転生神機使いは狩り続ける   作:時杜 境

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皆はおねショタって好き?


奇跡の日/西暦2072年

 今回のあらすじ。

 ソーマがぶっ倒れた。

 

「過労だってよー」

 

「……すまない」

 

 根を詰めすぎたせいらしい。

 勉強や研究のみならず、フィールドワークまで予定に組み込み始めた時から嫌な予感はしていた。一月前から何度も何度も止めたというのに、いやぁ。

 

「……なんで、何も喋らないんだ……笑顔のままで……」

 

「ソーマなんか明日まで知らなーい」

 

「え」

 

 静かにキレた私は医務室をそこで後にした。

 

   ▼

 

 だから言ったってのに、も────!!

 

 ソーマに対して心の底から怒りを覚えたのはこれが初めてかもしれない。どれだけ突き放されようが冷たくされようが全然平気だが、再三の忠告を無視して身体を酷使しているのを間近で見ることしかできなかったのは辛いものがある。

 

 もうちょっと休んでほしい。なんのために世界を救ったと思っているんだ。

 

 とまぁ、軽く喧嘩別れみたいになってしまったことにも鬱々としながら部屋に戻れば。

 

「──ムっ。何奴ッ」

 

 ベッドの中に気配! そわシオ様か!

 と、シーツをめくってみれば、そこには…………!?

 

「すんすん……あっ」

 

 ──褐色肌に白髪の少年がいた。

 いや、厳密には……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が──いた。

 

 …………。

 ……え、息子? 生んだ記憶なんてないけど。

 いや違う! このフードにヘッドフォンっぽい服装、まさか────!?

 

「……もしかして、ソーマのアラガミ、くん……?」

 

「……! 僕のことも知ってるの!? やっぱりアキってすごい!」

 

 無邪気スマイルを浮かべてこちらに抱き着いてくる見知らぬ少年──否、『アラガミの自我』くん。

 

 ……いやいやいや。一体全体、これはどういうことなんです……!?

 

 

 ソーマのアラガミの自我。この子が本来いつ登場するかというと、GE3の追加エピソードとなる。

 だが彼はレン様とは異なり、感応領域……ざっくり言えば、ソーマの精神世界でのみの出演だったはずだ。そんな彼が、どうして現実世界、私の視界にばっちりくっきり顕現しているというのかッ!?

 

「感応現象の一種だよ」

 

「困った時に便利だなぁ、それ……」

 

 ひとまずソファに座り、膝の上に乗せて事情聴取だった。

 感応現象ということは、この少年は幻覚……なのだろうが、くっ、可愛いなぁ……!

 

「アキのおかげで、今の地球全体がアラガミ……終末捕食の真っ最中だからね。しかも永久的な。僕が目を覚ましたきっかけはそれ。アキは終末捕食を引き起こした神機の適合者だから、僕が見えるんだろうね」

 

「なーるほどなー……」

 

 地球の感応現象と、私の周波数が合ってしまった結果、ということか。

 やっぱ高度な幻覚現象じゃねーか! かーわいい!

 

「でも、こうして僕が起きてて、しかも自由に動けるのは今だけだと思う。今のソーマ、本当に疲れちゃってるから。だからその間、僕といちゃいちゃしよ、アキ!」

 

「いちゃいちゃて……それ、第三者から見れば、私が完全に変質者なんですけど」

 

「? 傍目から見ればアキが一人で発情してるようにしか見えないから大丈夫だよ?」

 

「それは大丈夫じゃないなぁ!!」

 

 アウトアウトアウト!! 本作にえっちなやつは含まれません!!

 

「えー、なんで? いつもソーマばっかりアキを食べててずるいよ。僕だってアキのこと……大好きなんだよ?」

 

「……あ、アラガミの自我まで落としてたとは思わなかったなぁ……!」

 

「だって、アキは唯一の同胞だし。番になりたい、って思うのは自然なことじゃない? アキのアラガミは……あぁ、神機に食べられちゃったんだっけ。ま、仕方ないね。アキみたいに美味しい子、独占したいって思うのが僕たち(アラガミ)だもん。おっかない神機だねー、まったく」

 

 ……そ、そういう感じの事情があったんです? 私のアラガミ摘出事件?

