情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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99話

 

 エウスは、劇場の人形は、突きつけた指で自分の頭を撃ち抜いて、

 

「え?」

 

 違う、なんだろこれ?

 想起? 魔法、魔術、発動した、それ、

 メートにではなく、自分自身に。

 

「さあ、開幕だ、」

 

 悲鳴、怒号、————それすら、懐かしい。

 遠い、遠い、全てが、消えて、

 痛みも、苦しみも、悲しみすら!

 

 その全ては、きっと、少女にとって、必要なものだったんだ。

 

「——なに、これ、」

 

 視線、声、匂い、味、振動、

 気持ち悪い、慣れ親しんだ、わたしの、

 

 違う!? 何だこれ、こんなの、わたしは、体験したことのない、

 

「っぅ、また記憶? こんなの、」

 

 手足が冷え込む、視界が夜になる、音が止んでいく、

 違う、感覚がない、その全てが、まるで無くしてしまったかのように、

 

「拒絶、いや、ちゃんとできてる。なのに何これ、どこから、だれ、」

 

 わからない、わからない、知らないそこ、

 何これ、こんなの、魔法ですらない?

 

「——まさかっ、」

「おや、ふふふ。アナタには、観客の適性が高いようですね?」

 

 メートのこと、逆に利用された?

 ぐっ、感情が逆流する、まずい、これ、

 わざわざ作った? こんなにも、精密に?

 違う、なるほど、ああそうなのかな?

 

「あなた、メートっ、」

「しかし、まだまだ終わりませんよ? こんなものでは、満足していただけないでしょうから、」

 

 視線、気持ち悪い、音、匂い、

 いくつものソレが、近い、男の、たっている、

 

 横に、あ? 誰? どこから、いや違う、

 これも幻想、こんなにもはっきり、わたしが魔法にかかってるわけじゃないのに、?

 

「それでは第二幕、参加型の舞踏会へようこそ。踊り子の方々には、ぜひ手を触れあってください、」

 

 手を伸ばされる、何もないはずの空間。

 咄嗟に避ける、確かに感じる風圧、匂い、気持ち悪いキモチワルイ、

 

 うそ、これ全部、ほんもの?

 何人もの、何十人もの、顔の見えないニンゲンの群れ、

 違う、そんなわけ、第一こんなもの一つしか置けないような狭い小部屋に、こんな人数入りきれるわけっ、

 

 あれ? この部屋、こんなに狭かったっけ?

 

 

 

 ——————おやおや、そんなにも体感してくれて。演出家冥利に尽きますねえ、

 

 

 狭い、暗い、汚い、

 あれだけたくさんいたはずの人も、気づけば何も全部いなくなって、残ったのは、

 手足の感覚がない、視界がない、音が聞こえない。

 何もない、

 

 完全なる、きょ、

 

 

 

「——————『虚構!』」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おや?」

「はぁ、はぁ、はぁ〜。・・・・・・うん、すごかったねー、」

 

 危なかった、もう少し判断が遅れてたら、飲み込まれてたかもだよー、

 何だろうねあれ、思い描いたことを実現する魔法? いやそんなものですら、収まらない??

 で、も。魔法である事には、変わりないよね〜!

 

「・・・・・・わぁ、ここまで。・・・・・・・・・・・・ふふ、これはまた、素晴らしいものを見せてくれたと喜ぶべきか、無粋なことをしてくれたと怒るべきか、」

「失敗しちゃったなら、悲しむといいよ〜、」

「アハハッ。それもまた、醍醐味ですね、」

 

 改めて、変わっていない部屋。

 そうだ、全ては幻想、結局のところまだ、わたしには傷一つついていない、

 

 ごめんね〜、楽しかったというには、少し悪趣味すぎるよ。

 

「・・・・・・・・・・・・それはそれは、参考にいたすとしましょう」

「ね、そうしてよね、次があったら、」

「ええ。この身は永遠の劇場。なのでまだまだ、ミセたりません」

 

 ムチを構える。

 狙うは首、あそこが、一番すっきり終われるから、

 

 それじゃあ、さよなら。

 

「・・・・・・終わりませんよ。まだ、彼のことすら、見せていないのに、」

 

 腕を構えた、

 また親指と人差し指を伸ばした、何かを握り込むようなよく分からない動き・・・・・・?

