あか。
放たれた狂気は、理不尽に、道理に、吸い込まれて額へ飛んで。
飛び散った。
暗くて寂しい、会場の裏。
ああ、わたしに相応しい場所、かな?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅ、」
あかく染まった肌、
ジクジクと痛む、それ、
死にそうなくらい気分が悪い、
倒れ込む。
はぁ、まさか、あんな事になるなんてな〜、
あか、確かに飛来した何かに当たって、傷ついた額。
視界が歪んで、それでも、
生きている、
何故か、わたしの力、じゃない。
「————結界。・・・・・・あー、よりによってな〜〜、」
はぁ。心が重い。
何やってるんだろう、
意地になって、勇者様も呼ばずに一人で突っ走って、その結果が、
ずっと否定してきた。これ、かーー。
逃げて逃げて、なんのために、
逃げて来たら、あらここ、どこかしら。
会場の裏、よし、ここなら撒けそうって、
「ん、あらあなた、こんな所にいたのかしら?」
そこにいたのは、目立つ桃色。
不思議なのよねぇ、声が大きいわけじゃないのに気づけば中心にいるというか、
まあそこにいなかったワタクシには、不気味にしか見えなかったけれど、
「——って、そんなことよりあれ、早く止めなさいよお! ・・・・・・っとぉ、ん??」
あらら? いつの間にかいなくなってるわねえ。
何だったのかしら、もしかして初めから勘違い、
い、いえ、あんな怪しい格好してる方が悪いのよ。
それもこれも、ちゃんと見てないあなたが悪いのよって、一体どこ行って、
「ちょっと!? 大丈夫、血だらけじゃない。もー、勝手にいなくなるからよぉ、しょうがないから特別に治して、」
「・・・・・・いらないっ、」
あら、緊急かと思ったけれど、叫ぶ元気があるなら大丈夫ねえ。
ならえっと、治さなくていいかしら。
流石に死なれちゃ困るけれど、むしろ多少元気がないくらいのほうが、管理しやすいかしら?
じゃあこのままでいいわねーって、
いやでも、仮にも聖女としてそれはどうなのかしら。
それに、今更じゃあやっぱ無しでなんて言ったら、聖女のくせにそんな嘘つくんだ〜って、死ぬほど煽られる気がするわ、
うぐっ、それはそれでムカつくわねぇ。
「なに言ってるのよ。ほら、さっさと治させなさい?」
「・・・・・・っ、やめて、」
「ええ、じゃあ、」
よし♪ ならやめ、——いやっ、これは罠よ!
そうよ、こいつは私の心の中を読んでくるんだったわ!!
ならここで引いたら、やっぱり私の一番嫌なこと、煽り倒してくるに違いないわ。
危ないわねえ。うふふ、その手にはのらないわよぉ、
「もう、なに意地張ってるのよ。時間ないからさっさと終わらせるわよ、」
「やめてよ、なんで。・・・・・・お前には、そんなことするりゆーないでしょ?」
「うふふ、私が、その程度で止まると思ったのかしらぁ」
「————なんで、メートのことは、ほっといてよ。」
うぐぐ、強情ねえ。
そこまで私のこと煽りたいかしら!?
「ふん。何で私が、あなたの言う事を聞かなかさゃいけないのかしらあ? ほらもうこうしてやるわ、『聖癒』」
「なんでっ、そこまで! 『拒絶!』」
「えっ、ちょっ、こっちのセリフよぉ!?」
そこまでするかしら!!?
治療魔法中にそれは、洒落にならないのだけど!??
まさかっ、自分の体の治療を失敗させて、聖女様のくせに傷の一つも治せないんだ〜って言いたいの?? 自分の身を削ってまで、私の優位に立ちたいのかしら?!!?!
そっ、そういやこの子、学園で一部の生徒にいじめられてまで、中心の地位取ってたわね?
