情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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105話

 

 竜が堕ちる。

 上空から舞い降りたその身は、翼を斬られ、地に伏せる。

 

「・・・・・・っ、あ、」

「ふむ、どうするかの」

「行かなきゃっ、」

 

 なき声がする、

 今もまだ、あの決戦の地では、劇闘が行われているのだろう。

 

「・・・・・・あまり、危険な場所には寄らせたくないのじゃが」

「あっ、いや、でも、」

「ま。どちらにせよ、見届ける必要はあるしの、」

 

 何故、か。

 あんな危険な場所に、自分から向かう理由なんてないはずなのに、

 それでも、向かわずには、いられなくて。

 

「ここからじゃと、闘技場は・・・・・・、そこの裏道通るのが早いかの、」

「ああ。・・・・・・いや勝手に使っていいのか、人もいないし、」

 

 会場内、あれだけ騒いでいたはずの観客達が、今はおかしな程にいなくなっている、

 いや、何も道理に反したことはない。ただ観客は、目玉のショーに、いち早く駆けつけただけ。

 即ち、あの中央。竜と、英雄の、決戦の地。

 

「そんなこと言ってる場合かの、それに一応我らは選手だったし、」

「そういやそう、それによく見たら普通に誰かいるしいいか、」

「ん? 運営のやつかの?」

 

 あれ? いやああ、見えてはないな、

 なんというか、感じたというか、なんだこれ?

 勘? いや耳がいいだけか? それにしたってこんなの初だが。

 周りに人がいないから、それともたまたま、もしくはそこにいる誰かが特別かなんて、

 

「いやそれより、早く行かなきゃ、」

「む、ふむ。・・・・・・この匂いは、、」

「スタッフの人が知らんが、すまんが急いでいるんで、使わせてくれっ、」

 

 暗い、楽しげなステージの裏に入る。

 その先の、曲がり角に、というか本当によくそこに誰かいるのがわかったな。

 まあいい、今はそんなところにいた少女の事よりも、いや少女と言うには上半身一部がデッッ、いやなんでもって、

 

「んー、どこ見てるの〜?」

「やべっ、いや、決してやましいことは!?」

「あっ、ちょ、待つのじゃ!?」

 

 そこにいたのは、ピンク色の、乙女。

 

「・・・・・・あれ。セシィ、ちゃん?」

「え、」

「うおっ、やはりか、何故こんなところに!?」

 

 見覚えは、あるような、ないような、、

 

「・・・・・・・・・・・・んー、違う、だ〜れ?」

「いや、あの、お、自分はっ、」

「まずい! 多分面倒なことになる!?」

 

 確か、彼女の、名前は——、

 

「すまんが、今急いでるから後にするのじゃ、メート!!」

 

 メート。

 それは、あの子にとって、どんな存在だったんだろうか。

 記憶はあまり思い出せない。でもきっと、それはどうでもよかったからではなく、

 

「レコウ、ちゃん? という事はあなたはやっぱり、でも、なにこれ?」

「あ、えっと、メートさん??! いや、あの、今ちょっと、急いでて、」

 

 まずい、確実に知り合いだ。それもかなり、深い間柄な。

 どうしよう、どうにか思い出せる限りの彼女の情報を集める。

 

 えっとー、あー、なんだっけ。ぐにぐに、ぐるぐる、あなんかいけそう、

 ふむふむ、彼女は国を滅ぼそうとしたテロリストであり、セシィちゃんとはお互いに殺し合った仲だと、なるほどなるほど、

 

 え?

 

「また演技? でもそれにしたって、こんなの、メートじゃなくても、」

「・・・・・・・・・・・・あー、」

「恐怖? なんで〜、おかしい。それだけは、あの子は絶対メートに向けないはずなのに、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

 やばい、助けてレコウ、様。

 ・・・・・・もういっそ、お口チャックしとこ、

 

「・・・・・・あー、これは・・・・・・、セシィの、双子の兄弟みたいなもの、じゃ、」

「うそ。」

「・・・・・・・・・・・・じゃー、親戚、みたいなもの、じゃ?」

「それもう、・・・・・・ほんと?」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・オレ、モウ、ナニモイワナイ、デス。

 

「あ、なんかそれはー、セシィちゃんみたいかも〜?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、そんな、

 俺とあの子が似てるだなんて、そんなこと、

 はっ、しまった、ぐむ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「ふ〜ん? じゃあ親戚っていうのもー、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、」

「・・・・・・・・・・・・そう。へえ、」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・見透かされたような、目。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

 

「もういいかの!? 本当にちょっと、我ら急いでるのじゃがっ、」

「あ、うん〜、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・その目は、どこか、恐ろしくて、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・・・でも、それ以上に、どこか、辛そうで、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

 

