シャーレの先生となった貴方がハッピーエンドを迎えるためには 作:銃・病原菌・フェス
「そんなの危険です!先生は安全な場所で待機していてください!」
サンクトゥムタワーからシャーレのビルまではおよそ30kmの距離がありますから、付近までは車で移動することになります。できる限り迅速にシャーレを奪還するためには一刻の時間も無駄にはできません。貴方は移動中に事情を説明することにしたのですが、いきなり「私も戦闘に参加するよ」などと言い出すものですから、当然ユウカの反対を受けてしまいます。
「大丈夫、キヴォトスの外には銃弾を避けるための技術があるんだ。といっても信じられないと思うから、試しにこれを私に向けて投げてみてよ」
貴方はユウカにペンを渡します。ユウカは疑わし気な顔をしつつ貴方にペンを放り投げますが、
「え?」
綺麗な放物線を描いていたはずのペンは貴方に当たる直前、急速にその軌道を変えて地面へと落ちていきました。貴方はペンを拾い上げ、今度はもう少し強く投げてみてと言って再びユウカにペンを渡します。
トリックを見破ろうとしているのでしょうか。「いや、そんなはずは……」などとぶつぶつ呟いているユウカですが、貴方からペンを受け取ると素直にペンを投げます。ほとんど直線を描いて進むペンは怪我をするほどの速度ではありませんが、それでも当たれば痛いでしょう。しかしペンは不自然に横へとそれ、壁に当たって落ちていきました。
「こういう風に銃弾も避けられるから、大丈夫」
やや話は逸れますが、大人のカードとはどのようなものでしょうか?原作ではカードを使用するとプレイヤーの所持する生徒を用いての戦闘が始まりましたが、戦闘を終えても元々その場にいた生徒が急に現れた生徒に驚くような描写はありませんでした。つまり、ゲームのシステム上の処理として戦闘をすることになっていましたが、実際の効果は違うと考えた方が妥当です。
これ以上の考察は充分な蓋然性を持たないため不毛ですが、1つの解釈として、貴方は大人のカードを、自分の生命や時間を対価に欲する結果を呼び寄せる能力、即ち現実改変能力を持つものと考えていました。
サンクトゥムタワーのレセプションルームで大人のカードの使用を検討したとき、貴方はスーツの内ポケットに一枚のカードがあることを確認しました。大人のカードもまたある種のオーパーツでしょうから詳しい理屈はわかりませんが、大人のカードに触れた瞬間、貴方は自分がこのカードを使用できることを確信しました。また大人のカードが現実改変装置であるという貴方の解釈が正しいことも理解しました。といっても、具体的にどのようなことをどの程度までできるのかについて詳しく分かっているわけではありません。しかし、2つの能力については概ね問題なく使えるだろうことは推測していました。
まず、大人のカードを使えば銃弾を避けられるということ。原作でもシャーレ部室の奪還の際、先生は安全な場所で待機するようにというユウカの提案を拒否して戦術指揮をしています。しかし、このとき先生はまだシッテムの箱を持っていません。シッテムの箱なしにどうやって先生は戦場で銃弾に当たらずに済んだのでしょうか。遮蔽物に隠れたままでは満足に指揮を取れないでしょうし、不良たちが先生を直接狙わなかったとしても流れ弾一発で即死するようではあまりにもリスクが高いです。何か他の方法で銃弾が当たらないようにしていたと考えるのが自然でしょう。そしてあの状況で用意できる方法は、大人のカードしかありません。勿論これは単なる推測を重ねた仮説でしかありませんが、大人のカードの効果自体は簡単に検証することができます。こうして生徒に何かを投げてもらって、実際に避けられたのですから、実験は成功したと言えるでしょう。
「キヴォトスの外の方はどうやって安全に暮らしているのかと疑問に思っていましたが、そのような技術があるのですね」
キヴォトスの外についてチナツが若干勘違いしているようですが、どうせキヴォトスの外の情報なんて大して出てこないので気にしないでおきましょう。
「銃弾に当たらないことはわかりましたが、先生は銃を持っていませんよね。万が一ということもありますから、やはり後方で待機していらっしゃる方がよろしいのでは」
「尤もな疑問だね、ハスミ。たしかに私自身に戦闘能力はないけど、支援することならできる。ゲーム風に言えばバフを掛けるってやつだね。これもキヴォトスの外の技術なんだけど、一応テストしておきたいから向こうに着いたらちょっと検証に協力してほしい」
銃弾を避けることの他に、大人のカードで可能であると貴方が推測したことはもう1つあります。原作において最終編の決戦のとき、プレナパデスがシッテムの箱を操作して青輝石を消費し、クロコを強化するような描写がありました。貴方はまだシッテムの箱を持っていませんが、青輝石は大人のカードを使用して手に入れられるものです。シッテムの箱というインターフェースがなければ細かい操作は難しいかもしれませんが、強化自体はできる可能性が高いと見ています。
大人のカードの強力な効果には相応の代償があります。原作でも「生と時間を削る」ものであると描写されていますし、実際に先ほど貴方が大人のカードを使用してペンを避けたときにも、何かが失われるような感覚がありました。間違いなく貴方の寿命はわずかながらですが失われてしまったでしょう。数度ペンを避けるくらいであればほとんど問題ないでしょうが、何度も弾丸を避けることになれば、決して少なくない時間が、生が、失われることになることは容易に想像できます。しかし、それでも検証の価値はあります。これから先、貴方は何度もギリギリの戦いを強いられることになるでしょう。強力な力を必要とすることがあるでしょう。そんなとき最も役に立つのは大人のカードに違いありません。いざというとき、大人のカードの使い方がわからず、そのまま何もできずに終わるなんてことがあっていいはずがありません。貴方はできる限り早く大人のカードの使い方と効果を確かめておく必要がありました。
「ここから先は徒歩で行った方がいいみたいですね。皆さん準備をしてください」
大人のカードという強力な武器があるとは言え、貴方は一介のハーメルンユーザーでしかなく、”先生”のような強靭な精神性を持つ訳ではありません。貴方は戦場に立ち、先生として生徒を導くことができるでしょうか?