俺の学校の天使様を堕天させた結果。   作:たかたけ

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タイトルに意味はありません。

むしろ意味がないことに意味がある。




人は箱庭という自由の中に生きている 6

 

 翌日…特に何もなく次の朝を迎えた俺たちは早速家の掃除を開始した。

 

 俺はいつものいらないものの分別や重い物を運んだりと割と大雑把なところの掃除を始めた。というかそれ以外に手をつけたらなかなかに大変なことになる。

 

「─それ持つぞ。真昼は他のところを頼む」

「…(コクン)」

 

 とまあこんな感じに俺は真昼のサポートやら荷物運びやらの仕事をこなしているわけだ。

 

「…げ。俺の部屋のするのか」

 

 床に散らばっていた物が大まか片付いた頃、真昼は俺の部屋のドアノブに手を掛けたのを見てそう言った。

 

「…(コクン)」

「…まあ、そうか。やるしかねえか…」

「…?(コテン)」

 

 俺が覚悟を決めていると真昼は首を傾げながら部屋のドアを開けた。

 

「……………『なんですか、これ』」

「…俺の部屋だ」

「……」

 

 今の真昼の表情を言葉に表すなら唖然と言わざるおけないだろう。真昼が開けたドアの先には一面がゴミや本などに埋まり、床が見えないという状態があったのだ。

 真昼の頬が引き攣っているのが見える。流石の真昼もこんな景色見たことがなかったようだ。

 

「……(ふんす)」

 

 その状況を真昼と並んで見ていると真昼は服の裾を捲ってふんす!と気合を入れていた。逆境を前にするとむしろ燃えるタイプらしい。

 

 その後溜まりに溜まった物やらゴミやらに悪戦苦闘するもなんとか部屋を綺麗にすることができた。ふう…息を吐くと真昼が先ほど本棚に入れた本を見て何かを考え込んでいるようだった。

 

「……それが気になるのか?」

 

 真昼が見ていた本は俺が買ったプログラムが学ぶ人が見るような初心者本だ。

 

「……(コクン)」

「俺の仕事本だよ。まあもう全部覚えちまったし捨てても良いんだがな」

「…?(コテン)」

「…仕事本ってのが気になるのか?」

「…(コクン)」

「まあ、そのままの意味だ。フリーでプログラム組んでそれを売ってるんだ。だから仕事本」

 

 別に隠すようなことじゃない。まあ言ったら金目的で近づいてきたりする奴もいそうだが真昼は事情が事情だ。

 少し考え込んでいると俺は真昼に見られていることに気づいた。そしてスマホをフリック操作で文字を打ち、俺に見せつける。

 

「…『似合ってませんね』」

「…俺に喧嘩売ってんのか?」

「…(タタッ)」

「おい逃げんなあ!」

 

 逃げていく真昼の背を見送り、俺はその場で笑い混じりのため息を吐く。冗談を言えるくらいになったんだ意外と声が戻るのもすぐなのかもな。

 

 ちなみにこの後真昼の頬を掴んで伸ばしておいた。俺は売られたケンカは買う。

 

 

「…終わったな」

「…(コクン)」

 

 俺は改めて部屋を見まわした。そこらじゅうにゴミやら雑誌やらが散乱していたリビングは今となってはその姿はなり顰め、チリひとつないピカピカのフローリングが顔を覗かせていた。

 

 ここの部屋はなかなかに広く。普通に過ごすなら4人家族でもそこそこ自由に過ごせるくらいの場所だ。それを掃除するとなると半日どころではなく丸一日ほどかかってしまった。

 

 こんなでかい部屋を掃除したんだ。その達成感は半端じゃないほどに大きい。真昼も俺と同じなようで清々しそうな表情だ。

 

「……それにしても腹減ったな。そういえば昼飯も食ってなかったしな」

 

 夕食前の時間に掃除が終了した代償は昼食の抜きだった。

 

 俺は夕食について考えていると突如俺の目の前を色とりどりのチラシが埋め尽くした。

 

「…真昼、ちけえ」

「…(パラ)」

「…ピザか?」

「…(コクン)」

 

 ピザか…。そう言えば食ったことなかったな?

