>>2071年+GE2×BURST-RESURRECTION
▼
衝撃のゴッドイーター引退勧告があっても、謎の条件で私はやっぱり2071年の世界にいた。
ここまで続くとまぁ謎だ。そりゃあ心配もされる。
だがなんとなく、この夢の日々も終局に近付いている気がするのだ。
──なぜなら。
「……先日のメテオライト作戦で、加賀美リョウ曹長がMIAになったことは聞いているな? 今朝方、彼のビーコン反応を観測した。至急、向かってくれたまえ」
なんか知らん内にスゲーシナリオが進んでいたからであるッッッ!!!!
ホワイ!? なに──!?
ぜ、前回は私とリョウ先輩でバースト編をフライングクリアしたばかりじゃないか! なんでいきなり大型シナリオがスキップされているんだよッ! てかメテオライトって! メテオライトって!! あのアニオリ名物の超アラガミフィーバー大掃討作戦じゃないですか!! どうして──!?
「……? どうした、オペレーション・メテオライトには君も参加していただろう? 加賀美君と共に、アラガミを虐殺していただろうに」
支部長が知らん世界の話してる。コワーイ。
てかっ、このキグルミ勝手に動いてんの!? それとも「私がとり憑いている」方が異常事態なだけか!? NPCキグルミin幻代アキ!? もうなにも分かんないよ! 夢の世界だからその辺はツッコまない方がいいのか!? ん!?
「すみません……すみません、私が……私がいたばかりに……!」
で、なぜかこのホワイト・ラケル博士ちゃんはソファに座ったままべそべそだし。
そんな風に普通に悲しまれていると、その、困る。リアクションに。貴方、研究者にしては真っ当すぎない? いや、お姉さんのレア博士や、クラウディウスパパも真人間だったし、「真ラケル」先生がこういう感じなのは当然かもしれないけどさ。
「ラケル博士、貴方のせいではない。貴方の駐留地点にアラガミがわいたのは此方の想定ミスだ。曹長が駆けつけていなければ、私たち人類は優秀な人材を何人も失うことになっていた」
あー。
なるほど、メテオライト作戦=ラケル先生攻略ルート、ね? オーケイ。
そりゃあ私はお呼ばれしないハズだわ。完全に加賀美リョウという主人公専用シナリオじゃないの。
「でもっ……あの人は、私たちを逃がすまで最後まで残って……! 《赤い雨》が降り始めても、ずっと、こっちを振り返らずに……!」
……それは単に戦闘に夢中だったのでは?
不謹慎だけどあの人、赤い雨に降られても平気そうだしな……ラケル先生ちゃんには申し訳ないけど、こっち、絶望感は極めて薄いぞ。むしろ勘違い系SSの場面でも見ている気分だよ?
「聞いての通りだ、アキ少尉。対象の生存は絶望的。だが、彼と共に長く戦ってきた君なら、分かるだろう? ……あの狂人が、この程度で死ぬなどあり得ない、と」
支部長、ちょっと見ない内にリョウ先輩に絆されてない?
ていうか、あわよくば生きてたら「特異点化した加賀美リョウを回収できるぜアーク計画リザレクションッ! ヒャッホー」とか思ってない? なぁ?
「──ミッション名は『ゴッドイーター』。神喰らいの英雄を、なんとしてでも見つけ出せ」
特異点を見つけてこい、にしか聞こえねぇえ────!!
▼
「よぉ、行くんだろ? あいつの捜索任務……」
うぉっ、廊下に出るとリンドウさん! あ、右腕がアラガミ化している。ちゃんと生存ルート入ってよかったね。レン様という貴重な人外ショタ枠が失われたのは人類の損失ですが……
「俺も、リョウの奴がそう簡単にくたばるとは思えねぇ。きっとあいつは生きてる……『生きることから逃げるな』──そう教えてくれたのがリョウだからな」
お、おう。
この世界だと正確には「逃げてんじゃねぇ」、だけどね。やっぱ「逃げるな」の方が語感がいいよね。
「待ってください! っあの……リョウの捜索、私も同行させてください!」
フロアから駆け寄ってきたのはアリサちゃん。ツン期、もう卒業したのか!?
「あの人には返せてない恩がたくさんあるんです……ここで、黙って待っていられないんです。お願いします……!」
お、おう。君とリョウ先輩の関わり、私はツン期時代の君をちらっと見かけただけでよく知らないんだけど、うん。原作よろしく攻略されていたんだね?