えぇ? そうまでして、何がしたいのよ、
今だってボロボロのくせに、何なら魔法は使えなくても物理で押し倒せちゃいそうなくらい。あら〜? ふふふ、これなら勝てるかしら、
「『やだっ、そんな目で、メートを見ないでよぉ!!』」
「あっ、これ、無理、」
うわぁ、全く魔法使えないわあ?
はっ、真の目的は、純粋な技量を誇示する事!?
今それやる必要あるかしら、こんな傷だらけの状態で、いやこんな傷だらけだからこそ、
はっっ! なるほど、自分の弱みを見せないように、こんな時にこそ強がっているのね!! まあ、その強がりに、ちょっと勝てないのだけど。
・・・・・・なるほど、なんか、子犬みたいな思考回路ね? ふふ、そう考えたらなんか、急に可愛らしく思えて来たわ、
あら、なに考えてるかわかんなくて不気味だったけど、わかってみれば簡単ねぇ。
ほらほら、もう観念しなさ〜い。
「『ぅ、ん。わあーー!』」
「あっ、ちょと!?」
どこ行くのよ! こんな時に、また勝手に、
逃げた? 私から、何で??
いえ、それはつまり、私の勝ちって事?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・よっしゃーー!
見てたかしらセシィちゃん、私一人でもこうして、何の問題もない・・・・・・って、
いや、逃しちゃダメじゃない??
あ、どこに行って、いない、逃げられた!?
くそー、覚えておきなさい、メート!
次こそは、完全に私が勝つわよ〜!!
走って、逃げて、
意味わかんない。
なんで、なんで、
なんであいつがあんな事するのかも、なんで私がこんな事してるのかも、なんでメートが何にもわからないのかも。
なにも、なにも、
「わたし、は。メート、は、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・ああ、そうだ、勇者様。
勇者様をもっと、活躍させないと。
そうだ、そのために、
みんな、
「・・・・・・あー、みんな、聞いてくれ、、」
溢れる民衆、言葉で終わるには遅すぎて、
それでもまだ赤が飛び散っていないのは、奇跡か、魔法か、
「んー、だめそうかのー、」
「・・・・・・まあ、というか、誰のせい、」
「じゃ?」
いや物理だな。
国境線、いや町境線? ともかく元壁。
それ伝いに人を見かけては、説得を試してみるのだけど、
「あ、人間、」
「ひっ、何だあれ「人の山、全部死んでるのか!?「これは、一体どう言う事で「頭の、あれ、あんなに光って、「嘘だろ、何人殺して来たんだ!?「ひぃ、撃て、撃てー?!」
「ちっ、邪魔じゃーー!」
「「「「「「うわーーーー」」」」」」
はいまたキルスコア追加と。
さっきから、これの繰り返しだ。
まあ結果的に、死人は減るから問題ないのかもしれないけど、
「・・・・・・・・・・・・はは。こうなったらもう、切り替えるしかないか、」
「なんか、すいません、」
「ふぅ。いっそ全て流した方が早いかものー、」
マキナが、どこか遠くを眺めている。
気持ちはわかる、いやなんだ、どこ見て、
「————そう、だな。」
「ん?」
「いや、ああ、もういいか」
あれ? なんかこれ、
いやちょっと待って、一回落ち着こう?
まだ色々諦めるには早いんじゃないか、
「別れよう。オマエ達は、先に友人でも回収して、速やかに町を出てくれ、」
「え、マキナ?」
「ん、急にどうしたんじゃ?」
「いや、急にではないと思うけど、ともかくそんな一人でなんて、」
目的としては、確かに変わらない。
逃げる気はないが、どちらにせよ、早く原因のもとに行った方がいいはずだ。
でも、わからないけど、ここで止めなきゃまずい気がする。
「・・・・・・ジブンは、元々一人だ、」
「そんなことっ、」
「それに、オマエ達といると、動きづらいっ、」
「それはっ、まあ、はい、確かに??」
「じゃー??」
うぐぐ、それ言われると、止めづらいじゃないか!
