転生神機使いは狩り続ける   作:時杜 境

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05 影の実力者/2071年

 >>2071年+GE2

 

   ▼

 

『──防衛班、防衛班! 外部居住区に、アラガミ複数の侵入を確認! A地区Bポイント、D地区Aポイントです! 直ちに分隊を──』

 

 ──そんな通信で目を覚ますと、そこは土砂降りの雨の真っただ中だった。

 極東支部、外部居住区──D地区だ。いや、場所は分かるのだが、一体どういう経緯でここに来たのか思い出せない。あれー?

 

「……ハッ、またキグルミ……!」

 

 自分の両手は人のものではなかった。それで思い出した! 思い出したぞ! これ夢か! また夢か! なんだなんだこの雨は、まさかアニメ世界線だっていうのか! 地球君、原作ルートが危うくなったからって、切り替え早くない!?

 

『! このビーコン反応は……キグルミさんですか!? D地区に侵入したアラガミの対処、お願いします!』

 

 あ、はい。

 確かにちょっと遠くを見れば、ザイゴートの群れとかコンゴウが入ってきている。

 うーん、色々気になることはあるが……今は職務をまっとうするとしよう!

 

 ずばばばばーん。どかーん。

 入ってきたアラガミ群は、まるで歯ごたえがなかった──といっても、民間人からすりゃそんな差異は無いに等しい。狩人から見れば、狩りやすいことこの上ないけど。

 

「お、おお……! 援軍……か……!? いや、まったく見覚えのないアニマルだが、神機使いなのかい!?」

 

 あれー! エリック上田! ハジケてねぇ! なんか瀕死っぽいただのエリックだ! とりあえず回復錠を投げつけておく。座り込んでないでさっさと逃げなー?

 

「ぐふッ!? ま、待て、一人でこの数を相手は──!」

 

 うっさいうっさい。エリックうっさい。このキグルミに満ちるオーバーパワーを感じぬか!

 ソレ、神速式殺法! ザイゴートにはザイゴートをぶつけて連鎖爆撃! 余波でオウガテイルは死ぬぅ! 空中で回転斬りってサリエルちゃん撃墜ッ! そらそらっ、骨も噛み応えもないぞー?

 

「な……ッ!? 十数体を、一瞬で……!?」

 

 モブの思わぬ戦闘力にリアクションしてる暇あるなら帰って生きろ! 周回者は「まとめて殲滅戦術」が使えないと話にならないの! 連鎖消滅は基礎だよ基礎!

 

「ガアアアァァ!! ガッ!?」

 

 ハイ、コンゴウ君はバレットで処理ー。死体を喰ってオラクルポイントに変換!

 ゴミ掃除の~時間だよ~。

 

 

『……でぃ、D地区に侵入したアラガミ反応、全て消失……な、なんですか、この早さ……!?』

 

『……キグルミ、聞こえるか。そのままA地区のフォローに行け。急ぎでな』

 

 ツバキさんの司令に、心の中でアイアイサー、と応えて外部居住区の屋根をダッシュし始める。

 いやぁ、アラガミ群団、五分と保たなかったねぇ……ていうか加賀美先輩は? あー、そっか、第一部隊と出撃に行っちゃったからいないのね? やっぱアニメ世界線じゃないのかな?

 

 とりあえず脳内で「Deo Volente」を流しつつA地区へ!

 ヤッホー防衛班の皆さん! あとアラガミ。キグルミさんが来ましたよー! 素材置いてけや。

 

   ▼

 

 私の超音速アラガミ撃滅戦法によって、第一部隊が任務から帰ってくる頃には全て終わってしまった。日の出も見られずに散ったアラガミ達に、合掌。

 

「お……応援、サンキューな。助かったぜ……えーっと……キグルミ」

 

 喜びの反復横跳びをする。

 

「お、おう……俺は大森タツミ、防衛班の班長だ……えっと、なんか、凄かったな……?」

 

「本当にゴッドイーターか……? 神機使いの機動力してなかっただろ……」

 

 そんなぁカレルさん! 元の世界でもよく言われることを!

