西暦2066年、春──
その日は、激戦だった。
「っうおおおおおおぉぉ──!!」
強いアラガミッ! 具体的にはスサノオ先輩! 贖罪の町に現れた神機使い殺しで有名な第一種接触禁忌種だッ! 桃色の部位が眩しいぜ! イエー!!
流石に相手が相手なので今日はリンドウさんとツバキさんとソーマとのガチパ編成だ! 単騎周回中毒のワイも空気を読んでチームワーク優先で戦うぜ! 捕食捕食バースト! 敵から謎の光弾! あぁーっとここでリンドウさんが吹っ飛んだぁ!
「リンドウ!」
「ソーマ、フォローに入れ!」
ツバキさんの鋭い指示が飛んでくる。
ちらっと私も隙を見て吹っ飛んだリンドウさんの方角を見る。おや!? 神機も吹っ飛んでませんか、あの方!?
スサノオ、というアラガミの特異性はその偏食傾向にある。
なんでも、「神機が好物」。ゴッドイーターキラーの異名の元だ。
以上を踏まえてぇ──フリーになったリンドウさんの神機を──真っっっ先に「おやつ!」といの一番に飛び掛かっていくのは──この中の誰でしょーか。
答えは現実の中で! スサノオ君である!
「ッ!? ヤロ、俺の神機を──!?」
私、ツバキさん、ソーマの息の合った追撃を回避に全振りし、ピンクの大蠍さんがチェンソー神機へ一直線に走り出す。
ぎゃー! 原作崩壊危機ギャー!
焦るのも束の間、逃亡際、大きく尾が振られ、ツバキさんとソーマは思うように近づけない。
だが私はチガウぜ!(飛行捕食フォーム)
後ろからガブリと神機さんが尾を一噛み。キシャァァァ、と飛び上がるスサノオ君!
着地した私はその足元を抜けて、地面に転がっていたロングブレード・ブラッドサージを────を────私は────
「!? あっ、バカやめろ!!」
引っ掴んで投げるしかねぇ! ので投げる!!
「痛っっづぁっああああ────!!」
豆知識! 知ってるかい皆、ゴッドイーターは他のゴッドイーターの神機に触るのは厳禁なんだぜ! 適合してる偏食因子が違うから、最悪その神機にガブリ! なんだぜ!
ま、正確には「触るだけ」ならセーフで、アーティフィシャルCNS──神機のコアと、腕輪に「接続」するとヤベーって話な!
でもさぁ! このブラッドサージさん、フツーにクッッソ重いからさあ!!
一瞬だけ接続して激痛がああぁぁぁ────投げるぜぇ────!!
「アキ!!」
「キシャアアアア!!」
「うるせぇ──! 痛いのはこっちじゃボケ──!!」
切り上げ一閃! スサノオ君の神機が結合崩壊! ざまぁねぇ!!
スサノオの後ろから追いついてきたソーマ、神機をキャッチしたリンドウさんが刃を叩きつける。
敵が怯んだ隙を逃さず、こちらも再び神機さんを構えて飛び掛かった。
▼
「おおぉ……異常なしだ。生命の神秘だね……」
「よかったー」
「はははは、ああそうだな良かったぜ──アキ、説教」
「ウィッス」
久々にガチめにリンドウさんに怒られた。そりゃそう。
普段は飄々とした態度の人こそ真面目に怒るとスゲー怖いよな。しかし憐れかなリンドウさん、貴方このままいくと数年後にまた同じような奴が現れるんですよ。お楽しみにね!
「…………まぁ、色々言ったが神機を拾いに行ってくれたのは助かった。そこは感謝する」
「リンドウ、甘やかすな」
「同意見だな」
結局、説教はそんな感じで終わった。良い職場だよ本当に。
「いいか、もう絶対に同じマネはするなよ。他人の神機に触れると、何があるか分からないんだ」
「イエッサー」
と、しっかりソーマにも呆れた目を向けられ、ツバキさんからもお灸をすえられ。
一段落したところで全員ラボから解散。私は飲み物を買いに自販機へと向かった。
初恋ジュースはまだない。まだ、ない。この前ラボで設計書らしきものを見かけたけど、実現はやっぱり遠そうだ。頑張ってくれサカキ博士。
ふう、と手近な椅子に腰かけて。
「凄い事をしますねー、貴方は」
──いきなり左隣に現れた、黒髪の美少年という怪奇に遭遇して缶を落とさなかったことを、誰か褒めてほしい。
「あ、どうも初めまして。レン、っていいます。いつもリンドウがお世話になってます」
「は、ハジメマシテェ──……」
そうだった。あの時、あの瞬間は原作崩壊危機しか頭になかったけど、リンドウさんの神機に触れる──接続するってことは
シナリオキーキャラクターの人外が一人ッ! レン様くんの登場だ──!!
