転生神機使いは狩り続ける   作:時杜 境

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05 ガール・ミーツ・神機

 西暦2066年、春──

 その日は、激戦だった。

 

「っうおおおおおおぉぉ──!!」

 

 強いアラガミッ! 具体的にはスサノオ先輩! 贖罪の町に現れた神機使い殺しで有名な第一種接触禁忌種だッ! 桃色の部位が眩しいぜ! イエー!!

 

 流石に相手が相手なので今日はリンドウさんとツバキさんとソーマとのガチパ編成だ! 単騎周回中毒のワイも空気を読んでチームワーク優先で戦うぜ! 捕食捕食バースト! 敵から謎の光弾! あぁーっとここでリンドウさんが吹っ飛んだぁ!

 

「リンドウ!」

 

「ソーマ、フォローに入れ!」

 

 ツバキさんの鋭い指示が飛んでくる。

 ちらっと私も隙を見て吹っ飛んだリンドウさんの方角を見る。おや!? 神機も吹っ飛んでませんか、あの方!?

 

 スサノオ、というアラガミの特異性はその偏食傾向にある。

 なんでも、「神機が好物」。ゴッドイーターキラーの異名の元だ。

 以上を踏まえてぇ──フリーになったリンドウさんの神機を──真っっっ先に「おやつ!」といの一番に飛び掛かっていくのは──この中の誰でしょーか。

 

 答えは現実の中で! スサノオ君である!

 

「ッ!? ヤロ、俺の神機を──!?」

 

 私、ツバキさん、ソーマの息の合った追撃を回避に全振りし、ピンクの大蠍さんがチェンソー神機へ一直線に走り出す。

 ぎゃー! 原作崩壊危機ギャー!

 焦るのも束の間、逃亡際、大きく尾が振られ、ツバキさんとソーマは思うように近づけない。

 

 だが私はチガウぜ!(飛行捕食フォーム)

 

 後ろからガブリと神機さんが尾を一噛み。キシャァァァ、と飛び上がるスサノオ君!

 着地した私はその足元を抜けて、地面に転がっていたロングブレード・ブラッドサージを────を────私は────

 

「!? あっ、バカやめろ!!」

 

 引っ掴んで投げるしかねぇ! ので投げる!!

 

「痛っっづぁっああああ────!!」

 

 豆知識! 知ってるかい皆、ゴッドイーターは他のゴッドイーターの神機に触るのは厳禁なんだぜ! 適合してる偏食因子が違うから、最悪その神機にガブリ! なんだぜ!

 

 ま、正確には「触るだけ」ならセーフで、アーティフィシャルCNS──神機のコアと、腕輪に「接続」するとヤベーって話な!

 

 でもさぁ! このブラッドサージさん、フツーにクッッソ重いからさあ!!

 一瞬だけ接続して激痛がああぁぁぁ────投げるぜぇ────!!

 

「アキ!!」

 

「キシャアアアア!!」

 

「うるせぇ──! 痛いのはこっちじゃボケ──!!」

 

 切り上げ一閃! スサノオ君の神機が結合崩壊! ざまぁねぇ!!

 

 スサノオの後ろから追いついてきたソーマ、神機をキャッチしたリンドウさんが刃を叩きつける。

 敵が怯んだ隙を逃さず、こちらも再び神機さんを構えて飛び掛かった。

 

   ▼

 

「おおぉ……異常なしだ。生命の神秘だね……」

 

「よかったー」

 

「はははは、ああそうだな良かったぜ──アキ、説教」

 

「ウィッス」

 

 久々にガチめにリンドウさんに怒られた。そりゃそう。

 普段は飄々とした態度の人こそ真面目に怒るとスゲー怖いよな。しかし憐れかなリンドウさん、貴方このままいくと数年後にまた同じような奴が現れるんですよ。お楽しみにね!

 

「…………まぁ、色々言ったが神機を拾いに行ってくれたのは助かった。そこは感謝する」

 

「リンドウ、甘やかすな」

 

「同意見だな」

 

 結局、説教はそんな感じで終わった。良い職場だよ本当に。

 

「いいか、もう絶対に同じマネはするなよ。他人の神機に触れると、何があるか分からないんだ」

 

「イエッサー」

 

 と、しっかりソーマにも呆れた目を向けられ、ツバキさんからもお灸をすえられ。

 一段落したところで全員ラボから解散。私は飲み物を買いに自販機へと向かった。

 初恋ジュースはまだない。まだ、ない。この前ラボで設計書らしきものを見かけたけど、実現はやっぱり遠そうだ。頑張ってくれサカキ博士。

 

 ふう、と手近な椅子に腰かけて。

 

「凄い事をしますねー、貴方は」

 

 ──いきなり左隣に現れた、黒髪の美少年という怪奇に遭遇して缶を落とさなかったことを、誰か褒めてほしい。

 

 

「あ、どうも初めまして。レン、っていいます。いつもリンドウがお世話になってます」

 

「は、ハジメマシテェ──……」

 

 そうだった。あの時、あの瞬間は原作崩壊危機しか頭になかったけど、リンドウさんの神機に触れる──接続するってことは()()()()()だ。

 

 シナリオキーキャラクターの人外が一人ッ! レン様くんの登場だ──!!

