文化祭
学生がテストというどうしようもない現実から逃れるための娯楽
文化祭マジックなるものも存在していて、それの魔法にかかるとあら不思議、気づいたらあっちこっちでカップルが量産されていることが多い
準備中思いのほか逞しい彼の腕、
買い出しに行く時も嫌な顔ひとつせずに荷物持ちに手伝ってくれる、
ペンキで汚れた真剣な横顔、
色んな所にキュンする瞬間は転がっているらしく準備期間中にそれっぽい雰囲気になろうとしているカップルは何名か居た
居たという表現を使うのはまぁ自分には関係ないと思っていたからだろうと思う
そう…本当に関係ないと思っていた
「ずっと前から好きでした…もし良ければ私と文化祭一緒に回ってください!」
顔を真っ赤にさせてそう言う目の前の女の子
隣のクラスで喋ったことは無いがたまにすれ違う程度
だが文化祭の準備中になぜか買出しなどを一緒に行うようになり気付いたら今こうなっていた
相当勇気を出したのか身体を震わせながらしっかりとこちらを見つめてくる
ぇ、ま、まじ?告白?俺に?こくはくぅ!?うっそぉ…マジでぇ?まじか?来ちゃった?ついに春来ちゃった?春の到来来ちゃった?うわぁ〜まじかぁ、来ちゃいましたかついに俺も
「え、えっと」
「い、今答えなくて大丈夫!文化祭当日にまた誘いに来るね、それじゃあ!!」
そう言うと何かを言う前に逃げるように走り去ってしまった
「まじか」
ポケットに入れているキーホルダーに思わず手を触れる、ズボンの中で感触を確かめるように撫でて
「さりな姉さんの遺言達成できそうな気がしてきたな」
そして文化祭当日
「あ、あの…えっとぉ?何が良いです?」
不機嫌な態度を隠そうともしないルビーの前でまるで浮気がバレた亭主みたいに必死に誤魔化そうとしているのが俺です。
俺のクラスがやっているのは折り紙、地味かと思うかもしれないが小学生や小さい子目当て、確実にがっぽりとか言ってたので相当だとは思っていたものの、ほかのやつだったら俺の不器用が爆発してしまうため慣れている折り紙マスターとしてみんなに崇められた俺は最前線で客に対応している
「はーいうさぎさんできたよ?」
「わぁ〜!ありがとう!」
女の子に可愛らしい兎の折り紙を渡すと嬉しそうな顔で受け取って貰えた、うん、あの双子が変なだけでやはり子供は純粋無垢で可愛らしいな。
ニコニコしながら軽く手を振る
そろそろ休憩したいんだよなぁ、文化祭もしかしたら一緒に回れるかもしれないし?
そんなことを考えながら次のお客でとりあえず休憩に入るかと考えながら声をかける、見慣れた顔、赤い瞳、目を引く絹のような金髪
「折り紙折って欲しいな〜」
「どんなのにすんの?」
「お客様にその態度ってないんじゃないの?」
「お客様は、な?他の人にはこんな態度とりませーん、あれ?お前だけ?親御さんとかアクアは?」
見るとどうやら1人だけでひょこっと現れたみたいで後ろに親や兄の姿がない、一人は流石に危ないと注意してもお姉さんだから問題ないとか言ってくるし、まぁそこに関してはだいぶ諦めたよ
「それで?何を折って欲しいんだ?一応料金表はこっちだぞ」
「この300円でなんでもって言うのは?」
手渡されたメニュー表を見ていると一番下に書いている俺の席に来たお客にのみ対応しているメニューを指さして
「俺は折り紙に関して天才的だからな、客が望んだ物は基本折れる、なんか希望ある?」
「ふ〜〜ん」
折り紙だけは過去にめちゃくちゃ練習したから大体のやつ折れるようになってんだよ、
まぁそこまで凄いことではないけれどあの人のためにと思って行動したのがこうして役に立つと嬉しいな、
そう考えていると最初はなぜかじとっとした目を向けられていたが
作って欲しいものが決まったのかニコッと笑って
「じゃあ鶴折って?」
「鶴?これまた地味なの選んだな?ハートとか余裕で作れるけど」
「鶴で良いから」
鶴大好きなの?この年で?だいぶ古風な趣味
そう思ったもののまぁ、こっちとしては特に困ることでもない、鶴なんて馬鹿みたいな数量産した物第一位だし
丁寧に、でもテキパキと熟れた動作でさっさと折って
「ほら、できたぞ」
「はや」
驚いた顔をされると少し気分がいいな?はっは〜早いだけじゃなく鶴に関してはめちゃくちゃ丁寧、見てみろこの一部の隙のない折り目を、
そうやって完成させた物を渡すと大事そうに持って優しく微笑む
だからたまに見せるその表情まじでやめて欲しい、心臓に悪すぎる
「不器用なくせにこういうのは作れるんだね?」
「不器用言うな、ちょっと人より上手くできないだけ、折り紙だったら昔めちゃくちゃ練習したからさ」
「…なんで?」
なんでって…なこういうのあんま小学生相手に話すような事じゃないような気がするんだけどなぁ
良いけど…
「昔なんとか元気になってもらおうと思って千羽鶴をその人と一緒に折ったんだよ、不器用で全然綺麗に作れなかった俺にその人は教えてくれて、だから鶴だけはバカ早い」
「へぇ〜その人の事どう思ってたの?」
何を言い出すんだこいつ、なんだその期待したような聞きたくないような感じの顔は、そんな微妙な顔するぐらいなら聞くなや!
「はいはい終わったから、俺はこの後予定があるの」
あ、誤魔化したって顔しない、膨れてもダメ
「予定?何かあるの?」
不思議そうな顔で聞いてくる、
聞いて驚け小生意気な小学生よ、俺はなぁ?
なんと春が来たんだよ
「文化祭一緒に回らないかって言われてさ〜もしかしたらもしかするかもしれない」
「もしかしたらって何?」
「ん〜?なんか好きだから付き合って欲しい的なことを言われてさ?一緒に回らないか〜って」
へぇ………
秋ってやっぱりモテるんだ、お姉さん安心しちゃったよ、
他の子に誘われて嬉しそうに笑っちゃうんだ?
まぁ別に、私は秋の姉みたいな感じってだけで姉じゃないからね、私が口を出すような部分は何も無いと思うから別に関係ないけどね
「あっそ…じゃあ私もう行くね、文化祭楽しんで」
「お、おう、お前も楽しめよ?」
なんで私がこんなに不機嫌になってるのか分からない、これがなんなのか理解したらダメな気がしてしまう
だから逃げるように教室から出る、はぁ〜色んな感情が溢れてしまうから、あの子は今でも苦手なんだと思う
そこからはとりあえずわざとはぐれちゃったママとお兄ちゃんに合流するために歩くけどなかなか合流できない。
一人になって色々考えてしまう、私が死ぬ前に可愛い彼女作れって言ったから?
それとも普通にその子のことが好きになったから?
色んな考えが湧き出てお腹の中に何かが溜まっていく感覚…
姉として私は秋の幸せを願っているはずなのに、心のどこかで上手くいかないでと願ってしまっていた
姉としてこんなの間違ってる、私のことを支えてくれたのに私は秋を支えたいっておもってるはずなのに、どうしてもそうじゃない感情も湧いていて
どう考えても秋が悪い、私が自覚しちゃいけない何かを膨らませてくる君が悪いんだよ。
秋が折ってくれた鶴に何が込められているのか分からないけれど、私にだけ特別だったら嬉しいなと思ってしまう。