情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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103話

 

 なんだろう、ボクは、何して、

 いや少し、戯れてただけさ、夢の切れ端とね。

 さてと、それじゃあそろそろ次の演目を、

 

「・・・・・・・・・・・・ん、おや、動いたようだね、」

 

 ああ。ボクの集大成が、始まったか。

 ふふふ。どんなものになってるのかな、楽しみにしてね、素晴らしいものだと良いな。

 あはは、それならこっちも、しっかりお迎えしなきゃなあ、

 

「よっと、みんな、見てくれてるね。やあ、ハロー? なんちゃって、」

 

 空間に満ちた魔術に触れる。

 想起、良い具合に広がった幻想の波が、観客に満ちているのを感じる。

 ああ、いいね、いいよ、もっともっと楽しんで、

 それがボクの、力となる。

 

「・・・・・・・・・・・・ふぅ。——それでは皆様、楽しんでいただけてるでしょうか? ふふ、愚問でしたね。国中が、一体となっているのが伝わってきます、」

 

 

 

 ————では、次の演目といたしましょう。お題はそう、御伽の伝説、夢の一刀、誰もが想像した、

 

 

 

「————えっ?」

「ん、なんじゃ、我の顔を見て、」

 

「いや、今の声、」

「またか? 何度も言うが、我には何も、」

 

「エウス? それよりなに言って、レコウさん!?」

「え、我? なんじゃ、いったい何が聞こえて——、」

 

 

 

 ————シャォオァーーーンッッッ‼︎⁉︎

 

 

 

 声、

 何かの、鳴き声。

 それを本当に聞いたことは無いはずだけど、不思議とそうなのだと言われれば納得してしまう、

 

 いや、実際に聞けるはずの、すぐ隣の声とは全く違った、

 

「うぉっ、なんじゃ!? 今度は我にも聞こえたぞ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか、」

「うーん、なんじゃこれ。声、いや、金属音のような、」

 

 ——————————ッッッ、

 

 風を切る音、鋭く、硬い、飛翔、

 どこから、向こう、科学の町から飛び立った、幻想の王。

 夢の、異世界に見た、絶対的な、力。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・りゅ、う、」

「は?」

 

 黒く、鋭角に伸ばした翼に、強靭な体。

 太い手足と飛翔能力を備えた、矛盾、

 それでいて何よりも説得力のある、伝説の怪物。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドラ、ゴン!?!?」

「なにーーーーーっじゃ!?!?」

 

 姿を見せる、想像の中にあった、妄想通りの空を自由に踊るドラゴン。

 有機的なフォルムに、無機質な全身、

 硬く冷えた外殻の奥に、空間が歪むほどの熱が収まっているのを感じる。

 

「なっ、誰、いや、何じゃ!?」

「あれが、異世界の、ドラゴンっ!」

「いや我がいるけどじゃ?!」

 

 何故だ、何が起きた、

 あんな、人の町にいきなり、ドラゴンなんて、

 存在して、良いものなのか、。

 

「いやだから我、・・・・・・それに、あれは、?」

「どっから、空じゃない、確かに下から。どうやって、」

「まあ我もできるが、って、そんなこと言ってる場合じゃないじゃ!」

 

 

 

 ——カチッ、

 ————————カシャァァーーーッッッ‼︎

 

 

 

 目が合う。

 

 鋭い爪、長い尾、強烈な眼光。

 それでいて何よりが、その強靭な叫びを発する口の奥。

 並んだ牙、そんなものを飾りにする、その奥の奥の、

 

「あっ、やば、」

「おお、これは、」

 

 赤。

 空間が歪んで見える、あらゆる生物の、根源的恐怖、

 ・・・・・・だとしたら、それを自在に吹き出すそいつは、なんなのか、、

 

「っ、まずい、どうするっ、どうすれば!?」

「・・・・・・・・・・・・じゃ、」

「ダメだ、このままじゃ、何もできないっ。俺じゃ、なにも!!」

 

 空から降り注ぐ天災は、等しく全てを塵に帰す。

 正しく災害、ただの人に、抗えるものでは、

 

 ————————ジュッ、

 

 絶対的な赤が、何者かによって留められる。

 薄い、目に見えない、けれども確かに満ちた、それ、

 白。金にも勝る聖なる光が、厄災の炎をうち止める。

 