 てっきり、個人的には私の転生者魂に発狂した「私アラガミ」が死を望んだとかいうのを想像していたのだけど。なんにせよ我がアラガミ、憐れなり。

 

「ね、アキ。ちゅー」

 

「むっ」

 

 唇を奪われる。油断した。

 これは幻覚これは幻覚これは幻覚……ッ! 実体のある幻覚ってなんだそれ!! 普通にお触りできる謎の人外少年といちゃいちゃ!? 犯罪の匂いしかねーよ!!

 

「えへー。なでてなでて、アキ。僕もソーマも、アキに触れられるの大好き!」

 

 そうギャン可愛い台詞を言いながら胸にすり寄ってくる自我くん。

 ……そうか。この子はソーマ派生っ子。彼の一部であり、一心同体の存在だ。

 ならばもしかしたら……彼の弱みや秘密やらを、ほぼ合法的に知ることができるのでは……!?

 

「ソーマも大概ヘンな奴だよ……アキのこと、閉じ込めておきたくて仕方ないのに、自由にさせちゃってさ……僕だったら、ずっと一緒にいたいから、いっそ食べちゃうのに」

 

 ……わー。

 それ、絶対に私が聞いちゃいけないやーつ。

 ま、別にヤンデレでも歓迎しますけどね、私。好きな相手に限るけど束縛は嫌いじゃないぜ?

 

「今のソーマね、ちょっと面白いぐらいに絶望してるよ。“アキが怒った”、って。どうやって機嫌を取ろうか必死に考えてる。……ねぇアキ、もしかして僕たちのこと、嫌いになった……?」

 

 不安そうに上目遣いしてくるショタっ子。ほとんど犯罪では?

 ぎゅーっと抱きしめても構わんな!?

 

「大好きー。可愛いー。早く健康になれー、って感じかなぁ」

 

「そっか、よかったぁ……ソーマにも伝えてやりたいけど、あっちが目覚めたら僕も消えちゃう気がするし……はぁ。なんでアキって一人しかいないんだろー……」

 

 私が二人もいたら苦労するのはおそらく君たちだと思います、まる。

 幻覚のアナザーアキ? バスターブレード持ってブラストでメテオ連打するだけの味方の脅威なんじゃないっすかね。突き詰めた果ての生体破壊兵器。おー、こわ。

 

 てか、「自我くん」って呼び方どうにかならないかな。ソーマ派生の子だし……「太陽(ソール)」とか?

 

「あー、自我くん? 呼びづらいから、『ソール』って呼んでいい?」

 

「……! 名前くれるの!?」

 

「ま、まぁ呼び分けは必要でしょうし……」

 

 仮称、ソール君の目が輝く。うっ、可愛い。デレ期のショタソーマ(幻覚)は凄くキく。

 

「やった……! やった! アキから僕にくれた、名前! ソール……太陽神の名前だね。ふふ、ソーマの知識で知ってる!」

 

「き、気に入ってくれたようで何よりだよ」

 

 純真な満面の笑みは破壊力がとんでもない。頬にキスまでしてくる。幻覚だからって自由っすね。

 私は手を出してない。出してないぞー。

 

「──ね、アキ。ちょっと真面目な話なんだけどさ」

 

「なんだい」

 

 キリッとした顔で自我くん、改めソール君は次の言葉を放った。

 

「えっちしよ」

 

しない(断固たる決意)

 

「なんでー!」

 

 ぐぐぐぐ、とソール君を抱きしめたまま、身動きが取れないように拘束する。

 

 最近の子はませてるなぁ! キメ顔でも言ってもダメだよ! 私が犯罪者になっちゃうよ! 薄い本時空じゃないんだここは! っつーか君、幻覚でしょうがぁ! 薄い本らしさに拍車がかかるよ!! 完全犯罪なんだよ! 私の大事な人間性にまつわる何かが失われてしまう気がするんだよ! ダメったらダメでーす!!

 

「こういう時はそうするんでしょ!? 恋人って! 好きっていうか、食べたいって感じがバーストしたら、そういうコトするのが恋人だって、リンドウさんがゆってた!」

 

 ──性教育の先生が悪すぎる……!

 いや、実にリンドウさんらしいアドバイスってーか、ソーマ、そんなことを訊いていたのかい!? 参考になってんのかソレ!?

 

「ソーマはよくて僕はダメなの!?」

 

「せっかく話の合間に隠している回に言及しない……! 駄目っていうかアウトなんだよ! 年齢指定警察が黙っちゃいねぇ……!」

 

「なんでー! ソーマがアキの恋人なら、僕だってアキの恋人なのにー!」

 

 派生存在じゃなかったら許されねぇ台詞だぜ……! っつか、派生存在が知らん内に恋人とヤってたらとんだNTRだよ! 少しは生まれた時から付き合ってきた相棒のことも考えてあげよう!? な!?

