情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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100話

 

「ふぅ、結局全員、ぺち倒して来ちゃったわねぇ、」

 

 会場をかける。

 騒ぎはもういっそ、全員気絶させるという手段で終結させたけれど、まだまだ観客はいる、

 もっと何か、というか誰かさんを止めないと、これは終わらないかしら。

 

「頭のこれも随分輝かしくなってしまったし、邪魔ねぇ、」

 

 取ろうとしても無駄なのよねえ、これ、

 一度消しても、すぐに復活する。これはあくまでもっと大きな魔法から投射された、既に完結した結果。

 確か銃でいう、銃弾? だから一度は消せても、すぐに次が来る。

 大元を断たないと、意味がない。

 

「・・・・・・さてと、あの馬鹿は、ついでにもう一人勝手にどっか行ったおバカさんは、一体どこにいるのかしらー?」

 

 人を避け、大きな広場、

 ・・・・・・音がする、騒ぎの方、あっち?

 いえ、違う気がするわ。でもどちらにせよ、大きな騒ぎになりそうなら、先に止めておいた方がいいかしらって、

 

「・・・・・・・・・・・・あら? 静かになったわねぇ、」

 

 誰かが収めた、この状況を?

 もし言葉だけでこんな混乱を止められるのだとしたら、それはさぞ高潔な人間なんでしょうけど、

 それにしたって、こんな急には無理よ。

 

 ワタクシですら、諦めて手っ取り早い手段とっているのに——、

 

「あ。——あらまあ、いっぱい倒れてるわねぇ、」

 

 だから、思った通りに、そこにあったのは気絶した群。

 私みたいに優しくないわね、投げっぱなしだわ、事故で怪我したらどうするつもりなのかしら、

 まっ、私の結界があるから? 大丈夫ですけどぉ?

 

「ってえっとう、そんなこと言ってる場合じゃ、ないわねぇ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

「あーー、あなたが、おさめてくれたのかしらあ?」

 

 そこにいたのは、表情も見えない、黒い騎士。

 頭上に私とおんなじ王冠も輝いているから、間違いないわねぇ。

 にしても、彼? どっかで会ったような、

 

「えー・・・・・・、あ、もしかして。ジャックナイトさんですかしら、決勝進出の。いえ少し、予定がズレてしまって申し訳ないのです、けど・・・・・・、」

 

 黒い、かろうじて人間に見える、肌の見えない大男。

 ・・・・・・おかしいわねぇ、この外見は見覚えあるのだけど、前までの試合は違う色だったはずなのよ。

 白い鎧に、赤い飾り。・・・・・・いえ、今も赤い部分はあるわね、輝いた瞳が、

 

 まあ、そりゃ、あの子がいるなら、アレもあるわよねえ?

 うん。何で気づかなかったのかしらぁ・・・・・・。

 いえまさか、鎧が中身も無しで動くなんて、聞いてただけですしぃ・・・・・・、

 

「・・・・・・・・・・・・えっと、お久しぶり、かしらぁ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あのぉ? あんまりじっと見つめられると、困るのだけどぉ〜」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「というか、どこ見て、」

 

 視線がわかりにくい、頭上。

 どこか遠く見て、いやあら?

 私の頭の上、今なにあったかしら、

 

「・・・・・・あらら、何で近づいて、回り込んでくるのかしら?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

「ちょっと、今そんな場合、」

「————————、」

「あらぁ、お触り禁止よお!?」

 

 ひゃー、『聖光!』

 ——あっ、完全なる無傷無反応だわ?

 えっとー、はい。逃げる!!

 

 きゃーーっ、助けて、セシィちゃーん!?

 

「——————、」

 

 素早く、同じ速度で、追ってくる鎧。

 何とか追いつかれない、逃げきれもしない速さで。

 

 赤い瞳を、輝かせながら、

 

 

 

 

 

 

 

 あか。

 

 慣れた痛みとそれで、染まっていく、

 

 じわじわと、広がって、

 

「————ッ、」

 

 

 ピンク色に。

 

 

「・・・・・・なに、それ、」

「・・・・・・これすら、躱しますか、」

 

 

 線、

 明確な意志の込められた、狙われた場所。

 

 咄嗟に羽で体を逸らしたそこに、何かが通った。

 痛み、わからないけど、わからないほどの速度と威力の、なにか、

 

「ですが、まだっ、」

「っ、視線、」

 

 羽を広げて、次に備える、

 打たれるのは、その目の向く方、

 ではない。

 

 よくわからない指の先、魔道具? 魔法のないはずの空間にある、確かな脅威、

 

 でもまだーっ、来る方向がわかっているなら————、

 

 はあ?

