短いですがよろしく。
─家で耳を塞ぎながら過ごすことが増えた。
隣の部屋から聞こえてくる楽しげな笑い声、話し声、その全てが今の私の取っては毒でしかなかった。その毒は少しずつ私の心を蝕んでいき…何か醜いものが自分の心に溜まっていく気がしてさらに嫌気がさした。
彼の笑い声から逃げるようにして私の趣味の料理をした。それをしている時はなんとか誤魔化すことができた…でもたまに彼の分を含めた2人分を作ってしまって心にズキズキとした痛みが走る。
そのせいか勉強にも精が入らなくなってしまった。気付けば彼のことを考えている。その度、あの夜の事を思い返すそうする事で私は今、彼の隣に立つことはできないと言い聞かせる。
あの夜を思い出したからだろうか?ほんのりと熱を帯びてしまった体を覚ますようにベットに潜り込む。気付けばそんな毎日を過ごすようになっていた。
冬季休みに入った。
私は前と変わらずに過ごしている。でも少しため息が増えたかもしれない。疲れているのだろうか?
いや、理由は明白だった。
隣の部屋にいる彼と毎日過ごしていた弊害だろう。彼との毎日は楽しかった。温かかった。充実、しすぎていたのだ。
彼と会うまでは私は1人でも大丈夫だった。それが普通だったから。
でも、変わってしまった。変えられてしまった。私は1人でいる事を“寂しい”と感じるようになってしまった。いつも彼と一緒だったからだ。
何をするにも身が入らない状況が続く。
ある日、ふとカレンダーを見てみるとちょうどクリスマスの日だった。
前世は彼へのクリスマスプレゼントを買ったり少し手の込んだ料理をしたりと意外に忙しかったのを覚えている。
……横の部屋が騒がしい。
あ…そういえば、クリスマスは千歳さんと赤澤さんが遊びに来ていましたね…。
「私はお友達でさえ失ってしまうのですね…」
そんな諦めに似た呟きが私の心を痛めつける。
思えば、いつも私に何かをもたらしてくれるのは彼かその周りの人だった。私1人では何もできない事を、彼がいなければダメだったとより強く感じてしまう。
ダメだ…。この楽しそうな声を聞くたびに、どんどん辛くなる…。
私は現実から逃れるようにベットの上で両耳を塞いだ。
………叶うなら、良い夢が見られますように…。
冬季休みが終わった。
今日から学校だ。これで少しは楽になるはずだ。
正直もう限界だった。いつもの何倍も体が重たくなったような錯覚が私の邪魔をする。体が…いや、心が限界という信号を発していた。
でも、私は学校に行かなければならない。私は“天使様”だから。
だから、大丈夫。私は大丈夫。大丈夫だ。
春季休み。
また、少し隣が騒がしくなった。赤澤さんが彼の家に泊まりに来たのだろう。
ああ、もう少しだ。だからもう少しだけ、我慢しよう。
なんて馬鹿なんだろうとも思う。
愚かだなだとも思う。
でも、私にはそれしかないんだよ…お母さん。
お母さんから連絡が来た。数日後、私の家に来るようだ。
前世でこの連絡をもらった時は会うのが怖かったけど今は───。
お母さんが来た日は曇天が空を覆い尽くした曇り日だった。
私と似た容貌から発せられる言葉はひどく冷たい。
ほんと、可愛げのない子ね。あの人によく似てるわ。鬱陶しい事この上ない。
そう言われた。
せめて私に似たならまだよかったものを……あの人に似てしまったから。まあいいわ、大学を卒業すればほぼ無関係になるのだから、気にしても仕方ないし。必要な書類については今まで通り郵送でいいわ。
私のことを一切見ずにそう言った。
じゃあね。今後余計な事で煩わせないで頂戴ね。
吐き捨てるようにそう言った。そう、言われた。
─心からパキパキと音が鳴っている気がする。
ほんの少しの期待。でもこの世界は都合よく私を受け入れてくれない。
みんな変わってしまっているんだから、お母さんも変わっているかもしれないというほんの少しの希望。
今日のような曇天に包まれた空のように、そのわずかな希望は分厚い雲に覆い隠された。
苦しい。痛い。辛い。助けて。
お母さんのヒールとは違う靴の音。思わず私は俯かせていた頭を上げる。
あ…あまね…くん……。
そこにはもう名前を呼ばないと決めていた彼の姿があった。今すぐに泣いて抱きしめたいという本能と、絶対ダメだという理性が暴れ始めた。
でも彼は私に目も暮れることもなく家へと入って行く。
「…ぁ」
あまりにも、呆気ない。一瞬、足を止めることさえなかった。彼の視線の先にはあの彼女しかいないのを悟った。
─パキン。脆く崩れ去る。私の心。
瞳からは耐えることなく涙が溢れる。
思考は真っ白で何も考えることができない。
私の感情とは関係なしに溢れ出す。曇天に包まれた空から雫が降り注ぐ。
私は歩き出した。雨が強くなる。
どこに行く宛てもない。雨が強くなる。
服が水滴を吸い込んで重くなる。重い。
白色の服なのでブラが透けている。重い。
いたい。つらい。くるしい。だれか、たすけて───
「こんなとこで何してんだ?ここは屋上じゃねえが…話くらい聞くぜ。真昼」
そう言って傘を差し出された。その状況に思わずあの日を思い出してしまう。いろんな思いが溢れてくる。
どうして、ここにいるのか。
どうして、傘を刺してくれるのか。
どうして、貴方の眼差しはこんなに、温かいのか。
わからないことだらけ。でも、少しだけ…私は───────。
そうして彼と私は、もう一度出会うことになったのだ。
主人公とヤッた堕天使(?)さんはまだ諦めることはできていません。そりゃ数回セックスしただけで人の恋心が無くなるかは別ですよね?
だから堕天使(?)さんはそれを理由として自分を押さえつけるようになりました。
周くんNTRからのお友達NTR…これってしんど過ぎませんか…?
天使様8.5巻楽しみですか? 9/14発売予定。
-
楽しみ!!!
-
予約した!
-
そんなに…
-
9巻の方が見たかった!
-
そもそも単行本持ってない…
-
表紙の真昼可愛すぎだろ!