転生神機使いは狩り続ける   作:時杜 境

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03 謎の神機使い/2071年

 >>2071年

 

   ▼

 

 ふむ、と加賀美リョウ──にしか見えない青年が、顎に手をあてる。

 容姿は似ているが、声からしてタツミさんではない。これ大事な。

 

「ほう──見知らぬ神機使い。あり得ざるキグルミ。しかし未来を先取りしたそのケーニヒスベルク……なるほど、オリジナル設定要素ってやつか?」

 

「あ、私は──」

 

 ! 声出た!

 なんて思っている間もなく、

 

「──どんな素材を落とすのか気になるところだな。とりあえずいっぺん、死んでみ?」

 

 同胞はやはり同胞か。

 素材に狂ってるやつってのはどこかネジを飛ばしているモンなのか。

 

 なにはともあれ。

 その瞬間 加賀美リョウが 襲い掛かってきた !

 

 

「勝ったわ」

 

「負けただとッ……!」

 

 私の足元には加賀美リョウ(推定)が転がっていた。

 まぁ……どれだけ強かろうと、所詮は普通の人間。彼、ゴッドイーターとしての腕輪もない、()()()()()である。

 ……そんな奴がなんでヴァジュラを倒せてたんだ、って話だけど。

 

「ば、馬鹿な……前世でもこんな強ぇエース級、見たことねぇぜ……!?」

 

「いや私、P73偏食因子持ちなんで。だから天下無双できるってワケ。おわかり?」

 

「ああー……それは納得だわー……勝てるわけねぇわー……身体スペックからして大差があるなら、負けは必定かぁー……」

 

 推定・加賀美リョウはクレーターの真ん中に倒れ込んだような姿勢で、沈んだ声を上げている。

 無力化はこれで完了した。本題に移るとしよう。まずは話を、

 

「だがしかしッ! 我が最強道、一敗した程度で断たれるものではなしっ!」

 

 バッと、そこで勢いよくリョウが起き上がってくる。

 そこそこにダメージは入れたはずなのだが、もう動けるのか。どんな生命力してるんだよ。

 

「いつか再戦してやるからなキグルミっ子! 今日の俺の予定はエイジスRTA! オープニングと同時にラスボスをアッパーカットする! 転生者としてのログインボーナスとして、これだけは譲れねぇ……!!」

 

「何言ってんだアンタ??」

 

 あ。素でツッコんでしまった。てか待って、転生者!?

 なんて虚を突かれていると、すたたたーっとリョウの姿は、あっという間に高台を登り、教会に空いた穴の前まで移動する。

 

「そろそろ第一部隊が来る頃合いだぜ? 俺に付いてくるウルトラCか、原作合流王道ルートか選ぶんだな! なおどちらにせよ、チャートの安定性は保証しねぇ!」

 

 とか言って、彼の姿が穴の向こうに消えていく。

 その時、知っている気配を察知した。まずい、「今」が原作序盤の時点だというのなら──!

 

『──ヴァジュラの反応があったのはこの辺りのハズだが……』

 

『誰か戦っているのかしら……?』

 

 あ! リンドウさんとサクヤさんの声がする! 足音は三人分だからソーマくんもいるなコレ!?

 

 まずいまずいまずい、ここがどんな並行世界か知らないが、今の私はキグルミである。しかも、まだ討伐されてないだろう帝王素材を使った神機持ち! 怪しいことこの上ない!

 

 故に決断は一瞬だった。

 一行が教会に入ってくる前に、私はリョウ先輩の後を追いかけた!

 

   ▼

 

「──しまった……海を渡る手段を考えてなかった──泳ぐか。……おっ?」

 

 加賀美リョウの姿は、愚者の空母にあった。

 現れた此方の姿にやや驚いたような顔をし、続いて私が引きずってきたモノを見て瞬きする。

 

「……その手があったか!?」

 

 私が掴んでいたのは死にかけのシユウだった。あと、もう数撃で絶命する死に体である。理想を言うならグボロ君が良かったけど……ネ!

 

「俺のルートを選ぶとは……酔狂でそのキグルミを着ているワケじゃなさそうだな……!?」

 

「好きで着てるワケじゃないんですが……」

 

「喋るんだ……中の人はいたんだ……!」

 

「さっきも会話したでしょうが」

 

 くっ、強制的にツッコミ側に立たされている感触。まるでもう一人の自分に相対しているようだ……なんてやりにくい。

 

「で、もうラスダン行くんすか」

 

「応とも! だって先に入隊しちゃったら反逆罪とかで追放されるかもだし? だったら入隊前にぶっ飛ばしちまえばいいわけよ! どうよ、頭よすぎない?」

 

 どう見ても狂人の行動そのものですが!

