竜が堕ちる。
上空から舞い降りたその身は、翼を斬られ、地に伏せる。
「・・・・・・っ、あ、」
「ふむ、どうするかの」
「行かなきゃっ、」
なき声がする、
今もまだ、あの決戦の地では、劇闘が行われているのだろう。
「・・・・・・あまり、危険な場所には寄らせたくないのじゃが」
「あっ、いや、でも、」
「ま。どちらにせよ、見届ける必要はあるしの、」
何故、か。
あんな危険な場所に、自分から向かう理由なんてないはずなのに、
それでも、向かわずには、いられなくて。
「ここからじゃと、闘技場は・・・・・・、そこの裏道通るのが早いかの、」
「ああ。・・・・・・いや勝手に使っていいのか、人もいないし、」
会場内、あれだけ騒いでいたはずの観客達が、今はおかしな程にいなくなっている、
いや、何も道理に反したことはない。ただ観客は、目玉のショーに、いち早く駆けつけただけ。
即ち、あの中央。竜と、英雄の、決戦の地。
「そんなこと言ってる場合かの、それに一応我らは選手だったし、」
「そういやそう、それによく見たら普通に誰かいるしいいか、」
「ん? 運営のやつかの?」
あれ? いやああ、見えてはないな、
なんというか、感じたというか、なんだこれ?
勘? いや耳がいいだけか? それにしたってこんなの初だが。
周りに人がいないから、それともたまたま、もしくはそこにいる誰かが特別かなんて、
「いやそれより、早く行かなきゃ、」
「む、ふむ。・・・・・・この匂いは、、」
「スタッフの人が知らんが、すまんが急いでいるんで、使わせてくれっ、」
暗い、楽しげなステージの裏に入る。
その先の、曲がり角に、というか本当によくそこに誰かいるのがわかったな。
まあいい、今はそんなところにいた少女の事よりも、いや少女と言うには上半身一部がデッッ、いやなんでもって、
「んー、どこ見てるの〜?」
「やべっ、いや、決してやましいことは!?」
「あっ、ちょ、待つのじゃ!?」
そこにいたのは、ピンク色の、乙女。
「・・・・・・あれ。セシィ、ちゃん?」
「え、」
「うおっ、やはりか、何故こんなところに!?」
見覚えは、あるような、ないような、、
「・・・・・・・・・・・・んー、違う、だ〜れ?」
「いや、あの、お、自分はっ、」
「まずい! 多分面倒なことになる!?」
確か、彼女の、名前は——、
「すまんが、今急いでるから後にするのじゃ、メート!!」
メート。
それは、あの子にとって、どんな存在だったんだろうか。
記憶はあまり思い出せない。でもきっと、それはどうでもよかったからではなく、
「レコウ、ちゃん? という事はあなたはやっぱり、でも、なにこれ?」
「あ、えっと、メートさん??! いや、あの、今ちょっと、急いでて、」
まずい、確実に知り合いだ。それもかなり、深い間柄な。
どうしよう、どうにか思い出せる限りの彼女の情報を集める。
えっとー、あー、なんだっけ。ぐにぐに、ぐるぐる、あなんかいけそう、
ふむふむ、彼女は国を滅ぼそうとしたテロリストであり、セシィちゃんとはお互いに殺し合った仲だと、なるほどなるほど、
え?
