情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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115話

 

「『想起』」 「『整理』」

 

「『夢想の剣』」/「『空間の剣』」

 

 

 さてと、まずは様子見だ。

 剣が打ち合う、絶対に壊れないだけの僕の剣に対したのは、特におかしなところのない普通の小さな剣。

 

 強いて特徴を挙げるなら、やたらと装飾が多くて派手? 特に魔道具としての力もないようだし、ただただ無駄で邪魔そうだけど、

 

「・・・・・・うん。それでは劇を始めましょうか! まずは大きく、屠龍の剣技を!!」

「屠龍って・・・・・・。まあいいやレコウ、離れててねー」

 

 大袈裟な、無駄の多い、

 いや違う。この全身の筋肉を使ったどこまでも大振りで敵を見上げた剣技は、本気で自分よりも何倍も大きな相手を倒すための技なのか。

 

 ん? じゃあやっぱり僕に対して使うのは意味ないような・・・・・・、まいっか、

 

「とりあえず流し、っと、、」

「うふふ、やはり素晴らしい。でも、」

 

 ガチリッと、剣が噛み合う、

 

 隙だらけの大振りに、だからこそ流すつもりだったのに、腕に重い衝撃が伝わる。

 思わず剣を取り落としそうなほどの強力な一撃。大袈裟なまでの振りかぶりだったとしても、予想以上の力強さ。

 

「それに、なるほど。強靭な鱗を剥ぐための一撃か、」

「おやそこまでわかってくれますか。こんな時でなければ、もっとミセてあげたいのに」

 

 わざと切るのではなく引っ掛ける、力を少しでも逃さないために、

 硬く滑る竜の表層に、確実に傷を与えるための技術。まあ本物の竜の肌は、意外とあったかくて優しいんだけどっと、

 

「じゃあ見物料、ほらあげるよ、」

 

 自身の身を守る剣を、あっさりと手放す。

 力比べの鍔迫り合いは、僕の領分じゃない。

 

 筋力盛れない事はないけどほら、いざって時に押し倒されたのに、真正面から押し返せちゃったら気まずいじゃん。

 という訳で『空間の剣』。

 

「おっと、これは手強い、」

「それじゃ、足元」

 

 ガッチリとはまった剣を丸ごと投げ捨て滑らせて、二本目を足下に大袈裟の代償を払わせる。

 エウスは僕とは違う選択肢、すなわち手に持った武器を支払わなかったからね。大した物でもなさそうなのに、というかよくあんな力込めて壊れないな?

 

 吹き飛ぶように、エウスは空中に投げ出され、

 

 いや跳びすぎだ、自分から転びに行ったか、

 

「だけども優雅に、されど時に意地汚く、」

「うわっと、なにそれ?」

 

 大きく弧を描くように、未だ大袈裟に振りかぶられた剣。

 空中だというのに大した物だ、だけども所詮は大道芸、今度は普通に受け流せる。

 

 うーん、今のは竜の皮膜を裂くための剣技かな? 実際の竜の翼は、この程度で傷がつくほど軟くはなかったけど。

 そして空中で大回転かましながらも、ペタリと綺麗に着地して、その場でクルクル体を回す。

 

 今のは演出、ではなく自然な動きで衝撃を逃したな。一動作一動作を無駄なく次へ繋げる舞台構成、これはなるほど見ていて面白い、

 

「て、感心してる場合じゃないか」

「おやおや楽しんでいただけませんでしたか?」

「さてね、」

 

 なら次は僕から、とはいえそんな派手で面白い技は持ってないけど、ん?

 

「・・・・・・いや別にそんなの気にする必要は、」

「こないのですか? では次もこちらから。『想起』、達人の剣技」

 

 今度はなんだ、エウスが腰だめに剣を構え、

 いや、あれは剣じゃない、刀だ!

 あの構えはそう、居合、抜刀術だ!!

