俺の学校の天使様を堕天させた結果。   作:たかたけ

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この物語はフィクションです。


コミュ障がコミュニケーションができないのは表現能力の低さ 4

 

「こんなとこで何してんだ?ここは屋上じゃねえが…話くらい聞くぜ。真昼」

「……」

 

 ……………あ?

 

 俺が声をかけても真昼からの返事はない。

 

「おい?どうしたんだ?またシカトすんのか?」

「───」

 

 俺がそう聞くと真昼がぎゅっと俺の服を掴んでくる。その手は小刻みに震えており弱々しい。

 

「……お前…声、出ないのか?」

 

 真昼はコクコクと頷いた。そして何かを言おうと口をぱくぱく動かすが空気が漏れるような音が聞こえるだけで声と言うには程遠い。

 

 そして真昼のひとみからボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちる。俺はその真昼の痛々しすぎる姿を見て唖然とした。

 

 そして怒りが湧いた。誰だコイツをこんなになるまで追い込んだやつは…。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ…。

 

 一度沸いた怒りは治ることを知らず溢れ続ける。傘を持つ反対の手から血が滲み出した。真昼は俺が一度抱いた女だ。多少の情も移る。

 

 だがそれ以上に女をこんなになるまで追い込んだ奴を許せねえ。

 

「っ」

「……」

 

 強く握った手を真昼に掴まれてハッとする。そうだった…今はコイツのことが一番大事だ。

 

「とりあえず…俺の家まで行くか」

 

 

 家に着いた俺はとりあえず真昼を風呂へと放り込んだ。今1人にするのは少し気が引けたがアイツが1人で入ると言ったから仕方ない。…アイツは俺が年中発情してるとでも思ってんのか?

 

 俺は水を火に掛けながら、先ほど自分で切ってしまった手のひらを治療していた…って言ってもガーゼをテープで止めただけなのだが…。

 

 それにしても…一体真昼に何があったのか。声が出なくなった理由はなんとなくわかる。おそらくだが心因性の失声症だろう。風邪や炎症などは彼女の様子から考えにくい。まあ後ほど病院に連れていくが。

 

──ガララ。

 

 考え込んでいると洗面所のドアが開いた。いつの間にか風呂から出てきていたみたいだ。

 

 ピンク色のネグリジェを着た真昼がおそるおそるとダイニングへ顔を出した。手にはドライヤーが握られておりコンセントを出す場所が見つかっていないようだ。

 

「真昼」

「…っ」

「そんなビビるなよ…。それよりこっちに来い乾かしてやるよ」

 

 おい…こっちは善意で言ってるんだぞ。だからその『何をするつもりなんだ?』みたいな疑う表情をやめろ。

 

 なんとか真昼からドライヤーを奪取し、彼女をソファに座らせる。俺はソファの裏にあるコンセントをつなげる場所にコンセントを刺す。

 

 ブオオ…とドライヤーから暖かい風が生み出される。俺はそれを真昼の頭へと向ける。手で空気の通り道を作り、髪の根本を温風でしっかりと乾かす。

 

「どうだ?悪くないだろ」

 

 真昼はこくりと頷いた。真昼の髪はサラサラでやっているこっちからしても楽しいと感じる。

 

「ほれ、終わったぞ。…なんか飯でも食うか?」

「……(コクリ)」

「はいよ。って言ってもすぐ出来るのはラーメンくらいだけどな。…それで良かったか?」

「……(コクリ)」

「じゃ、作ってくるから少し待ってろ」

 

 真昼が頷いたことを確認して俺はドライヤーのコードを抜いてひとまとめにして手頃な場所に置いておく。そしてキッチンへと向かい、先ほど火にかけていた沸騰したお湯を手頃な鍋に移して再度火に掛けておく。戸棚から5袋纏めのうま◯っちゃんを2袋取り出し、再度沸騰した鍋のお湯に中の乾燥面を入れる。

 麺を茹でながら俺は真昼の様子を確認すると俺は少し笑ってしまった。真昼はソファに姿勢良く座っておるものの妙にそわそわしながらこちらをチラチラ視線を向けてくる。あ、目が合った。

 

「…落ち着かねえのか?テレビの近くにリモコンがあると思うから見てて良いぞ」

「……(フルフル)」

 

 真昼は頭を横に振った。ん?これはテレビがいらないってことか?落ち着かなくないってことか?

