転生神機使いは狩り続ける   作:時杜 境

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08 極東の黎明2071

 戦場で、一人の若い茶髪の少年が手を振っていた。

 その手には神機がある。それは近接型と遠距離型を組み合わせた、“新型”神機と呼ばれる、最新装備だった。

 

「リンドウさん早く早く! あんなにコンゴウがいますよ! 早く行かないと逃げられます!」

 

「シユウですね! 部位破壊用のバレットは持ち込んでいます、任せてください!」

 

「え? もちろん小型も逃がしません。視界に入ったアラガミは敬意をもって皆殺しにしますよ!」

 

「ああーっすごい! 黄金グボロの群れですよ! 残さず食べ……倒しましょう!!」

 

「アバドンだ────!!!!」

 

 それは地獄だった。加減と限界を知らない新手の地獄だった。

 この地獄に今も付き合っているリンドウは、煙草の煙を吐き出しながら、思う──

 

 ────なんでこんなことになったんだ? と。

 

 

   ▼

 

 時は、その少年が入隊する前にまで遡る──

 

   ▼

 

 

「おっと……レアモノか?」

 

「レアだな」

 

「レアね」

 

 極東──贖罪の街、その一角にて。

 倒れたヴァジュラの骸をリンドウの神機が捕食すると、職人のような目つきの仲間たちが頷きあう。

 

「ま、まあ、サカキのおっさんは見慣れてるかもだけどな……」

 

「早く人手が増えてほしいわねー。もう少し一度の戦闘時間が短くなるといいんだけど」

 

「増えればいいものじゃない。その分競争率が上がる」

 

「…………お前ら、本格的にこの極東という環境に染まり切って来たよな……」

 

「「?」」

 

 リンドウの苦笑の理由(ワケ)を知らないサクヤとソーマは首を傾げる。

 さぁ帰ろう帰ろう、と足早に歩を進めるリンドウは、内心こう思っていた──

 

(────俺たちの極東がマジでヤバイ。あいつ(アキ)の爪痕、深すぎるだろッ……!)

 

 西暦2071年、1月。

 この時のリンドウは、まだ知らない。

 この年、この季節──極東に革命児が訪れることを。

 

   ▼

 

 なーんか変な奴がいるなあ、と藤木コウタは座席に座りながら、その少年を観察していた。

 

 ──極東支部、エントランス。

 自分も通って来た扉からやってきた十七歳くらいの少年は周りを見渡すと、一目散に階段をかけ上がって、上階のターミナルに食いついていた。

 

(新人って、席に座って待ってるもんじゃないっけ……あいつ、なに見てるんだろ……?)

 

 よし、ここは一つ声でもかけてみよう。

 そう立ち上がった時、「おや」とすぐ近くで女性の声がした。

 

「こちらが声をかける前に起立したか。……もう一人いるはずだが、どこだ?」

 

「えっ?」

 

 そこには大胆に胸元を開けた服装の女性が立っていた。が、その凛々しい顔つきと鋭い眼光に気圧され、コウタは女性の問いに言葉を詰まらせる。

 

「えーと、あ、もしかしてあいつですか?」

 

 完全に思いつきと直感だったが、あの妙な少年の方を指さすと、女性の表情が呆れたものになる。

 カツカツとヒール音を響かせながら女性は階段を上がり、未だにターミナルに向き合っている少年の方へと近づいていく。コウタもすぐにその後を追った。

 

「……ふ、ふふ……すごい凄い凄い……基本バレットの種類がこんなにたくさん……うわ、ブレードの強化素材まで全部載ってる……対アラガミの即殺戦法もなんて詳しいんだ……えっ、スタングレネードの在庫が百!? 強化パーツまで支給されてる……新人特典、凄いなぁ……うん、じゃあまずは強化を優先した素材集めかな…………」

 

 ──少年はなにかをブツブツと呟いていた。偶に気味の悪い薄ら笑いまで聞こえてくる。

 こいつ、大丈夫か。

 コウタはまだ名も知らぬ同期が心配になった。

 

「お前が神薙ユウだな? これから予定が詰まっている。こっちを向け」

 

「──えッ!? あ、は、はい!! すみません!」

 

 弾かれたように振り向いた明るい茶髪の少年は、ピシッと気をつけをしてその場で固まる。

 追いついたコウタは、チラッとユウ、と呼ばれた彼が見ていたターミナルの画面を覗き見た。

 

(……戦闘準備? え、早くない?)

