世界が暗くなる。
夜はまだ、日食でもない、いやこれもある意味ではそうなのか、
「・・・・・・隕石、そんなレベルにすら収まらない、」
空から飛来する、正しく天蓋。
国中覆い尽くしてまだ広がる、黒い幕引き。
「・・・・・・・・・・・・はぁ、だから、早く出ろと言ったのに、」
ゆっくりと、終幕が近づく、
意外と終わりは劇的なのか、それともただ感性が引き延ばされているだけなのか、
どちらにせよ、あれはきっと、全てを破壊し尽くすだろう。
意味がわからない、なんであんなものが急に。それこそ世界の終末だって、もっと事前に知らせてくれるだろう。
「うわー、あんなもんどっから持って来たんじゃー?」
「近くの雲に、入れといた。天のシロってほど、精密ではないがな、」
わからない、わからない、
なにが起きたのかも、なんで起きたのかも、なぜ今この場所で起きたのかも、誰が、
「悪いな、時間で設定しておいた、保険ってやつだ。今からでは、止められない」
「っ、マキナ? 何を、」
「ん? まあでも、オマエ達なら、今から逃げれるだろ。ほら、危ないぞ?」
何を言っているんだろう。
そんなのまるで、あの天から送られた災厄が、たった一人の手で起こされたかの様な、
「・・・・・・だらしないのーじゃ。何故かなんて、わかっているだろうに、」
「むう? まあ、巻き込んだことは、悪いと思うが。・・・・・・ああ、安心しろ、きちんとこの国だけを潰す様、計算してある」
「へー、そんな事もできるのかじゃ、」
「ああ、落ちるの、遅いだろ? 自由落下だと、流石に制御できないし、それに、」
そんな心配、というかそれを聞いてどう安心しろと、いやそれよりも何でそんな事も無げに、
「ん? ただの質量兵器、直で核を打つより綺麗だ。後始末も楽だぞ??」
「ほー、そういうもんか」
「ああ。流石にジブンも、ここを更地にした後、汚染地帯にするのも、どうかと思ったしな。知識がない分、後から来た死人が増えそうだし、」
「うわ、あれそんなにやばいのか!? 危ないのー、」
「・・・・・・・・・・・・ま、止めたのに、撃ったやつもいるが、」
「いや作る方が悪いと思うじゃ、」
「そうか? そうだな、」
理解ができない、急に目の前の少女達が別世界の住人に思えてくる。正しくそうだ、
なんだ、あんなの、人の手で起こして、
「だから、核の方がよほど、」
「それにあの程度なら、別に我が壊してやってもいいしな、」
「ん、それは、推奨しない。あれ自体は、ただ地表を区切って、浮かべただけだが。・・・・・・燃料の方に、核使ってる、」
「へー、燃料にもなるのかー。でーー・・・・・・、そうなるとどうなるのじゃ??」
「衝撃で爆発して、こっちまで飛んでくるし、廃棄物も乗せてる。汚染が破片に乗って、どこに飛び散るか、」
「ほーー、」
「それに、余計な被害が出ない様、制御もしてある。下手に崩すと、一気に落ちて、どこまで被害が行くか分からん」
「ふむふむなるほどなるほど・・・・・・、ちょっとーー、まずいのじゃ??」
廃棄物は容器に入れといたが、ああそうだ、もしジブンを殺すなら、後処理よろしくなー、
やっぱり事も無げ、まるで世間話でもするかの様に、軽いノリで。
自暴自棄、わかっていたのに、止められなかった。いやもう全て、遅すぎたんだろう。
アレを浮かべていると言ったが、一体いつからか。溜まった汚れた負債がそのまま、彼女の過ごした世界なのならば、
「でも、だとしても、こんなの駄目だ、」
「そうか。・・・・・・で、そろそろ逃げたほうが、いいんじゃないか?」
「・・・・・・・・・・・・そうじゃの、どうするにせよ、早く決めなきゃならんか、」
どうする、どうすればいい。
この国中、歌って踊って彼女を認めてくれた国を壊すなんて、そんな、
いやそれ以上に。彼女に、国中無作為な大虐殺なんて真似、させていいわけない、
そんな事したら、もう二度と、彼女達を普通に過ごさせてあげる事なんてできない!
どうするか、なんてそんなの、初めから決まっている。
だって、俺にできる事は、
「・・・・・・ふむじゃ、元の姿、いやもっと膨らませれば、上手く運べるか? あの規模を一気に潰すと、あれができてしまう恐れが、そっちの方がやばいし、」
「まあ何にせよ、やるなら一気にを、おすすめする。下手に力を加えれば、まあそれこそアレみたいのは、やめておくんだな、」
「む、画面? おお、エウスのやつが光っておるが、何か策があるのか、」
「さあ、ないんじゃないか? アレならとりあえず、真っ二つにはできるかもしれんが。目に見えない毒なんて、気にしてないだろうし、」
「っ、知らんもんな。あっちが制限時間じゃったか、これは本格的に後のこと考えてる余裕はないのっ!」
そうだ、もう時間だ。
大丈夫、初めから、これしか無かった。
俺には、特別な力なんてない。
元の世界でも、今だって、それはどうしようもない事実だ。
でもそんな俺に期待して、願いを込めて、説得してくれる人がいた。
生きてていいて、そう認めてくれる人がいた。
ああなんて、俺は恵まれているんだろう。
もしそんな俺が、何かを変えられるとしたら、
俺が、ただ一つ、持てる力があるならば、それは!