 

 あれ? なにか、持って、

 

 

 

 ——————————パンッ、

 

 

 

 

 

 

 

 ——銃声、

 生きていた時はついぞ、画面の向こうでしか聞かなかったそれが、確かに響く。

 

「なっ、今のって、」

「ふむ、流石にまずいかもしれんの。貴様、絶対に我のそばから離れるなよ、」

 

 それはもちろん、というかこのドラゴン様、もしかして撃たれた後の銃弾止められちゃうのだろうか。

 これが夢の竜娘か、流石すぎる。

 

 ————ちっ、まだ町内だぞ。誰だ、先走ったのはっ、

 

 町の中央へ走っていくマキナが、焦った声を出している、

 というか待って、速い、全然追いつけない、流石は車輪の足。

 まだ声が聞こえる距離だけど、もう姿が見えないんだが、ん? 視力悪いせいかな?

 

「はぁ、はぁ、ちょっ、遠い、」

「・・・・・・というか、おっそいのー。もうちょっと、早く走れんのか?」

「うわぁ、全然息きれてない」

「いや、セシィでもこの程度・・・・・・、」

 

 うぐぅ、呆れられた目、

 どうにも、この体が効率のいい動き方を覚えてはいるようだが、それでも限界がある。

 半分の力すら出せてないだろうな。まあ不当な所持者としては、妥当なものだろうけど、

 

 

 ————パンッ、パンッ、パンッ、

 

 

「ぎゃーっ、銃声!? どこから、あっちからか?!?!」

「むっ、あれか、」

 

 そこにあったのは、騒劇。

 急に起きた騒乱に、混乱し、興奮し、恐怖し、狂気するその様。

 

 何か目に見えない力によって引きまわされる感情の渦は、民たちの暴動という形になって、異物の排除へと弾をこめる。

 

 人の集まる、その中心、

 見慣れぬ明らかな異形が、弾圧を持って、囲まれていた。

 

「・・・・・・っ、お前、どいうこと「壁が急に崩壊って、なん「あれは、あの魔力、もしかし「こんなの、聞いてな「おい、いったいどうし「何か知ってんだろ、まさかねが「ぎゃーっ、世界の終わりだーっ「あれほどの壁を壊す魔法、あいつらまさか本「くそっ、準備だ、あれをだぜ、目にもの「か、勝てるわけがない、どうすれ「ひーっ、近づくなーっ!?!?」あ、おい!?」

 

 

 ——————パンッ。

 

 

 場を支配する透明な狂気は、具体的な形をともなって、放出される。

 引き金一つ、なによりも軽い簡単な動作で、アカイ火が広がっていく、

 

 その凶器は、未だ定まってもいないのに、早く真っ直ぐにその中心にいた小さな体へと、

 

 

 ——————カンッ、

 

 

「・・・・・・っ、待て、落ち着け、ジブンは、まだ、」

 

 

 綺麗なボディに、傷がつく。

 金属製じゃなかったら、どうなっていたか想像もしたくない。

 囲まれているのは、どうやら他の人とは見た目の違う、科学の子だ、

 

「——っ、まずい、撃たれてる!? 早く助けないと、」

「ちっ、しゃーないのー、」

 

 銃弾、何よりも早い、人を殺す脅威、

 

 ——だった、はず。少なくとも、別の世界では。

 

 瞬間、風、爆速、なのに優しい。

 明らかに銃弾より速く発射され、なのに隣にいた誰かにはそよ風程度で、瞬きの間もなく、

 

「————よっと、じゃ、」

「えぇぇ」

 

