俺の学校の天使様を堕天させた結果。   作:たかたけ

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鶏肉が美味い。


抱ける女は抱いておけ 1

 

 俺は今夢を見ている。

 

 そんな自覚がある夢を俺はよく見る。

 

 とても酷い悪夢。

 

 出来ればそんなものは見たくない。

 

 ただただそれを見た日は気分が悪い。

 

 幸い、ソレを夢だと自覚できるのが唯一の救いだ。

 

 いや……実際に俺はただ、それが夢であれと思っている─

 

 

 

──ただの臆病者なんだろう。

 

 

 

────────────────

 

 うざったいほどの太陽光が閉じている瞼に突き刺さる。それなのに眼球はその光をしっかり受け取るのだから瞼の怠慢がよくわかる。

 いや、眼球が優秀なのか?

 

 「ンァ…?」

 

 俺は目を覚ました。うざったい太陽光に続くようにしてうんざりするほどの青空が広がっており、どんよりと雲のかかった俺の心模様と対比する。

 

「チッ…」

 

 俺は気分が悪くなってつい舌を鳴らした。先程まで見ていた夢のせいで気分が悪い。どうせなら昨日のようなどんよりとした雲と雨くらいの方が良かった。

 

 俺はその場で立ち上がる。ここは学校の屋上。しかも貯水槽が置いてある一番高い場所だ。

 俺は乾いた喉を潤そうとそこからヒョイっと飛び降りた。そこへ登るための梯子もあったが今はソレを使うことさえ億劫だ。

 

「え?」

「─は?」

 

 今は授業中。こんなところに人がいるだなんて思わなかった。亜麻色の髪を持った少女は一瞬驚愕の表情を作った後、自らを守るために身を丸めた。

 

 ─右足で壁を蹴って自由落下の軌道をズラす。そして右手を地面について受け身を取る。

 

 俺は膝をついて立ち上がる。そしてそこに居た女を一瞥する。

 

「……気を付けろ」

「……」

 

 膝に顔を埋めた女の横を通って俺は階段を降りる。あんなところで何してたんだ?アイツ。という疑問が脳裏を掠めたがとりあえずは喉を潤わそうと自動販売機へと歩みを進めた。

 

─ガタン。

 

 自動販売機が飲み物を吐き出した音がした後すぐに俺は自動販売機の口に手を突っ込む。買ったのは白桃の味が付いた水だ。

 

「……」

 

 俺は少し考えた後に手に持っていた財布の口を再度開けて手を突っ込んだ。

 

 

 

「ホレ」

「…何ですか」

「当たった。俺は要らねえ」

 

 俺は左手に持っていた紅茶のストレートティーを手渡す。だがその女はソレを受け取ることもなくただソレを見つめるだけだ。

 

「ひゃっ!」

「けっ」

 

 少しイラついた俺は左手に持ったペットボトルを投げ付けた。何か言いたげな女の視線を受け流しながらフェンスに背中を預けて地面に座る。

 そして好奇心が思うままに正面の女に質問した。

 

「んで?うちの学校の“天使様”がこんな時間にどうしたんだ?」

「……貴方には関係ありません。要らないことに口を突っ込まないでください」

 

 俺は噂に聞いていた女性像と違う正面の女の様子に目をパチクリさせる。

 

「何ですか。噂と違ってガッカリでもしましたか?生憎ですけどそんなこと貴方に言われる筋合いもありませんから」

「…別にナンも言ってねえだろ」

「……」

「シカトかよ」

 

 また膝に顔を埋めた女に俺はため息を吐く。

 

「(マア…聞かれたくねえモンくらいはあるか…)」

 

 俺はそうして思考を完結させて、もう一度瞼を閉じた。

 

 また同じ夢を見ないように願いながら。

 

 

 じわりと意識が覚醒する。誰かに触られているかのような感触がしたのだ。

 

 俺はゆっくり目を開く。

 

「…オイ」

 

 さっきからゴソゴソとしていた女に声をかける。そうすると突然声をかけられたことに驚いたのかその女は肩をびくりと震わせた。

 

「…なんですか」

「なんですか。じゃねえだろ…お前がナニしてんだよ」

 

 何故か気丈に振る舞う女に内心首を傾げながら俺はそう言った。女は手に包帯と小さめのハサミを持っている。よく見ると俺の右腕には包帯が巻かれていた。

 どうやら捻挫したところを手当してくれていたようだ。

 

「…捻挫していたのか。俺にこんな事するギリはないんじゃねえのか?」

「……紅茶。貰ったので」

 

 女がチラリと視線を向けた方を見ると半分ほどまで減った紅茶が入ったペットボトルが置かれている。

 