 キュートでアニマルで高速機動するキグルミ──うん、なんの怪異かな? キグルミ姿だから、余計に恐怖と混乱を仰ぐよね。常識に染まった極東支部の脳を破壊するの、たのしー!

 

 

『──報告! 観測レーダーが《赤乱雲》を確認しました! 総員、即時退避をお願いします!』

 

 

 通信機から、そんなヒバりんの声。

 ……ん? え? せきらんうん? 赤い雲? えっ?

 それは……GE2要素のハズでわ──!?!?

 

   ▼

 

 赤い雨。

 それは「赤乱雲」から降り注ぐ、死の雨とされている。

 この雨に降られた者は、高確率で致死率100%とかいう「黒蛛病(こくしゅびょう)」を発症し、確定で死ぬ。

 

 で、この黒蛛病とは、実は「特異点化」を進行させるもの──要は、()()()()()()()()()()()()()()だったりする。

 

 つまり、何が言いたいかっていうと。

 

 

 ──この世界線、シオ様が生まれてねぇぇ────!?!?

 

 

 ということになる。

 原作GEではシオ様が月へ飛んでしまいッ! 特異点を失った地球くんが、GE2時間軸──2074年になってから、「んじゃ無差別特異点作り、はーじめーるよー」をしたのが、赤い雨というワケだッ!

 

 最悪。地球くん、ほんといい加減にしてくれよ……シオ様も生み出せなかった地球くん……初手から赤い雨で特異点ガチャって正気かよ……

 

 しかも黒蛛病、接触感染するんだよね。どこまで最悪を極めるつもりなの?

 

 

「よっ、相棒! お疲れぇ!」

 

 ロビーのベンチに座っていると、気さくに話しかけてきたのはリョウ先輩。

 任務帰りだろうに溌剌としているなぁ。この世界への適応力が高すぎる。

 

「一人で外部居住区に侵入したアラガミ軍団を倒しちまったんだろ? いやー、それでこそ俺が認めたライバルだよ!」

 

「……」

 

「謙遜すんなって! ……え、ああ、素材がゴミ……? うん、ドンマイ!」

 

「お、おい……新人。そいつの言ってること、分かるのかよ……?」

 

 おそるおそる、といった様子で話しかけてきたのはモブゴッドイーター。

 キグルミのいる異様な一角に踏み出せるその勇気、賞賛しよう。

 

「心さえ通じれば、誰とだって分かり合えるものさ。通じ合っても殺し合うしかない時でもね」

 

 なんか物凄く実体験の詰まった台詞のように聞こえた。そういやこの人、GE世界の前は、死にゲー世界を転生梯子したとかって聞いたな。出会う登場人物全員とリアルに殺し合うとか、ハードワールドすぎィ!

 

「お、おう……? それでそいつ、なんて言ってんだ? データベースにある情報も、割と謎しかないんだが……」

 

「えーっとね」

 

 リョウ先輩がこちらを見てくる。

 じっと見つめ、念を送ってみる。

 

「……嫁さんに愛され過ぎて困ってる……みたいな?」

 

「ッッ!?!? そいつ、既婚者なのかッ!?」

 

 ざわざわっ、とエントランスがにわかに騒がしくなる。

 謎のキグルミ、既婚者説。ちょっと衝撃なのかもしれない。「もう一体キグルミがいるのかッ!?」などという叫び声がした。恐怖する空気感になってるの、ナンデ?

 

「……マジかよ……」

 

 あっ、通りすがりの十八歳フードソーマくんが信じがたい目をこちらに向けている! 目が合うと、げっ、という顔をして受付の方へ足早に向かっていった。面白過ぎない?