 

「では運命と行きましょう!!」

「あははっ、危ないな〜!?」

 

 次の行動、思考の中。

 読めたのは、完全なる乱劇。

 

 向く方向すら決まっていない、大体の角度すらない、本気で場合によっては自分にその指先が向こうが構わず放ってくる覚悟。

 羽を構える、柔らかい羊毛に、こんなことならもっとちゃんとした布にでもすればよかったかなー?

 

 ——————パッパパパパパッ

 

「んうっ、」

「とっ、」

 

 二回、羽がピンク色に染まっていく、

 

 一回、足を貫いた、エウスの。

 

 本当に、頭おかしいんじゃないかなー?

 

「こんなところで、あなたと一緒に死んであげる気はないんだけどー!?」

「アハハッ、悪いね、ボクもだよ!!」

 

 部屋を飛び出す、もう付き合ってられない!

 エウスは、懲りずに指先を突きつけて、思考を読む。

 

 またやる気? いい加減、この距離なら、あなたの方が危ないと思うけどなー?

 腕を大袈裟に劇的に振り回し。優雅に、乱雑に、その狂気をかざして、

 

 

「圧倒的不利、絶体絶命の大ピンチ。そんな時に輝いてこそ、この世界の主演だよ、」

 

 

 ——————パンッ、

 

 

 放たれた、確かにどこも狙われてなかったはずの指先は、

 

 確かにわたしの方を向いていた。

 

 

 

 

 

 メートに、ただの少女に、既に放たれた弾丸を止める手段は、無い。

 

 

 

 

 

 

 

 ————パンッ——パシッ。

 

「ちっ、流れ弾か、じゃ、」

「うわぁ、ついに素手で止めたよ、」

「・・・・・・これは、ひどい、」

 

 そしてそんなこと話してる間に、街中で銃ぶっ放した野郎はお仕置きされてた。

 瞬きすら待たずに壁にめり込んでるけど、えっあれ、死んでないんだよね?

 

「・・・・・・しかし、壁には、いや元壁には、まだつかないか、」

「ちょこちょこ騒ぎがあって、避けて来てますもんねぇ、」

「それに、誰かが足引っ張ってるからのぉ、遅いし、」

「うぐぅ、」

 

 この体は、全力で動くとすぐに息が切れてしまう。

 なんか、噛み合わない? つい別の体で動いてる気分になってしまうのか、

 

「・・・・・・まぁ。しかし、そうだ。わざわざジブンからぶん取ってった、靴? は、どうしたんだ」

「え、なにそれ? ・・・・・・あーいや、確か、」

「・・・・・・・・・・・・それは、世界の危機じゃから、封印したんじゃ、」

 

 なにそれ、こっわー?

 でもなんか薄っすらと、普通に使ってたような、

 

「・・・・・・ちっ、ん? ——いや、ああ、良いものがあるな、」

「お? なにして、」

 

 人混みを避けて入った路地裏に積まれていた、金属のガラクタ。

 いや、それにしては、多い?

 なにか、

 

 ————『創造』、

 

「え?」

「ほら、使え。速く行くぞ、」

 

 組み上がったのは、二つの車輪がついた、バイク?

 あっ、これ乗れと??

 

「ほう? 部品が一人でに組み上がって、今のは、」

「いや、あの、ええ??」

「そっちの、直線を行こう。ほら、」

 

 言われるがままに跨ってみる。ちょうどいい、いやちょっとでかい、ものすごくでかい。

 懐かしい感覚、一応免許は更新してたけど、忙しくなってからほとんど乗ってない。

 とっくに切れちゃってるだろうなぁ、って、そういう問題じゃないんだが、

 

「・・・・・・よっ、ん、ふぅ、」

「え、後ろ?」

 

 そして、その後ろにニケツするのは、まさかのドラム缶。

 ロボットアームを回してくるけど、いや無理だって危ないって、というか君は自分の車輪あるでしょ??