「お……俺も! 俺も行かせてください! リョウの奴、やること無茶苦茶だけど、何度も助けられたんだ……今度は、俺があいつを助けなくっちゃ、って……!」
続いてやってくるコウタ君。君も君で、私の知らない思い出がリョウ先輩とあるんだね。まぁ君とアリサちゃんに関しては、周回に連れていかれていたような光景しか見ていないんだけどね。どこで好感度とか上がったんだい? やっぱコミュニケーションの数?
「アリサ、コウタ……お前らな……」
「──リンドウだってじっとしてられないんでしょ? ここにいるってことは」
「! サクヤ……」
廊下の向こうからサクヤさんまでやってくる。と、いうことは──
「フン……さっさとあの大馬鹿を連れ戻すぞ」
当然のように壁に寄りかかっているソーマくんまで出現した。かっこいいよね君のその待機ポーズ。リョウ先輩との間にどんな友情ドラマがあったのかはサッパリ知らないけどさ。
「ったく、しょうがねぇ奴らだなぁ……」
とは口で言いつつも満更でもなさそうなリンドウさん。
第一部隊の絆は世界一だね。
まぁ私はこの世界では第七部隊で完全アウェイなんだけどね。
なんでこんな最終決戦手前の空気の中で、しかもキグルミ姿で存在を許されているのか、大いに疑問の余地があるのだけどね?
まぁいいけどさ。こういうのは嫌いじゃないし。
ひとまず空気を読んで、コクリとリンドウさんに頷く。
すると、「そうこないとな」と口角を吊り上げたリンドウさんは、こっちに肩ポンしてから歩き出す。
「──ッシ! そんじゃ行くぞォ、お前ら!」
かっこいい第一部隊の背中を見送っていく。
彼らは彼らで、リョウ先輩の生体ビーコンが最後に観測された場所を中心に回るのだろう。
私は当然、それについていくことはせず、とっくに見当のついているリョウ先輩の居場所を目指して一人行動を開始した。
▼
酷いって言わないでくれよ。
だってアラガミ化したリョウ先輩の強さは、私が一番身に染みて分かっているんだからな。
下手に同行させたら、ゲーム時代よろしく、第一部隊は地面で倒れているだけのオブジェクトになってしまう。それぐらい、アラガミ進化した加賀美リョウは洒落にならんぐらい強いのだ。
わざとらしいビーコン反応はどうせ囮。
そんなワケで神機さんを片手に、私はあるポイントにやってきていた。
この世界のごった煮要素から逆算した座標。
2071年、バースト編、GE2。
特盛パフェよりスンゴイ事になっている世界線において、最後に回収するだろう要素はどこか?
「──よう。流石は戦友にして同胞。一発で俺の居場所を引き当ててくれて助かったぜ」
エイジス島──ではない。
そこは初手で私と先輩で攻略チャートを破壊してしまい、支部長が封鎖しているので、最終決戦の地にはなりえない。
螺旋の樹。
それはGE2終盤において生えるオラクル細胞の大樹。
フェンリル極東支部より北東──終末捕食の第二中心予定地である、だだっ広い空き地に、私と彼はいた。
「……人型を保っていたのは予想外でしたね。先輩、まだ正気です?」
「絶好調だ。全能感が止まらないぜ」
「それ絶不調って言うんすよ」
岩に腰かけたリョウ先輩の顔には、黒い文様が浮かび上がっていた。黒蛛病だ。
適応できなければ死、出来たとしても特異点化するという、ドン詰まりの死亡フラグである。
「いやいや、本当に絶好調なんだって。この生死の境にいる感覚。やっと『戻ってきた』って感じがするぜ。そうだよ、転生者ってのは元来こういうものだった。俺は、こう在るべきものだった」
「変態がいる……」
死の淵でしか生きている実感を得られないタイプ? 難儀っすね。
「つか先輩、なんで普通に喋ってるの……その時点で色々おかしいんですが、そこについて何か弁明はあります?」
やっぱ気合的ななにかだろうか。
それとも転生者根性? 加賀美リョウ補正的ななにか?