 ……しかし……しかし、私も生まれから彼ぐらいにハイスペックだったら、同じようなことをやりそうなので、なんも言えない。

 

 シナリオ開幕初手ラスボス破壊。

 黒幕泣かせとかいう域を超えたテロリズムだ。

 

 だが本格的に彼についていく前に、一つだけ確認を。

 

「……リザレクション?」

 

「レイジバースト!」

 

 ブイ、とリョウがピースサインを作った。

 そのやり取りだけで、互いの正体は伝わった。

 

「マイネームイズ……えー、幻代アキ。そっちは?」

 

 流石に入籍後の姓は黙っておくことにする。

 

「リョウ・加賀美! この最高世界に()()()()()()を果たした豪運野郎さ!」

 

 あー……

 なんとなく、薄々そんな気がしていたけど、マジかこの人。

 

「前回はすげー昔に生まれちゃって、日本にいる奴じゃ物足りなかったから、大陸渡ってキュウビ倒しに行ったんだけどな。アレクッソ強かったわぁ、原作軸まで生き残れなかったのが唯一の心残りだな……ま、今回は西暦2071年まで生き延びれたから、ようやくだぜ! って感じだけど!」

 

 ゴクリと唾を飲み込む。

 そんなことがあるのか。まさかそんなことが起きるというのか。

 

 ……この人が……修羅…………

 零世代のピストル型神機でアラガミを千切っては投げ、やがてあの究極式ハンニバルと化し、私が三日かけて討伐することになった、伝説の人……!

 

「君もセカンドライフ? 同胞に会えたのは初めてだなぁ」

 

「なんかの手違いで来てるだけっすよ。あー、たぶん、アンタの前世世界」

 

「…………マジッ!?」

 

 マジマジ、と言いながらシユウを海に蹴り飛ばす。

 さてと。上陸まで時間はあるだろうし、その間に事情説明でもやっとくかー。

 

   ▼

 

 エイジス島の警備は厳重である。

 

 なにせ極東支部トップが進める一大プロジェクト、今は懐かしき「エイジス計画」の要所だ。

 私の元いたクリア世界線では、終末捕食を受けて姿形もすっからかんだが、しかし一連の出来事について報告書をまとめていた際、その地図データを見たことがあった。

 

 まず先ほど捕まえたシユウ師匠に海を無理矢理に泳がせ、島に上陸。

 その後は記憶を辿って、警備の目を盗み、私とリョウ先輩はフライングで決戦の地に突入した。

 

 発見! アルダノーヴァの保管コア! 飛び出すパイセン! 響き渡る警報音! 自動操縦で迎撃を始めるアルダノーヴァ! なんとかなれー! と飛び出して神機さんを振り回す私! 銃を乱射するパイセン! 壊れる女神の天輪! 脆すぎる男神! 暴れ出すビームの嵐! 光柱乱舞! 二人で力を合わせる! これで、決まりだぁ────!! アルダノーヴァ、沈黙!!

 

「────……なるほど。私の計画をなぜか知っている君たちは、先んじて手を打ちに来た、と……そういうことかね?」

 

 そんで捕まった。そりゃそう。

 私と加賀美先輩はエイジス中枢の鉄床の上で正座をし、後ろから警備兵に銃を突きつけられながら、目の前を横に行ったり来たりするヨハネス・黒幕・シックザールさんを眺めていた。

 

「……で。そちらのキグルミは、アーク計画を阻止し、挙句には終末捕食で救った世界から来た異邦者で? そっちの君はゴッドイーターでもないのに、手製の弾丸装備でアルダノーヴァを倒しにきた……だと?」

 

 そうこちらを一瞥したヨハネスさんは、いったん宙を見上げ、溜息をつき、額に手を当て、やがて顔を両手で覆い、その場にしゃがみ込んだ。

 

「…………アイーシャ、ソーマ、アイーシャ、ソーマ、アイーシャ、ソーマ……」

 

「妻と息子の名を唱え始めた……」

 

「支部長! 俺、ゴッドイーターになりたいっす!」

 

「…………私は愚者ではない。愚者ではないので、君たちの事情、言い分が()()()()()()()()()。信じがたいことだが、この目で見たもの、この耳で聞いたものを無かったことにする愚は犯さない。そう──つまりここで私に必要なのは暗躍力……! このイレギュラーにいかにして対応するかが肝なのだ……!!」

 

 お、おお。持ち直し始めた。脳を破壊されてほとんどギャグ堕ちしてしまっているが。

 立ち上がったヨハネスさんは、勢いよくこちらに振り返る。

 

「────良い機会だ。どうせなら君たちを利用させてもらおう。幻代アキ……といったね。君が所属するのは第七部隊だ。そこの謎多きエース……謎の凄腕神機使い。『Aki』──そうデータベース上には登録しておこう。そして加賀美リョウ──君のその力、アルダノーヴァを倒したその力を、私は認めよう」

