情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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101話

 

 あか。

 

 放たれた狂気は、理不尽に、道理に、吸い込まれて額へ飛んで。

 

 飛び散った。

 

 

 

 

 

 暗くて寂しい、会場の裏。

 ああ、わたしに相応しい場所、かな?

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅ、」

 

 あかく染まった肌、

 ジクジクと痛む、それ、

 死にそうなくらい気分が悪い、

 

 倒れ込む。

 はぁ、まさか、あんな事になるなんてな〜、

 

 あか、確かに飛来した何かに当たって、傷ついた額。

 視界が歪んで、それでも、

 

 

 生きている、

 

 

 何故か、わたしの力、じゃない。

 

 

「————結界。・・・・・・あー、よりによってな〜〜、」

 

 

 はぁ。心が重い。

 何やってるんだろう、

 意地になって、勇者様も呼ばずに一人で突っ走って、その結果が、

 

 ずっと否定してきた。これ、かーー。

 

 

 

 逃げて逃げて、なんのために、

 

 

 

 逃げて来たら、あらここ、どこかしら。

 会場の裏、よし、ここなら撒けそうって、

 

「ん、あらあなた、こんな所にいたのかしら?」

 

 そこにいたのは、目立つ桃色。

 不思議なのよねぇ、声が大きいわけじゃないのに気づけば中心にいるというか、

 まあそこにいなかったワタクシには、不気味にしか見えなかったけれど、

 

「——って、そんなことよりあれ、早く止めなさいよお! ・・・・・・っとぉ、ん??」

 

 あらら? いつの間にかいなくなってるわねえ。

 何だったのかしら、もしかして初めから勘違い、

 

 い、いえ、あんな怪しい格好してる方が悪いのよ。

 それもこれも、ちゃんと見てないあなたが悪いのよって、一体どこ行って、

 

「ちょっと!? 大丈夫、血だらけじゃない。もー、勝手にいなくなるからよぉ、しょうがないから特別に治して、」

 

 

「・・・・・・いらないっ、」

 

 

 あら、緊急かと思ったけれど、叫ぶ元気があるなら大丈夫ねえ。

 ならえっと、治さなくていいかしら。

 流石に死なれちゃ困るけれど、むしろ多少元気がないくらいのほうが、管理しやすいかしら?

 じゃあこのままでいいわねーって、

 

 いやでも、仮にも聖女としてそれはどうなのかしら。

 それに、今更じゃあやっぱ無しでなんて言ったら、聖女のくせにそんな嘘つくんだ〜って、死ぬほど煽られる気がするわ、

 うぐっ、それはそれでムカつくわねぇ。

 

「なに言ってるのよ。ほら、さっさと治させなさい?」

「・・・・・・っ、やめて、」

「ええ、じゃあ、」

 

 よし♪ ならやめ、——いやっ、これは罠よ!

 そうよ、こいつは私の心の中を読んでくるんだったわ!!

 ならここで引いたら、やっぱり私の一番嫌なこと、煽り倒してくるに違いないわ。

 危ないわねえ。うふふ、その手にはのらないわよぉ、

 

「もう、なに意地張ってるのよ。時間ないからさっさと終わらせるわよ、」

「やめてよ、なんで。・・・・・・お前には、そんなことするりゆーないでしょ?」

「うふふ、私が、その程度で止まると思ったのかしらぁ」

「————なんで、メートのことは、ほっといてよ。」

 

 うぐぐ、強情ねえ。

 そこまで私のこと煽りたいかしら!?

 

「ふん。何で私が、あなたの言う事を聞かなかさゃいけないのかしらあ? ほらもうこうしてやるわ、『聖癒』」

「なんでっ、そこまで! 『拒絶!』」

「えっ、ちょっ、こっちのセリフよぉ!?」

 

 そこまでするかしら!!?

 治療魔法中にそれは、洒落にならないのだけど!??

 まさかっ、自分の体の治療を失敗させて、聖女様のくせに傷の一つも治せないんだ〜って言いたいの?? 自分の身を削ってまで、私の優位に立ちたいのかしら?!!?!

 

 そっ、そういやこの子、学園で一部の生徒にいじめられてまで、中心の地位取ってたわね?