「ああそれ? もちろん気合と根性──って言いたいところだったけど、実は理由があるんだ」
「ほう?」
そこでリョウ先輩は、その腕輪のない右腕から刃を生やした。神機のような巨大な武器だ。
その現象は知っている。侵蝕現象。アラガミ化に踏み込んだ雨宮リンドウや、元からアラガミであるシオ様が使う、武器形態──
ん?
人から特異点になった奴って、そんなコトできたっけ?
「俺もこの状態になってから、ようやく思い出した
どうやら今世の俺、人型アラガミとして転生してたっぽいんだよねぇ」
「────なんて?」
小首を傾げる。傾げざるをえない。
えー、お知らせです。
人間やめてると思ってた先輩がマジモンの人間じゃなかった件について。
これはガッカリしたらいいのか? 納得したらいいのか?
「えーと、正確には『元・人型アラガミ』かな。たぶんアキちゃんと出会った頃の俺は、
「結局あの時点では人間だったのかよアンタ! いや待って、その進化過程はおかしい!」
なんで一つの情報でこんなにツッコミを求められるんだよ!!
アラガミから人間に!? オラクル細胞を取り込んだ人間がアラガミ化する事例はあるが、その逆は果たして成り立つのか!?
いや……オラクル細胞が最終的に行う「終末捕食」という“資源の再分配”を考えれば、それも完全に不可能ってわけじゃない……か!?
つまり加賀美リョウという人型アラガミは、進化の過程で、独自に「個」という最小単位で終末捕食のような地点を通過し──人間に成った?
元プレイヤーとしてかき集めた知識で考察すると、こんなところか? 元の世界の榊博士や支部長やソーマが発狂しそうな事例だな。はかせ! 説明をお願いします! いないから無理や!!
「完全に人間だったから、支部内のオラクル探知のレーダーにも反応しない。元アラガミ現人間。榊博士も予想しきれなかったんじゃないかなぁ」
……まぁ、確かに。
それが本当だとしたら、生身の人間が大型アラガミを倒せていた事実にも納得が──って待った。
「……そういやリョウ先輩、銃の弾丸に『自作の偏食因子抗体を混ぜていた』とか言ってましたよね……ソレって、製造方法は……」
「俺の血を混ぜるだけ! カンタン!!」
「あ~……」
人間に最終進化したオラクル細胞。を、叩き込まれる進化途中のオラクル細胞。
そりゃあ毒だわ。猛毒だわ。悶絶モノだわ。死ぬわ。
宇宙人の細胞を人間にブチ込むのと大差ない暴挙である。人間が特異点化するなら、アラガミが人間になるのも……絶対にあり得ない可能性、ではない。
むしろ、そういう未来があれ、と私が元の世界で行ったのは、そういう事だ。
神を人に引きずり降ろす。
神から人に成り、今、再び神に戻った。
……加賀美リョウ。この先輩はやはり、底知れない。
「そんな……先輩が人型アラガミ転生SS系主人公だったとは……ッ!」
「初手から転生特典を投げ捨ててた事例だったけどねぇ」
なんて引っかけ問題だ! 語られない裏設定で本編が終わる奴だ!
「ま、人間に進化を果たした、ってのはちょっと違うかもな。どっかで人間を喰って、そんで人間の細胞を真似した結果が、俺なんだと思う。ゲテモノ転生者っぽい生い立ちだよなぁ」
「人外転生って大変そうだな……」
人間に生まれてよかった。
アラガミ転生IF幻代アキはきっと、世界の裏でアラガミを周回し尽くして、地球を自分の楽園化してタイムストップだと思います。ろくでもないな?
閑話休題。
「えーと……まずはおめでとうございます、リョウ先輩。貴方はこのたび、史上初の人型アラガミ兼、特異点として認められました。このまま殺し合うと支部長の前に突き出すことになると思うんだけど──」
「あ。まだそういう認識なのか。ゴメンゴメン、アキちゃん。終末捕食とかノヴァとか、支部長の思惑とかはもう気にしなくていいんだ」
「はい?」
「俺はもうノヴァを喰ってる」
……は?
「っつーか、俺はもうとっくにMIAじゃないんだよ。赤い雨が止んだ後、支部長の部隊に捕まってたの。で、良い感じに特異点化してたからエイジス島まで連行されて、ノヴァと殺し合った。──で、勝った」
「勝った!?」
「うん。だから喰った」
全ての流れと展開がおかしいんですがそれは!?