 

「スカウト入隊! そういうことですね!!」

 

「嬉しそうっすね先輩」

 

「だってなりたかったもん! 『前回』はロクに神機も触れなかったしさー!」

 

 この人の場合はどうせ、神機を捨てて銃火器殺法でアラガミに襲い掛かりそうだけどな。

 

「よろしい、話は決まりだ。ストレンジャーたちよ、君たちを歓迎しよう。まずは……支部のために働き、アルダノーヴァの修繕費を稼いでもらうところからだ」

 

 まじサーセンっした。

 

 そんなわけで私は、この規格外すぎるパイセンと共に、別世界の極東支部に所属することとなったのだった。

 

   ▼

 

「今日から第一部隊に配属になりましたッ! 加賀美リョウ! 狩ってて楽しいアラガミはザイゴートで、将来の夢は『最強』です!! よろしくゥ!!」

 

 ──極東支部エントランスにて。

 上階からはそんな新兵っぽく挨拶しながら、熟練兵の気配をまったく隠せていない加賀美センパイの挨拶が聞こえてきていた。

 

 視線を向けると、そこには教官のツバキさんを始め、懐かしき格好の第一部隊メンバー──リンドウさん、サクヤさん、ソーマが立っている。コウタ君はまだ入隊していないようだ。

 

 っていうかフード被ってるソーマ、懐かしいとかいうレベルじゃない! 原作まんまや! めっちゃ原作に近い世界線かココ!? ヒョエーッ!!

 

「加賀美はこの支部初の新型ゴッドイーターだ。演習での戦績は抜群、というか神機使いになる前からアラガミを勝手に狩っていたらしい。そこを支部長が押さえ、スカウトしてきた。リンドウ、面倒を見てやれ」

 

「了解。とまぁ、そういうわけで新顔だ。お前ら、仲良くしろよー?」

 

「凄い経歴の子ね……ゴッドイーターになる前は、どうやってアラガミを倒してたの?」

 

「自作の偏食因子抗体を混ぜた弾薬で、ドガガガーッと! ザ・サヴァイヴァル! 最強の証明! それがこうしてお金になる職に就けるなんて、有難いことですよー」

 

「……そのイカれた新人のことは分かったが……ツバキ、あっちはなんだ」

 

 そう言って若ソーマ君がこっちを見てくる──エントランス下階にいるこの私──そう、キグルミ君を!!

 

 せっかくなので無言で元気に手を振っておく。

 

「……支部長曰く、第七部隊のメンバーだそうだ……私も詳細は聞かされていないが、どうも凄腕らしい」

 

「めちゃくちゃ目を引くよな……あんな格好でどうやって神機を使うんだ……」

 

「第七部隊って……本当にあったんですね?」

 

「胡散臭すぎるだろ。信用ならねぇな」

 

 悲しみの正論ッ! でもキグルミなので何も言えない!!

 この悲しみをどう表現するべきか──そうだ、ブレイクダンスしよう。

 

「踊り始めたぞ……」

 

「怖いわね……」

 

「なんなんだあの生き物は……」

 

「うわ、めっちゃ上手ぇ」

 

 ちなみにッ!

 第七部隊とは、ヨハネス支部長が直轄する、“特務”班のようなものだ。ゲーム原作の方では、同じく特務を遂行するリンドウさんが裏で所属していたのだろうと推測されていたが、果たして正式にそんな部隊があるのかは真偽不明な、都市伝説みたいな扱いの幽霊部隊である。

 

 キグルミという謎のキャラ。第七部隊の謎。

 謎に謎をかけ合わせる……やはり支部長、頭良かったのかもしれない。

 

 ふう、とそこでキメポーズを決めれば、周囲のゴッドイーターたちから拍手喝采が起こる。ありがとうッ!

 

「……では、ブリーフィングは以上とする。加賀美、戦闘経験はあるんだろうが、ここは組織だ。上官の命令には従えよ」

 

「サー、イエッサ!!」

 

 そういえば加賀美先輩、前世ではゲンさんと戦友だったんだから、軍属経験もあるのかな? ま、転生経験って名の人生経験豊富な人だから、協調性とかに関しちゃなーんの心配もいらないだろう。

 

 ただ、この原作寄り極東支部の常識が破壊されるだろうこと以外は!

 




加賀美リョウ
 本編ではちらっと出てきただけの狂人転生者。
 2071年の世界は彼が主人公の世界となる。正気か?

黒幕廃業のヨハネスさん(45)
 馬鹿二人のRTAに直撃した結果、脳を破壊された。
 だが持ち前のINTでチャートを立て直し。ここから逆転できる保険はあるのか。


 次回は2074年。
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