「・・・・・・なっ、これ、まじか、ええ??」

 

 隣に、いつもの定位置だと言わんばかりに、ドラゴンちゃんが着地して、

 で、なんか、目の前にあったはずの人だかりが、全て残らず倒れていた。

 

「うわぁ、凄すぎだろぉ、」

「・・・・・・しかも、全員、後遺症のないよう、最低限で、止めていた、」

「え、見えたの? すごっ、」

「ふふんっ、そうだろ? ・・・・・・って、何だこれ、」

 

 思わず、小さなボディに駆け寄って、無事を確認して、

 うん。大丈夫そうだな、しかしあれが見えたとは、なかなかやりおる——、

 

 

「さて、静かになったの。それじゃあ次は、」

 

 

 ——ギョロっ、

 縦に割れた力強い目が、獲物を見定め、

 

「「ひぃっ!?」」

「・・・・・・・・・・・・なにやってるんじゃ?」

「「・・・・・・あ、いや、なんでもない、」」

 

 二人同時に見られた、いや別に、ビビって距離取ったとかじゃないですよ!?

 ほ、ほら証拠に、俺はマキナよりも前にいますし!!?

 

「・・・・・・・・・・・・で、なんだ、オマエら。何しに来た、」

「あ、いや、おれ——、自分たちは、まあ。とりあえず、原因解明しないと隠れてても安全じゃないかもって、」

「・・・・・・まっ、引き篭もるのは、もう飽き飽きじゃからの。」

 

 俺は、またさっさと籠って、いや消えなきゃだけどな。

 ともかく、こんな危険な状態なら、やっぱり一刻も早く解決しないと、

 

「・・・・・・ん? それより、なんだそれ、頭の、」

「じゃ? 我のこと?」

「んん? あ、本当だ、なんか出てる、」

 

 あれは、王冠?

 へー、目立つとつくんだ、面白いなーって、

 んんん? なんか数字ついてるけど、もしかしてこれキルカウント、ですか??

 

「————なっ、これ、もしかして「みたぞ、今あいつが、なにかして、「急に人が倒れた、中心にいたのは、何だあれ「いや、だが何かついてるのは、向こうの「全員、ここに攻めてきた向こうの仲間だってこと「どうする気なんだ、ま「にっ、逃げろ! ここに来たらやられ「くそっ、またあいつらに好き勝手されてたまる「これもまさか、よて「撃て、撃て!? 近づかれるま「どうする気なんだ、早すぎる。これでは、勝ち目が「うわーーーーっ!?!?」

 

 声が、濁流となる。

 やばっ、うるさい、キモチワルッ、

 

 ・・・・・・いや、満員電車の方がきついな、大丈夫か。

 しかし、これは、不味いんじゃないか?

 

「——ふむ。めんどうじゃか、あれもまとめて、」

「————っ、待て、キリがない、逃げるぞ、」

「逃げるって言っても、どこにだ?」

「・・・・・・・・・・・・向こう、だ。まだ、人数が少ない分、マシなはず。・・・・・・それに、目立つのは、オマエも本意じゃない、だろ?」

 

 うーん、まあ賛成か?

 元よりそっちに向かう予定ではあったし、あんまりレコウさんに頼り切りも良くない。

 だって俺とは赤の他人だしな、守ってもらう身として既にわがままも聞いてもらってるんだ、余計な負担はかけたくない。

 

 いや、下手に縛らず、全部倒して行く方が、あの竜にとっては楽なのかもしれないけど。

 でもそんな事したら、周りからなんて思われるか。今でさえ、なんか目立つもんつけられてるのに、

 俺のために、そんな跡に残る事するわけにはいかない。

 

 俺は、さっさと、消えるべきなんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 終わりの時は、記憶にない。

 多分きっと、これはただの残滓だから。

 明確な、意志も持たない、電気信号。

 それでもああ、望むのならば、

 

 あの子たちに、少しでも、素敵な夢を——、

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