さあ、準備は整った。
「・・・・・・レリア、映んなくなったの、」
「かわりに、なんだこれ、人だかり?」
これより、最後の仕上げといこう。
「まあなんとか大丈夫そうじゃったが、しかし結局どこにいるのか」
「町中、詳しいのは・・・・・・、」
それではまた、こんにちは、
「エウス。あー、体調は、大丈夫そうか?」
「ん。問題ないよ、お陰様でね」
「む、なにか変わって・・・・・・、まいっかじゃ」
気づいたら、彼女が隣にいた。
自然に、空気に溶け込んで、誰か来ていたのはわかってたけど流石だな。
「なにかお困りかい? 良ければ、お時間いかがかな、」
「おー、うん。そうそう、アレがどこか、いや画面変わっちゃったが、」
「ふむ? おや、どこを映して、これではあまり楽しめないねえ、」
スイスイ——と、手を動かして、空中の画面が変化する。
一部の画面が、というかたった今、俺たちを映しているスクリーンが大きくなる。
「動きがあるのをリアルタイムで、いやぁ、人手が足りない。お恥ずかしい限りです、」
「お、おお、」
「むーー、我がさらに大きくなっとるのー。・・・・・・しかし、流石にちょっと邪魔かもの・・・・・・、」
どこか楽しげに、彼女が擦り寄ってくる。
変な感じだ、色々あったのに、それを拒絶しようという気持ちが湧いてこない。
まあ別に、今更どうこうというものではないのかもしれないが、
「なあエウス。我らはちょっと、これからやる事があるというか、少し時間を空けた方がいいか、いや場合によってはエウスでもいいか、」
「ふむー?」
「ともかくまあ、あんまり映されてると面倒かもしれないのじゃが、」
そうなのか、まあそうか?
確かにどこから撮られているのか、ああ、あそこの魔術かって、ん?
ともかくこれがずっと付いて回るのも、プライバシー的な問題が、
ほら、トイレとか行けないし、竜がトイレ行くのか知らないけど、いやこれセクハラだな不味い。そこら辺の記憶が思い出せなくて良かったな、セーフ。
「ああそれは、ふむ。ちょうど良かったかもね、」
「お、どうにかしてくれるのか?」
「うん。前の話の続きだ、レコウ様、」
「前の? あーそうじゃった、頭のこれも外せるのか、」
「それもまた、これから決めようじゃないか、」
「んあおう??」
微妙に話が合ってるのか合ってないのか、まあエウスの方が、わざと芝居がけて言ってるせいだけど、
にしても、画面・・・・・・ん? そういやエウスの方のカメラはどこ、いやないな。じゃあ会場中央のは、あれなんか、見たいのに見れないのに凄く見たい?? この反応は、ああ彼か、
「それではレコウ様。改めて、ワタシと踊っていただけませんか?」
「あ、おう? ・・・・・・・・・・・・おーう??」
おっと、今はこっちに集中するか。あの子が惚れてる相手を凝視するとか、父親気取りかっての。
にしてもエウスも、割と誤解されやすいからな。いやわかっててやってるんだろうけど、それも個性だし口出しするのもなー、なんて。
いやいやだから、えっと、
「つまり、エウスは、三位決定戦。レコウさんと、試合がしたいと、」
「ザッツライト、その通り。とはいえこうなった以上、ワタシもまだ優勝を目指させてもらいますが、」
「じゃ〜、なるほど?? ・・・・・・しかし、今そういう気分じゃないんじゃが、」
優勝か、なんでそれに拘ってるんだろう。
何か理由は、わからない。思い出せないだけのかそれとも、
「それはそれは、どういたしましょう。今も既に中継ちゅう。観客達は、盛り上がる劇を期待しておられるのですが、」
「むー。ああじゃあ我が勝ったら、頭のこれ外して、」
「いえいえそれは、勝者の証ですので、」
「じゃあもう負けでいいから、ほっといてくれんかのー、」
うーん、テンション感が合わない。
これは可哀想だ、とはいえどうしよう、
「あっそうだ。ならレコウさんが勝ったら、エウスにも協力してもらうってことで」
「・・・・・・ふむ。まあ確かに、予備か本命かいた方がいいかもの。待つ必要もないし、」
レリアさん? がどこにいるか。この町の地理については、少なくともこの中で一番詳しいだろうし、
「えっと? ・・・・・・まあ、いえ、構いませんよ。やる前から負けることを考えるものはいませんから、特に主演なら、ね。観客にミセられるのなら、ワタシはいくらでも、」
「え、今なんでもっ、と。あいや、なんでも、」
「ええなんでも、お好きに、あなたになら、」
なーんて、冗談めかして笑う少女。
・・・・・・危ない、なんか反射で、これはちょっと死ぬのを焦った方がいいのか?
「・・・・・・・・・・・・まいいか、じゃ。それで試合って、どうするんじゃ、あっちの会場戻るのか?」
「んー、あっちは今は・・・・・・、そうですね。取りあえず、場所はどこでもいいでしょう。それにミせる方法も、ご自由に、それこそ命をかけてでも、」
「いやそれは困るのじゃが・・・・・・。それに良く考えたら、派手にやったら巻き込んでしまうのー、」
こっちを見る。
ああそうだ、今はお荷物がいるんだった、中身もないスッカスカの。
それにいくら試合形式とはいえ、少女同士が殴り合うのを見るのはな。もっとこう、
「踊ってみるとか? 最初に言ってたとおり、」
「何言っとるんじゃ貴様??」
あれ? しまった、口に出てた!?
