情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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113話

 

 世界が暗くなる。

 夜はまだ、日食でもない、いやこれもある意味ではそうなのか、

 

「・・・・・・隕石、そんなレベルにすら収まらない、」

 

 空から飛来する、正しく天蓋。

 国中覆い尽くしてまだ広がる、黒い幕引き。

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ、だから、早く出ろと言ったのに、」

 

 ゆっくりと、終幕が近づく、

 意外と終わりは劇的なのか、それともただ感性が引き延ばされているだけなのか、

 どちらにせよ、あれはきっと、全てを破壊し尽くすだろう。

 

 意味がわからない、なんであんなものが急に。それこそ世界の終末だって、もっと事前に知らせてくれるだろう。

 

「うわー、あんなもんどっから持って来たんじゃー?」

「近くの雲に、入れといた。天のシロってほど、精密ではないがな、」

 

 わからない、わからない、

 なにが起きたのかも、なんで起きたのかも、なぜ今この場所で起きたのかも、誰が、

 

「悪いな、時間で設定しておいた、保険ってやつだ。今からでは、止められない」

「っ、マキナ? 何を、」

「ん? まあでも、オマエ達なら、今から逃げれるだろ。ほら、危ないぞ?」

 

 何を言っているんだろう。

 そんなのまるで、あの天から送られた災厄が、たった一人の手で起こされたかの様な、

 

「・・・・・・だらしないのーじゃ。何故かなんて、わかっているだろうに、」

「むう? まあ、巻き込んだことは、悪いと思うが。・・・・・・ああ、安心しろ、きちんとこの国だけを潰す様、計算してある」

「へー、そんな事もできるのかじゃ、」

「ああ、落ちるの、遅いだろ? 自由落下だと、流石に制御できないし、それに、」

 

 そんな心配、というかそれを聞いてどう安心しろと、いやそれよりも何でそんな事も無げに、

 

「ん? ただの質量兵器、直で核を打つより綺麗だ。後始末も楽だぞ??」

「ほー、そういうもんか」

「ああ。流石にジブンも、ここを更地にした後、汚染地帯にするのも、どうかと思ったしな。知識がない分、後から来た死人が増えそうだし、」

「うわ、あれそんなにやばいのか!? 危ないのー、」

「・・・・・・・・・・・・ま、止めたのに、撃ったやつもいるが、」

「いや作る方が悪いと思うじゃ、」

「そうか? そうだな、」

 

 理解ができない、急に目の前の少女達が別世界の住人に思えてくる。正しくそうだ、

 なんだ、あんなの、人の手で起こして、

 

「だから、核の方がよほど、」

「それにあの程度なら、別に我が壊してやってもいいしな、」

「ん、それは、推奨しない。あれ自体は、ただ地表を区切って、浮かべただけだが。・・・・・・燃料の方に、核使ってる、」

「へー、燃料にもなるのかー。でーー・・・・・・、そうなるとどうなるのじゃ??」

「衝撃で爆発して、こっちまで飛んでくるし、廃棄物も乗せてる。汚染が破片に乗って、どこに飛び散るか、」

「ほーー、」

「それに、余計な被害が出ない様、制御もしてある。下手に崩すと、一気に落ちて、どこまで被害が行くか分からん」

「ふむふむなるほどなるほど・・・・・・、ちょっとーー、まずいのじゃ??」

 

 廃棄物は容器に入れといたが、ああそうだ、もしジブンを殺すなら、後処理よろしくなー、

 やっぱり事も無げ、まるで世間話でもするかの様に、軽いノリで。

 

 自暴自棄、わかっていたのに、止められなかった。いやもう全て、遅すぎたんだろう。

 アレを浮かべていると言ったが、一体いつからか。溜まった汚れた負債がそのまま、彼女の過ごした世界なのならば、

 

「でも、だとしても、こんなの駄目だ、」

「そうか。・・・・・・で、そろそろ逃げたほうが、いいんじゃないか?」

「・・・・・・・・・・・・そうじゃの、どうするにせよ、早く決めなきゃならんか、」

 

 どうする、どうすればいい。

 この国中、歌って踊って彼女を認めてくれた国を壊すなんて、そんな、

 

 いやそれ以上に。彼女に、国中無作為な大虐殺なんて真似、させていいわけない、

 そんな事したら、もう二度と、彼女達を普通に過ごさせてあげる事なんてできない!

 

 どうするか、なんてそんなの、初めから決まっている。

 だって、俺にできる事は、

 

「・・・・・・ふむじゃ、元の姿、いやもっと膨らませれば、上手く運べるか? あの規模を一気に潰すと、あれができてしまう恐れが、そっちの方がやばいし、」

「まあ何にせよ、やるなら一気にを、おすすめする。下手に力を加えれば、まあそれこそアレみたいのは、やめておくんだな、」

「む、画面? おお、エウスのやつが光っておるが、何か策があるのか、」

「さあ、ないんじゃないか? アレならとりあえず、真っ二つにはできるかもしれんが。目に見えない毒なんて、気にしてないだろうし、」

「っ、知らんもんな。あっちが制限時間じゃったか、これは本格的に後のこと考えてる余裕はないのっ!」

 

 そうだ、もう時間だ。

 大丈夫、初めから、これしか無かった。

 

 俺には、特別な力なんてない。

 元の世界でも、今だって、それはどうしようもない事実だ。

 

 でもそんな俺に期待して、願いを込めて、説得してくれる人がいた。

 生きてていいて、そう認めてくれる人がいた。

 ああなんて、俺は恵まれているんだろう。

 

 もしそんな俺が、何かを変えられるとしたら、

 俺が、ただ一つ、持てる力があるならば、それは!

