情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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117話

 

「『想起』愛国の剣技、」

「んなもん無いだろうに、」

 

 腰だめに構えた剣、体で隠して見えない不確定は、無限の想像力であり彼女の手札。

 まあ僕には全部見えちゃってるんだけど、見えてるからこそ逆に詳しく相手の想像を受け取っちゃうのは、果たしてどっちが主導権を握っているのか、

 

 ともかくあの動きなら前方を切り払うだけ、僕の方までは届かない。

 元の剣でも伸びた剣でも触れる脅威が湧かない、ならばあれは、

 

 つまり何かしら種があるということだ、今更ただ相手のミスと考えるには、僕に楽観的が足りなさすぎる。

 おかげでこんなに術中にハマってるんだ、それでも全くの未知よりはマシだけどね、

 

「これは、どうですか?」

「おっと!」

 

 なんの変哲もない剣、届かないはずの斬撃が襲ってくる。

 剣が伸びたわけではない、風の刃でもない、そのイメージは飛んでこなかった。

 きらめく細い斬撃の後、空気に溶けて視認するのは困難な、

 

「ワイヤーか、ピアノ線ってやつ?」

「ふふふ、いいですよねピアノ、あの備え付けの重厚さが演出として存在感があり、。まあ残念ながら、ボクの劇団では扱かっていませんが、」

 

 話しながらも滑らかに、次は突きの構え、

 やはりまだ距離があり、少し後ろに下がれば届かない距離。

 だけども脅威を感じて横に避ければ、

 

「今度は針・・・・・・、ん? これ穴空いてるじゃん、裁縫用の投げるなよ、」

「あはは、なんでそこまで見えるんです??」

 

 細く小さな針が、後ろへ飛んで壁に刺さる。

 うわ結構力入ってるな、指先だけのスナップで投げたのに、よくあんな飛ばせるものだ。

 

 目も向けずに後方を気にしながら、それが分かってるのかいないのか、エウスは攻撃を続ける。

 次はなんだ、剣が熱を帯び、また炎か。

 

「ふうっと、」

「んで今度は火吹き芸?! 本当に多才だね??」

 

 炎を帯びた剣と、口から吹き出された炎のコラボレーション。

 いや正確には吐き出してるのは燃料なのか、うーん少女の口から噴出されたアルコール、いろんな意味でもえ要素だね。

 

 さてと今度はトランプでも持ち出すか、それかはたまた旗か、

 もし想像しながら自分のポケットでも探ってみれば、なんか面白いものでも取り出せるのかな。

 いやまあよくよく考えたらそれは別に僕でもできるし、そんなにか。

 

「ふぅ。そんなに服内を気にして、何か大切なものでも入っていましたか?」

「ああ、そういや遺書があった。君も、何か残していたりするのかな、」

「それはそれは、是非とも見せていただきたいですね。」

「あーうん・・・・・・・・・・・・、絶対やだ!!」

 

 あっぶね、他になかったとはいえよりにもよって日記に書いちゃったんだ。

 ・・・・・・今度から、何があってもいいよう遺書用の紙は別で持ち歩こうかな、

 ・・・・・・・・・・・・なんてまあ、演技でも縁起でもない、なんてね?

 

「そうですか、ではもっとドラマチックに!!」

「今度はなにを見せてくれるのかな?!」

 

 勢いで誤魔化して、相手の手の内を探る。

 先程から、エウスの手法がまた変化していた。

 大袈裟な手の内に隠して、小さな仕掛けを施し、釣られた相手を刺すように。

 ただしくミスディレクション、まさしくマジシャン、というかあの人ピエロなのか奇術師なのかバニーガールなのか、いやそういう節操なさも力なのか、

 

 まあ僕にはその隠した動きは丸見えなんだけど、だから不意を突かれることはない。

 でもおかげで、あれが一つ目の能力を突破した相手に刺さる罠なのか、はたまた一つ目の催眠をかけるためのハッタリなのか、

 それとも一つとして本物ではない、あれすら実在していない僕の想像なのか。

 

 判別がつかなくなっちゃったな、

 とはいえどうせどっちも。本物も偽物も混ぜてくるだろうし、なら最初から全て実害あると仮定した方が楽か。

 どこまでいってもあくまで小細工、隠すのに力使ってるぶん弱くて遅い攻撃なら、対して脅威にならないしね。

 

「『想起』」

「えっとー、今度はっと、」

 

 剣、いやもはや構える事すらなく、指先を構える。

 親指を立てて人差し指をこっちに向けた、わかりやすいハンドサイン。

 うーんあれって面白いよね。激鉄に指を添え引き金を握った構えの形状でありながらも、それ自体がまるで本体と同じようにも見える二重の直喩。

 人差し指はトリガーであると同時に銃身であり・・・・・・、

 

「というか銃?! いよいよなりふり構わないね!?」

「ばぁんっ、」

 

 どっちだ、どっちを選ぶ。

 

 はたまたあの人差し指はそのままこっちに向けてくるのか、いや、曲がったーー!

 つまりあれは引き金の方だったか、ならばあの構えからして銃弾はここ、

 撃たれる前から見えてた射線に、体を素早く避けさせて、、

 

「って、いや流石に、見えてすらないものを警戒するのは、」

「そうかな、本当に?」

「うぐ〜ぅ、見えちゃったーー、、」

 

 確かに手には何も持ってなかったはず、でも一度避けてしまった以上、あれは意味のないジェスチャーではなく銃弾を打ち込む前動作にしか見えないのだ。

 

 というかその前動作が悪いよ前構えが、。だってあいつ、銃撃つ前に意味深に胸元に手を突っ込んだんだよ!?

