弱虫うさぎは病室の中   作:妄言a〜

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信じるからこそ力になる

「ほら!頑張れ!スタンでアップ?ぁっとぉ…とりあえずたって!」

 

「ちなみに…スタンドアップだからね…ふぅぅ…はぁ〜」

 

どのくらいたったろう?当たり前のように私の病院室に来てこのガキンチョは相も変わらず私に立つことを強要し続ける、いや…諦めなよ結構これキツいんだよ?割と真剣に疲れるし目眩もたまにするし、それでもこの子は諦めない…いや…諦めさせてくれないと言った方が正しい

小さい子は飽き性だからそのうち飽きるだろうと思っていた私の浅はかな気持ちを返して欲しいよ、飽きるどころか猛烈な勢いでくるもん熱量がとんでもないもん

 

「頑張った!今日はなんか…えーーとちょっと動いた気がする!」

 

「うん…素直に全く変わってないって言おうね、はい終わり!今日も私は推しを見なきゃいけないから」

 

「お姉さん毎日同じ人ばっかり見て飽きないの?」

 

「君だって毎日代わり映えのない私によく付き合ってるでしょ?」

 

「だってお姉さん頑張ってるもん!頑張ってる人を応援するのは当たり前だよ」

 

本っ当に子供特有の真っ直ぐさが眩しくて、心に直接突き刺してくるのやめて欲しいんだよね…

 

「はいはい、君は将来とんでもないタラシになりそうだね」

 

「タラシ?お皿を洗うやつ?」

 

「それはタワシね」

 

全く…なんだかんだ言いつつ私もこの子を邪険に扱えなくなってきているから困ったものだ

 

「検診来たぞ〜」

 

「あ、せんせ!」

 

「ご、ご?ゴマ先生こんにちは」

 

「はいこんにちは、あと僕の名前はごまじゃなくて吾郎ね」

 

だらけたような口調で入ってくるこの人こそ私の将来の結婚相手…吾郎せんせ

モラリストにして患者である私の心を弄んでくるいけない人…でも大好きな私の光

 

「最近2人は仲良いな?」

 

「そんなことないもん!このあくどい?お姉さんと正々堂々戦うためのとっくん?をしてるだけだよ!」

 

「最近なぜか懐かれちゃったんだよねぇ、今や看護師さんよりリハビリの鬼になってるよ」

 

それはいいな、なんて笑わないで欲しい…子供特有のやろうと思えばなんでも出来るの精神に付き合わされるこっちの身にもなって欲しいという物だ、呑気に笑って…まぁそれはそれで素敵だけど

 

「でもなんだかんだ調子は良いみたいだな?」

 

「えぇ?そんなことないと思うけど?」

 

「僕達も24時間見てあげれるわけじゃないからさ、秋くんにはこれからもさりなちゃんのことお願いしてもいいかな?話し相手になってくれるだけでも変わってくると思うから」

 

「?よく分からないけど…これからもここに来ればいいってこと?」

 

「そういうこと」

 

「分かった!ご、ご?ごろう?先生にはおばあちゃんがお世話になってるから!えっっとぉ?借りは返さなきゃいけないっておばあちゃんが言ってたし!」

 

そういうと満足そうに頷いてしばらく喋ったあとせんせは行ってしまった…あぁ、私のオアシスが

後に残ったちんちくりんは

 

「話し相手って何をすればいいの?」

 

キョトンとした顔でこっちを見てくる…

はぁ〜

 

「今までどうりでいいと思うよ?」

 

「そっかぁ!じゃあ頑張ろう!ほら!お姉さんファイト!!」

 

結局こうなるのか

 

 

ある日いつも通り病室にきたお子ちゃまは大量の折り紙を持って現れた

 

「どうしたのそれ?」

 

「えっとね、つるをおるの!かんごしさんに聞いたんだー。前にね、ここに入院してた人がいたんだけど、せんばつる?っていうのを折ってあげたら治ったんだって!だから僕が今から鶴をおるから、そうすればお姉さんも歩けるでしょ?」

 

そういうといそいそと鶴を折るために紙をいじり始める…けど…

 

「あれぇ?」

 

「折り方知ってる?」

 

「全然!」

 

あ、そうですか…そんな自信満々に言うものじゃないと思うんだけどなぁ…はぁ〜

 

「私も手伝うよ」

 

「ほんと?じゃあ一緒に折ってお姉さんにプレゼントしよう!」

 

私のためのプレゼントを私が折るのか…なんか変な感じしないそれ?と思っても折り方が分からなくて紙をぐちゃぐちゃにしちゃってるし…仕方ないかぁ…

 