「今は俺ん中で終末捕食を抑え込んでいる状態。だから、支部長はこうして俺という自我を始末できる君を派遣したってワケだ」
「支部長ォ──!!」
あの野郎! またあの野郎のマッチポンプかよ!!
ぜんぜん黒幕卒業できてないじゃんシブチョー! それでチャートを立て直したつもりかぁ! もう負けてるんだよアンタ!! 諦めなさすぎるにも程があるだろ!!
「初めは第一部隊の皆に俺の相手をさせるつもりだったらしいけどね? でもさぁ、それは原作に無いじゃん。仲間殺しとか、絶対に数十年単位で引きずる奴じゃん。だから──」
「……だから先輩も先輩で逃げ出して、私を待っていた?」
「そ! 奇遇にも俺と支部長の思惑は合致した。これが加賀美リョウ、ラスボスルートだ。いやぁ、新兵から随分と出世したなぁ……」
ハハハハ、と空笑いする先輩。
正直、こっちはあんまり笑えない。
「面倒くさいなぁ……」
「ひどくない?」
誰かの思惑の上に乗せられているというこの状況。非常に遺憾である。
こういう時こそ色んなものを裏切っていきたいよな、主人公としては。
「てか、リョウ先輩アラガミ化してるならコアがあるってことだよな? ダイレクトストレートかまして精神世界で大暴れすれば、バースト編の再演いけるな……?」
「あ、待って待ってヤバイ。すんごい邪悪なことを考えられてる!?」
「でも世界の救世主的には、ここで終末捕食を発動させてくれないと困るんですよね。人類を残す方向性で。具体的にはアラガミだけ喰って人類大勝利エンド」
「アレ? 俺が酷使されるチャート今組んでる?」
組んでる。
オラクル細胞による死亡フラグは気合でなんとかなるもんだ。仮にも
だって転生者なんだから。
「というか、自意識が残ってる時点で入れる保険は無限にあると言っても過言じゃないな……」
「アキちゃーん? あのね? 俺は別に君に殺されたいって意志はねぇの。ちゃんと目的があるの。先輩の話は最後まで聞いてほしいんだ」
「なんスか」
「
その物言いに、少し、目を見開く。キグルミ越しじゃあ伝わらない反応だろうが、こちらの動揺は察知したらしい。リョウ先輩がニヤリと笑みを深める。
「聞いた話によれば、『前世』の俺──つまりそっちの世界の俺は、君に負けたんだろ? んで、こっちで初めて会った時も、俺は負けた。二度も負けた。俺はね、最強になるために転生者をやっている。同胞に勝ち越されたままじゃあ、悔しいんだよ」
……加賀美リョウの口調は、どこまでも穏やかだ。
老成した空気感をまとう若者。それが彼の印象。幾度も、何度も人生をこなしてきた彼は、文字通り、『人生の先輩』だ。
そんな彼から今、感じるのはただ一つ。
──闘志。
死の淵にありながら、地球最強のアラガミであるノヴァを喰らいし人間でありながら、彼は一ミリもブレていなかった。いつも通りの、いつも通りに、
狂っている。と、一言で片付けるのは簡単だが、この局面においてまで一貫されると、やはり、敬意すら湧いてくる。
だからこそ、私は今になっても、彼を「先輩」と呼び慕うのかもしれない。
「…………まさか。アンタ、初めから……」
「ああ。俺が今もこうして『俺』でいられるのは、
……それが真相であり、このふざけたコラボ企画の元凶。
ラスボスはここに成った。
主役はその座をかなぐり捨て、黒幕もチャートも舞台さえ破壊して、ここにいる。
「俺の元・人型アラガミとしての感応現象か、ノヴァを喰った『今』の俺の願いが、時空を超えてあの日のアキちゃんをここに呼んだかは分からないけど──」
そこでリョウ先輩──いや、加賀美リョウは軽く腕の神機を斬り払った。
立ち姿には一分の隙もない。
数多の人生を、戦いを、命のやり取りを越えてきた修羅がただ一人、そこにいる。
「──挑ませてもらおうか、幻代アキ。
……ったく、しょうがないな。
問題児な先輩を持つと苦労するぜ。
神機さんを構え、目の前の加賀美リョウを見据える。
「──受けて立つ。今度こそ弔ってやるよ、先輩」
神を喰らうどこかの世界でたった二人。
原作にも、本編にも、番外にすら届かない片隅で、私たちの決戦はこうして始まった……!