情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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104話

 

 舞台は全て整った。

 御伽の伝説は、解き放たれて自由となった。

 だから後は、全て終わらせる、だけなのに。

 

 なんで、ああ、何を、

 ボクは、戸惑って、いるんだ?

 

 

 

 それは演出さ、ボク。

 機械の女神が全て一方的に終わらせるなんて、そんなの、つまらないだろう?

 物語に必要なのは、劇的な、決戦さ、

 

 ああ、だから、決着をつけようじゃないか。

 どちらがこの舞台の主演に相応しいのか、

 

 

 

 どちらが彼に見てもらえるか、ね、

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・さてと、うるさいのは黙らせたが、依然として核とやらの脅威はそのままじゃの、

 

「っ、だから、どうする気、だ?」

「潰す、」

「は?」

「よくわからんが、毒が撒き散らされるのが問題なんじゃろ? だとしたら、それすら出さんよう、念入りに」

 

 それじゃあ久しぶりに、大地の平定と行くか。『巨

 

「んっ、あれ?」

「竜、えっ、なんじゃ?」

「核、出さない? 何で、というか何して、」

 

 あっ、降りてくるの、

 竜が、いや、あれは何と呼ぶべきなのか、

 何にせよ、一体どこに向かって・・・・・・、というか、こっち来てないかの?

 

「・・・・・・あー、まあまあな、大きさじゃのー、」

「ちょっ、言ってる場合ですか、退避たいひーーー!?」

 

 なんじゃ、うるさい。さっきまで死のうとしてた癖に、

 いや、今もか、まったく。

 

 貴様がそんなんだから、きっと、セシィは、

 それに、こっちには向かっているが、終着点は、ここじゃないの。

 ちょうど、向こうの、闘技場か、

 

「・・・・・・・・・・・・執着。異形の写し身よ、その果ては、なにを、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、今、終着とかけたシャレオツおもろギャグ、」

「言っとらんわ!!」

 

 まあ、良いだろう。

 少しだけ、見送ってやろう、

 どうせ最後は、変わらないのだから。

 

 

 

 

 

 剣を構える。

 小さく、余計な飾りのついた、頼りない現。

 虚飾と、絢爛で彩られた、何よりも頼られる夢。

 

「・・・・・・ふふ、体の調子はバッチリだね、ボク」

 

 目が合う。

 細く、鋭く、強靭さでできた、竜の瞳。

 その奥の、あは、変わらないね。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

 うん。それじゃあ、始めようか。

 夢想の剣、その極地、

 キミが夢見た、屠龍のお伽話をね。

 

「『想起』」

 

「な、なんだあれ「竜、馬鹿な、なんでこんな「逃げろ! あんなの、人が「くそ、こんな時のため、だが「せめて、彼女だけでも「いや、待て、あれ、「あそこに、いるのは!!」

 

「やあみんな、見ててくれ。これがキミ達が信じた、幻想の力さ、」

 

「なんで、いや無茶だ「そんな、逃げてくれっ「いや、だが、でも「あんな、目の前で、堂々と「そうだ、あの人なら、もしかして、「ああそうだ、あれこそが、あの方こそが、俺たちの王、「エウス!」「エウスさん!!」「エウスさまー♡!!」

 

「あはは、みんな、応援ありがとう!!」

 

「「「エーウース! エーウース!!」」」

 

 

  『夢想、屠龍の剣技』

 

 

 ——カチッ、

 ————————ギシャァーーーーッンッッ‼︎

 

 

 ボウッッ! と、火が出る。

 うん、良い演出だ、やっぱりドラゴンに炎は欠かせないよね。

 

 僅かな異臭、生物的な、その成れの果て。

 ふむふむこれは、

 

「液体燃料、ガソリンかな? 一体どっから持ってきたのか、それともわざわざ作ったのかい??」

 

 人が、どうやったって生身では防げない、粘着質な、炎、

 人が辿り着ける、生物を害するための、赤。

 

 それを真正面から受け止めてこそ、主役というものだろう?