しかし、いやでも、だったら俺だけ付いて、
「・・・・・・あー、貴様。わかっているな?」
「・・・・・・・・・・・・っ、」
喉まで出かかった言葉を、何とかうちに収める。
そうだ、俺に、そんな事する資格はない。
あの子一人救えないのに、俺がいたところで、結局なにも、
「・・・・・・だが、まあ、、ああ。ここまで送ってくれて、助かった。オマエのおかげだ、ありがとう、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
「それじゃ、悪いな、巻き込んで、」
一人コトコト去っていく小さな背中を、俺は、追いかけることすらできない。
何故ならそっちは、目的の方向と違うから。
自分の体も無い奴が、出来ることなんて、
「————ぁ、マキナっ、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだ?」
「えっと、その、また会える、よな?」
思わず、声が出る。
なにを言っているんだ、そんな事、無い方がいいに決まっている。
だってこの身は、一刻でも早く、戻さなきゃいけないものなんだから、
それを、人の体で、勝手な約束して。
——それでも、ああ、セシィちゃん。
もし君が、この記憶を、覚えていられるのなら、
できれば、あの子を、一人にしてあげないで、くれないか、
「・・・・・・まあ、そう、だな、」
「何故かは知らんが、オマエと話すのは、悪くなかった、」
「また、な。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ああ、これで良かったんだろうか。
本来のものですらない体が震える。
それでも、自分は、やり遂げなきゃいけない。
・・・・・・・・・・・・なんの、ために?
「・・・・・・気は済んだか、それじゃ、行くぞ?」
「あ、ああ、。悪いな、レコウさん。こんな俺の我儘に、付き合わせてしまって」
「ふん、全くじゃ。・・・・・・ま、どうせセシィとおっても、やってる事は大して変わってなかったじゃろうがな、」
そんな事はない。
あの子だったら、もっと上手くやれただろう、
こんな、俺なんかと違って。
「・・・・・・・・・・・・ふん。早く行くぞ、こっちじゃな、」
「ああ、元いた闘技場までは、裏道使ったからちょっと遠回りになっちゃったけど、」
——————、
「こっちだな!」
「いや、違うのじゃが、」
「えっ、あれ?」
「こっちじゃよ。もう、何やってるんじゃ、」
「お、ああすまん。そう、だよな??」
——————ぁ、
「よし、なら行くぞっ!」
「・・・・・・って、だから、そっちじゃないのじゃが、」
「え、ん、お?? あれ?」
「ほれ、あいつの事が気になるのはわかったから、早くしろ」
「ああ、。いや、えっと、あれー?」
——————ェ、
「ん、今度こそ!!」
「だから、違うって言ってるじゃろ!? 貴様、ふざけているのか??」
「ち、ちがっ、なんか、体がそっちに行かないんだけど!?!?」
「はぁ? そんな、わけわからん事、」
——————ン、
「・・・・・・というか、さっきからなんか、向こうから声聞こえない?」
「じゃ? ・・・・・・いや、周辺には、誰もおらんはずじゃけど、」
「あれー? ん?? ん??? いや、何だこれ、くっきり聞こえるのに、靄がかかった様な。はっきり覚えてるのに、思い出せない様な、」
「さっきから、なに言ってるんじゃ?」
——————ちっ、何で俺——が、
「ほ、ほら、誰か、男の声が、」
「我には聞こえんじゃが・・・・・・、セシィなら? まあどっちにしろ、行けばわかるじゃろ、ほら行くぞ、」
「あ、お、ちょっ、引っ張られ、なのに乱暴じゃない、何だこれ!?」
「ふんっ。セシィの体じゃなかったら、さっさと引きずってやってるところじゃ、」
ああ、体がこの先に行く事を拒否してるー?
しかし、体がこの感覚に抗えないー??
な、何これ、セシィちゃん、なのか???
わからんが、行くしかねえ!