私が折り方を教えると何回も失敗して折り紙をダメにしながら、でも諦めないで折り続けていって、ようやく

 

「できたァ!ほら!お姉さんできたよ!」

 

「やったじゃん」

 

千羽とは程遠い1羽めだけどようやく完成したのが嬉しいのかキャキャと飛び跳ねて

 

「じゃあこれを後いっぱい作れば良いんだよね?」

 

「そうだねぇ、後964羽ぐらいかなぁ?」

 

なんだかんだ久しぶりにやる折り紙は楽しくてつい私も鶴を量産しちゃったけど…

まだまだ先は遠いな

 

次の日も

 

「ん〜?なんかお姉さんみたいに上手くいかないんだよなぁ?」

 

「折り方が雑だからね、丁寧に折らないとダメだよ」

 

「丁寧…丁寧…丁寧」

 

ブツブツ呟きながら慎重に腕をプルプルさせながら折るのを見て単純だな〜って笑ったり

 

「ぉぉ〜い、うわぁ、何してるんだ2人とも」

 

「鶴パわぁ〜でお姉さんに力を与えるためだよ!」

 

「なんか私のために千羽鶴を折ってるんだけど私も参加してるんだよせんせ」

 

「そ、そうか…よしお兄さんも協力しよう」

 

そう言って作り始めたは言いもののせんせも作り方が分かってなくて、紙をぐちゃぐちゃにしてて、最終的に

 

「吾郎兄ちゃん…こうやって…ここをおるんだよ」

 

「ここお?ぅぉ…細かいなこれ」

 

「そうそう、それでそこを」

 

「あぁ、なるほどなぁ秋くんは偉いな〜」

 

「えへへ〜」

 

せんせに子供が出来たらきっと良い父親になるんだろうなぁ…って2人の様子を眺めてると

 

「?お姉さん?手止まってるよ?動かして!」

 

「あ〜ごめんなさい?」

 

なんで私が謝らなきゃいけないのか分からなかったけど何となく謝っちゃった

せんせも笑わないでよ!もう!

 

そうして季節は変わって2人とも鶴を折るのが上手になっていき…そして

 

「で、できたぁ!!やった!やったよ!お姉さん!!千個もできた〜!!」

 

最後の1羽を折りきった、大したことしてるつもりは無いし、したことにはならないと思う…けどこんな自分でも目標に向かって進んで何かを達成出来る…そう思うと心がじ〜んとする

 

なぜかそう考えると自然と涙が零れそうになるから慌てて目を擦る

そうやって誤魔化していると頭に小さくて柔らかな手が乗ってくる…

 

「?よしよし〜よく頑張りました!」

 

「私じゃなくてそういうのは君が貰うものでしょ?」

 

「そーなの?おばあちゃんは頑張った人は褒めてあげるのが当たり前!って言ってたよ?」

 

じゃあそれこそ君が貰うべきなんじゃないのかなあ?と思ったから頭を少し雑によしよしする…

きゃぁ〜なんて声を上げて嬉しそうに頭を撫でられて髪の毛をぐちゃぐちゃにされてる

 

ちょっと嬉しかったのは内緒…

 

 

そしてついに

 

 

「はぁ…ふぅぅ〜立ち上がれ…たっぁ!!」

 

「お姉さんっぅ!!!」

 

危なかった…何とか支えてくれてるけど身体全体がプルプル震えててもう限界って感じ

頑張って支えてくれてるのがちょっと可愛らしいなとは思うけど…私ってそこまで重い?

 

「ぉ…ぉもぉぃ…」

 

「乙女に向かってなんてことを」

 

この子の助けを借りてなんとかベットに座る…はぁ〜たっちゃったよ…本当は立てるし、歩ける…でもすぐに目の前がぐらついて転びそうになるから立ちたくなかったのに、立ち止まっていたかったのに…この子はそれを許してくれない…

本っ当に…小さい子は好きになれないよ…

 

「やったねぇ!立てた!立てたよ!お姉さん!!よしよし!!よしよしだよぉ!!」

 

だからそんな泣きそうな顔で頭を撫でてくるのをやめて欲しい、他の人が出来る当たり前を少しやっただけ…それなのに…頑張って努力して、それを褒めてくれる…他人の子供に褒められて…嬉しいって思っちゃうから

 

「はいはい、もう泣かないの…こっち向いて?ぁ〜鼻水もたらしちゃってさぁ」

 

しばらくしたら落ち着いて…

 

「これで次の…すて、ステップに進めるよ!!」

 

「つ、次?」

 

嫌な予感に頬がヒクヒクするのが分かる

 

「散歩行こう!散歩!」

 

あぁ…この子は本当に鬼だ…

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