「ふーむ、うーん。それで、観客は盛り上がるのかな?」
「え、あ、いやえっと。お二人みたいな美少女が踊るなら、きっと???」
あーあー! しまった、なんかさっきから変なことばっか言ってる!?
いや別に変なことっていうか、本心というか、ロリコン、いやそういうんじゃなくて?!
「んっ、ふふ、そうかい?」
「きさまー、セシィのことも、そんな目で、」
「そんな目ってどんな目!? いや違うもっとこう純粋な、子供を見るような、そんな目ですから!!??!」
「それはそれでなんか、ムカつくのじゃ、」
うーんツンデレみたいな。でもこれは、人間のくせになにドラゴン様のことを子供扱いしてんだって、そういうセリフだな。
実際もしかしたら、年上なのかもわからん。
「ならそうしよう。キミがいうなら間違いないさ、ん?」
「・・・・・・・・・・・・まあ別に、危なくないしいっかじゃ、」
あ、通ってしまった。
え、ここから踊りで勝敗決めるアイドルバトル始まるの?? いや自分で言っといてだけど、
「(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに、やってんだ、こいつら、)」
あ、マキナ。
うん。多分面倒なことになるから、今は黙っといてくれ、
「(・・・・・・・・・・・・ボクだって、外見は、一応同じだったんだが、)」
「え?」
「んじゃ? どうしたんじゃ?」
「あいや、気のせい、かな?」
他の人には聞こえてないし。
それよりダンスバトルか、というかどう勝敗決めるの? もしかして俺か?? 無意識で贔屓しちゃうかもよ???
「しかし踊りか、ふむ。・・・・・・くるっと、こっちの方がいいかな?」
「あ、うさぎさんじゃ!」
「ちょっ、エウス!? こんなとこで着替えて、というかなんで格好してんの!??」
急に現れたバニー服?! え、いつも服の下にそれ着てるの??!
なんか、知りたくないこと知ってしまった気分だ、
「おっと、んぅ、変かい?」
「いや、変というか・・・・・・、」
「まあそうだね。これじゃあ行き着く先は賢者になってしまうしね、」
「いやそんなことはしないが!?」
「・・・・・・なんの話してるんじゃー?」
ね、なんでしょう??
ともかく元に着替えてもらって、なんていうかこうその格好されると、ソワソワというかハラハラというか、ともかく居た堪れない気持ちになる。
おかしいな、あの格好はむしろ好きだったはずなのにって。いやいや、普通に未成年の娘相手に反応する方が危ないか。
「・・・・・・しかしー、楽しそうじゃの、」
「え、いや、そんなことは、」
「まあいい。ふふ、しょうがないの。せっかくじゃ、貴様も来い!」
いやそんな、楽しそうなんて、そんなの。
それに何し、あーれー、強引になのに優しく引っ張らないでー、
「きさまーが言い出したことじゃからの! 責任持って、一緒に踊るのじゃ!!」
「いやいやいや!? それは、」
少女の体で少女達の中に混ざってそんな事するなんて、完全にやべー奴じゃないか。
そうでなくても、いやともかく俺はって、
「勝手にそんな、あとに、」
「なっ、エウスも問題ないなじゃ!!」
「んーー、今更三位とかも関係ないし、楽しんでもらえれば、それでいいか」
あれ、なんで、決定した流れになってるの?
そもそも俺はダンスなんて、というかどうして中央に置く、目立つんだが、
「んー? まあいいか。それじゃあ、ミュージックスタート!!」
「おーーじゃーーー!!!」
そうして流れ出したのは、どこかで聞いたアイドルソング。
それに合わせて、三人の少女達が展開してって・・・・・・、
えっ、バトルじゃないの!?
「ほらほら、振り付けは、・・・・・・まあ、」
「自由に、楽しくじゃ!!」
「ふふっ、そうだね。それに勝るものはないさ、」
なんだこれ、せめてもっとこう、個人で踊るものかと、
そうは言っても、もうライブステージは始まってしまった。
可愛い系、かっこいい系、クール系、三人のアイドル達の、
ってなんだこれ、最後の中身が俺じゃなかったら完璧なのになって、本当なんだこれ???
どうしてこんなことに・・・・・・、
「・・・・・・貴様も、セシィも、少し考えすぎじゃの。もっと今を楽しんでも、いいんじゃないか?」
「え、いや、そんなことしていいわけ、そうそんな暇、」
「・・・・・・まあ我が急かしすぎたのも悪かったかの。じゃあ我に付き合うと思って、何も考えず楽しめ!!」
だが、しかし、だとしても、
・・・・・・でもそうだ、確かにたくさん迷惑をかけているし、嫌な思いもさせただろう。ならそうだ、せめて少しでも埋め合わせを、
「・・・・・・・・・・・・ぁ、えっと、あなた。ん、————そう。これは、ワタシが開催したお祭りなのですよ、。楽しんでいただかないと、その、」
「あ、ああいや、俺は、」
「悲しい、です?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
何やっているんだろう。
マイクを取る、虚空の、パントマイム。
そうだ、俺は、少しでも、
いいさアイドル、それでみんなが楽しい気持ちになれるのならば。
今だけ、体を貸してくれ、セシィちゃん!!
「うぉーーーーー!!」
これが俺の、初ライブだーーーー!!!
「・・・・・・・・・・・・いやだから、自由にと。——やっぱ、ズレとるんじゃよなー・・・・・・、」