 

 適合試験を終えたばかりなのに、もう出撃する気でいるのか。

 謎すぎる行動の速さに、コウタも呆れていると、女性が話の続きを始める。

 

「私は雨宮ツバキ。お前たちの教練担当者だ。この後はメディカルチェックを済ませ、神機使いとしての基礎カリキュラムをこなしてもらう。これまでは狩られる側だったかもしれないが、これからは狩る側だ。つまらないことで敵を逃がしたくなければ私の命令には全てYESで答えろ。いいな?」

 

「「い、イエス!」」

 

 ツバキの言葉の節々に見られる殺意に、思わず新人二人の声が重なった。

 

「よろしい。メディカルチェックはまずお前からだ、ユウ。ペイラー・サカキ博士のラボラトリに一五〇〇までに赴くように。それまでにこの施設を見回っておけ、メンバーへの挨拶も忘れるなよ」

 

   ▼

 

 ──ここアナグラは、今日も今日とて活気に溢れている。

 エントランス上階のソファを占領しながら、リンドウはぼうっとその日常を観察していた。

 

「爆縮体を落とさないザイゴートなんて……」

 

「換金用回収素材、換金用回収素材……!」

 

「エーテルエーテルエーテルエーテルエーテルエーテル」

 

「血石がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「アバドンの最新目撃情報誌はこちらです! お一人様につき一点限り! 残り冊数わずか!!」

 

「本日一八〇〇より第一ホールで素材オークション開始! Aチケット一ダース、最高レベルの遺された神機パーツや、欧州から出品されたレアなアラガミ素材などが揃っております! 奮ってご参加ください!!」

 

 湧き上がる歓声、偶に聞こえる発狂絶叫、通りすがっていく目がイっている神機使い、壁にあちこち貼られている「アバドン絶対に逃がすな」の警告ポスター。

 

 ──末期である。疑いようもなく末期である。

 近年、この極東には様々な支部から様々なゴッドイーターが集ってきた。

 

 元よりここは旧時代、ハロウィンやクリスマスを始めとした多文化のイベントがごった返していた国。

 そういう気質が世代を超えて残っているのか、極東に転属してきた多くのゴッドイーターが、極東に自分たちの支部の文化を伝え、融合した結果、このような様相を見せている。

 

(……大本の原因は分かり切ってるけどな……)

 

 世界へ解き放たれてしまったあの周回狂。

 アレが絶対に影響している。なんか年を経るごとに各支部のゴッドイーターの質も軒並み向上しているらしい。アラガミ討伐数も、いずれはアラガミが生まれる数を上回るんじゃないかと噂だ。

 

 ……あくまでも噂だ。そもそもアラガミの全体数すら未だに正確に把握できていないのが現状、それはあまりにも人類の理想と願望がすぎる。

 

(……まぁ、みんな沈んでいるよりはいい、のか……?)

 

 ひとまずそういう考えに落ち着き、取り出した煙草に火をつけようとした時だった。

 

 

「──ツバキさん。ミッションって、どうにか連続出撃できるようになりませんか?」

 

 

 下の階から聞こえた言葉に、ポロッと煙草を落とした。

 同時に、活気のあったアナグラ内までもが静まり返る。

 それは完全なる「無」。無音無風の空間だった。

 

 リンドウはゆっくりと、ゆっくりと背後の下方を振り向く。受付カウンターの前には、先日入隊してきた新兵──神薙ユウと藤木コウタ、それに実姉ツバキの姿があった。

 

(あいつは……)

 

 そこでリンドウは思い出す。

 神薙ユウというとんでもない新人の初陣の光景を思い出す。

 

 その実地演習には形式上、上官となるリンドウがついていった。極東における新人の実地演習メニューは三連戦。オウガテイル一体、コクーンメイデン二体、ザイゴート一体の討伐だ。

 

 初めは緊張し、身体が強張る者も多い中、あの新人は初手オウガテイルを銃撃だけで沈め、コクーンメイデンたちを真っ二つに両断して走り、ザイゴートに至っては初見でコアの位置を見抜いて即殺していた。

 

 アラガミ殺しの天才児。リンドウの彼に対する印象はそんなところだ。

 

 あの“極東の悪魔”を思わせる快進撃だが、ユウの場合は初の新型ゴッドイーターであるという点以外、特段変わった経歴はない。ソーマのようにP73偏食因子もなければ、アキのような元実験体というような過去もない。天然モノの逸材だ。

 

 アナグラ内ではその柔らかい人柄も相まって、期待の新兵だと好評であった──今、この瞬間までは。

 

「ユ……ユウ? 何を言って」

 

「コウタ。僕は考えたんだ」

 