 

 ゲーム的にはブラッドサージに触れた主人公だけが見る幻覚存在。その正体は謎に包まれており……謎に……まぁ……うん……たぶん神機の精霊的ななにか……だ(暫定)。

 

「今日から医療班配属の新人神機使い……って自己紹介しようかと思いましたけど、たぶん貴方、もう僕の正体に勘付いてますよね?」

 

「……か、勘の良いヒトは嫌いじゃないっす……」

 

 それは良かった、とにっこりする少年。

 これ、今は周囲に人がないからいいけど、傍目から見たらただの私の独り言状態なんだよな……?

 

「さっきはありがとうございました。あのままだったら、スサノオにぱっくりいかれちゃってたかもしれませんし」

 

「お、オー」

 

 ──訂正しよう。このレン様こそは、リンドウさんの神機の制御コアに構築された疑似人格!

 具体的には……不明!! 不明ったら不明! 謎である! オラクル細胞くん偶にそういうトコあるよね!

 

「だけど他人の神機に触れるのは本当に危険な事なんです。まぁ、貴方は色々()()()()()()らしいから、ある程度、耐性はあったのでしょうが……」

 

「は、はぁ。あー、ところでレン……くん? 君、リンドウさんとそれなり付き合いある……よね?」

 

「ええ、まだ五年ちょっとですけどね。どうかしましたか?」

 

「いやー……その、この前、ていうか去年か。リンドウさんたち、ロシアに行ってたじゃん? そこでさ……」

 

 私が知りたいのは当時のロシア──旧連合軍によるアラガミ掃討作戦の様子──ではなく。

 

「なんか……ええーと、特別強いアラガミとか、いた?」

 

 流石に黒いアラガミ、と決定的な単語は言えず。

 ぼやかしつつ、アリサのこと──一つの悲劇に繋がる断片を探った。

 

「ああ、いましたよ。作戦の後、ロシアの町に寄った時なんですけど、黒いヴァジュラみたいなアラガミで……あの時は冷や冷やしましたね。子供を探しに行った両親がいたんですけど……、」

 

「……」

 

「──頑張ってアラガミを撃退した後、ひょっこり出てきたんです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ん?」

 

 おやぁ?

 ちょっと待てよレンさん、そいつはおかしいぜ!

 

 その「子供を探しに行った両親」ってのはアリサの両親に違いないだろう。で? ひょっこり出てきた? 避難していた? それはなんですか、原作改変ってことですか!? 転生者の私を差し置いてッ!?

 

「なんでもその子、その両親の子供との幼馴染だったらしいんです。あ、ちなみに探されていた子供の方はクローゼットから号泣してるところを発見されました。あのまま両親が死んでいたらと思うと、ゾっとしますよね。──と、すみません。貴方が知りたいのは、黒いアラガミの方ですよね……」

 

 ピシッ、と私は片手でレンを制した。

 

「いや、いいんだ。続けてほしい。ところで両親を助けたっていうMVPの子供って、どんな子だった?」

 

「え? えーと……茶髪の男の子でしたよ。名前は──神薙(かんなぎ)ユウ、だったかな」

 

 ──ッご。

 

「……そうきた、かァ~…………」

 

「??」

 

 思わず頭を抱える。まさかの可能性が浮かんでしまい、頭痛がしてくる。

 

 ──ソレ原作主人公やないけ────!!

 

 神薙ユウ。神を薙ぐはアナタ!

 ゲームのプレイヤーの分身にして主人公ッッ! あーたロシアで何をしとんのじゃ──い!!

 

 まさか転生者とか?

 憑依系?

 オリ主第二弾?

 ワイは踏み台だった……?

 

 様々な可能性が浮かぶがどれも要領を得ない。

 ていうか、アリサの幼馴染って……こんなんもうその後が想像できるじゃん、ロリっ子アリサちゃん、「ユウがゴッドイーターになるなら私もなる!」とか言い出すやつじゃん! たぶん!!

 

「あの黒いアラガミ……きっと並の個体ではありません。貴方も、遭遇した時は気を付けてくださいね」

 

「ん? アア、ウン、ありがとう。気を付けるよ」

 

 気を付けないとな……神薙ユウたちが倒す前に倒さないように…………

 

 ディアウス・ピター……確かにそいつはいずれ狩らねばならないアラガミだ。素材的に。

 なにせ私の目指す最終武装のロングブレードは奴から取れる素材が必須となる。五年後の2071年にならないと極東に出現しないとか先が長いぜ。

 

 でもアリサの過去が変わってるってことは、コレ、結構シナリオに響いてくるよな。支部長どうするんだろ。大車先生とかいう医者もどうなるんだ? さっぱり分からない。

 

 ま、原作主人公の存在が分かっただけでも大収穫だ。

 私は転生者らしく先輩ヅラして、本編中はなんか……こう……いい感じのエールを送る立場になれれば御の字だろう! なんか強いらしいけど謎の人物、みたいな! 今から本編が楽しみだ!

 

 ────そう思っていた時期が私にもありました。あったんです。

 

 

「幻代アキ強襲兵曹長。その卓越した腕を見込んで、しばらく欧州に飛んでほしい」

 

 

 ある日。呼び出された支部長室で、ヨハネスさんからそんなことを告げられるまでは。

 




レン
 フライング顕現。リンドウの戦績データ検定第一級。
 初恋ジュースの味をまだ知らない。

神薙ユウ
 なんかロシアにいるらしい原作主人公。こいつが極東にくると阿鼻叫喚が始まる。


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