あれ?ここどこだ…?
知らない天井だ…みたいなシチュは1回は経験したいみたいなこと言う人いるけど俺はできることなら遠慮したいんだよなぁ、だってそれつまり死にかけてるからね?
というか危ないからだいぶロウソクの火消えかかってるから、霞む頭でなんとか現実逃避をしているけどいい加減現実を見なければならないなこれ。
なんでこうなってんだっけ?
確かお姉(たまに公園で会うグラサン掛けた美人)さんに大学合格したというのがなぜか伝わってて、合格祝いになぜか高い店に連れていかれることになってそれで、それでぇ?
ぁ〜思い出してきた、なんか全身黒い人が走って来てなんか光る物持ってて…それでぇ?なんか危ないな〜って思って気づいたら前に出ちゃって、あ〜それでさっきから横腹痛いのか。
なんとか考えを纏めようとする度にズキズキとお腹が痛み始める、呼吸するだけで全身にビリッと痛みが走り、立つどころか起き上がることすらできないな。
なんで生きてるんだ?俺は別にどうでもいいけど、あの人は何とかなったのか?まぁ俺の命であの人が助かるんだったら結果的には良かったんじゃないか?
そう思うとなんで今こうしてここに居るんだろうって不思議な感じがする…俺はあの時あの人の代わりに死んで…それであの人は生きて、それで何となくいい気がしているのに、なんでか知らないけど俺はこうして生きている。
「俺はッ!?!!?…………、、、、」
口から空気が漏れ出て上手く言葉にできない、あ口を動かす度に発音しようとする度にお腹に鈍い痛みが走るせいでまともに喋れないし痛すぎる
不意に手に違和感を覚えて視線だけを横に向ける
俺の手をルビーがぎゅっと握ってくれていた、疲れて眠ってしまっているらしく小さな寝息をたてている、頭にモヤがかかった状態で腹部の痛みのせいで動くことも出来ないけれどそれでも小さくて暖かい手のひらのおかげで自分が今生きているということが優しく伝わった、辺りを見回すとアクアは疲れてしまったのか机に腰掛け寝息を立てている
やっぱり、2人のその姿がどうしても重なってしまう、重なってそしてそうとしか見えなくなって…2人をにんしきできなくなってしまうんじゃないかってぐらいそうとしか見えなくなる。
これは…ダメだろ、2人をそう認識したらダメだろ、気持ちが悪い、この双子は俺の慰めのための代替品なんかじゃない、この子達にはこの子達の人生がある、それなのに…そんな目で見てしまっている俺がこのふたりとこれから先も一緒に居ていいはずがない…
決めた…たぶん向こうから同じ提案をされるだろう
もしされなかったら俺から提案する、それでこの件は全て丸く収まる、それで全部解決ハッピーエンドで収まる、それで良いだろ
「んぅ…?秋…?」
あまり物音を立てていないのに起こしてしまったのだろうか?ぼんやりとした目でこちらを眺めてくる、それに返事をすることが出来ないので、弱々しく手を軽く握る
「あ、秋っ…秋!!」
「ぐぅぅぅ!?!?」
暫くは飲み込めずボーとしていたけど頭が覚醒したのかそのまま抱きついてくる、やめて、傷口開いちゃうからとんでもなく痛いからやめてくれ
その声にアクアも起きたのか、ルビーを宥めて家族を呼ぶようにいい、そのままナースコールで看護師を呼ぶ
「良かった…良かった秋くん、もう目を覚まさないんじゃないかと思った」
はは…そんなに大惨事か、腹に穴は空いたけどこうしてしぶとく生きてるよ、死んでても別に良かったんだけど、とりあえずお前らの大切な人に何にもなくて良かったよ、
それをなんとか伝えたくて、震えてろくに力の入らない手を踏ん張って持ち上げて、そのま頭に落とすように当てる。
そこからは大騒ぎ、定期検査やら俺の家族やらお姉さんが飛びでて泣きながら「私のせいで…」と言われたり大変な騒ぎだった、大騒ぎし過ぎだよみんな、まるで俺に価値があるみたいになるからやめな。
ぁ〜だいぶブルーだな、気持ち的にも身体的にも刺されてるって言うのが影響あるのかな?
そうして慌ただしく時間がすぎて、とりあえず上半身が起こせるようになり、やっとまともに会話できるようになって暫く
「まだ動けないの?」
「まぁね、もう暫くは安静にしてろってさ」
毎日のように双子、たまにお姉さんがお見舞いに来てくれる、君たちあれなの?だいぶ暇なのかな?あと双子はいいとしてあんた超有名なマルチタレントでしょ?大丈夫?
