「ラプラス、お前も戦えるよな?」
「ああ勿論だ。吾輩もあの時とは状況が違うからな」
「なら良かったぜ」
リヴィスの問いかけに対して俺は力強く答えた。
その返事を聞いたリヴィスは安心したように笑いかけてきた。
その顔を見て少しドキッとした。
「お主らはワシと戦うつもりか?無駄だということが分かるまでは頭は悪くないようじゃのう」
「うるせえ、黙れ」
「ふん、威勢だけはいいのう。まあ、良い。それでは始めようかのお」
そう言って初老は不敵な笑みを浮かべながら手を前に出した。
そして何か呪文のようなものを唱え始める。
それと同時に地面が激しく揺れ始めた。
そして次の瞬間には巨大な魔法陣が展開されていた。
「ッ!?」
初老の詠唱が終わると同時に、凄まじい衝撃波が襲ってきた。
咄嵯に防御したがあまりの力強さに耐えきれず吹き飛ばされ、そのまま壁に激突してしまった。
痛みはあるが、何とか立ち上がることが出来た。
しかし初老は余裕そうに佇んでいるだけだった。
「ほう、今のを防ぐのか。なかなかやるのう。じゃが、次はどうかのう?ほいっ!」
初老が手をかざすと、今度は無数の氷柱が出現して飛んできた。俺は剣で薙ぎ払いつつ、避けきれないものは拳で叩き割っていったが全てを防ぎきることは出来ずいくつか食らってしまうことになった。
幸いにも致命傷になるようなものは無かったため気にせず初老に向かって走り出す。
だが、初老が指を鳴らすと同時に俺の足元が爆発した。それによってバランスを崩してしまい、そこを狙ってまた新たな攻撃が迫ってくる。
「サクラカゼ・ミコト!」
そこにみこちの声と共に大量の桜の花びらが舞い上がり、視界が悪くなるとともに爆発によるダメージを軽減することができた。
しかし完全には防ぎ切れなかったようで爆風によって再び壁際まで押し戻されてしまう。
だがそんなことは想定内だったらしく、リヴィスと風真はすでに初老に斬りかかっていた。だがそれは容易く避けられてしまう。
「みこち、魔法使えたのか!?」
「うーん、一応使えるけど得意じゃないにぇ。でもみこだっていつまでも守られてばかりじゃ嫌だし、少しでもみんなの役に立ちたいもん!」
みこの言葉を聞いて思わず泣きそうになった。
こんなにも頼もしくなった彼女を見ていると自分の不甲斐なさを感じずにはいられなかった。だが今は感慨に浸っている場合ではない。
「ラプラス、風真達も頑張るでござるよ!」
「おう、任せておけ」
「了解でござる!」
いろはとリヴィスは剣を構えて初老を見据える。すると初老はこちらを睨みつけ、先程よりも強い殺気を放っている。どうやら本気を出すようだ。
「ふぅ······」
深呼吸をして気持ちを整えると、一気に駆け出して距離を詰めていく。
同時に動き出し攻撃を仕掛けるが、簡単に防がれてしまった。それでもめげず何度も攻撃を繰り出したが、どれも簡単に防がれてしまった。
しかしそれで諦めるほど俺たちは弱くない。
その後も必死に喰らいつくが、いろはとリヴィスの攻撃は軽くあしらわれ、逆に軽々と受け止められてしまっていた。
「いろは!今だ!」
「承知!秘技、風遁の術でござる!からのぉ·······忍法乱れうちでござる!」
初老が二人に意識を向けている間に、背後から忍び寄っていた風真の強烈な一撃が決まる。さらにそこから連続で斬撃を繰り出すことで初老の動きを封じることができた。リヴィスはその隙を逃すことなく渾身の力を込めて一閃を放つ。
「ぐぬっ···!?小童どもが···調子に乗るなぁ!」
怒号を上げながらリヴィスの猛攻を振り払う。しかしその時には既に俺の姿はなく、上空に飛び上がっていた。落下速度を加えながら全身全霊の力を籠めて思い切り殴りつけた。
しかしそれを見切った初老はすぐに反応して腕で受け止めると衝撃が走る。
「ぐうっ!なんじゃその馬鹿力は!人間族如きの力でここまでワシを傷つけられるとは思わなんだぞ!まさかお前さんが魔王なのか?」
「違う!俺はただの冒険者だ。それにまだ終わってねえぞジジイ!」
俺の発言を聞いた三人は驚きつつも笑みを浮かべた。俺は構わず拳に魔力を集めていく。
「ほう、ワシ相手に魔法で戦うというのか?なら見せてもらおうかの。お主の本当の実力というものを」
よし、これぐらいあれば十分だろう。