 

「・・・・・・いやー、流石に無理があるじゃ。むしろこれ、遅くなるじゃろ、」

「・・・・・・だよなあ?」

「・・・・・・・・・・・・ふむ。まあ、そうだな?」

 

 どこか不満げなような満足げなようなマキナちゃんに再改造されて、結局バイクは、

 

「ほら、乗れ、」

「・・・・・・人馬一体?」

「もう、何でもありじゃの、」

 

 ドラム缶が先頭に組み込まれたオートバイク。

 この場合のオートは、マジで操作が全自動って意味で、

 

 なんかこの体に跨るのも変な気持ちになるが、好意を無駄にするわけにも、

 ・・・・・・・・・・・・いや、俺たちは、本当になにをしてるんだ??

 

「まっ、速いならいいか、じゃ、」

「・・・・・・安心しろ、問題ないはずだ」

 

 ————多分。

 

「えっ、ちょっ、いま、」

「いくぞ、お、オマエ!」

「あ、いや待って、おろしてぇーーー!?」

 

 

 ————ブォーーーンッッッ‼︎

 

 

 バイクで街中聞け廻る、どんな絶叫マシンよりもスリルがあるぜ??

 でも正直、一番ビビったのは、

 

 

「・・・・・・ん、まあ、こんなもんかじゃ、」

 

 

 その先頭を、邪魔なもの予め薙ぎ倒した上で扇動する、一人戦闘機ちゃんでした。

 

「「うわぁ、」」

 

 

 

 

 

 やって来たの、壁。

 というか、元壁があった場所、じゃ。

 

「おー、本当に綺麗さっぱり、跡形もなくなってるのお、」

 

 といっても、小脇に残骸は積まれているけど・・・・・・、ふむ?

 残骸というか、材料? 破壊されたにしては綺麗じゃし、まるで元々簡単に解体できるものだったかのよう、

 

「ぶぉーん、」

「ぶぉーーん、」

「ぶぉお〜ん、」

「ぶぉおお〜ん、」

 

 あっ、やっと来たかじゃ。

 全く、この緊急事態じゃというのに楽しそうなことしよって。

 

 ・・・・・・ふむ。あれを貰うとして、我は前に乗るか後ろに乗るか。セシィは運転方法知ってるのかの? じゃあたまにはセシィの背に乗るのも、

 

「——まあそれも、無事に全部終われたらの話じゃの、」

 

 さて、あの能天気ども、

 ・・・・・・というか、なにかマキナの奴まで変になってないか?

 前会った時は、あんな気楽な感じじゃなかった気がするが・・・・・・。

 

 はぁ。気が抜けてるだけか。今じゃなかったらいいことなのにの。ほんとうに、

 こんな事にすら、気に触る、

 

「おっ、おいあれ、」

「あの数、まさか、既に何人も、」

「しかもっ、あっちの方から来たぞ!」

 

 ん?

 先程までと反応が違う、

 なるほど、ここにいる奴らは、多少なりとも他より事情を知っとるというわけか。

 なら、話を聞き出すべき、なんだろうな。

 

「それに、あれは、「っ、まさか、「やはり、今日、今から、「何だあれっ、くそっ、近づく——

 

「おい貴様。それを、誰に向けている?」

 

 銃。

 ただのおもちゃ、別にそれはどうでもいい。

 

 でもその敵意を、あの子に向けたな?

 

 

「・・・・・・うわぁ、」

「あっ、レコウさん? また全員倒しちゃってる、」

 

 ふむ。

 これは本当に、全て消してしまった方が早かったかの。

 まあいい。早く、終わらせないと、

 

 まだ、自分を押さえてられるうちに——、

 

「俺は、その、気にしませんから。そう警戒しなくても——、」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

「いや、ああ。違うな。・・・・・・あの子の事を大切に思ってくれて、ありがとうございます、」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちっ、」

 

 言われずとも、だ。

 貴様は大人しく、我が身の安全を喜んでいればいいのに、

 何で、こんなにも、こいつの一挙手一投足が、気に触る。

 

 わからない、何故、こんな奴に、

 セシィを、重ねてしまうんだろう。

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