あーあ、見つかってしまったか。
キミにだけは、せっかく隠そうとしてたのにねえ、
ん? いや、まあいいさ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふむ、」
エウスが彼女から手を離す。
くるりと、まるで初めから対峙していたかのように向き直り、
その剣を、改めて抜く、?!
————ま、こうなってしまったら、しょうがないね、
これから何が起こるのか、わかりたくなくてもわかってしまう。
観客たちに囲まれながら、その工程を、見守ることしか出来ない、
わけがない。そんなこと、できるわけがないだろっっ!
「っ、な、やめ」
「——おい。落ち着け、じゃ、」
止められる、なんで、
彼女が周囲を見渡す、たくさんの人の目。
「・・・・・・やあみんな、彼女は、何に見えるかい?」
「え、なにって「なんだ、あれ「というか、どこから現れ「いや、あの入れ物、まさか「そうだ、中央、それしかないっ「でも、まさか、そんな!?」
「そう! なんと彼女こそは、この竜の中から現れた、」
「それが、本体、なの「そうだ、確かに、町中に急に竜なんて「聞いた事がある、なんでも高度な変身魔法を使えば、人が竜にもなると「確かそいつ向こう、あっちの町の方から「まさか向こうの奴ら、こんな物まで「っ、まだ動いてる!?」
「・・・・・・あー、うん。そうだね、」
観客が、民衆が、人の意思が、一つに向かっていくのを感じる。
それは、果たしていいことか、普通ならそうなのか。
いや、だが、嘘だろ。
なんで、お前ら、そんな、
あんな、ボロボロな少女に、敵意を向けられるんだ!?
「やめろ! そん——「貴様が止めろ。周りをよく見ろ、じゃ、」
っ、今度は確実に口を塞がれる。
まだ、観客たちは状況を飲み込めず騒がしい、
が、近くの人は、確実に、
流れに逆らった、異物を感じ取った、
その目を、こちらに向けている。
怖い。
ああ、これは、何度も感じたことがある。
昔生きていた場所で、何か変えようと空回りして、失敗した時に周囲から向けられた、目。
なんで、こんな、
ああそうか、どこの世界に行っても、これは変わらないんだな。
集団こそが正義で、外れた空気の読めない誰かは排除される、
個が、それ以外に勝ることなんて、絶対にない。
「だ、けど、」
「ふん。貴様が騒いだところでなんになる、大人しく、」
「——ッッ、、」
それ、でも、
ああ、そうだ、こんな夢の世界でくらい、
目の前に、この場の全員を倒せるドラゴン様だって存在するんだ、、
少しくらい、夢を見たっていいんじゃないのか!?
「っ、こんな状態で、黙ってら——「セシィなら! そんな非合理的な事はせん。・・・・・・今できる事は、落ち着いて、最善を考えること、じゃ」
最善。
ああ、そうだ。
そんなの、決まっている、
「お、おい、どうするんだあれ「どうするって、敵だろ「っ、魔法って事はもしかして、またあの竜になるんじゃないか「さっきのあの炎、エウスさんがいたからよかったが、そうじゃなかったら「ひっ、みんな死んでたっ。あいつを早く「そうだ、どうにかしないと「どうにかって?「そりゃ、」
————ころせ、
ころせ、コロせっ、殺せ!!
声が、徐々に、大きくなる。
誰が発したかなんてわからない、聞こえた限りでは、最初に聞こえたのは戸惑い出てしまった小さな呟きだった。
でもすぐに、連鎖して、広がって、初めの一人すら自分が発したとわからなくなるくらい、全体の意思となる。
それ以外を唱えるの、考えることすら、一瞬のうちに普通から外れた異物とされる、
もはや、これを覆す事は、不可能だ。
いくつもの殺意に晒された、生身の少女は、
ただじっと、潰れたはずの目でこの光景を見つめて、
だから、そうだ、
この状況で取るべき最善は、初めから、選ぶまでもない。
「・・・・・・ああ。これが結末、かい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
「まあ、わかっていた事、だろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「悲しいね。しかしここには、全てを解決する、ご都合主義なカミ様なんて——、
「————っ、待て、じゃ!?!?」
飛び降りる、見ているだけの観客から、その舞台の中心へと、
合理性なんて知るもんか、いや、これがきっと最もいい選択肢だ、
なんの力もなくたって、なんの覚悟もなくたって、ただ。
あの子に、味方はいるよって、示すだけ。
「っ、誰だ「なにして、「エウス様の元に、抜け駆け!?「いや、おかしい「え、どこに立って「はぁ? なに考えて「うそだろ!?」
もはや言葉は不要。
ただのその身で持って、彼女の盾となる。
これ以上、彼女を、マキナを、悪意ある視線に晒さないために、
あの子に背を向けて、観客の方へ。
・・・・・・・・・・・・まあ、これがきちんと捨ててもいい自分の体だったら、いう事ないんだけども、
「あー、もう、しょうがないのー!」
「ははは、すいません。でもほら、咄嗟だが、顔は隠した、」
「セシィはそっちの顔してる方が多いから、あんまり意味ないのじゃ!!」
自然に隣に立ったレコウさんに、髪を上げられる。
え、顔見られるのはまずいのでは、いやまあ色々と今更だけど。
本当にすまんセシィちゃん、これが終わったら速やかに自殺するんで、堪忍してくれ、