 

 ————ふふっ、何が起きたかは知らないけれど、所詮はただの単調な魔法の炎よ。そんなもので、ワタクシの結界を突破できるわけ、

 

 

 ————————バシャンッ、

 

 

 炎は消えた。

 何ものも祈ることしかできないと思われた絶望は、祈りなんて馬鹿馬鹿しいと切って捨てた研鑽の力で、

 

 相殺する事に、成功した。

 

 

 ————あらーぁ? おっかしいわねえ。魔法に対して強くしたはずだったのだけど、一発で魔力切れかしら。・・・・・・えっとーー、どうしましょ、、

 

 

 つまり、次に起こるのは、また新たな絶望と、対象の変わった祈りだけだ。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

 

 

 ——カチッ、

 ————ガチャンッ⁉︎

 ————————カシャーーーーッ‼︎?!

 

 

 

 そして、次なる赤は、来なかった。

 

 その代わり、開示されたのは、終末の火。

 

 炎なんかよりもよっぽど恐ろしい、熱と、力と、毒と、ある意味竜らしい最終兵器。

 

「は?」

「むっ、今度は何する気じゃろ?」

「っ、なんで、いやわからないが間違いないっ。あれは、あれだけは、ダメだ!」

 

 見えないものが見える、何故だ、この体だからか、この知識だからか。

 わからない、だがわかってしまう。次に放たれるのは、禁断の業。

 もはや、単純な力だけではどうしようもない、世界の破滅。

 そう、赤とは、本能の恐怖。だとしたら、それを自在に操るそいつらは、果てに何に至るのか、

 

「よくわからんが、あの程度なら、我の吐息にも、」

「撃たせちゃいけない、絶対に。あんなの、もはや防ぐとか倒すとかそう言う次元じゃない!?」

「はあ? 貴様、我の横にいて、何をそんな焦って、」

「核、爆弾。いやそれどころか、もっとに直接的にこっちに向けてやがる!!?」

 

 ただの生物が、いや違うのか?

 ああそうだ、生物が到達する、到達してしまう、最終地点。

 

 最も強いものかは知らない、でも最も終わりに近いものであるのは間違いない。

 何せそれは、使い手どころか、星をもまとめて終わらせてしまう可能性すらあるのだから、

 

「かく、・・・・・・って、確かー・・・・・・、。毒? じゃ??」

「あんな上空、防いだだけでも、余波で全員死ぬぞ!?」

「な、なにーぃっ!? じゃ!!?」

 

 まずい、どうする、どうしようもない、

 自分には、あんな上空に手を出す方法なんてないし、仮にできたところで、結局爆発して終わりだ。

 そもそもこんなの、もはや、誰にもどうしようもない、

 

「ど、どうする、どうすればいい!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「何か、普通にやるだけじゃ、ダメなのじゃろ!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

「セシィ!? ——って、あーもう!! くそっ、じゃ?!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、」

 

 普通、なら。

 ああ、そうだ、簡単なことだ。

 こんな状況、本当なら、起こることすらなかった。

 だって、、

 

「・・・・・・間に合うか、いや、信じるしかないか、」

「おお!? えっと、人間!! なにか、」

「ああ、時間がない。レコウさんっ、頼む!!」

「むっ、しょうがないの! でっ、なにすれば」

「俺を、殺してくれっ!!」

 

 何故だかまだあの空に浮かんだ竜は動かない、

 何で、こっちを見て? いや、好都合だ、

 だけど、いつまで猶予があるのかはわからない。だから、早く、

 

「えっ、は?」

「確か言ってただろ? 体を傷つけずに攻められるってやつ。頼むっ、全力でやってくれっ、」

「いや、だがっ、貴様が、それでは駄目だと、」

「ああ。それは強引に目を覚まさせる、あの子にも心にもあんまり良くない手段だと思った。でも悪いが、そんなこと言ってる余裕はないっ。このままじゃ、返すべき体すらどうにかなっちまう!」

 

 くそっ、こんなことはしたくなかったのにっ、

 傷ついたあの子を、これ以上、強引に引きずり出すなんて、

 でももう、それ以外に選択肢が、

 