 えぇ? そうまでして、何がしたいのよ、

 今だってボロボロのくせに、何なら魔法は使えなくても物理で押し倒せちゃいそうなくらい。あら〜? ふふふ、これなら勝てるかしら、

 

「『やだっ、そんな目で、メートを見ないでよぉ!!』」

「あっ、これ、無理、」

 

 うわぁ、全く魔法使えないわあ?

 はっ、真の目的は、純粋な技量を誇示する事!?

 今それやる必要あるかしら、こんな傷だらけの状態で、いやこんな傷だらけだからこそ、

 はっっ! なるほど、自分の弱みを見せないように、こんな時にこそ強がっているのね!! まあ、その強がりに、ちょっと勝てないのだけど。

 

 ・・・・・・なるほど、なんか、子犬みたいな思考回路ね? ふふ、そう考えたらなんか、急に可愛らしく思えて来たわ、

 あら、なに考えてるかわかんなくて不気味だったけど、わかってみれば簡単ねぇ。

 ほらほら、もう観念しなさ〜い。

 

「『ぅ、ん。わあーー!』」

「あっ、ちょと!?」

 

 どこ行くのよ! こんな時に、また勝手に、

 逃げた? 私から、何で??

 いえ、それはつまり、私の勝ちって事?

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・よっしゃーー!

 見てたかしらセシィちゃん、私一人でもこうして、何の問題もない・・・・・・って、

 いや、逃しちゃダメじゃない??

 

 あ、どこに行って、いない、逃げられた!?

 くそー、覚えておきなさい、メート!

 次こそは、完全に私が勝つわよ〜!!

 

 

 

 走って、逃げて、

 意味わかんない。

 

 なんで、なんで、

 なんであいつがあんな事するのかも、なんで私がこんな事してるのかも、なんでメートが何にもわからないのかも。

 なにも、なにも、

 

「わたし、は。メート、は、」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・・・ああ、そうだ、勇者様。

 

 勇者様をもっと、活躍させないと。

 

 そうだ、そのために、

 

 みんな、

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・あー、みんな、聞いてくれ、、」

 

 溢れる民衆、言葉で終わるには遅すぎて、

 それでもまだ赤が飛び散っていないのは、奇跡か、魔法か、

 

「んー、だめそうかのー、」

「・・・・・・まあ、というか、誰のせい、」

「じゃ?」

 

 いや物理だな。

 国境線、いや町境線? ともかく元壁。

 それ伝いに人を見かけては、説得を試してみるのだけど、

 

「あ、人間、」

 

「ひっ、何だあれ「人の山、全部死んでるのか!?「これは、一体どう言う事で「頭の、あれ、あんなに光って、「嘘だろ、何人殺して来たんだ!?「ひぃ、撃て、撃てー?!」

 

「ちっ、邪魔じゃーー!」

 

「「「「「「うわーーーー」」」」」」

 

 はいまたキルスコア追加と。

 さっきから、これの繰り返しだ。

 まあ結果的に、死人は減るから問題ないのかもしれないけど、

 

「・・・・・・・・・・・・はは。こうなったらもう、切り替えるしかないか、」

「なんか、すいません、」

「ふぅ。いっそ全て流した方が早いかものー、」

 

 マキナが、どこか遠くを眺めている。

 気持ちはわかる、いやなんだ、どこ見て、

 

「————そう、だな。」

「ん?」

「いや、ああ、もういいか」

 

 あれ? なんかこれ、

 いやちょっと待って、一回落ち着こう?

 まだ色々諦めるには早いんじゃないか、

 

「別れよう。オマエ達は、先に友人でも回収して、速やかに町を出てくれ、」

「え、マキナ?」

「ん、急にどうしたんじゃ?」

「いや、急にではないと思うけど、ともかくそんな一人でなんて、」

 

 目的としては、確かに変わらない。

 逃げる気はないが、どちらにせよ、早く原因のもとに行った方がいいはずだ。

 でも、わからないけど、ここで止めなきゃまずい気がする。

 

「・・・・・・ジブンは、元々一人だ、」

「そんなことっ、」

「それに、オマエ達といると、動きづらいっ、」

「それはっ、まあ、はい、確かに??」

「じゃー??」

 

 うぐぐ、それ言われると、止めづらいじゃないか!