 

「ソール……ソーマの気持ちを考えてあげよう。ね? もう一人の自分が好き勝手やってたら、君もろとも自刃しかねないぞアイツ……!」

 

「う。それはやだ……ソーマがいなくなるのは、嫌だ……」

 

 そうだろうそうだろう。頼むから分かってくれ。

 私視点だから君のことが見えていても、傍から見たらとんだソロプレイなんだ。客観的なそういった事実をこの世に発生させたくないのだ、己のために……!

 

「~~ッ、じゃあアキ、もっとキスして! 甘やかして! 大好きって……言って!」

 

「はいはい、大好き大好き……」

 

 ……さて。

 とんでもないイレギュラー的イベントだったが、危機は回避できたようだ。

 後はゆっくりと、犯罪者にならない程度に、この奇跡の日を楽しみ──

 

「──あきー! ソーマたおれちゃった、ぞ──……?」

 

 瞬間、部屋の扉が開いた。

 シオ様だった。その金色の瞳は真っすぐに私に、というか私の状況へと向けられている。

 ソファに座って、いたいけな少年とべったり。事案です。

 

「ォ……シオ、様……いやあの、これは──」

 

 いや待て。この自我くんは幻覚体だからして他の人には視えないハズしかしシオ様はアラガミであるからしてレンのことも見えていたんだからつまり彼女の今の視界には──

 

「ど……」

 

 ど?

 

「どろぼうねこ──! しってる! アキがソーマとうわ……?」

 

 ? と首を傾げるシオ様。

 

「ソーマのアラガミとうわき? でもソーマのアラガミはソーマのだから……? ???」

 

 あ、混乱してしまった。ていうか見えてるんですね貴方。

 浮気かどうかについては……ウーン、ソーマの意志が絡んでないから、ギリ浮気……じゃないかなぁ……いやでも彼の一部ってのは否定できないしなぁ……

 

「……っ」

 

 あ、あの? ソールくん? なんでそっぽ向くんです?

 ……もしやシオ様に耐性がない? 同年代の子には緊張しちゃうとか、そういうやつ?

 

「……アキ、たすけて」

 

「シオもアキとぎゅー! ……ソーマのアラガミ、なんか……カワイイナ!」

 

「……!」

 

 赤面するショタ自我くん。

 私の横にくっついてきて、それをにっこり見つめるシオ様。

 ……至近距離で繰り広げられるロリショタの楽園。なるほど、ここが約束の地だったんだね?

 

「ぁ……う、も、もう帰る! ソーマ、もうすぐ起きるし……!」

 

「いやいや、ゆっくりしていきなさいソール君。そうだね、具体的にはシオ様と戯れる様子など見せてくれたら……」

 

「それはアキが見たいだけでしょ! ちょ、放してよぅ……」

 

「ソール、っていうのか? シオだぞ、よろしくね!」

 

「~~~~アキ!」

 

 ごくらくごくらく。

 素晴らしい共演、素晴らしい日だ。

 そんなわけで、今日はひとまず、この可愛らしい少年少女を愛でて過ごすとしよう──!

 

   ▼

 

 後日。

 

「……なぁアキ。寝ている間に……なにか、したか?」

 

「というと?」

 

「いや…………なんでもない……」

 

 無意識なのか、復帰した恋人様がしばらくソファでべったりだったのは、「彼」がただの幻覚ではない事の証左だろう。

 

“僕たちとずっと一緒にいてね、アキ!”

 

 別れ際にかけられた少年の願い。

 それを叶えるために、きっと私は今ここにいる。

 

「…………すまなかった」

 

「いーよ、今度から無理しないようにね」

 

「そういう意味……もあるが……そうじゃなく…………なにか、猛烈に謝らなければならない気がしてな……」

 

 ……ソール君のことは、しばらくシオ様との秘密にしておこうかな!

 

 

 

▼奇跡の日

Fin

 




アラガミの自我/ソールくん
 GE3追加エピソードで出てくるソーマのアラガミの自我。
 仮称ソール。地球の永久的な終末捕食の影響により、この度ソーマのダウンで顕現した。
 宿主の拗らせの影響もモロに食らっており、ショタのくせに発言がギリギリである。なおシオ様が近くにいると借りてきた猫のようになる。



 おねショタって……いいよな……
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