十分に溜め込んだところで勢いよく放出する。炎に包まれた灼熱の砲撃を放った。そしてそれは一直線に初老目掛け飛んでいくが、案外呆気なく避けられてしまう。
「ふん、この程度では話にもならんのう。さあ次はどんなものを見せてくれるのかのう」
余裕そうな表情を浮かべながら挑発してくる初老だったが、次の瞬間には信じられないものを見たかのように目を丸くしていた。
何故ならばいつの間にかラプラスが上空で大魔法を詠唱しており、初老はラプラスを止めに行こうとしたが時すでに遅し。
詠唱を終えたラプラスが手を掲げる。
「――ラプラス、今だ!」
合図を送るとラプラスはニヤッと笑い、魔法を発動させる。
「吾輩の最強魔法を味わうがいい!」
『―――アブソリュート・ダークネス・バレット!』
黒い波動が撃ち出されると初老を飲み込み、そのまま大地を削っていく。
そして数秒後。
辺り一帯を吹き飛ばす程の爆発が起きた。
みこといろはリヴィスは爆風から逃れようと必死になって耐えていた。やがて煙の中から大きなシルエットが見え始めると徐々に収まっていった。
「ラプラス、俺たちを巻き込む気か?」
「すまん、つい力が入ってしまったわい。これで流石に死んだやろ」
確かにあの威力だと、初老どころか城ごと吹き飛んでいてもおかしくはないはずだ。
「周辺にもジジイがいる気配は無いな」
「そうですね、恐らく逃げたんだと思うでござる」
「んじゃ、まずは帰る方法を探さないとな。ってみこちどうしたんだその身体·····」
みこちを見ると、かなりボロボロになっていた。もう体力の限界らしく、フラついていて今にも倒れそうだ。
慌てて駆け寄り抱きかかえると、彼女は嬉しさと恥ずかしさが混ざったような複雑な顔をしている。
「みこはだいじょ·····ぶ、にぇ」
「全然大丈夫じゃないだろ!ほら、しっかりしろ!」
「やっぱ、ちょっと無理にぇ·····」
「ちょっ、おい!」
みことは気を失ってしまったようで、グッタリとしている。
「どうすれば元の世界に帰れるんだ?」
リヴィスは困り果てた様子でこちらを見る。するといろはが何かに気付いたようだ。
いろはが指差したところは、先程まで無かったはずの扉があったのだ。
「あれ、なんでござるか?」
「行ってみるしかないだろ。他に手がかりもないしな」
「じゃがその前にみこのことをなんとかせんとな。このままじゃ死んでしまうぞい」
「とりあえずどこか休める場所に連れていこう。話はそれからだ」
こうして俺達は謎の部屋へと足を踏み入れたのだった。
***
「ここは·····?」
目が覚めたら見覚えのある場所に居た。
「うわ!びっくりしたーw」
「シオン先輩···?どうしてここに······」
「えっとね~······」
何が起きているのかさっぱり分からないけど、とにかく今は目の前にいる大好きで尊敬できる人と一緒にいることが何よりも嬉しいと思った。
「シオンさ、すっごくトイレに行きたくてそこら辺をウロウロしてて、トイレを済ませて戻ってきたら誰もいなかったんだもんw」
「いや、俺はハッキリとシオンがエデンに行ったのを見たぞ?」
「それ多分いろはちゃんだと思う」
「風真は違うでござる」
「みこはいろはちゃんと一緒に入ったにぇ」
俺達三人は互いに顔を見合わせる。
どういうことだ、俺達が見たのはこの世界に来た時の状況と同じだ。つまりこれは夢なのか? でもこの痛みとか感触は明らかに現実だ。
「つまり、あの時入っていったシオンはジジイだったってことか」
「多分そうだにぇ」
「そっか、良かった」
ホッとしたのか、リヴィスはその場に座り込んでしまう。
「いろは、みこちを頼んでいいか?」
「分かったでござる」
「ありがとう。俺は少しだけ休むから」
「ゆっくりするといいでござる」
そして暫くして、ようやく落ち着いたのか立ち上がった。
「よし、行くか」
「どこに行くでござろうか」
「さあな、それはこれからのお楽しみだ。シオン、もう行けるか?」
俺が聞くと、シオンは元気よく返事をする。
やっぱり[[rb:この子 > シオンちゃん]]には笑顔が一番似合う。
こうして俺たちは、あくあがいるシオンの家へと戻っていった。
***
「あくあちゃん帰ったよ」
「シオンちゃんおかえり」
「ただいま」
「ちょっとシオンちゃんとリヴィスさんに話があるんだけど·····」
そう言うと、二人は真剣そうな表情になる。