 

「レコウさん!」

「っ、いまっ、、いや、なんじゃ!」

「お願いがあります!!」

 

 言葉。

 

 説得しろ、その口先で全てを変えてみせろ‼︎

 

「必ず、俺のこと、生かしてください!」

「あっ、ああ? それはもちろんセシィの体じゃし・・・・・・っ、いや、」

「はい! 前にも一回なんとかへばりついて行けましたし、今度も根性でなんとかやってみるんで、お願いします!!」

 

 なんでわからなかったんだ、

 誰も死にたがりの言葉なんて聞いてくれるはずがない。

 

 誰かのことを変えたいのなら、誰かの未来になりたいのなら、そうだ、まずは自分のことを考えろ、

 

「な、そんなのっ、結局なにも変わってないじゃろ!? 我が、なんのために、」

「いえ、いや、わかった。確かに俺はずっと自分が死ねば何とかなると思ってた、でも、」

 

 自暴自棄、全てを投げやりで、どうせ死ぬからと何も感じない、

 それがどんなに悲しいことか、言われて、話して、否定したくて、ようやくわかった。

 

 自分一人救えないやつが他人をどうこうしようなんて、烏滸がましいにも程がある。

 そういう意味では今だって変わってないのかもしれない。結局俺にできるのは、こうして全て他人に任せるだけ。

 

 でも狡くても意地汚くても、この声に応えてくれるのならば、この意思で変えられるのならば、それは自分の力と言っていいのかも、

 いや今だけは、そうだ。これが俺を絞り出した全てだ!!

 

「だからっ!!!」

「ぐっ、うっ、ぐぅっーー!!? 我は、じゃが!!」

「今ここで何もしなかったら、俺はこのさき心から楽しんで遊ぶ事なんてできない。俺は、あなたとまた、笑いたいから」

「っっっ、我は、われはーー!!」

 

 少女が泣いている。

 こんな表情させたくなかった、

 ならこの選択は間違いか?

 

 違う、だって約束したいんだ。

 こうしてまた、彼女達と、笑って過ごそうって。

 

 聞いてくれ、これはお別れじゃない。

 ちょっとした休憩の様なものだ、きっとまたいつか会える。

 だって、今回もそうだったんだから。

 

 今度はまた、落ち着いた時にでも、

 今度こそ全員で、何のしがらみもなく、遊ぼうじゃないか。

 その為に、今は、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

「なあ、レコウ、さん、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・レコウでいい、」

「うーん、レコウ、ちゃん?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

 目が合う。

 

 真っ直ぐと、こんな状況でもどこにも逃げない、綺麗な目。

 きっと彼女はいつでもこうだった。揺れ動かずに受け止められるように、俺がなれた。

 レコウの、おかげで、

 

「・・・・・・・・・・・・最後に、聞かせろ、」

 

 閉ざされた口を開く。

 もう決意を固めたのだろう、瞳の通り、そこに迷いはもはやない。

 力強い、頼りになる、あの子の親友で、

 

 俺の、まあ、友達くらいは、名乗ってもいいかな?

 

「なん、なにを?」

「貴様の、名じゃ、」

「うん。・・・・・・・・・・・・あれ? 名乗らなかったっけ、」

「あ、改めて! その口から聞きたいんじゃ!」

 

 なんだ、そんなこと、

 でも改めてとなると、何だか恥ずかしいか、

 

 いやそんな事はない。だってここには、それを笑う誰かなんて、いないんだから。

 

 

「ああ。自分はどこにでもいる普通の元会社員で、今はまあ。異世界でドラゴンちゃんの友人やらせてもらってます。田中、優二です。これからも、よろしくな!!」

 

 

「『おう! また、な!!』」

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ、

 

 

 

 

 

 強制的に精神に負荷かけて、心を壊す。

 頭の中に直接声かける魔法の応用かな、相変わらず豪快なのにやたら繊細なんだから。

 でもだからと言って普通、そんなもの親友の脳にやるかー?

 まあ元より普通じゃないから問題ないけどさ、

 

「・・・・・・・・・・・・、」

 

 それにしても、ああ、せっかく休めると思ったのにもう、

 こんなに早く、というかまだ一日も経ってないんだけど、こっちは一生分は休暇を取るつもりでいたのにね?

 これが社畜ってやつかな、はは。でもだとしたら、君にこれ以上仕事を押し付けるわけにはいかないね。

 

「・・・・・・『整理』」

 

 全く乱暴なお目覚めだよ。

 でもまあ、しょうがないか。

 親愛なるドラゴンちゃんに、レコウにモーニングコール頼んだのは、他ならない僕なんだしね。

 だからほら、今はまだ、夜には早いだろ?

 

「『収納』」

 

 

 

 間幕は、終わった。

 

 

 

 

 

 でも進めば、また会える。

 

 

 

 

 

 

 そう、教えてくれたから。

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