 そんなん夢と希望と不思議なポケットの中に何か仕込んでたかもって考えてもしょうがないじゃん!! わかっていてもそこには何かあるって思っちゃったんだよ、それとも僕に常にあの無駄サイズの中まで意識してろってかーーー!?

 

「いや待て、くふふ。確かその体も幻想でできてたな。つまりその技を奪えば、僕も胸元に不思議ポケットを、」

「いやこれは元からだよ? あっちのワタシが抉られてるだけで、元よりあった可能性を再現してるだけ、」

「僕には可能性すらないってかーー!?!?」

 

 別に、知ってたけどねちくしょう。

 そしてお前は今度は何を胸元から取り出そうとしてるんだ、大型のショットガン? 嘘つけ流石にそれは入るわけないだろいやでも見えちゃったよ可能性を信じちゃったよ胸の奥の豊かさまで想像しちまったよーー!!

 

「ほら!」

「くそー! 別にそこじゃなくてもいいだろ袖の中とか裾の裏とか股の間とか他にも隠せそうなところあるだろ!?」

「えぇー? はしたない、」

「抉るぞ!!?」

 

 剣一本で広がる前の球にぶつけて逸らし、

 今度は何だ、対物ライフルか、バズーカーか、ロケットランチャーまで胸元から出てきちゃうんですかあ??

 いいよ、あそうだ、こっちも、

 

「『放出』こう出口を胸元にして、」

「お、いいねえ、どんなトリックだい?」

「トリックじゃなくて本当に胸元に仕込んでた可能性もあるだろーーー?!?!」

 

 くそう、せっかくならこっちも物凄く大っきくて硬くて長いもの出したかったのに、そもそも服の隙間が小さくて出せない。って、誰の服のサイズがぴったりで隙間が生まれないだぁーーー!

 と、えっと取り出せそうでなるべく大きなものはー、

 

「よしこれだ、こっちも銃だ、同じもん取り出したしこれで実質胸のサイズは一緒って事に、」

「・・・・・・・・・・・・」——ニュッ、

「無言でマシンガン取り出すなー!?」

 

 くそう、というか流石にまずい。

 あれが本物、いやもはやそんなことは関係ないが、ともかくあそこまで高性能な銃器は剣一本じゃ厳しい。

 それに多少重そうに鉄塊取り出し構えたそのジェスチャーだけで、なんで銃器の性能までこっちに伝わってくるんだ。パントマイムの達人にしたっておかしい。

 

「想起、確かに何かは使ってる、でもそれにしたって魔力を感じない、」

「おや、いいのかい気にせず、」

「うーん」

 

 ——パンッ。

 発砲、お互いに撃ち合う直前、構えずとも打てる小口が一手先んじ銃身を叩く。

 ————パラララララッ‼︎

 連なった発砲音が、空に虚しく響いて、

 

「・・・・・・あれ?」

「っ、やりますねえ、では次は!」

 

 二丁、素早く袖から両手に構えたライフル。

 同時に向けられたそれにやはり自然に一手早く発砲。

 ——パンッカッ、ババンッ⁉︎

 

 片側に当てて跳弾させ、二つの銃が左右に逸らされる。

 僕を挟んで後方に飛んで行った弾丸が、壁を抉るのを確認して、

 

「はは、ここまでミセてくれますか!」

「やっぱり、これ、」

 

 確認、もはや容赦なく、片腕に向かって発砲してみる。

 ——パンッ————ガッ!

 

 予測通りに銃弾は、その手に持ったライフルを吹っ飛ばし、

 その奥にあったエウスの体には、銃弾が届かない。

 

「実体を持ってる? いつから、どこから、いや最初から??」

「ふふっ、そんなにじっと見られても、何をお出ししましょうか!!」

 

 弾け飛んだライフルが地面を跳ね、消える。

 なんだこれ、あれは僕の想像が形を持ったもの、プラシーボ効果の応用で僕が勝手に攻撃を受け傷ついていた。では説明がつかない。

 

 エウスが今度は両手にマシンガンを構える、バイポッドだったがまで付いて豪勢なものだ。

 咄嗟に『収納』、あれは小さな銃じゃ厳しい、

 

「おや、派手なのはお嫌いですか? 残念、」

「ぐっ、なんだこれ、やっぱり何もない?!」

 

 それでも、後から振り返ってみれば、やっぱりそこにあったのはただの無。

 どこにでもある空気、銃弾を防げる実態なんてどこにもない。

 

 全て泡沫の幻だったかのような、不思議な感覚。

 どれだけルールを解き明かそうと、すぐに目まぐるしく書き変わっていく白昼夢。

 今この瞬間全てが僕の妄想の中、術中にハマって最初から全て幻影を見せられていたかのような、想像。

 

 まるで身勝手な劇場の一演者にさせられたような不快な妄想と夢に取り憑かれ、確実に精神を蝕んでいく。

 まずい、早くこの状態を解析しなくては、。・・・・・・いや待て、それでいいのか? むしろそのせいでどんどん深みにハマっていくような。

 

「おやおや、お悩みのようですね、」

「・・・・・・・・・・・・よく通る声だ、」

「お褒めいただきどうも。それではお返しに、ワタシの能力についてお教えいたしましょうか?」

「・・・・・・・・・・・・それは、どうも、」

 

 聞いてはいけない、これは罠だと理性が言う。

 聞いて損はない、たとえ偽の情報だとしても、そこから考察が進められると理性が言う。

 どのみち、僕には外部の情報を遮断するなんて器用な真似は不可能だ。

 

「ワタシの能力はですね。想像を、現実にする力ですよ」

 

「思い描いた通りに現実を変えられるんです」

 

「どうです、素敵な力でしょう?」

 

 

 

 声が、遠く近い。

 何を、言っている、

 そんな力——、

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