「レコウさん!」
「っ、いまっ、、いや、なんじゃ!」
「お願いがあります!!」
言葉。
説得しろ、その口先で全てを変えてみせろ‼︎
「必ず、俺のこと、生かしてください!」
「あっ、ああ? それはもちろんセシィの体じゃし・・・・・・っ、いや、」
「はい! 前にも一回なんとかへばりついて行けましたし、今度も根性でなんとかやってみるんで、お願いします!!」
なんでわからなかったんだ、
誰も死にたがりの言葉なんて聞いてくれるはずがない。
誰かのことを変えたいのなら、誰かの未来になりたいのなら、そうだ、まずは自分のことを考えろ、
「な、そんなのっ、結局なにも変わってないじゃろ!? 我が、なんのために、」
「いえ、いや、わかった。確かに俺はずっと自分が死ねば何とかなると思ってた、でも、」
自暴自棄、全てを投げやりで、どうせ死ぬからと何も感じない、
それがどんなに悲しいことか、言われて、話して、否定したくて、ようやくわかった。
自分一人救えないやつが他人をどうこうしようなんて、烏滸がましいにも程がある。
そういう意味では今だって変わってないのかもしれない。結局俺にできるのは、こうして全て他人に任せるだけ。
でも狡くても意地汚くても、この声に応えてくれるのならば、この意思で変えられるのならば、それは自分の力と言っていいのかも、
いや今だけは、そうだ。これが俺を絞り出した全てだ!!
「だからっ!!!」
「ぐっ、うっ、ぐぅっーー!!? 我は、じゃが!!」
「今ここで何もしなかったら、俺はこのさき心から楽しんで遊ぶ事なんてできない。俺は、あなたとまた、笑いたいから」
「っっっ、我は、われはーー!!」
少女が泣いている。
こんな表情させたくなかった、
ならこの選択は間違いか?
違う、だって約束したいんだ。
こうしてまた、彼女達と、笑って過ごそうって。
聞いてくれ、これはお別れじゃない。
ちょっとした休憩の様なものだ、きっとまたいつか会える。
だって、今回もそうだったんだから。
今度はまた、落ち着いた時にでも、
今度こそ全員で、何のしがらみもなく、遊ぼうじゃないか。
その為に、今は、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
「なあ、レコウ、さん、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・レコウでいい、」
「うーん、レコウ、ちゃん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
目が合う。
真っ直ぐと、こんな状況でもどこにも逃げない、綺麗な目。
きっと彼女はいつでもこうだった。揺れ動かずに受け止められるように、俺がなれた。
レコウの、おかげで、
「・・・・・・・・・・・・最後に、聞かせろ、」
閉ざされた口を開く。
もう決意を固めたのだろう、瞳の通り、そこに迷いはもはやない。
力強い、頼りになる、あの子の親友で、
俺の、まあ、友達くらいは、名乗ってもいいかな?
「なん、なにを?」
「貴様の、名じゃ、」
「うん。・・・・・・・・・・・・あれ? 名乗らなかったっけ、」
「あ、改めて! その口から聞きたいんじゃ!」
なんだ、そんなこと、
でも改めてとなると、何だか恥ずかしいか、
いやそんな事はない。だってここには、それを笑う誰かなんて、いないんだから。
「ああ。自分はどこにでもいる普通の元会社員で、今はまあ。異世界でドラゴンちゃんの友人やらせてもらってます。田中、優二です。これからも、よろしくな!!」
「『おう! また、な!!』」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ、
強制的に精神に負荷かけて、心を壊す。
頭の中に直接声かける魔法の応用かな、相変わらず豪快なのにやたら繊細なんだから。
でもだからと言って普通、そんなもの親友の脳にやるかー?
まあ元より普通じゃないから問題ないけどさ、
「・・・・・・・・・・・・、」
それにしても、ああ、せっかく休めると思ったのにもう、
こんなに早く、というかまだ一日も経ってないんだけど、こっちは一生分は休暇を取るつもりでいたのにね?
これが社畜ってやつかな、はは。でもだとしたら、君にこれ以上仕事を押し付けるわけにはいかないね。
「・・・・・・『整理』」
全く乱暴なお目覚めだよ。
でもまあ、しょうがないか。
親愛なるドラゴンちゃんに、レコウにモーニングコール頼んだのは、他ならない僕なんだしね。
だからほら、今はまだ、夜には早いだろ?
「『収納』」
間幕は、終わった。
でも進めば、また会える。
そう、教えてくれたから。