「いや、じゃが、それでうまくいく保証など、」

「いやある。自分のことだから何となくわかるが、多分こんなことが起きてしまったのは、中途半端に俺の何かが残っていたからだ、」

 

 魂ですらない、きっと意地汚い何か、

 

「だがこうして表に出てしまった今、またしっかりと殺し尽くせば、今度こそ俺は完全に消えるはず、」

「・・・・・・なんでっ、」

「あの子には悪いが、余計なものが無くなれば、体を生かすために無理にでも元に戻るはずだ!!」

 

 確証はある。

 記憶は掠れているが、確かに昔、俺はそうやって死んだはずだった、

 何でこんなことになったのかはわからないが、あの時と違って今は、自覚がある。

 きちんと俺が死ぬ気でいれば、もうこんな事にはならないはず。

 

「・・・・・・きっと、あの子、セシィには、負担をかける。でも大丈夫、だってこうして、あの子の事をこんなにも思ってくれる親友がいるから」

「・・・・・・っ、なんで、貴様、」

「ああすまん、これは言っちゃ駄目だったな。まあでもだから気にせず、全力でやってくれ、」

 

 結局のところ、他人頼りだ。

 全く、終活くらい、自分一人でやれって話だよな、

 でもほらやっぱ、せっかく異世界に来たんならさ。自殺じゃなくて、最後は竜の手で、なんて、

 いやまあ単純に、どうやったら体傷つけずにとかできるかわかんないだけですけどね!?

 

「・・・・・・貴様、は、」

「ははは、まあいい歳した大人が情けないって話で、」

「なんで、そんな、顔、」

「えっ、顔?」

 

 うん?

 元のなんとも言えない平凡顔と違って、多少の目つきの悪さもチャームポイントな美少女フェイスですが、

 なんて中身のせいで台無しか。まあいま戻るので、許してくださいと、

 

「何故、何故じゃ。何故そんなにも、」

「いや、あの、あんまり見られると、色々言った手前小っ恥ずかしいというか、時間がないというか、」

「そんなにも、安堵した、。セシィと、同じ表情を浮かべるん、じゃ。」

 

 ・・・・・・ん?

 ・・・・・・・・・・・・あー、それはきっと、レコウが、いてくれるから。

 例えあの子がまた危機に陥っても、支えてくれる親友がいるって、わかるから。

 だから、何も、不安になることなんてない。

 

「・・・・・・えっと、じゃあどうぞ、一思いに心臓とか? おっ、なんか変な感じ、」

 

 

 

 ——————キシャーーーンッッ、、

 

 

 

「あ、やっば、いよいよ時間もないようですよ。すみませんが、ちょっと急いで、」

「————————ゃ、」

「えっ、なんて? あっ、何か魔法でも、」

 

「——いや、じゃ!!」

 

 

「え?」

「・・・・・・なんで我が、貴様なんぞに従わなきゃならん!!」

「は!? いや今、そんなこと言ってる場合じゃ、」

「それにっ、セシィに悪影響があるのかも知れんのじゃろ。だとしたら、やるわけないじゃ!!」

「いや、そんな、ここにいる人全員死ぬんですよ!?」

「セシィだけは、我がなんとしても守る!!」

「そんなことっ、それにそもそも、これはレコウさんが初めにやろうとしてたことで、」

「知らん! 貴様に言われたせいで、やる気なくなった!!」

「はぁ!? そんな、子供の我儘みたいな、」

「そうじゃ、」

「開き直り!? だからそんなことしてる暇、」

 

 

「うるさい! 貴様も、セシィも!! そんな子供のわがまま一つ覆せない癖に、全てを悟って受け入れたようなその態度が、苛つくんじゃ!!!」

 

 

 

 ああ、そうだ、同じだ、

 こいつの、この人の目は、あの時の、セシィのものと。

 全てを受け入れ、全てを諦めた、その顔。

 

 なんで、自分が消えるっていうのに、そんな風にいられる。

 

 そんな、だって、

 自分のことを、、

 隣いる、我のことを、。

 何一つ考えてないような、そんな。

 

 そんなの、受け入れられるわけないじゃろ!!

 

「決めた。貴様だけは、簡単には殺してやらんから、覚悟しておくんじゃな!!」

 

 そう簡単に逃げられると、思うな。

 知らなかったのか、竜とは、執念深いものなのじゃ。

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