「・・・・・・・・・・・・ぁ、なん、で、」
あの子から、声が聞こえる、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
見ての通りだ、示したかった。
この世界に、いやどこにだってきっと、
群にも立ち向かえる個人の意思は、確かにあると。
「ん、というかあいつ「な、あれ、あの王冠!「あんなに多く、まさか「もしかして、ここを狙って「まずい、流石にエウスさんといえど、「キャーーッ、エウス様から離れて!「いかん、早く援護しなくては、みんな!!「おう! 力は有り余ってるぜ!!」
集団に声が上がる。見ているだけの観客から、襲いかかる流れへと変化する。
もはや、個人の意思など飲み込んだ、暴威。
「っ、」
「ふむ。やはりこうなってしまったか、の、」
「・・・・・・あれ、というかみんな見てるの、レコウさんの方、」
「ん? あ。。——じゃ、」
いくつもの視線が殺到する、隣に。
当然、先に立った俺にも警戒した視線を向けているが、
民衆がこちらに向ける目は、もはや罪人を睨むそれだ。
今すぐにでも、きっと一人でも始めれば、みな石を投げてくるだろう。
ここには、諭してくれるカミなんて、いない、
「っ、どうする「早くしないと「今こそ成果を示す時だ、「『咲き誇る赤、燃える、「『響け壮音、轟く「『凍てつけ大地、切り裂く、
いやそれどころか、カミに近い人がいても止められないかも。
だってここにいるのは、わざわざ石なんて拾わなくとも、その意思を凶器に変換できちゃう人たちだった、
「・・・・・・あーあ、どうしよっか、」
そして、後ろからも声がする。
抜いた剣をフラフラと回す、劇場の主役。
もしそっちからも何か来たら、いくらレコウさんといえどもどうしようもないかも、
やばいっ、なにかっ、自分にできる事はないのか?!
「っ、ぐ、」
「・・・・・・ふむ、これは、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うおーーーっっ!! ——『整理!?』」
「えっ、」
記憶を頼りに、力を込める。
そう、確か、こうして、こうすると、
パンッ!!
「うぐぅ!? なにを「な、いま、なにして「何だあれ、あんな魔術、見た事ないぞ「読めすらしない、恐ろしく、複雑な「だ、だが、一体どこを狙って「爆発? だが、大した威力では「そうだ、恐れるな、ただのはったり、」
「い、今のは、まさか、じゃ、」
「空間魔法とやらを暴走させた爆発だ。ワンチャンなんか、世界が吹っ飛ぶらしいぞ!?」
「きさまーーーーーー!? なにやっとるんじゃーーーーーー!?!?!?」
おお、いい反応だ。
おかげで、みんないい具合に怯んでくれている。
記憶に残った、あの子お得意の空間魔法。
なんか場合によっちゃヤバいらしい、死ぬほど難しいもの凄い魔法。
よく見た俺は、その一端くらいは、使える、
——わけがない。
これはあの子の努力の結晶だ、
俺なんかが、そうホイホイ使えてたまるか、
今のはただ、何とか魔力とやらを捻出するポーズを囮に、こっそり体を使って音を出しただけだ。
何故かうまいこと深読みしてくれて、それどころか誰かビックリした拍子に何か暴発させた?
ともかく運良く動きが止まったが、こんなのが決まるのは一度だけだな、
「ははは、というわけで落ち着いて、一度解散して、」
「ふざけるな「普通の魔術にしてもおかしい、いやあれは「まさかそれ、科学とかいうやつ「っ、やはり、そいつも、お前も、仲間か!?」
「ちょっと、待つのじゃ!? 貴様らの気持ちは分からんでもないが、あれは本当にやばいのじゃ!!」
「庇って「くそ、やっぱり仲間「というかあんた、準決勝の「なに、潜り込んで「いやそもそもどっかから来た選手って、」
まずいっ、レコウさんに、関係ない人にまで迷惑がかかっている。
俺の勝手な我儘で、これ以上余計な問題を増やすわけには、
でも今さら、なかった事になんてできるはずが、それにするわけない。
しかしくそう、手詰まりだ。
何か、新しい、選択肢は、
「・・・・・・・・・・・・あん? どういう状況だ、これ、」
声。
体が勝手に、そっちを向く。
まだ姿が見えてすらいないのに、何事よりも優先して確認すべきものがそこにあると、
あれ、ん? なんだ、これ、、
「な、なんだ「向こう?「あ、誰かいるぞ!「あれは、いったい、」
つられて集団も、向こうを向く。
いくつもの、興奮した視線。
されどそれを浴びながらも、平然と、むしろそれが相応しいと堂々とカッコよく現れるその姿は!!
アレ、ンー?? こ、これは?!
「ふぅん。悪党退治ってところか? わかりやすいな。俺様も、混ぜてくれよ」
だ、誰だ!?
アレン!?
わからない、何だこれ、記憶の一片たりとも渡してたまるかという執念を感じる!!
アレン♪♪!!
知り合い、なのか? いや、だが、助かった——、
「あ? 後から来て「それに、ん、その頭の「まあ、いいだろ、手伝ってくれ「剣? はっ、まあちょうどいい。あんた、前に出て、」
わけじゃない!?
そ、そうだ、まずい、
今は、こっちが集団心理の悪者なんだ。
「・・・・・・勇者、じゃと!? 何故ここに、」
「勇者、なのか??」
剣を持った、その人相悪い顔の、そんなところもカッコいい男が、こちらに向かってくる。
目が合う、
その瞳は、獲物を見つけた表情を、していた。