 

「ピザか…食ったことねえな」

「…!『私は食べたことあります』」

「なんで自慢げなんだ」

 

 わざわざ伝えることか?と思いながら俺はスマホでピザを注文する。チラシを見ても何が何だかわからなかったので一番大きくチラシに写っている4種の味が楽しめる物を頼んだ。

 

「偏見かも知れねえが、お前はこういうモン食わねえと思ってた」

「…?『どうしてですか?』」

「基本的に健康志向な感じと思った。お前がジャンクフードを自ら食うのを想像できねえ」

 

 俺がそういうと真昼は少し驚いたような表情を作り、瞳に影を落とした。

 

…地雷かよ。

 

「…よっと」

「…!?」

 

 俺は真昼の脇に手を入れて持ち上げる。そのままソファの前に移動し、そこの前にゆっくりと下す。

 俺はその横のソファに腰を下ろした。

 

「座れよ。ピザといえばジュースと海外ドラマだろ?待ってる間に何見るか決めようぜ」

「……(コクリ)」

 

 俺は座っているソファの前に置かれたテーブルからリモコンを取り、テレビを付ける。そしてテレビで見れるサービスを起動する。

 

「…どれが良いんだ?」

「…?(コテン)」

「そういや、海外ドラマとか見たことなかったな…お前は?」

「…(フルフル)」

「だよな?…お、これ面白そうだな」

「…(フルフル)」

「あ?…じゃあ何が良いんだ?ほれ、選べ」

「…(コクン)」

 

 真昼は渡したリモコンを使って良さげなドラマを探し始めた。真昼の瞳には先ほどのような影は射しておらず少し俺は安心した。

 

「それで?飲み物はどうするんだ。言っておくが水やお茶は受け付けないぞ。今日は思いっきり不健康に行こう」

「…『では、コーラを』」

「あいよ。俺もコーラにするかな」

 

 俺はソファを立ってキッチンへ向かう。冷蔵庫を開けて2Lペットボトル入りのコーラとコップを二つ取り出す。

 

「無いとは思うがコーラも飲んだことないなんて言わないよな?」

「………(スッ)」

「おい、なんで視線を逸らした。………マジか?」

「……(コクン)」

 

 マジかよ…。コイツ、どんな生活を送ってきたんだ?

 

「お前…よく今までコーラと出会わずに生きてこれたな?」

「……『外出する時は水筒を持っていきますから…』」

「……まあ良いか。ほれ、飲んでみろよ」

 

 俺はコーラが注がれたコップを真昼に渡す。真昼はそれを受け取り俺とコーラに視線を彷徨わせる。そして決心したようにコップに口をつけた。

 

「……!(コクコク)」

「口にあったか。たまにその炭酸が無理っていう奴もいるからな…良かったよ」

「……(ゴクゴク)」

 

 ん?そう言えばコイツって炭酸飲んだらどうなるか知ってんのか?

 

「………けふ──!?!?」

「ぷはっ」

 

 真昼が突然、噯気が出てしまったことに驚き一気に顔を朱に染めたのを見て思わず吹き出してしまった。こういうことで笑ってはいけないのは分かっているが想像通りのことが起こってしまったのでツボに入ってしまった。

 

「わ、悪い(わりい)そ、そんなつもりは──うああ!目があああ!」

 

 謝ったものの俺に迫ってきたのはスマホの画面だった。先ほどの羞恥心からか手加減を知らぬスマホの勢いは俺の眼球を的確に打ち抜いた。痛え…。

 

「……(ペコペコ)」

「…大丈夫だ。非があるのは俺だ」

 

 女の心理を気にせずに笑うのは完全にダメだろう。俺は心の中で反省する。

 

「…(ずい)」

 

