舞台は全て整った。
御伽の伝説は、解き放たれて自由となった。
だから後は、全て終わらせる、だけなのに。
なんで、ああ、何を、
ボクは、戸惑って、いるんだ?
それは演出さ、ボク。
機械の女神が全て一方的に終わらせるなんて、そんなの、つまらないだろう?
物語に必要なのは、劇的な、決戦さ、
ああ、だから、決着をつけようじゃないか。
どちらがこの舞台の主演に相応しいのか、
どちらが彼に見てもらえるか、ね、
・・・・・・さてと、うるさいのは黙らせたが、依然として核とやらの脅威はそのままじゃの、
「っ、だから、どうする気、だ?」
「潰す、」
「は?」
「よくわからんが、毒が撒き散らされるのが問題なんじゃろ? だとしたら、それすら出さんよう、念入りに」
それじゃあ久しぶりに、大地の平定と行くか。『巨
「んっ、あれ?」
「竜、えっ、なんじゃ?」
「核、出さない? 何で、というか何して、」
あっ、降りてくるの、
竜が、いや、あれは何と呼ぶべきなのか、
何にせよ、一体どこに向かって・・・・・・、というか、こっち来てないかの?
「・・・・・・あー、まあまあな、大きさじゃのー、」
「ちょっ、言ってる場合ですか、退避たいひーーー!?」
なんじゃ、うるさい。さっきまで死のうとしてた癖に、
いや、今もか、まったく。
貴様がそんなんだから、きっと、セシィは、
それに、こっちには向かっているが、終着点は、ここじゃないの。
ちょうど、向こうの、闘技場か、
「・・・・・・・・・・・・執着。異形の写し身よ、その果ては、なにを、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、今、終着とかけたシャレオツおもろギャグ、」
「言っとらんわ!!」
まあ、良いだろう。
少しだけ、見送ってやろう、
どうせ最後は、変わらないのだから。
剣を構える。
小さく、余計な飾りのついた、頼りない現。
虚飾と、絢爛で彩られた、何よりも頼られる夢。
「・・・・・・ふふ、体の調子はバッチリだね、ボク」
目が合う。
細く、鋭く、強靭さでできた、竜の瞳。
その奥の、あは、変わらないね。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
うん。それじゃあ、始めようか。
夢想の剣、その極地、
キミが夢見た、屠龍のお伽話をね。
「『想起』」
「な、なんだあれ「竜、馬鹿な、なんでこんな「逃げろ! あんなの、人が「くそ、こんな時のため、だが「せめて、彼女だけでも「いや、待て、あれ、「あそこに、いるのは!!」
「やあみんな、見ててくれ。これがキミ達が信じた、幻想の力さ、」
「なんで、いや無茶だ「そんな、逃げてくれっ「いや、だが、でも「あんな、目の前で、堂々と「そうだ、あの人なら、もしかして、「ああそうだ、あれこそが、あの方こそが、俺たちの王、「エウス!」「エウスさん!!」「エウスさまー♡!!」
「あはは、みんな、応援ありがとう!!」
「「「エーウース! エーウース!!」」」
『夢想、屠龍の剣技』
——カチッ、
————————ギシャァーーーーッンッッ‼︎
ボウッッ! と、火が出る。
うん、良い演出だ、やっぱりドラゴンに炎は欠かせないよね。
僅かな異臭、生物的な、その成れの果て。
ふむふむこれは、
「液体燃料、ガソリンかな? 一体どっから持ってきたのか、それともわざわざ作ったのかい??」
人が、どうやったって生身では防げない、粘着質な、炎、
人が辿り着ける、生物を害するための、赤。
それを真正面から受け止めてこそ、主役というものだろう?
「きゃぁーー!?「嘘、だろ?!「いや、待て、あの人なら「そうだ、エウスなら、きっと!!」
「ああ、みんなの歓声が聞こえるよ。これに応えてこそ、主役ってものだろう?」
「「「わぁーーーーーっっっ!!!」」」
炎を、一刀の元、切り開く。
小さな飾りの剣は、大きな竜殺しの神剣へ、
炎が逆巻き、英雄を避けるように、跪き道を譲っていく。
あはは、物理学的に、どうかなぁ。でもここは、そんな単純な世界じゃない、
これが夢さ、ここがキミの辿り着いた現実さ。さあ、次だ、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、」
天から降りて、それでも、空に構える黒金の竜。
地に立つ人間に、手を出す手段は、ない。
それにあったとしても、こんな飾り物の剣じゃ、傷一つ付けられはしないだろう。
普通なら、ね、
「まさか「無謀だ「でも「エウスなら!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
「それじゃあ、まずは一つ、貰うよ、」
大袈裟な、無駄の多い、一振り、
劇的で、ドラマチックな、竜にも届くのではないかと夢想する、優雅な一刀、
明らかに届いていない、明らかに強度が足りない、そもそもこの小さな剣で切れるわけがない。
なんて、そんな常識じゃ、つまらないだろう?