 しかし、いやでも、だったら俺だけ付いて、

 

「・・・・・・あー、貴様。わかっているな?」

「・・・・・・・・・・・・っ、」

 

 喉まで出かかった言葉を、何とかうちに収める。

 そうだ、俺に、そんな事する資格はない。

 あの子一人救えないのに、俺がいたところで、結局なにも、

 

「・・・・・・だが、まあ、、ああ。ここまで送ってくれて、助かった。オマエのおかげだ、ありがとう、」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

 

「それじゃ、悪いな、巻き込んで、」

 

 一人コトコト去っていく小さな背中を、俺は、追いかけることすらできない。

 何故ならそっちは、目的の方向と違うから。

 自分の体も無い奴が、出来ることなんて、

 

「————ぁ、マキナっ、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだ?」

「えっと、その、また会える、よな?」

 

 思わず、声が出る。

 なにを言っているんだ、そんな事、無い方がいいに決まっている。

 だってこの身は、一刻でも早く、戻さなきゃいけないものなんだから、

 それを、人の体で、勝手な約束して。

 

 ——それでも、ああ、セシィちゃん。

 もし君が、この記憶を、覚えていられるのなら、

 できれば、あの子を、一人にしてあげないで、くれないか、

 

 

「・・・・・・まあ、そう、だな、」

 

「何故かは知らんが、オマエと話すのは、悪くなかった、」

 

「また、な。」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 ああ、これで良かったんだろうか。

 本来のものですらない体が震える。

 それでも、自分は、やり遂げなきゃいけない。

 

 ・・・・・・・・・・・・なんの、ために?

 

 

 

 

 

「・・・・・・気は済んだか、それじゃ、行くぞ?」

「あ、ああ、。悪いな、レコウさん。こんな俺の我儘に、付き合わせてしまって」

「ふん、全くじゃ。・・・・・・ま、どうせセシィとおっても、やってる事は大して変わってなかったじゃろうがな、」

 

 そんな事はない。

 あの子だったら、もっと上手くやれただろう、

 こんな、俺なんかと違って。

 

「・・・・・・・・・・・・ふん。早く行くぞ、こっちじゃな、」

「ああ、元いた闘技場までは、裏道使ったからちょっと遠回りになっちゃったけど、」

 

 ——————、

 

「こっちだな!」

「いや、違うのじゃが、」

「えっ、あれ?」

「こっちじゃよ。もう、何やってるんじゃ、」

「お、ああすまん。そう、だよな??」

 

 ——————ぁ、

 

「よし、なら行くぞっ!」

「・・・・・・って、だから、そっちじゃないのじゃが、」

「え、ん、お?? あれ?」

「ほれ、あいつの事が気になるのはわかったから、早くしろ」

「ああ、。いや、えっと、あれー?」

 

 ——————ェ、

 

「ん、今度こそ!!」

「だから、違うって言ってるじゃろ!? 貴様、ふざけているのか??」

「ち、ちがっ、なんか、体がそっちに行かないんだけど!?!?」

「はぁ? そんな、わけわからん事、」

 

 ——————ン、

 

「・・・・・・というか、さっきからなんか、向こうから声聞こえない?」

「じゃ? ・・・・・・いや、周辺には、誰もおらんはずじゃけど、」

「あれー? ん?? ん??? いや、何だこれ、くっきり聞こえるのに、靄がかかった様な。はっきり覚えてるのに、思い出せない様な、」

「さっきから、なに言ってるんじゃ?」

 

 ——————ちっ、何で俺——が、

 

「ほ、ほら、誰か、男の声が、」

「我には聞こえんじゃが・・・・・・、セシィなら? まあどっちにしろ、行けばわかるじゃろ、ほら行くぞ、」

「あ、お、ちょっ、引っ張られ、なのに乱暴じゃない、何だこれ!?」

「ふんっ。セシィの体じゃなかったら、さっさと引きずってやってるところじゃ、」

 

 ああ、体がこの先に行く事を拒否してるー?

 しかし、体がこの感覚に抗えないー??

 

 な、何これ、セシィちゃん、なのか???

 

 わからんが、行くしかねえ!

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