 

「きゃぁーー!?「嘘、だろ?!「いや、待て、あの人なら「そうだ、エウスなら、きっと!!」

 

「ああ、みんなの歓声が聞こえるよ。これに応えてこそ、主役ってものだろう?」

 

「「「わぁーーーーーっっっ!!!」」」

 

 炎を、一刀の元、切り開く。

 小さな飾りの剣は、大きな竜殺しの神剣へ、

 

 炎が逆巻き、英雄を避けるように、跪き道を譲っていく。

 あはは、物理学的に、どうかなぁ。でもここは、そんな単純な世界じゃない、

 これが夢さ、ここがキミの辿り着いた現実さ。さあ、次だ、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、」

 

 天から降りて、それでも、空に構える黒金の竜。

 地に立つ人間に、手を出す手段は、ない。

 それにあったとしても、こんな飾り物の剣じゃ、傷一つ付けられはしないだろう。

 

 普通なら、ね、

 

「まさか「無謀だ「でも「エウスなら!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」

 

「それじゃあ、まずは一つ、貰うよ、」

 

 大袈裟な、無駄の多い、一振り、

 

 劇的で、ドラマチックな、竜にも届くのではないかと夢想する、優雅な一刀、

 

 明らかに届いていない、明らかに強度が足りない、そもそもこの小さな剣で切れるわけがない。

 

 なんて、そんな常識じゃ、つまらないだろう?

 

 

 英雄の放った一撃は、あらゆる物理法則を無視して、無理を通した。

 大ぶりな、それでいてこ慣れた、自分の何倍もの相手をいつも相手していたかのような、洗礼された剣。

 劇的な、常識的に見れば無駄の多い、熱狂に包まれれば何よりもカッコいい、演出家にして演技者の、極地。

 

 

 今ここに、新たなる御伽の一ページが、刻まれる、

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、」

 

 

 竜の、その翼の片方が折れ、地に堕ちる。

 誰もが夢見た、伝説の、幕開け、

 

 だけどそう、まだ始まりだ。

 これだけで終わるようじゃ、誰もここに夢など見ない、

 

 

 『——』

 

 

 竜の脅威、確かに地に伏せたはずのその傷が軌跡が、塞がっていく、

 有機的に、無機質に、まるでたかが人間の足掻きなど、無駄だというように、

 

「・・・・・・・・・・・・へぇ、いい演出だ、」

 

 

 ——カチッ、

 ————カシューーーッッ⁉︎

 ————————キィィーーーーーンッッッ‼︎‼︎

 

 

 次なる竜の足掻きは、高音と、高熱、

 甲高い音を奏でながら、周囲に白い蒸気を振り撒いていく、

 なるほど、ただの指向性を持った炎じゃ、また同じ事になると思ったんだね。

 周囲の温度を上げて、確実にダメージを与える気かい?

 

 でも駄目だ、それはさっきのわかりやすい赤に比べて地味すぎるし、なにより視聴の邪魔だ。

 

「さあ来い! 次は、何するんだい!!」

 

 剣を振り払う、熱すら無くなって簡単に、白い煙は霧散していく。

 薄らと、丁度いい、演出となって、消されていく——、

 

 ・・・・・・けほっ。

 ん? あっ、これ、蒸気に混ぜて毒ばら撒いてたな? それに耳も痛い、音の仕業か、

 全く相変わらず、合理的というか短絡的というか、せめてそれっぽい色でもつけなよ。

 それじゃ、観客に伝わらないだろう?

 

 つまり、ボクには無意味だよ。

 

 

 ——カチッ、

 ————ギギギッッ?!