 まだ少し痛がっている俺を心配したのか真昼は俺の目を抑えている手をどけ、俺の目を覗いてくる。真昼の心配しているような不安そうな表情が間近で確認できた。

 

「…(近え…コイツの距離感どうなってるんだ)」

 

 もうやること済ませた俺たちに距離感もクソもないと思うが俺はそんなことを考えてしまった。これが俺でなく他のやつもこんな感じというなら少し注意しなければならない。もちろん体で。

 

「─チュ」

「……!?」

 

 俺は頬に添えられた真昼の腕を取ってから唇を奪う。コーラ味の唇だ。

 真昼はキスをされた唇を手の甲で押さえながら後退した。頬から耳まで真っ赤だ。

 

初心(ウブ)だな?男に近づき過ぎるとこんな風になるからな…気を付けろよ?」

 

 俺は先ほどのキスを思い出させるように唇を舐める。真昼の唇が当たったからかここもコーラ味だ。

 

「………(ストン)」

「…なんでそんな遠いんだ?」

「…(プイ)」

「なんだ?拗ねてるのか?」

「………」

 

 顔を背けて『私、怒っています』といった風に振る舞うのを見ているとどこかいじらしくて笑ってしまった。

 

「まだ子供だな」

「────」

 

 俺がそういうと真昼は目を見開いて呆然としていた。俺がどうかしたのか?と声をかけようとしたところで玄関のチャイムが鳴った。おそらくピザが届いたのだろう。

 

「ちょっと待ってろ。受け取ってくる」

「……」

 

 俺はソファを立ってその場を後にした。

 

 

「受け取ってきたぞ」

 

 俺がその場に戻ると真昼は先ほどのような様子ではなくいつも通りに戻っていた。俺が取りに行った時に何かあったのか?

 

「…(コクリ)」

「おい。なんで立つんだよ」

 

 俺は真昼がソファから立ち上がろうとしたのでその前に止まらせた。真昼はなんのことかわからないとばかりにスマホを操作して文字を打つ。

 

「…『食卓で食べるんですよね?』」

「テーブルで食べるに決まってるだろ。なんのために飲み物をそっちにしたと思ってるんだ?」

 

 そう言っても何かに迷っている様子の真昼に俺は急かすように言う。

 

「ほれ。俺も座るから真昼も早く座れ」

「………(ストン)」

 

 渋々と言った風にソファに腰を下ろした真昼。俺はそれを見て思ったことを口にした。

 

「真昼。お前が正しい事をすることは良いことだと思う。実に模範的だ」

「……(コクリ)」

「だがな…俺の家くらい好きにくつろいで、模範的じゃないことをしても良い。俺が許す」

 

 真昼は俺の言葉を神妙な顔で聞いて頷く。

 

「お前は今も見えない誰かからの視線を気にしてるんだ。もっと肩の力を抜け」

「……(コクリ)」

「よし、じゃあ食うか。冷めても美味しくないだろ?」

「…(コクリ)」

 

 俺はピザの箱の蓋を開けて1ピースを取ってそのまま口に運ぶ。甘辛い味付けをされた肉とトロッとしたチーズが相乗効果を生み出していてとジャンキーでありながらも男の心をくすぐる旨さだ。

 

「……(ジー)」

「……?」

 

 真昼は手に持ったピザをじーっと見つめている。俺はどうしたのか分からなかったのでとりあえず見守ることにした。

 すると真昼はそのピザを大きく頬張る。頬が膨れている様子は食べ物を溜め込んだリスを想起させる。その後もきゅもきゅとしっかり噛んだ後にコーラで一気にピザを流し込んだ。

 

「…(むふー)」

「…クク」

 

 どこか“やり切った感”を出す真昼に俺はまたツボに入ってしまった。小動物感という言葉がガッチリ当てはまってしまったのだ。

 

 その後、俺はツボに入った事をなんとか誤魔化して真昼といっしょにテレビで海外ドラマを見ながらピザとコーラを十分に堪能した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 真昼視点も書きたいな。

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