 

「——っ、なんだこれ、」

「はあっ‼︎」

「まず、はや!」

 

 剣筋を見せず、鞘の中で加速させるその巧妙の一刀は、もはや音すら置き去りにする、

 まさしく神技、突き詰められた達人の一閃は、もはや抗う事すら不粋でただ賞賛を送るしか、

 

 だからなんだ、所詮は音速、銃弾の方がまだ脅威。

 それよりさっきからこれ、なに、思考が乱される——

 

「くっ、魔法、いや、」

「ふぅ、これすら防ぎますか」

 

 早さは大した脅威ではない。

 鞘の中、体の奥、その程度で僕の知覚から逃れられる物ではない。

 だから事前に剣筋を合わせる程度、簡単に、、

 

 待て、鞘?

 あれは小さな剣だったはず。

 抜刀用、そんなものいったいどこから、

 

「それでは次の演目。『想起』、狩猟の剣技」

 

 ゆらゆらと、今度は艶やかに全身を揺らしながら剣を構える。

 剣、刀? 違うあれは、

 

「鞭!?」

「いえ、近いのはウルミというやつでしょうか、」

 

 声が遠い、明らかに本来の間合いの外、

 だけど全身が揺らめいて、いやそれ以上に剣がグニャグニャと引き延ばされて、されど鋭く向かってくる。

 

「魔術、じゃない。これはっ、」

 

 確かにあの剣はなんの工作も無い普通の小さな剣。硬度は無かったはずだが、それにしたってどれだけ力強く振ってもこうはならないはず、

 それに硬度がないなら、最初のあの重い一撃は、どうやってこんなグネグネの剣で放って、

 

 いや違う、これはまだ錯覚だ。

 体を揺らして、なんなら関節でも外してる? サーカスの主ならそれすらおかしくないが、ともかくその揺れで目測を誤らせてるだけ、

 

 本当に?

 

「ぐっ!」

「これも防ぎますか、しかし、」

 

 揺れ動く鞭剣の、先端がぶれる、

 視界の残像、早い動きで複数に見えるだけ、普通だったらそれで説明がつく。

 

 おかしい。なんでそれが、僕にすら本当に複数に分かれて感じる。

 音で、振動で、視覚以外の知覚ですら、それが確かに複数に分裂してそれぞれが脅威を持ったと認識している!

 

「っう!!」

 

 後ろへ下がる、

 揺れ動いた複数の斬撃が前を掠めて、また一本に収束した今でも、理性がこの判断は間違っていなかったと肯定する。

 確かにあれは複数の斬撃であったと、

 

 いや待て、一本、だからあれは鞭ではなく剣だと、

 小さな、駄目だ、元の長さが思い出せない!

 記憶の知識には確かにあるのに、体感がそんなわけはないと否定する。

 魔力、怪しい揺らめきはない。せめてそっちで説明がつけばまだ楽なのに、

 

「ふふふ、大仰ですね。そこまでのめり込んでいただけると、演出家冥利に尽くというものですけど、」

「なにそれ、煽り?」

「いえ、謝罪です、」

 

 ——純粋に、楽しませるだけで満足できないワタシの、傲りへ、

 

 

『想起』勇者の剣技。

 

 

 構える。

 見なくてもわかる、あれは、あの技は、

 

 真っ直ぐ、なんの捻りもない、ただ正直で光り輝いた一撃。

 まさしく世界を救うものにふさわしい、なんの小細工もない必要ない、救世の剣。

 それは絶対、それは至高、余計なものなどなくとも勝利が確約された運命の祝福。

 それを、僕は、

 

 

 あっさり避けて、転ばせる。

 

 

「おっとお?! 確かにこの目で見た勇者の一撃なのだけれど、」

「いやアレンはそんな剣筋綺麗じゃないし、」

「あれぇ!?」

 

 ちゃんと見たのか、アレンは我流で全然綺麗じゃなくて、

 みんなに認められるような清廉なものでもなくて、

 世界に祝福されたような絶対なものでなんて掠りもしなくて、

 それでも自分に自信を持ってる傲慢な自己がいいんじゃないか。

 

 そんな勇者だから強いです勇者だから勝ちますみたいな祝福されただけのゴミに、僕が心動かされるわけないだろ。

 