「また演技? でもそれにしたって、こんなの、メートじゃなくても、」
「・・・・・・・・・・・・あー、」
「恐怖? なんで〜、おかしい。それだけは、あの子は絶対メートに向けないはずなのに、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
やばい、助けてレコウ、様。
・・・・・・もういっそ、お口チャックしとこ、
「・・・・・・あー、これは・・・・・・、セシィの、双子の兄弟みたいなもの、じゃ、」
「うそ。」
「・・・・・・・・・・・・じゃー、親戚、みたいなもの、じゃ?」
「それもう、・・・・・・ほんと?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・オレ、モウ、ナニモイワナイ、デス。
「あ、なんかそれはー、セシィちゃんみたいかも〜?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、そんな、
俺とあの子が似てるだなんて、そんなこと、
はっ、しまった、ぐむ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ふ〜ん? じゃあ親戚っていうのもー、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、」
「・・・・・・・・・・・・そう。へえ、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・見透かされたような、目。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
「もういいかの!? 本当にちょっと、我ら急いでるのじゃがっ、」
「あ、うん〜、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・その目は、どこか、恐ろしくて、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・でも、それ以上に、どこか、辛そうで、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
「・・・・・・・・・・・・なあ、」
「・・・・・・んっ、なーに〜?」
「よかったら、その。あの子と、仲良くしてやって、くれないか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・何を言っているのだろう。
相手は、セシィちゃんと殺し合った事もある、稀代のテロリストだ。
そんな相手に、でも、何故かはわからないけど、
「っ、なん、で、」
「いや、まあ、きっと。セシィちゃんも、嫌ってはない、はずだから、、」
「・・・・・・・・・・・・どうしてー、。わたしは〜、。メートは、、」
えっと、あー、
そもそも、俺はなんでそんな物騒なことになったのか知らないし、
レコウさんなら、何か知ってるのか、
「ま、我も、特に気にしておらんしな。あの程度、可愛いものじゃ、」
「・・・・・・ほんと。・・・・・・・・・・・・そう、あはは、」
まあ、でもきっと、何か理由があったのだろう。
だって目の前の彼女は、
普通の、女の子にしか、見えないのだから。
「・・・・・・うん! べつに〜、わかってたし〜〜?? あの子は、。メートの事をー、わかってくれるって〜」
「そ、そうか、」
「でも、んー。ありがと、知らない誰かさん♪」
またお話ししましょう。今度は、セシィちゃんも一緒に、みんなで、
なんて、ああ、約束しよう。
セシィちゃんと、レコウさんと、メートちゃん。みんな全員で、また、仲良くできるようにするって、な。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ? あなた、は、」
「・・・・・・ふん、。——むっ、そうじゃ、向かわんと、」
「ああそうだった! すまんが、また今度な!!」
「え、あ、んー・・・・・・、」
まずい、いや何がまずいかもわからんが、行かねば。
だから今度は、ちゃんと元の状態で、
「うん。また、ね〜、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
少し遅れてしまったが、目的地に辿り着く、
御伽話の盛り上がり所は一瞬で、もう既に、竜は地に散らばっていた。
「——っ、ふぅ。・・・・・・さあみんな! いかがだったでしょうか竜退治!! これがキミたちが信じた、夢の力です!!!」
「「「エーウース! エーウース!!」」」
会場は、熱気に包まれている。
既に倒れ伏した敵をなじって、立ち上がった英雄を讃えている。
これは、もう、終わってしまったのか、
「・・・・・・ふむ? 介錯は必要なかったか。核とやらは、どうなったのかの?」
「ああ、そうだった、それも、」
・・・・・・・・・・・・見たところ、問題はない?
そもそも、見えるものではないが、感じもしないな。いや感じるものでもないはずだが、確かにないと確信できるのは何故なのか、
まあもし本当に核が放たれてたとしたら、この会場がこんなに形を保っているわけないか、中心は多少荒れているけれど。
「さて、それではボクは、ここら辺で、」
エウスが、いつも通りの? 大仰な動作でさっていく。
流石に竜退治という大役には疲れたのか、体を揺らして、、
いや、なにか、引きずって?
「え、あれ、」
「む、なんじゃ?」
「っ、あれは、待て!」
異変、明らかにおかしいはずなのに、一瞬気づくのが遅れた。
何故だ、いや、自然すぎたんだ、
いつもの大げさな、いやそもそもそんなに見てたわけじゃないけど、ともかく彼女になら確かにそれができるのだろう。
道化師、マジシャン、竜を倒した剣に集中させて、その影、
真逆の、まるで何も持っていないかのような、そんな演技。
そこまでして、持ち去ろうとしていたのは、
「ドラム、缶?」
あれは、ただの、物体、
いや、
目が合う、、
会って、しまった。
「・・・・・・おう、これは、酷いの、」
そこにいたのは、そこにいるのは、
何度も話した事のある、小さなロボット、
その外壁が破れ、中身が、あらわとなっていた。
小さな、小さな機械の中にスッポリと入る、さらに小さな少女。
とはいえ、頭のサイズ的には、この体よりは年上なんだろうな。
それでも、明らかに一回りも二回りも小さな訳は、
その子は、体がなかった。
「なんだ、お前、急に叫び出して「あれ、いつからいたんだ「もしかして、エウスさんの活躍するところ見逃したのか「だからって引き留めるなんて失礼な「ん、あれ、エウス様、何か持って「え、あ、本当だ。いつから「というか、なんだその、「っ、それは?!」
——————っ、
手足が全て根本から、ついでに胸の辺りやお腹なども、明らかに削られている。
それどころか、目や耳も、ほとんど抉られて面影がない。
もはや、生きてるのかすらわからな、いや、
確かな、俺の大事な知り合いの少女が、そこにいた。