 コウタ少年の顔はひきつっていた。それに気付いているのかいないのか、気にせずユウは続きを語る。

 

「朝一にミッションを貰って僕らは出撃するでしょ? それで終わったらいちいちアナグラに戻って……っていうのはちょっと効率が悪いと思うんだ。また次の出撃までの時間を、次の討伐先の移動時間に使えればもっとアラガミが狩れると思うんだよ」

 

 スラスラと出てくる彼の言葉は、ますますアナグラ内の気温を下げていく。

 

「だからこういう事はできないかな? 朝一に近いエリアのミッションを複数もらって出撃、討伐、移動、討伐……そしてこの移動の間にもアラガミが出てきたらそれも狩る。そうすればその辺りのアラガミの絶対数は少なくなるし、素材も多く手に入る。──ああ、これは流石に実験が必要だと思うんだけど、移動中は挑発フェロモン漬けにした小型アラガミを引きずり回しながら車で移動して、寄って来たアラガミを次の討伐先でまとめて処理するっていうのはどうだろう。これなら今の何倍、何十倍もいっぱいアラガミと戦えるし、リターンも大きくなると思うんだよ」

 

 リンドウは知らず息切れを起こし始めていた。

 ヤバイ。こいつはヤバイ。絶対にヤバイ。

 

 まさか誰が思うだろうか、あの狩猟民族・幻代アキと同種類の人類がこの世にいようとは──!!

 

 というか、なんならアキよりも効率狙いな上に倫理がトんでいる。殺意と計算の果てに辿り着いてしまった完全なる討伐狂だ。

 

 挑発フェロモン漬けで引きずるってまさか生かしたままでか。だよな。コア引き抜いたら霧散しちゃうもんなぁ!? リンドウは嫌な想像をしてしまったのでSAN値チェックした。

 

 ──なんか凄い人が来ちゃったようですねぇ、リンドウ?

 

 SAN値チェックに失敗したリンドウはそんな少年っぽい声の幻聴が聞こえた気がしたが、全力で聞こえなかったことにした。

 

 

 ……アキが極東を発ってから、「周回戦法」は事実上封印された代物になっている。

 理由は明確。コレに慣れてしまうと、その油断から死亡者が出てしまう恐れがあったためだ。

 

 アキが戦線を離れてから、ローテーションを組んで臨んだ者らは少なからずいた。だが続けられたのもせいぜい一月程度。全員飽きるかバテた。そこでようやくリンドウは思い知ったものだ、「ああ、あいつ(アキ)ってやっぱおかしかったんだな……」と。

 

 何度も何度も作業的にアラガミを殺すのは色々と精神衛生的にも良くない。疲労だって溜まる。

 戦場では時に不測の事態だって発生する。イレギュラーを極力引き起こさず、またイレギュラーにも即時対応できる化物じみた人材は、今のところリンドウやソーマといった「古参経験者」くらいのもの。

 

 軽い感覚で出撃しては、新種のアラガミに出くわした時も反応が遅れる。

 周回(アレ)は、問答無用であらゆる敵を駆逐できる悪魔(アキ)だけがやっていい事なのだ。

 

 それが極東支部内での、暗黙の了解。どれだけ素材を求め、狂っていても、「連続出撃」「周回戦法」だけはやめておけ──極東環境でのそれは地獄だから。マジでアレ地獄だから。な?

 

 そんな古参たちの脅しに近い忠告教育のもと、他の支部からやってきたゴッドイーターを含め、新兵たちも積極的に挑む者は少なくなっていた。

 

 まさかまだ入隊して間もない新人が言い出すなんて例外が起きるまでは……!!

 

 

「ゆ、ユ、ユウ? 俺はお前のこと同期で一番の友達だと思ってるけど、流石にその考えはヤベーんじゃないかな……!!」

 

「──神薙」

 

 雨宮ツバキの涼やかな一声が、この場に冷静さを取り戻させる。

 そうだ、言ってやれ。止めてくれ。そんな馬鹿げたアイデアは捨てろと。確かに効率はいいかもしれないが、それに付き合う羽目になるだろう犠牲者たちの未来を思ってみろ、と──!

 

「そういうのは正式な書類が必要だ。支部長にかけ合う必要がある。だが、お前はまだ新米だ。いきなりそう事を急くな、アナグラ内で確固たる実力を示し、信頼を獲得してから言ってみるんだな」

 

「──! そうですね、分かりました! アドバイス、ありがとうございます! 僕、頑張ります!」

 

 何も解決してねぇ────ッ!!!!

