シャーレの先生となった貴方がハッピーエンドを迎えるためには 作:銃・病原菌・フェス
「……先生、起きてください」
「先生!!」
どこかで聞いたことがあるような声で目を覚ました貴方は、自分が全く見知らぬ場所にいることを把握します。大きな窓から見えるビル群は太陽の光を反射して眩しく輝いており、この場所が高層ビルの一室であることがわかりました。
「……先生、大丈夫ですか?」
目を開けてからずっとフリーズしていた貴方に、先ほど貴方を起こしてくれた女性が再び声を掛けます。青いインナーカラーの入った長い黒髪とエルフのように尖った耳はとても現実的とは言えない風貌ですが、貴方はその女性のことを既に知っています。
「……ちょっとボーっとしてたみたい。ごめんね」
「いえ、はるばるキヴォトスまで来られてお疲れのようですね。もう一度今の状況を説明しますので、集中して聞いてください」
「私は七神リン、学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会所属の幹部です」
そう、彼女は連邦生徒会の主席行政官である七神リンで、────『ブルーアーカイブ』のキャラクターです。
貴方はハーメルンで二次小説を読むことが大好きであり、当然このような状況はよく知っています。つまり、貴方はブルーアーカイブの世界で先生になったのです。
「──先生、聞いていますか?」
「うん、大丈夫」
貴方があれこれと想いを馳せている内にもリンは説明を続けていたようですが、多分原作と同じようなことしか言ってないでしょう。貴方はそう判断して適当に返事をしておきます。
「……まあいいです。ついてきてください」
……もっとも、そのような底の浅い考え程度、主席行政官にはお見通しのようですが。
まだまだ確認しなければならないことは沢山あります。リンに連れられてエレベーターに乗った貴方は、リンからの説明を聞きつつ、窓に反射する自分の姿を観察します。
髪は短く整えられており、目鼻立ちもよく整っています。俗っぽい言い方にはなりますが、透明感のあるイケメンといった感じですね。貴方が想像していた通りの”先生”です。身長は180cmを超える程度で、体格もがっしりしています。以前のものよりもよっぽどハイスペックな身体に貴方は思わず小躍りしたくなりますが、「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね」とこちらに信頼の目を向けるリンを裏切らないためにも、ここは我慢しておきましょう。
エレベーターの扉が開くと、貴方はレセプションルームにいる4人の生徒を目にします。ブルーアーカイブが大好きな貴方は4人がそれぞれユウカ、ハスミ、チナツ、スズミであることを知っていますが、原作キャラに会えたことに感動している場合ではありません。できる限りの精神力を発揮して彼女たちの胸と太ももを見ないように心がけましょう。これからのことを考えれば、貴方は少しでも早く生徒たちの信頼を勝ち取らなければなりません。不誠実な大人であると見られる訳にはいかないのです。どうせ溢れ出そうな欲望を抑えるのに必死で難しいことをやる余裕なんてないのですから、適当にニコニコしておいて原作通りの会話を聞いておきましょう。
「はい。こちらの先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
「先生です。よろしくね」
無難な挨拶しかできませんでしたが、自己紹介で気の利いたことなんて絶対に言えませんので大丈夫です。幸い顔がいいのでニコニコしておけばどうにでもなります。転生特典は有効活用していきましょう。
この後もユウカがリンにうるさい方と貶されたり、シャーレのビルまで行かなければならないことが説明されますが、大したことではありません。そう、この後貴方に待ち受ける試練に比べれば。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
「シャーレの部室?……ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?」
こうしてモモカが語るように、シャーレのビルは現在ワカモと地域の不良たちによって占拠されています。原作では”先生”がその卓越した戦術指揮能力で解決して見せましたが、一介のハーメルンユーザーにすぎない貴方には当然そのような指揮能力はありません。いくら体格が良くてもキヴォトスの外から来た貴方の肉体は銃弾一発で簡単に死んでしまいます。貴方は安全な場所で待機しつつ、4人の生徒たちに戦闘を任せるのが安牌でしょうか。各学校の中でも特に優秀な生徒である彼女たちであればきっと戦闘指揮がなくとも不良たちを退けることはできるでしょうが、原作よりも時間がかかることは間違いないでしょう。しかしその間にワカモがシャーレの地下へと潜っていてしまったら?そこで破壊活動を開始してしまったら?その結果、クラフトチェンバーやシッテムの箱が破壊されてしまったら?
ブルーアーカイブの物語はいくつもの奇跡の上に成り立っており、裏を返せば、その奇跡の内1つでも起こらなかったら、キヴォトスの平和は絶望的なものになってしまいます。そして最初の乗り越えるべき奇跡は、既にもう目の前まで迫っているのです。どうすれば貴方はこの状況を打開できるでしょうか?
貴方は、大人のカードを使うことにしました。