「・・・・・・・・・・・・なあ、」

「・・・・・・んっ、なーに〜?」

「よかったら、その。あの子と、仲良くしてやって、くれないか?」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・何を言っているのだろう。

 相手は、セシィちゃんと殺し合った事もある、稀代のテロリストだ。

 そんな相手に、でも、何故かはわからないけど、

 

「っ、なん、で、」

「いや、まあ、きっと。セシィちゃんも、嫌ってはない、はずだから、、」

「・・・・・・・・・・・・どうしてー、。わたしは〜、。メートは、、」

 

 えっと、あー、

 そもそも、俺はなんでそんな物騒なことになったのか知らないし、

 レコウさんなら、何か知ってるのか、

 

「ま、我も、特に気にしておらんしな。あの程度、可愛いものじゃ、」

「・・・・・・ほんと。・・・・・・・・・・・・そう、あはは、」

 

 まあ、でもきっと、何か理由があったのだろう。

 だって目の前の彼女は、

 普通の、女の子にしか、見えないのだから。

 

「・・・・・・うん! べつに〜、わかってたし〜〜?? あの子は、。メートの事をー、わかってくれるって〜」

「そ、そうか、」

「でも、んー。ありがと、知らない誰かさん♪」

 

 またお話ししましょう。今度は、セシィちゃんも一緒に、みんなで、

 

 なんて、ああ、約束しよう。

 

 セシィちゃんと、レコウさんと、メートちゃん。みんな全員で、また、仲良くできるようにするって、な。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ? あなた、は、」

「・・・・・・ふん、。——むっ、そうじゃ、向かわんと、」

「ああそうだった! すまんが、また今度な!!」

「え、あ、んー・・・・・・、」

 

 まずい、いや何がまずいかもわからんが、行かねば。

 だから今度は、ちゃんと元の状態で、

 

「うん。また、ね〜、」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

 

 

 

 少し遅れてしまったが、目的地に辿り着く、

 御伽話の盛り上がり所は一瞬で、もう既に、竜は地に散らばっていた。

 

「——っ、ふぅ。・・・・・・さあみんな! いかがだったでしょうか竜退治!! これがキミたちが信じた、夢の力です!!!」

 

「「「エーウース! エーウース!!」」」

 

 会場は、熱気に包まれている。

 既に倒れ伏した敵をなじって、立ち上がった英雄を讃えている。

 これは、もう、終わってしまったのか、

 

「・・・・・・ふむ? 介錯は必要なかったか。核とやらは、どうなったのかの?」

「ああ、そうだった、それも、」

 

 ・・・・・・・・・・・・見たところ、問題はない?

 そもそも、見えるものではないが、感じもしないな。いや感じるものでもないはずだが、確かにないと確信できるのは何故なのか、

 まあもし本当に核が放たれてたとしたら、この会場がこんなに形を保っているわけないか、中心は多少荒れているけれど。

 

「さて、それではボクは、ここら辺で、」

 

 エウスが、いつも通りの? 大仰な動作でさっていく。

 流石に竜退治という大役には疲れたのか、体を揺らして、、

 いや、なにか、引きずって?

 

「え、あれ、」

「む、なんじゃ?」

「っ、あれは、待て!」

 

 異変、明らかにおかしいはずなのに、一瞬気づくのが遅れた。

 何故だ、いや、自然すぎたんだ、

 いつもの大げさな、いやそもそもそんなに見てたわけじゃないけど、ともかく彼女になら確かにそれができるのだろう。

 

 道化師、マジシャン、竜を倒した剣に集中させて、その影、

 真逆の、まるで何も持っていないかのような、そんな演技。

 そこまでして、持ち去ろうとしていたのは、

 

「ドラム、缶?」

 

 あれは、ただの、物体、

 

 いや、

 

 目が合う、、

 

 会って、しまった。

 

「・・・・・・おう、これは、酷いの、」

 

 そこにいたのは、そこにいるのは、

 何度も話した事のある、小さなロボット、

 その外壁が破れ、中身が、あらわとなっていた。

 

 小さな、小さな機械の中にスッポリと入る、さらに小さな少女。

 とはいえ、頭のサイズ的には、この体よりは年上なんだろうな。

 それでも、明らかに一回りも二回りも小さな訳は、

 

 その子は、体がなかった。

 

「なんだ、お前、急に叫び出して「あれ、いつからいたんだ「もしかして、エウスさんの活躍するところ見逃したのか「だからって引き留めるなんて失礼な「ん、あれ、エウス様、何か持って「え、あ、本当だ。いつから「というか、なんだその、「っ、それは?!」

 

 

 ——————っ、

 

 手足が全て根本から、ついでに胸の辺りやお腹なども、明らかに削られている。

 それどころか、目や耳も、ほとんど抉られて面影がない。

 もはや、生きてるのかすらわからな、いや、

 

 確かな、俺の大事な知り合いの少女が、そこにいた。

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