 まいいや、これで本当にアレンの動きカンコピとか出されたら。それこそ自分が抑えられなくなってたから。

 あまりに似ても似つかなすぎて、逆に冷めたね。まったく、

 

「次やったら殺すから」

「あっはい。・・・・・・ふむ、しかし彼とはいったいどういった関係で、」

「あ?」

「確かに素敵な御仁ではあったけども、」

「うん、わかってるじゃないか!!」

 

 いやー、やっとアレンの素晴らしさが世に知らしめられたか。

 まあ前々から広まってはいたけどね、それにしてもこんな遠くの国にまで。いったいどんな活躍をしたのかしら、

 ・・・・・・あれ? もしかして僕その素敵なシーン見逃した!? うわーんどうしよ!! いやまだだ落ち着けきっと脳内には切り分けた中身には保存してあるはずたぶんおそらくぜったいどうにか取り出してやるーー?!?!

 

「そ、そうだ、エウス!? キサマ見たのかどんな感じだった教えてくださいお願いします、」

「え、ぇえ?? ・・・・・・・・・・・・あー、えっと、こう囚われのお姫様を救い出す感じで、かっこよかったですよ?」

「なにーーー!?」

 

 そのお姫様ってまさか、貴様エウス!

 さっき素敵な御仁って、まさかそうか、惚れたのか!? ニコポナデポされたのか!! ってなんだそれ?! もー変に知識だけ残していってーーー!!

 

「いや、それは無いよ」

「ああ゛?」

「え、よくわかんないけどそこはライバルが増えなかったと喜ぶところじゃ無いのかい??」

 

 ライバルとか、そんな、

 別に僕はー、アレンとそんなー、そんな関係になれるとか思ってないし。

 だから別にどれだけヒロイン増えようがハーレムしようが別に何も僕にはグスン。

 

「うわぁ、なにこれ」

「いいもんいいもん喜ばしい事だもん、」

「だから別に。ワタシが想っているのは彼のほうで、」

「・・・・・・え?」

「あ、」

 

 視線の先、君の死体。というか置きっぱじゃん、ただの人形とはいえ流石に腐るの見るのはどうかと思うし『収納』しとこ。

 

「ちょっと、」

「いや別に後で返すけど・・・・・・。ってマジで、うっそ〜、何歳差よ、」

「キミ人のこと言えるのかい? ・・・・・・それに別にそういう、肉体関係を持ちたいとかってわけでは、まあ別にあってもいいけど、」

「うわ、うわぁ、」

「キミの方こそどうなんだい!?」

「ええ、そりゃぁ、・・・・・・向こうから来てくれるならいつでもウェルカムです、」

 

 って、なに言わせるんだーい!

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに、言ってるんだ、」

「あ、マキナ。そういやいたね、」

「あの人は、ボクのものだ!」

 

 そう言いながら銃火器を構え、あれそっちの話に混ざるんだ?!

 内蔵火器、マシンガンだったかな、自分で直したけどあんま銃の区分けとか興味ないし。

 

「っと『狭間の盾』。流石にそれ一個一個はじくのは面倒」

「・・・・・・ふむ、しれっとワタシの方の流れ弾まで防いでもらってどうもね」

「まあ流石に、流れ弾ってか普通に本命では?」

「あはは。——やあワタシ。ふと思ったんだけどハーレムがありならわざわざここで競い合わなくても、」

「・・・・・・・・・・・・む、。いや、なんかやだ!」

 

 二人で揉めてる、いやそもそも同一人物なのでは?

 まあいいや、マキナはほっとこ、キュルキュルと撤退してったし。

 あのボディ的にそんなに火器積み込めないからね、感情的に撃ったら一瞬で無くなるよ。

 

「それじゃあエウス、次は?」

「ええ、始めましょうか。劇には緩急が大切です。激しい激突の中にも、一時の休止符を。・・・・・・あっちのワタシの全力、休息扱いはどうかと思いますけど、」

 

 それじゃ、次幕ってね!

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