「ハッ…さっきのことで少しでも責任を感じてるとでも言ったらもう少し可愛げがあったんだがな?」

「可愛げってなんですか。そんなもの私に求めないでください。それにアレは貴方が勝手に降りてきて勝手に避けたんでしょう。ソレに感謝こそすれ責任を感じることなんてありません」

 

 完璧と言えるほどの鉄面皮がそう言う。少しでも表情を崩してやろうと思ったがピクリとも動かないこと少し残念に思う。だがその容姿も相まって人形のようなので見つめる分には目の保養になりそうだ。

 

「動かないでください。まだ終わっていません」

「動いてねえだろうが」

「動く前に言っておこうと。そのまま動くと治りが遅くなります」

「少しぐらい平気だろうが」

「その口も閉じてください」

「……」

 

 息をするように毒を吐く女にまた溜め息を吐いた。……抱くにしては良さげな女なんだがな。毒を吐く女が従順になる姿は一種の快楽のような達成感がある。

 

 手当てが終わり寝る前にいた位置へと戻った女はまた膝に顔を埋めるようにして黙ってしまった。

 俺は今にも落ち切ってしまいそうな太陽を見ながら口を開く。

 

「お前は帰らないのか?」

「………」

「……」

「………」

「…オイ。答えることくらいできるだろうが。ソレともママと喧嘩でもして家に帰りたくないのか?」

「……うるさいです」

 

 そう言って黙った女に俺は口角を上げながらこう言った。

 

「じゃ。オレん家来いよ」

「…はい?」

 

 

 

「…お邪魔します」

「ああ」

 

 あの後一度は断られたものの数回誘ってみたら意外にもあっさりと釣れてしまった。よっぽど家に帰りたくないのか?

 

「…汚いですね」

「ア?そうか?男の部屋なんてこんなモンだろ」

 

 多少物が散らかっているかもしれないが生活はできる。実際に俺ができているんだから。……男の人はみんなこうなんですかね?という女の呟きを聞き流しつつ俺は奥へ進んでいく。

 

「…お部屋が広いからギリギリ過ごせるくらいに収まってますけど、普通なら足の踏み場もありませんね。ゴミ屋敷です」

「……」

 

 同じようなことを他の女に言われたなと思いながら俺はソファに腰掛ける。

 

「で?男の部屋にノコノコと入ってきてどうするつもりなんだ?」

「どうするとは?」

「だから─

 

 俺はその女の手を掴んで壁に押し付ける。俗にいう壁ドンというやつだ。ついでに反撃を喰らわないように足で女の足の動きを制限する。

 

 ─襲われる覚悟出来てんのかって言ってんの」

 

 俺の身長は182cmこの女の身長は高くても150cm後半と言ったところだろう。俺はその女を見下ろす形でそう聞いた。

 するとその女は少し考えた後に全てを諦めたような瞳でそう言った。

 

「…それも、良いかもしれませんね」

「………」

 

 光を持たない栗色の瞳を俺に向けられた俺は謎の苛立ちを覚えた。

 

「んんっ!?」

 

 俺は無理やりその女の唇を奪う。リップや口紅などのペッタリした感覚もなく素のままの潤いを持った唇は今まで合わせてきたどの唇よりも気持ちがいい。

 

「ん………ちゅ、……んあ……ふ、あふ……」

 

 突然のキスに固まってしまった体をほぐすように優しくバードキスをする。10分ほどそれを続けているとようやく緊張がほぐれてきたようだ。俺はソレを見計らって壁に押さえつけていた手を恋人つなぎへと変えていく。

 そしてバードキスから深めのキスへと変えていく。

 

「ちゅる………くちゅ、あむ……んっ!?」

 

 絡めた舌をたまに吸うとピクッと良い反応をする。なかなか抜け出せない心地よさにかなりの時間キスをしてしまった。唇がふやけそうだ。だがすっかり女は出来上がったようだ。頬から耳までも赤く染め上げて悩ましげに息を吐いている。

 ってか刺激が強えな…。

 

 恋人繋ぎを離した手をゆっくりと女の頭へと持っていき手入れを欠かしていないことがわかる絹のような髪ごと頭を撫でる。たまに首筋を撫でると効果的だ。ちなみに反対の手は腰を掴んでいる。逃さないという意思表示だ。

 

 頭をゆっくり撫でつつ耳を軽く噛んでみる。コリっという軟骨のような感覚が心地よい。たまに耳元でリップ音を鳴らしたり頬同士を重ね合わせても良い。

 

「悪いが…。俺は“いいヤツ”じゃないからな。逃げられると思うなよ?」

 

 そう耳元で囁くとその女はビクリと体を震わせて喉を鳴らした。そしてゆっくり俺の腰に腕を回す。

 

 太陽が堕ちる。影は一度なり顰め、月明かりが彼らを照らす。その部屋の影はずっとひとつしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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