「ふ〜んじゃあリハビリの時は私手伝ってあげるね!」
「えぇ、それはめちゃくちゃ遠慮したいんだけど、なんでそんな嬉しそうなんだよお前は」
さりな姉さんに無責任に頑張れって言いまくってたけど、この状態から動くのってキツくない?あの人凄いな
そうやってなんでもない会話をしていると苺プロの社長が来て、ルビーは退散させられる
最初はお礼やら挨拶やら謝礼やら表面上の会話で話が進む、もちろん誠意は本物だろうし感謝していることは十分に伝わった、けど
本題はそこじゃないんでしょ?
「今回の件に関して、俺たちは君に感謝している、君のおかげでアイは傷一つなくピンピンしているわけだしな」
「いやぁ、たまたまですよ」
「それで…なんだが…」
言いずらそうに目を伏せる、この人は汚い大人のやり方を散々みて、そして自分でもやってきている人だろう。
自分の目的のために他人を蹴落として利用して、そんな人が言葉に詰まるほどに今回の俺の功績は凄いらしい
「分かってますよ、今回はたまたま買い物に来ていた俺が見知らぬ女性のために身体を張った、それがたまたま超有名なタレントだった、そして俺と貴方たちは何の関係もない」
「…分かってるのか?」
分かってるも何も俺から提案しようとしてたことだ、そして話の本題はここじゃなくて
「そしてこの先も突っつかれたら面倒だから関わることはない、ですよね?」
「その…通りだ…」
俺の目線に耐えかねたのか逸らして、重苦しい雰囲気を纏った言葉が出る。
そう、それはつまり
「俺は双子と会う訳には行かない、そこから考えられる答えは、あの子たちはアイさんの子供」
「そこまで分かってたのか、あ、あぁ、」
ここだけの話16の時に産んだと言われてめちゃくちゃびっくりした、マジで?業界の人怖すぎない?
「別に大丈夫ですよ?何をそんなに深刻な顔をしているのか分かりませんけど」
ただ1年余り一緒に遊んだだけ、それだけの関係性でルビーに至っては連絡先すら交換していない始末、ただあの時たまたま転んで、それを助けて、そこから始まった関係性なんて簡単に壊れてしまう、それが劇的かなんの面白みもなく終わるかだけの違いだろ
「…ッ………俺はこれ以上巻き込まれるのはごめんですしね?今刺されたってことはこの先いつどこで何があるわ分からないじゃないですか?怖すぎてちょっと引きます、それにあの子たちと関わってたのだってなんか美人な知り合い居ないかな〜って思ってただけですし?」
これでいいだろ、そこで隠れて聞いてるんでしょ?俺のこれが演技かどうかは分かってるんだろう、分かってて、それでも乗っかってくれる、あなた達と過ごしたこの1年間は俺にとってかけがえないもので、この先の人生目標に向かって走る時にふと思い出して懐かしむ、そんな思い出をくれてありがとう
「じゃあ、俺そろそろ眠いんで」
「あぁ…ありがとう…そして…すまない」
空はどんよりした曇り空で珍しく雪でも降りそうだなと窓を眺めながらふと思う…
キツイな…
「あの時君のおかげで助かったんだ、ありがとうね!秋くん!」
「いえいえ、ダメかと思いましたけど助けられて良かったです」
お互い初めましてで、病室に顔を出したアイさんと会話をする、中身なんてないただ体裁を保つためのもので、こんなもの俺からしたら意味は無い、さっさと済ませておかえり願おうと思っていると
「何か一つだけ贈り物をさせて?」
贈り物…贈り物かぁ?
思い出したようにカバンを漁って古いキーホルダーを取り出す
「これにサインをお願いできますか?」
「えぇ?これって随分古いヤツだよね?前から私の事知ってくれてたの〜!ありがと!」
そう言ってサッとサインを書いて手渡してくれる。
良かったなさりな姉さん、念願のアイにサインを書いて貰ったぞ
「ありがとうございます、これからも頑張ってください、応援してます」
「こちらこそありがとうございます!」
ペコッと可愛らしくもあり、礼儀を感じさせる礼をしてそのまま帰って行った。
本格的に双子との縁は切れて、これで何もかも解決
これで良いだろ、
「これでいいだろ…さりな姉さん、やっとサイン貰えたな?良かったな…」
これで…良い…
「吾郎先生…俺、大学合格したよ…結構いい所でさ?勝手にした約束を勝手に叶えるために頑張ってるよ…とりあえず1歩前に進んだよ…」
キーホルダーを握りしめて、ただ静かに伝える、伝わるはずなんてないと分かっているのに、意味などないと知っているのに
伝えたくて…たまらない