英雄の放った一撃は、あらゆる物理法則を無視して、無理を通した。
大ぶりな、それでいてこ慣れた、自分の何倍もの相手をいつも相手していたかのような、洗礼された剣。
劇的な、常識的に見れば無駄の多い、熱狂に包まれれば何よりもカッコいい、演出家にして演技者の、極地。
今ここに、新たなる御伽の一ページが、刻まれる、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、」
竜の、その翼の片方が折れ、地に堕ちる。
誰もが夢見た、伝説の、幕開け、
だけどそう、まだ始まりだ。
これだけで終わるようじゃ、誰もここに夢など見ない、
『——』
竜の脅威、確かに地に伏せたはずのその傷が軌跡が、塞がっていく、
有機的に、無機質に、まるでたかが人間の足掻きなど、無駄だというように、
「・・・・・・・・・・・・へぇ、いい演出だ、」
——カチッ、
————カシューーーッッ⁉︎
————————キィィーーーーーンッッッ‼︎‼︎
次なる竜の足掻きは、高音と、高熱、
甲高い音を奏でながら、周囲に白い蒸気を振り撒いていく、
なるほど、ただの指向性を持った炎じゃ、また同じ事になると思ったんだね。
周囲の温度を上げて、確実にダメージを与える気かい?
でも駄目だ、それはさっきのわかりやすい赤に比べて地味すぎるし、なにより視聴の邪魔だ。
「さあ来い! 次は、何するんだい!!」
剣を振り払う、熱すら無くなって簡単に、白い煙は霧散していく。
薄らと、丁度いい、演出となって、消されていく——、
・・・・・・けほっ。
ん? あっ、これ、蒸気に混ぜて毒ばら撒いてたな? それに耳も痛い、音の仕業か、
全く相変わらず、合理的というか短絡的というか、せめてそれっぽい色でもつけなよ。
それじゃ、観客に伝わらないだろう?
つまり、ボクには無意味だよ。
——カチッ、
————ギギギッッ?!
————————ガシャーーーッッッ‼︎
竜が、口を向ける、
おっと、いよいよなりふり構わなくなってきたね、
その複数の細い口を、まあとはいえ、まだそれは早いかな。
「そこだ!!」
「きゃー!「いけーー!!「頑張れーーー!!!」
一振りで、強引に竜の口を閉じる。
ふむ、ネタバラシは、しかしあまり長引かせるのもね、
でもま、ちぎられた複数の銃口は、おや、今度は直さないのかい?
ふむ、あくまで組み合わせてるだけ、細かい部品まで再構成している余裕はないか、
その竜の形状保つのも、だいぶ無理しているだろう? 演出考えなきゃ、ただの円柱が一番楽だもんね。
しかしだからこそ、その積み重ねの成果には感動しているよ。流石は、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
「おっと、おや、終わらせる気かい?」
——カチッ、
熱を持つ。
何より恐ろしい、最終兵器。
人間が到達しうる、最悪で最低で最大な、機械仕掛けの終幕。
「核か。ま、そのわかりやすい破壊力だけは、尊重してあげるよ」
別に撃っても構わないよ? ボクには影響ないし、
そもそもてっきり、上空から放ってくると思ったのに。それをカッコよく切り裂いて、開戦の狼煙にしようと思ったんだけどな。
まあいいさ、結果こうして、劇的な立ち回りを演出できてる。
ずっと上空にいられると、そこまで剣を伸ばすのは不可能ではないが、説得力に欠けるし、何より絵面としてワンパターンになりがちだからね。
だから、大助かりさ。
さあ国を滅ぼす黒金の邪竜よ! その復讐心で持って、この国を滅ぼすがいい!!
お返しに、その亡骸を持って、ボクは世界にこの演目を広げよう、
————ガチャンッ⁉︎
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
「さあ、フィナーレと行こう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ、」
そして、邪竜は、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・おや?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・動かない?
ふむ、不調、エンジントラブルかな?
まったく、つまらないな。
しょうがない、手を貸してやろう、『』。
————————カシャーーーーッ、ッ、な、⁉︎‼︎
機械の竜に、核の炎を蓄えさせる。
おっと、ここは、オフレコで頼むよ?
それじゃあ、最期の激突と行こうか!
「みんな! 見ててくれ!!」
「「「エーウース! エーウース!!」」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、ま、」
一閃。
見上げる竜に、真正面から切り込んで、
その奥へ、英雄の道を阻めるものなどないと、心臓を引きづり出す、
「・・・・・・やあ、久しぶり、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、くそ、オマエ、は、」
「ふふふ、裏でこそこそと何をしてるのかと思えば、こんな物を作っていたなんてね、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
「だけどあはは、今回は、ボクの積み上げできた物の方が強かったようだね。ただの夢でも集めれば、お堅い現実にだって打ち勝てるのさ、」
黒金の竜、組み上げられた機械の塊が、形を保てず崩れていく。
創造、思い通りに物質を組み立てる魔法。だけどあの現実の竜を作るには、きちんとした素材と時間が必要だったはずだ。
よくあれだけの物を集めた、その執念は、我ながら驚嘆に値するね、なーんて、
「ああ、いいよ、ボク。しかし、素晴らしい劇だった」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちっ、だが、まだ、」
「これは、世界中に広げるべきだね。うん、もっともっと、全てを巻き込む素敵な劇にしよう、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、?」
光が、収束する。
どーんと、背後で爆発。
うん、お約束の演出だね、ブラーボ!!
ハハハ、これは世界中のみんなに見てもらわないと、損だろう?
ああ、見ていてくれ、キミ。
ボクは、世界を、一幕の劇にして見せよう。