 ————————ガシャーーーッッッ‼︎

 

 

 竜が、口を向ける、

 おっと、いよいよなりふり構わなくなってきたね、

 

 その複数の細い口を、まあとはいえ、まだそれは早いかな。

 

 

「そこだ!!」

 

「きゃー!「いけーー!!「頑張れーーー!!!」

 

 

 一振りで、強引に竜の口を閉じる。

 ふむ、ネタバラシは、しかしあまり長引かせるのもね、

 

 でもま、ちぎられた複数の銃口は、おや、今度は直さないのかい?

 ふむ、あくまで組み合わせてるだけ、細かい部品まで再構成している余裕はないか、

 その竜の形状保つのも、だいぶ無理しているだろう? 演出考えなきゃ、ただの円柱が一番楽だもんね。

 しかしだからこそ、その積み重ねの成果には感動しているよ。流石は、

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

「おっと、おや、終わらせる気かい?」

 

 

 ——カチッ、

 

 

 熱を持つ。

 何より恐ろしい、最終兵器。

 人間が到達しうる、最悪で最低で最大な、機械仕掛けの終幕。

 

「核か。ま、そのわかりやすい破壊力だけは、尊重してあげるよ」

 

 別に撃っても構わないよ? ボクには影響ないし、

 そもそもてっきり、上空から放ってくると思ったのに。それをカッコよく切り裂いて、開戦の狼煙にしようと思ったんだけどな。

 

 まあいいさ、結果こうして、劇的な立ち回りを演出できてる。

 ずっと上空にいられると、そこまで剣を伸ばすのは不可能ではないが、説得力に欠けるし、何より絵面としてワンパターンになりがちだからね。

 

 だから、大助かりさ。

 さあ国を滅ぼす黒金の邪竜よ! その復讐心で持って、この国を滅ぼすがいい!!

 お返しに、その亡骸を持って、ボクは世界にこの演目を広げよう、

 

 

 ————ガチャンッ⁉︎

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

「さあ、フィナーレと行こう」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ、」

 

 

 そして、邪竜は、

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・おや?

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・動かない?

 

 

 

 

 ふむ、不調、エンジントラブルかな?

 まったく、つまらないな。

 しょうがない、手を貸してやろう、『』。

 

 

 ————————カシャーーーーッ、ッ、な、⁉︎‼︎

 

 

 機械の竜に、核の炎を蓄えさせる。

 おっと、ここは、オフレコで頼むよ?

 それじゃあ、最期の激突と行こうか!

 

「みんな! 見ててくれ!!」

 

「「「エーウース! エーウース!!」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、ま、」

 

 

 

 一閃。

 

 

 

 見上げる竜に、真正面から切り込んで、

 その奥へ、英雄の道を阻めるものなどないと、心臓を引きづり出す、

 

 

 

 

 

「・・・・・・やあ、久しぶり、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、くそ、オマエ、は、」

「ふふふ、裏でこそこそと何をしてるのかと思えば、こんな物を作っていたなんてね、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

「だけどあはは、今回は、ボクの積み上げできた物の方が強かったようだね。ただの夢でも集めれば、お堅い現実にだって打ち勝てるのさ、」

 

 黒金の竜、組み上げられた機械の塊が、形を保てず崩れていく。

 創造、思い通りに物質を組み立てる魔法。だけどあの現実の竜を作るには、きちんとした素材と時間が必要だったはずだ。

 よくあれだけの物を集めた、その執念は、我ながら驚嘆に値するね、なーんて、

 

「ああ、いいよ、ボク。しかし、素晴らしい劇だった」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちっ、だが、まだ、」

「これは、世界中に広げるべきだね。うん、もっともっと、全てを巻き込む素敵な劇にしよう、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、?」

 

 

 

 光が、収束する。

 どーんと、背後で爆発。

 うん、お約束の演出だね、ブラーボ!!

 

 ハハハ、これは世界中のみんなに見てもらわないと、損だろう?

 

 ああ、見ていてくれ、キミ。

 ボクは、世界を、一幕の劇にして見せよう。

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