情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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120話

 

 決着は一瞬。

 

 そこには倒れ伏したエウスがいて。

 

 結論から言おう、僕の負けだ。

 

 

 

 あと先考えない子供の剣が激突して、

 

 まず、体格差で勝るエウスの剣が当然に僕の剣を押して、

 

 その後、可能性が起きて体格の小さい僕の方が滑って懐に潜り込んで、

 

 そして、無防備でもうどうしようも無くなったエウスが、それでも諦めなかった結果。

 

 ————ヒュンッと、

 

 一発の銃弾が、僕の死角になる様に、エウスの影から襲来して、

 本人すら意図していないのに、最後まで外れても振り切ったからこそ、ちょうど僕にだけ当たる射線で、、

 意識外から可能性外から飛んできたそれを、僕は。

 

「『収納』。うん、見えてたんだよね、結局全部」

 

 マキナの体作り直した時点で、それは僕の支配下で、

 ライフル構えてずっと見ていたことも、

 あの瞬間撃たれて僕に当たることも、

 最初から全て、把握していた。

 

 だから僕には、全てを投げ出した子供の剣なんてできなかった。

 可能性を示すためだって言うなら、そんなもん投げ捨てて最後まで剣だけでやりきるべきだった。

 そういう約束でエウスと決着つけようとしたのに、これじゃあ誰がどう考えたって僕の反則負けだ。

 

「しょうがないから、好きにしなよ、」

 

 どこか満足げな顔で倒れたエウスを眺めながら、僕は、

 

 まあ優勝おめでとうかな、エウス?

 

 

 

 

 

 お祭りは終わった。

 ただ一人が起こした騒乱も、ただ一人が起こした更なる混乱も、全部まとめて楽しい思い出って事に変換された、

 まるでどんなにハラハラドキドキしても、最後には素敵な体験になる劇場の様に。

 

「えー、それでは、優勝者を発表しますわー」

 

「今大会の優勝者、即ちこの国最強の剣士はこのかたー」

 

「・・・・・・この名前気に入ったのかしら? 漆黒のジャックナイトさんでーす、」

 

 

「わーい、わ〜い♪ おめでと〜〜!」

 

 

 レリアが何とも微妙な表情で宣言する。

 壇上で寡黙に佇んでいるその黒い戦士と、その周りを嬉しそうに跳び回っている桃色の応援客は、

 

 んー? なんか、見覚えしかない、、

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、レリアが何も言わないなら、別にいいのかな??」

 

 知らない間に決勝戦がポイント制になっていて、しらない間に僕に勝つ事とかどうでもよくなってたみたい、

 いったい誰がこんな事を、かわいそうにエウスは優勝できなくなっちゃったじゃないか。

 こんな事になってなきゃ、僕はエウスを優勝者として認めてあげても良かったのに、

 

 まあ勇者に認めることはないけれど、

 

「・・・・・・おー。そういやセシィ、あっちの表彰式の方、行かなくていいのか?」

「いや、僕はもう棄権したし、」

「違くてほら、あっちのあいつ、勇者の、」

「うわーー!? 聞こえないなぁ!!」

 

 なんでいるの、なんで!!?

 いや知ってはいたけど改めて直視するのは無理!?

 やばい、カッコいい、ぴえん推しが尊い、

 

「使い方あってるかは知らないけど、って、もう聞けもしないかな」

「セシィ?」

「いや、なんでも」

 

 今すぐにでも目に焼き付け記憶をアレンで埋め尽くしたい。

 

 ・・・・・・・・・・・・でもさ、流石にまだ、もう少しくらいは、

 僕も、節操なしすぎるかなって。

 

「・・・・・・・・・・・・まあ、あっちは託したんだ。やっぱり今からでも、こっそりファンのふりして近くで見てこようかな?」

「そうじゃのー、あいつもまあ見どころはあったし、せっかくじゃから我もふぁんとやらに、」

「え???」

「じゃ??」

 

 いや悪いことじゃないんだけどね。

 でも僕が見てない間にいったい何があったか早く詳しく聞かせてくれますか。

 

「あー、そうじゃのー、そういやエウスの奴はどうしとるんじゃろうのー。あっちの方が詳しいと思うぞー??」

「ああそう。ところでそっちこそ、マキナの奴どうしたの? 別に興味もないし掌握し続けるのも面倒だしどうでもいいけど、」

「さあのー、元気しとるかのー、」

 

