆れてるだけだ……」

 

 怒りの炎冷めやらず、といった声だ。なんか、本気でキレているらしい。

 ……そんな深刻にならないでって。

 

「ソーマ……頼みがある……」

 

「断る」

 

「帰ったらデータベースのバレット……『試作11』の名前を、『天上天下唯我貫通砲』に……」

 

「長ぇよ馬鹿!! ネーミングセンスどうなってやがる……!」

 

 失敬な。公式ボツ設定から名付けた由緒ある名前だぞ。

 ……公式。そうか、ここで死んだら、GE世界ともお別れか……

 

 次はどこか別の世界に転生するのだろうか?

 転生者に「次」なんてあるのか?

 

 どちらにせよ終われば、ここでの全てが無に帰す。

 シオ様との出会いも。第一部隊での日々も。──今まで周回してきた努力も全て?

 

「……ッッ!!」

 

「アキ?」

 

 動いた左手が、ガッとソーマの襟を掴んだ。

 ……やばい。やばいやばいヤバイヤバイヤバイ……ッ!

 

 それはちょっと、耐えられない。

 

 死んだらロード&セーブもなしで初めから? データリセットのやり直し? 一から再スタート、ゼロから頑張ろう? 周回を? 今の今まであれだけやってきた周回を、もう一度だとッッ……!?!?

 

「し、……死にたくない……」

 

 死んでは…………いけないッ! この魂を賭けてッッ!!

 なんて生きる気概が満ちてくると、ハ、と上から笑い声がした。

 

「……ったり前だ……馬鹿野郎……」

 

 そこで横抱きにされ、ソーマが立ち上がる。

 ヘリの羽音が近い。これはギリギリ助かりそうだ……と油断すると、また目蓋を閉じてしまう。

 

「……ぃ、おい、アキ!」

 

 ソーマの声が遠のき、また、近くなる。

 周囲の五感が曖昧だ。血が流れ続けている。これはアナグラに着くまで意識を保たないと、厳しいかもしれない。

 

 生きる意志はあろうと、肉体は死に近い。

 背後にまで迫っている暗闇の海に、この思考も手放しかけて、

 

「……っん?」

 

 ガリ、と口の中に回復錠と血の味がした。

 閉じかけていた意識が覚醒に向かう。右目を開ける。至近距離にいた青い瞳が離れていき、再び、両脚を持ち抱えられる感覚。

 

「……なんかした?」

 

「……医療行為だ」

 

 あ、そう。

 じゃあいっかぁ、とぼんやりした意識の中、頬から耳の辺りまで赤くなったような、彼の横顔を見たような気がした。

 

 




ソーマくんの心情
 責任とれ!!!!!!!!!!

神機さん
 影のMVP。光ってたのはビーコンの代わりに偏食場を放って位置を知らせていたから。
 主がアラガミに負けて死ぬのはいいけど、人間に殺されるのは許容範囲外。そんなつまらん末路があってたまるか。
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