 その場にいたゴッドイーターたちは内心で泣き叫んだ。遠くない将来、おそらく実現するであろう魔の時を震えて待つことしかできないことに。

 

「キラーオブキラー……アラガミの殺戮者、か……」

 

 腕組みながら意味深に呟いた百田ゲンの声は、エントランスの隅で消えた。

 

   ▼

 

 ──回想ここまで。

 現在に意識が戻ったリンドウは、その光景を目撃した。

 

 神薙ユウがヴァジュラのコア抜きを仕掛け、一撃で仕留めた瞬間を。

 

 その姿は、奇しくもかつて、自分たちを救った幼き日の悪魔に似ていた。

 

「あ、できましたね」

 

 戦闘時間、二分足らず。

 嘆きの平原に残っているアラガミはもう存在していなかった。

 

「……ユウー? 俺の命令きいてた? 死ぬなって命令覚えてるかー?」

 

「? 覚えてますよ、でも別に死なないと思ったので……」

 

 この物言いには流石のリンドウにも返せる言葉がなかった。

 怪物である。逸材である。間違いなく、あの悪魔に類する例外生命体である。

 

 ここ極東では頻繁に狩られるヴァジュラだが、実は強敵なのだ。一昔前はヴァジュラに出くわしたら死を覚悟、最悪、支部壊滅危機といわれるほどの脅威だったのだ、実は。

 

 少なくともアキのように、新兵の頃にサクッと討伐できていい相手じゃない。

 

 あとヴァジュラ系は、というかアラガミ全般言うまでもないが、やたら生命力が高い。まあ千歩ゆずって、まだ細胞結合の甘い時代だったアキの一撃即殺伝説はともかく、今の確実に強化・進化しているハズの現代で、五分切りならぬ三分切りで大型アラガミを討伐できるのは、なんかもう世界の理の方が狂っている。

 

 細胞結合が強固な現代でほぼ初見でコア抜きを成功させるな。びっくりするから。いっそちょっと怖いから。

 

「……ユウ。お前ってゴッドイーターになる前、なにしてた……?」

 

「──無職ですが、なにか?」

 

 あ、だよな。流石にそこは別世界から来ましたとかじゃなかったかぁ────リンドウは戦慄した。この世界、やはり狂っているのか。

 

 そもそもこんな場面を目撃することになったのは、全ては支部長が「新型の戦闘データを取れるのなら、限定的な連続出撃許可を出してもいい」などと言い始めたせいである。そこで抜擢されるのはやはり連続出撃の経験者だ。ソーマはいつの間にか消えていた。

 

 そしてユウは──当然、この特別許可に乗った。

 幸いだったのは、未だユウが新兵だった故に、戦う相手が小型~中型ばかりだった点か。しかしオウガテイル討伐だと聞いていたのに、ヴァジュラがうろついていたのはどういうことなのか。

 

「よーっし、じゃあ次──がっ」

 

  ──ひとまず周回数が六十を超えそうになったので、リンドウはユウを手刀で強制終了させて、周回を切り上げることにした。

 

 肩に一人分の重さを担いで歩きながら、思う。

 

(……アキの奴って、周回のプロだったんだな……)

 

 今回思い知ったのは、この神薙式周回と、あの悪魔式周回の違い。

 

 悪魔(アキ)が同行メンバーを連れていく時の周回は、一戦ごとに高カロリーなアラガミだったが、周回数自体は五十を超えなかったこと。

 悪魔(アキ)が一人で行く時は、小型中型大型アラガミの複合周回だったが、きちんと他の部隊の仕事数も計算に入れていたこと。

 

 そしてどれだけ付き合わせても、「もう止めてくれ」と懇願すれば、すぐに帰してくれて、後は彼女一人で周回に向かってくれていたこと。

 

 ──つまるところあの悪魔は、気遣いのできる周回のプロフェッショナルだったのだ。

 疲労管理、速度管理、時間管理、在庫管理、任務管理──ありとあらゆる方面のバランスを考え抜いて構築・決行されていた高度な周回だったのである……!