 

 

「──あっ! 貴方が加賀美リョウさん……ですか?」

 

 

 その時。可憐な声色と共に私たちの前に現れたのは、一人の美少女だった。

 二十歳前後……にしては幼さを残す顔立ちの女性。ロングの金髪に、青い瞳。白衣を着ている辺り、研究者のようだった。

 

「これより訓練場で《ブラッドアーツ》実証実験の責任者を務めさせていただきます、私の名は──」

 

 私は、何も言えなかった。

 いや元よりお喋り厳禁なキグルミ状態なのだが。

 それを踏まえてもなお、目の前の登場人物に絶句せざるを得なかった。

 

「──()()()()()()()()()()と申します。どうかよろしくお願い致しますね!」

 

 少女らしい笑顔を向けてくる、彼女は。

 

 ──車椅子に、座っていなかった……!

 

   ▼

 

 ラケル・クラウディウスが立って歩いている……

 

 薄幸な美少女が車椅子に座り、発される柔らかボイスに滲む母性はプレイヤーの性癖結合崩壊モノという話は有名だ。そんな彼女がこうやって溌剌とした普通の少女として在る光景は中々、衝撃的なものがある。

 

 おそらく彼女は……事故に遭わず、P73偏食因子を投与されなかった、「本来のラケル・クラウディウス」なのかもしれない。そうでないとここまでのキャラ変には説明がつかない。

 

 ラケル・クラウディウスのIF。

 この世界線、一体どこまで闇鍋を煮込むつもりなんだろーか?

 

 

 で、話を戻すと。

 どうやらここでも彼女は、P66偏食因子の研究をしているらしい。

 

 P66偏食因子は、主にブラッド隊が投与している偏食因子だ。

 だがこの2071年の世界のラケル博士は、これを機械に練り込み、オラクル装置として用いることによって、《血の力》を観測・活用しているとのことだった。

 

 ……なんと安全・倫理的な使い方だ。もしかしてあのラケルさん、良心が搭載されているのか!

 

『ではまずキグルミ……さん? まずは喚起率を……ふぁっ!? 爆速で喚起率が上昇してる!? ちょ、ちょっと放ってみてください! 早く!』

 

「……!」

 

 ソイッ! アークキャリバー! 発生した赤い斬撃がダミーアラガミを引き裂く!

 これで実装完了。異例の習得速度でしたねぇ……

 

『す、すごい……貴方は一体……』

 

「おおー! 必殺技……いや魔術的な……?」

 

 先輩! 前世仕舞って!

 ともあれ、習得者になった私はそこで訓練場の高台に登り、リョウ先輩の様子を眺めることにする。

 

『で、ではまず、ダミーアラガミに攻撃を入れてみてください。喚起率が最高値に達した瞬間、こちらで合図を出しますので……!』

 

「りょうかーい! そーれっ!」

 

 飛び出した先輩が跳躍し──一瞬その場で滞空したかと思うと、凄まじい連撃の剣技を展開し始めた!

 ああー! あーっ! 先輩! それまさか水鳥乱舞ッ!? 腐敗の女神ーッ!?

 

「腐れェ──!」

 

 ギリギリアウトォ──! でもすっげぇ攻撃入ってるぅうう! 戦技使えんのかよアンタァ! 別ゲーの技持ち込みで無双するライフチャートなんです!? 真・転生者ってマジ無法だなほんと!!

 

『か、喚起率、80……90……95、100! 今です!!』

 

「ウオリャ──ッ!」

 

 そして放たれたのは黄金の斬撃だった。ダミーアラガミが消し飛ぶ。

 なにあれ。エクスカリバーじゃあん!! それとも前世の敵から学んだ奴ですかッ!? 狭間の地、先輩のスキル構成に侵蝕しすぎだろッ……!!

 

『す、凄い威力……! あ、おめでとうございます……! これでブラッドアーツ、習得完了です!』

 

「うおー! アリガトー! これで俺はまた一歩、最強に近づいたぜ……!」

 

 ……もう充分に最強だと思うんですけど。

 アンタ、これ以上の上を目指してどうなるつもりなんだよ……ッ!?




2071年のラケル・クラウディウス(22)
 突き落とされなかった世界線のクリーン状態。車椅子じゃない。2071年代世界のヒロイン疑惑。
 年齢は本作の捏造設定。
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