ゲーム的にはブラッドサージに触れた主人公だけが見る幻覚存在。その正体は謎に包まれており……謎に……まぁ……うん……たぶん神機の精霊的ななにか……だ(暫定)。
「今日から医療班配属の新人神機使い……って自己紹介しようかと思いましたけど、たぶん貴方、もう僕の正体に勘付いてますよね?」
「……か、勘の良いヒトは嫌いじゃないっす……」
それは良かった、とにっこりする少年。
これ、今は周囲に人がないからいいけど、傍目から見たらただの私の独り言状態なんだよな……?
「さっきはありがとうございました。あのままだったら、スサノオにぱっくりいかれちゃってたかもしれませんし」
「お、オー」
──訂正しよう。このレン様こそは、リンドウさんの神機の制御コアに構築された疑似人格!
具体的には……不明!! 不明ったら不明! 謎である! オラクル細胞くん偶にそういうトコあるよね!
「だけど他人の神機に触れるのは本当に危険な事なんです。まぁ、貴方は色々
「は、はぁ。あー、ところでレン……くん? 君、リンドウさんとそれなり付き合いある……よね?」
「ええ、まだ五年ちょっとですけどね。どうかしましたか?」
「いやー……その、この前、ていうか去年か。リンドウさんたち、ロシアに行ってたじゃん? そこでさ……」
私が知りたいのは当時のロシア──旧連合軍によるアラガミ掃討作戦の様子──ではなく。
「なんか……ええーと、特別強いアラガミとか、いた?」
流石に黒いアラガミ、と決定的な単語は言えず。
ぼやかしつつ、アリサのこと──一つの悲劇に繋がる断片を探った。
「ああ、いましたよ。作戦の後、ロシアの町に寄った時なんですけど、黒いヴァジュラみたいなアラガミで……あの時は冷や冷やしましたね。子供を探しに行った両親がいたんですけど……、」
「……」
「──頑張ってアラガミを撃退した後、ひょっこり出てきたんです。
「……ん?」
おやぁ?
ちょっと待てよレンさん、そいつはおかしいぜ!
その「子供を探しに行った両親」ってのはアリサの両親に違いないだろう。で? ひょっこり出てきた? 避難していた? それはなんですか、原作改変ってことですか!? 転生者の私を差し置いてッ!?
「なんでもその子、その両親の子供との幼馴染だったらしいんです。あ、ちなみに探されていた子供の方はクローゼットから号泣してるところを発見されました。あのまま両親が死んでいたらと思うと、ゾっとしますよね。──と、すみません。貴方が知りたいのは、黒いアラガミの方ですよね……」
ピシッ、と私は片手でレンを制した。
「いや、いいんだ。続けてほしい。ところで両親を助けたっていうMVPの子供って、どんな子だった?」
「え? えーと……茶髪の男の子でしたよ。名前は──
──ッご。
「……そうきた、かァ~…………」
「??」
思わず頭を抱える。まさかの可能性が浮かんでしまい、頭痛がしてくる。
──ソレ原作主人公やないけ────!!
神薙ユウ。神を薙ぐはアナタ!
ゲームのプレイヤーの分身にして主人公ッッ! あーたロシアで何をしとんのじゃ──い!!
まさか転生者とか?
憑依系?
オリ主第二弾?
ワイは踏み台だった……?
様々な可能性が浮かぶがどれも要領を得ない。
ていうか、アリサの幼馴染って……こんなんもうその後が想像できるじゃん、ロリっ子アリサちゃん、「ユウがゴッドイーターになるなら私もなる!」とか言い出すやつじゃん! たぶん!!
「あの黒いアラガミ……きっと並の個体ではありません。貴方も、遭遇した時は気を付けてくださいね」
「ん? アア、ウン、ありがとう。気を付けるよ」
気を付けないとな……神薙ユウたちが倒す前に倒さないように…………
ディアウス・ピター……確かにそいつはいずれ狩らねばならないアラガミだ。素材的に。
なにせ私の目指す最終武装のロングブレードは奴から取れる素材が必須となる。五年後の2071年にならないと極東に出現しないとか先が長いぜ。
でもアリサの過去が変わってるってことは、コレ、結構シナリオに響いてくるよな。支部長どうするんだろ。大車先生とかいう医者もどうなるんだ? さっぱり分からない。
ま、原作主人公の存在が分かっただけでも大収穫だ。
私は転生者らしく先輩ヅラして、本編中はなんか……こう……いい感じのエールを送る立場になれれば御の字だろう! なんか強いらしいけど謎の人物、みたいな! 今から本編が楽しみだ!
────そう思っていた時期が私にもありました。あったんです。
「幻代アキ強襲兵曹長。その卓越した腕を見込んで、しばらく欧州に飛んでほしい」
ある日。呼び出された支部長室で、ヨハネスさんからそんなことを告げられるまでは。
レン
フライング顕現。リンドウの戦績データ検定第一級。
初恋ジュースの味をまだ知らない。
神薙ユウ
なんかロシアにいるらしい原作主人公。こいつが極東にくると阿鼻叫喚が始まる。
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