 

(……なんだよ高度な周回って……)

 

 ──まぁ、周回は周回ですよね。

 

 そうだな、とリンドウは見知らぬ声に返事をした。幻聴相手だろうが別に構わなかった。

 この世界は狂っている。いや、狂っていたのだ──初めから。人材バグに二度も出くわしたのだ、幻聴くらいがなんだというのか。

 

 

 数日後、リンドウはツバキから直々に以下の命令を下された。

 

 ──強制休暇。お前ちょっと休め、と。

 

   ▼

 

『雨宮リンドウ

 件名:ヤベーのが来た

 本文:助けてくれ』

 

『ソーマ・シックザール

 件名:

 本文:お前と似たような新人が入って来た。どうなっている』

 

『雨宮ツバキ

 件名:例の新人の件について

 本文:連続出撃に関する危険性・デメリットをまとめた書類データを今日明日中に提出しろ』

 

 届いたメール画面を見て、二度読みし、ふうと息を吐いてから閉じる。

 

「遂に来ちゃったかぁー……」

 

 海岸沿いを走るフェンリル印の軍用車の上で、私は遠くの空を見やる。

 遂に来てしまったのだ、原作開始の時が。

 ガツン、と車のハンドルに頭を叩きつける。

 

「……いやいやいや間に合う間に合う間に合う間に合う……まだ! 始まったばかりだから! 出番ナシで終わるとかないからッ!!」

 

「なし?」

 

 ──と、左隣から返ってきた声で正気を取り戻す。

 

「いや……よくよく考えたら、貴方がここにいる時点でシナリオ進行も何もないわな……」

 

「?」

 

 本日のグルメを味わいながら小首を傾げるシオ様。

 その服装はフェンリルのズタボロフラッグの襤褸ではなく、白いショートパンツに白いパーカーとなっている。

 

 ……別に私が原作よろしくアラガミ素材で作成できたわけじゃなく、人間用の服の内側にアラガミ素材を張り付けて「ちくちく」しないようにしただけの簡易工作だ。偶にモグモグしてしまわれるので、あちこちツギハギだが。

 

 二年前──彼女と再会してから、ちょくちょくシオ様とは出くわす機会が倍増した。

 

 もちろん支部長には知らせていない。シオという名前も既につけてはいるが、私がつけたわけじゃない。

 最初のあの砂漠で見つけた直後、サカキ博士のラボサーバを経由して、『現地の子供が拾った白い子犬の名前を考えてほしい』、という名目でソーマに電話して考えてもらったのである。そこはギリギリ原作準拠させてもらった。一発でパーフェクトアンサーとは流石だよ。

 

 なお、“どうしてよく会いに来てくれるんです?”とシオ様に尋ねたところ、

 

──『オイシソウなニオイ……たくさん……(じゅるり)』

 

 とのことだった。エサを呼ぶ存在として認識されたらしい。光栄なことだ。

 

 やはり周回は全てを解決する。

 

「アキもたべるかー?」

 

「いやぁ、私は……」

 

 と、差し出されたのはトウモロコシだった。人間はアラガミを食べない、と既に学習していたのだろう。

 有り難く拝領し、かじりつく。かじりつきながら──新たなアラガミの気配を察知して停車する。

 

「おっ」

 

「おやつだなー!」

 

 すぐ西側にあった岩場の影から、その巨体が飛び出してくる。

 ──それは赤い色をした大型種だった。待ちに待った、念願の特異種だった。

 

「ガゥウルァァアア!!」

 

 ルフス・カリギュラ。確か原作ではそういう名前だった気がする──コイツ、2要素じゃなかったっけ? まあいいか。

 神機さんを掴んで、車から飛び降りる。

 

「殺りますか。お前はどんな素材を落としてくれるんだ?」

 

「まだたべられるぞー!」

 

 ついてきたシオ様もまた、その腕から神機っぽいのを生やし、隣に並び立ってくれる。

 そこで吼え猛るカリギュラへ向かって──二人同時に飛び出した。

 




神薙ユウ(17)
 遂に極東入りしてしまった公式バランスブレイカー。
 こいつがやってきてから物凄い勢いで新種やら新型神機の強化先が開発されて、なんなら終末捕食まで巻き起こる始末。世界、生き急ぎすぎないか。
 ここから極東の真なる周回地獄が開幕する……!

藤木コウタ(15)
 ヤベー奴の同期になってしまった……と思っているが、割とすぐに適応していく人類の鑑。
 なんか最初に渡されたバレットエディットが既に完成されている。なお「メテオライト」という名のバレットは一部のベテランにしか使用を許可されていないご様子。

シオ
 二年ほどアキに引っ付いていた。なお支部長側は存在を知らない。
 アキと行動を共にしていたので、おそらく知性は原作よりも上がっている。
 流石にアキが支部を訪問する際は再び野に放たれていたが、アキが一人で外歩きすると、気配を辿ってまたやってきてくれるシステムが構築されている。とても可愛い。
 シオ、と名付けてくれた相手に会いたいと思っている。


 お気に入り・評価・ここすき・感想、全部ありがとうございます!

 極東、始まったな……! なお神薙くんは周回初心者なので加減を知らないご様子。
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