 真昼がどちらの質問に答えたのか分からなくなった俺はもう一度彼女を見る。真昼はソファから動く様子もなく先ほどと同じような動作へと戻っていた。………。

 

「…真昼。手伝ってくれ」

「(コクリ)」

 

 待ってましたと言わんばかりに頷くのが早かった真昼は、床に散らばったゴミなどを避けながら近寄ってくる。

 

「こっちはもう器に移し替えるだけだから、真昼は箸とコップと冷蔵庫のお茶を出してくれ。コップと箸はそことそこな」

「(コクリ)」

「ん。じゃあよろしく」

 

 まだ確定とは言えないが…心に傷を負った彼女が今、こうやって恩などを返す行動をすることができるのを見ると相当真昼は心が強いんだろうと思う。普通いきなり声を失ったら取り乱し、混乱し、自身のことで手一杯になってしまうだろう。

 

 だが今回は、その心の強さが不幸を招いたのかもしれないな。

 心が強い人ほど心の中に膿を溜め込みやすい。そしてその膿は発散しなければならない。それを怠ると膿は少しずつ心を蝕んでいき何かのきっかけで最も簡単に破裂する。

 

 真昼には何が合ったのかを聞きたいがそれを聞いたら負担になるだろう。というかそもそも拒絶される。

 

 なら今俺がするべきなのは彼女が休みやすい“居場所”を作ること。俺にはそんなことしか出来ないのだ。

 

 

 

「病院行くぞ」

「…(フルフル)」

「…いや、声が出ねえのは明らか病院案件だぞ?なんなら今から救急車でも呼んでやろうか」

「……(フイッ)」

「おい。顔背けてんじゃねえよ。金は払ってやるからさっさと行くぞ」

 

 俺は頑なに頭を縦に振らない真昼に少しイラッとした。

 

「あ、お前保険証持ってるか?って無いか」

 

 そう言えばコイツなんも持ってきてなかったわ。

 

「じゃあ病院に行く前にお前ン家に寄らないとな」

「……」

「…嫌かもしれないが、俺も付き添う。今のお前を1人行動させるのは俺には無理だからな」

「…(コクン)」

「よし、じゃあ行くぞ」

 

 真昼はボロボロの状態で俺の家の周りを彷徨いていた。それが無意識のモノなのかはわからないがコイツは家に居たくないと思ったんだろう。

 

 俺はソファから立ち上がった真昼にジャケットを着せる。真昼はジャケットのブカブカの裾を揺らしながら小首を傾げている。『なんでこんなのを着出すんだ?』とでも考えてそうだ。因みにだが濡れていた服はとっくの前に乾燥が終わっているので真昼の服装は元々着ていた服だ。

 

 そしてマンションを出た俺は真昼にここで少し待つように言って、とあるものを取りに行く。

 

「真昼」

「……(ぱちぱち)」

 

 マンション前のベンチに座っていた俺を見て目をパチクリさせる。おそらくだが驚いているのだろう。

 俺は持ってきた大型バイクを真昼のそばに止める。

 

「一応言っておくが、免許は持ってるからな」

「……(ジトー)」

「まあ待て、分かる。お前が言いたいのは二人乗りは2年以上経ってからってことだろ?」

「…(コクン)」

「良いことを教えておいてやる…偉大な先人の言葉だ。

 

──『バレなきゃ犯罪じゃないんだよ』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、わかったから。その顔をやめてくれ」

「……(ジドー)」

「安全対策は万全だ。それに誤魔化すのも得意だ」

「……(ゴゴゴゴゴゴ…)」

「…落ち着け、ジョークだ。タクシーを呼ぶ」

 

 結局タクシーになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 大型バイクの免許を取ってから一年以上立たないと二人乗りはできません。まあ免許取るときに学ぶと思いますが…。

天使様8.5巻楽しみですか? 9/14発売予定。

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  • 表紙の真昼可愛すぎだろ!
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