シャーレの先生となった貴方がハッピーエンドを迎えるためには 作:銃・病原菌・フェス
原作においてはワカモが先生に一目惚れしたことで何事もなくワカモはシャーレの地下から去っていきましたが、本来この状況はなかなか危機的なものです。ワカモにもある程度の倫理的な分別はあるようですから先生に重傷を負わせるようなことはないでしょうが、暴れ出してシッテムの箱やその他重要な設備を破壊されてしまえば、キヴォトスの平和は厳しいものになってしまいます。
ここで貴方のことを好きになってくれないのはちょっと困ってしまうのですが、そのようなことを考えてしまう貴方の卑俗な心が滲み出ているからこそ、今ワカモは貴方に惚れていないのかもしれませんね。大体、先生の外見がドストライクだったから惚れたとかだったらちょっと嫌じゃないですか?まあそんな現実逃避はさておき、貴方はどうにかしてこの場を切り抜けなければなりません。
「こんにちは。自己紹介が遅れたね。私は今日からシャーレで先生として働くことになった……」
「この機械、クラフトチェンバーと言うのですよね。どうすれば動かすことができますか?」
「……余計なおしゃべりはあんまり要らない?それを動かすならシッテムの箱という装置が必要でね。多分その辺の引き出しに入ってると思うんだけど……」
そう言って貴方は引き出しのある方へ歩き出しますが、
「動かないでください。私が調べます」
有無を言わさぬ雰囲気のワカモを前に貴方はどうすることもできません。貴方がキヴォトスの外から来た貧弱な存在であるからなのでしょうか、銃口をこちらに向けることはないようですが、それでも貴方に何かをさせるつもりはないようです。
「タブレット型の端末があればそれなんだけど、見つかった?」
「ふむ……こちらでしょうか?スイッチを押しても起動しないようなのですが」
「あー、そうだったね。生体認証機能が付いていて、私しか起動できないようになってるんだった。ちょっとだけ貸してくれないかな」
「……余計な真似をしたら、おわかりですよね?」
ワカモから発される圧力は厄災の狐の名に相応しいものであり、思わず身体が強張りそうになりますが、この場で弱みを見せるわけにはいきません。貴方はできる限り平気そうな笑顔を心掛けながら、ワカモからシッテムの箱を受け取りました。
貴方が側面にあるスイッチを押すと、シッテムの箱の画面が点灯しました。無事起動させることができたようです。「Connecting To Crate of Shittim…」の文字が表示された後、「システム接続パスワードを入力してください」と出てきます。貴方は一度ワカモの顔を見て確認を取ってからパスワードを打ち込みます。残念ながら原作の先生とは違い、貴方の脳裏には何の文章も浮かんできませんが、ブルーアーカイブが大好きな貴方は当然その文章を覚えています。
……我々は望む、七つの嘆きを。
……我々は覚えている、ジェリコの古則を。
細かいところを覚え間違えていて何度も試すことになったら恥ずかしいなと若干心配していましたが、どうやら一発で承認されたようです。
シッテムの箱は接続者情報を確認した後、メインOSをA.R.O.N.Aにすることを告げてからから暗転しました。再び画面が明るくなると、そこには教室の中で机に顔を伏せて眠る女の子が映っていました。教室はくるぶしの下のあたりまで水浸しになっており、壁もほとんど壊れていて、その向こうにはどこまでも続く海と青空が広がっています。かなり独特なUIに隣のワカモも若干面を喰らっていますが、貴方は気にせず画面の少女の頬の辺りをタップしてみました。少女はうにゃうにゃむにゃむにゃと何やら寝言を言っていますが、早く起きてもらわないとワカモが飽きて暴れ出すかもしれません。貴方はそんな言い訳を自分にしつつ、湧き上がる欲望に突き動かされ思い切り頬を連打し続けます。
「うにゃ……ってなんですか!やめてください!もう起きましたから!」
「……ってあれ?え、先生!?」
「この空間に入ってきたということは、ま、ま、まさか先生なんですか!?」
「そうそう、先生だね」
貴方はアロナの発したこの空間という言葉に違和感を覚えましたが、いつの間にか自分が画面内の教室に入り込んでいることに気づきました。といっても実際にシッテムの箱の中に入った訳ではなく、頭の中でそのような体験をしている、というのが正しいでしょうか。一方でシャーレの地下に居てシッテムの箱を操作している自分を把握しつつ、もう一方で教室の中、空色の髪の少女と会話している自分を認識しているというような状況であり、起きながらにして夢を見ていて、現実と夢を一遍に味わっているような感覚です。
「先生、音量を上げていただけませんか?その女の子が何か喋っているようなのですが」
こうしてシャーレの地下にいるワカモのことも認識できるのは不思議な感覚ですね。どうやらワカモには少女の声が聞こえていないようです。どのような理屈で貴方にだけ声が聞こえているのかは不明ですが、貴方にオーパーツの超技術を解明できるはずがないので、気にしなくてよいでしょう。
「えーっと、名前を聞かせてもらってもいいかな?」
「はい!私はアロナです!」
「それじゃあアロナ、ワカモ……私の隣にいる生徒にもアロナの声が聞こえるように、というか、この教室に招待してもらえないかな?」
「え?そんなことしていいのでしょうか?うーん……そうですね。先生のお願いですから、ワカモさんもこちらに招待します!」
アロナがそう言った後、教室内にはワカモが現れます。ワカモは突然の変化にキョロキョロと周囲を確認しています。
「ふむ……このような技術が……ふふ……♡是非とも頂きたいですね」
何やら恐ろしげな独り言が聞こえますが、わざわざ藪をつつく必要もないでしょう。
ともあれ、貴方はこの危機的状況を脱することができました。
最終編において先生に発砲しようとしたPMC兵士の銃を曲げたり、発射不良を引き起こしたりと、具体的な機能は定かではないですが、シッテムの箱には現実に干渉する能力があります。エデン条約編では巡航ミサイルから先生の身を守っていましたし、ワカモから先生やシャーレの設備を守る程度であれば充分な能力でしょう。貴方が実際に守るよう指示を下したわけではありませんが、貴方やシャーレの設備に危害を加えられることはアロナも良く思わないでしょうから、きっと守ってくれるはずです。シャーレの地下に留まっていれば不利なのはワカモの方ですから、すぐにこの場を去るでしょう。こうして貴方は無事シャーレを奪還し、シッテムの箱を始めとする重要なものの数々を手に入れることができるでしょう。
しかし、本当にこのまま終わらせてよいのでしょうか?
シッテムの箱の能力について教えれば、確かにワカモはシャーレの地下から去るでしょう。しかしシャーレという連邦生徒会の一機関であり、彼女の計画を邪魔した貴方のことは快く思わないはずです。これからも敵として何度も貴方と対峙することになるかもしれません。あるいは、貴方の手によって再び逮捕され、矯正局へと収容されるかもしれません。その結末は、ハッピーエンドと言えるのでしょうか?