そして、あくあは一呼吸置いてこう言った。
「あてぃし、シオンちゃん以外に友達が出来たんだ·····。へへへ·····」
「!?」
突然の報告に、二人とも驚いている。
「スゥ·····。それで、その人を今部屋で待っててもらってるんだけど」
「うん?」
「紅茶とお菓子は出したか?あくあ」
「出してないです」
「なら、早く用意しろ。おもてなしは大事だからな」
「はい。すみません」
そう言って、あたふたしながら準備をしている。
「ふぅ、これで良しか」
「じゃあさ、早速呼ぼうぜ」
「そうだね」
コンコンとノックすると、中からはどうぞと声が聞こえてくる。
ドアを開けるとそこには·····、海賊の帽子を被り、赤髪の眼帯を付けている女性が居た。
「Ahoy!宝鐘海賊団船長の宝鐘マリンですぅー!」
「·······」
「·······」
「·····ん?」
「えっ、あれっ?」
どうやら予想していた反応とは違ったらしく、戸惑っている様子だ。
「あっ、もしかして船長歓迎されてなかった感じですかぁ?もぉ~、恥ずかしいな~」
「いやまあ、確かに驚きましたけどね?」
「あれれぇ?君たち誰?」
「俺はリヴィス。よろしくな」
「シオンだよ。ところで、どうしてそんな格好をしてここに居るのかな?」
シオンの質問に対して、彼女はニヤッと笑う。
「そりゃもちろん、あなた達に宣戦布告するためですよ!」
「·······」
「·······」
「·······」
「·······え?」
「え?じゃないわ!」
「えっと······」
「えっ、まさか本当に忘れたわけ?」
「何を·····?」
「みんなお待たせー」
丁度いいタイミングであくあが戻ってくる。
「スゥ·····。なんで敵対してるの?」
「あくあ、本当にコイツは友達なのか?」
「そうだよ。とても優しい方で、あてぃしのことを色々と気遣ってくれたもん」
「なるほどねぇ~。そういうことか~」
何かを察したのか、シオンは腕を組みながら何度も首を縦に振る。
「なんだよシオン、一人で納得しないでくれよ」
「いやいや、これは流石に当てられないと思うよ?だってね·····」
シオンはゆっくりと口を開こうとしたが、それを遮ってあくあが喋った。
「船長は一緒に船を作った友達なんです·····」
「船なんていつ作ったんだ?」
「シオンちゃんとリヴィスが旅をしている間に·····」
「見せてもらうことは可能か?」
「多分大丈夫だと思います」
そして俺達は、船へと案内された。
***
「これがあてぃしたちの船」
「おお、凄く綺麗だな」
「でしょでしょ?」
目の前には、大きな船が停泊している。
船首には海賊のシンボルである旗があり、マストには帆が張られている。
船体は赤とピンクを基調としていて、所々に水色が使われている。
また、甲板には大砲が幾つもあり、それに加えて砲台が設置されている。
そして、一番気になったのは船の中央にそびえる巨大な煙突だった。
その大きさは、まるで戦艦のようだった。
シオンとリヴィスは、この船を一目見て気に入ったようだ。
だが、俺は少しだけ違和感を感じていた。
それは、何故か分からないけれど、どこか懐かしい気がするのだ。
でも、一体どこからそう思ってしまうんだろう。
そして、あくあが説明を始める。
「この船の名前は“あくあマリン号“」
「あくあって名前を付けたんだね」
「うん。あてぃしと船長の名前を組み合わせてみたんだ」
「良いセンスだと思うぞ」
「ありがとうございます!」
嬉しかったようで、笑顔でお礼を言う。
「それで、この船で何をするんだ?」
「当てたら教えてあげます」
そう言われてもなぁ·····。うーん、何だろうな。
海賊と言えば、やっぱり略奪とかかな。
しかし、あくあの様子を見る限りだと違うみたいだ····。他に思いつくのが宝探しくらいしかない。
「もしかして旅に行くのか?」
「違いまーす!正解は魔界にある魔界学校です!」
「魔界学校!?」
「はい!これから皆さんを招待します!」
そう言うと、彼女は舵輪を回し始める。
すると、船は動き出し徐々にスピードを上げていく。
「さあ行きますよ!目指すは魔界学校!」
こうして、俺たちの旅は新たな一歩を踏み出した──。
「───出航ー!」
「「ヨーソロー!」」
その場にみんなの声が響き渡ったのであった。