 遠くを眺める、いや別に死んでないけど。

 結局あの二人だか一人だかは、勝手に放流することにした。

 別に何しても僕には大した脅威じゃないとわかったし、それに、

 

「わからないのは可能性。見てない方が、何か見つけてくれるかもしれないからねー、」

「そうじゃのー、首謀者は、いや我には関係ないことじゃー〜」

「おー? まあ、そうだねーー」

 

 色々思うところはあるけれど、とりあえず今は子供でいよう。

 たまにはそれも、大事だと思ったからねーーー・・・・・・。

 

 

 

 

 

 国が二つに割れて戻ってまた振り出し、

 まとめ上げていたリーダーは一夜のうちにいなくなって、今の国を調整してるのは。

 

「・・・・・・なんでワタクシが、こっちまで面倒見なきゃいけないのかしら。そろそろうちの仕事も溜まっているのだけれど、」

 

 書類にまみれた聖女様。やたらさまになってるな。

 せっかくなら紙とインクも科学で全部、電子化してもらえたら良かったのにね、かわいそ。

 

「何考えてるのよエウスの奴! 勝手にいなくなったあげく全権ワタクシに譲渡するって!?」

「さーあ、いったい誰がそんな書類作ったんだろうねー? まあ本人的にも残していくよりはマシでしょ、」

 

 そういや今度、諸外国でサーカスが開催されるらしい。

 色んなところを移動する旅芸人の一座で、映えある第一回は聖国だとか。

 利権管理のもろもろは、まあやった人が得になるよう調整の仕事して、うん。

 とりあえず、売店でプリンでも売って、色んな国に行ってもらえばいいよ。

 

「それから誰よマキナって、あっち側の旗って言われても、全然管理できてないじゃない!!」

「ああほら、マキナならここに、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

「なによそれただのドラム缶じゃないかしら?!」

 

 いやいやドラム缶とは失敬な。

 ほらちゃんと足もついてるよ、ガシーンガシーンッて、

 

「ほら。ヘイ、マキナ二号、挨拶して、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ。スベテ、レリアサマニ、シタガイマス。ガガガ、ピー」

「いま二号って言ったわよねぇ、というか騙すにしてももうちょっとマシな外見できなかったのかしら!?」

「え。いや外見は殆ど一緒なんだけど、」

 

 中身は、まあ、放流しちゃったし。

 でも本人的にもこの国とかどうでも良さそうだったし、勝手に名前使ってもいいでしょ多分うん。

 

「それに結構便利なんだよ。ヘイ、マキナツー、書類片付けて、」

「ハイ、ショルイノカタシカタヲ、ケンサクシマス、」

「ヘイマキ、今回の件の首謀者は?」

「スミマセン、ヨクワカリマセン」

「ね!」

「いやただのポンコツにしか見えないのだけど??」

 

 いやいや、わかっていても黙っててくれるなんて、凄い高性能なエーアイダネー?

 まあ取り敢えず、残された科学技術の使い方と、書類作業の手伝い機能くらいはインストールしておいたから、何かには使えるでしょ、

 

「・・・・・・これに仕事任せるの、不安しかないのだけど、」

「・・・・・・んー、僕からのプレゼントってことで、」

「ほらマキィ、この仕事は全て任せるわ、一緒に頑張りましょう。」

 

 あはは、取り敢えず僕も手伝うから、みんなで何とかしよっか。

 せっかくアレンも来てたのに、このままの情勢じゃ支援も何も無いからね、

 

「というか、一番の問題児はあいつよあいつ、あのピンク! なに国中まどわした挙句、勝手にまたいなくなってるのかしら!?」

「あーー、でもほらおかげで、自警団が勝手に形成されて国がまとまってるし??」

 

 なんか知らん間に両サイドにファンを増やして、一つにまとめ上げてたのはもう笑うしかないね。

 なるほど国を一つにするのに必要なのは、共通の敵じゃなくて共通のアイドルだったか。

 ついでになびかなかった一部の過激派も退治されてるし、いやあいい事しかないねー。

 

「全く、今は適当にグッズ作ってうちに金落とさせながら、ワタクシの駒として使わせてもらってるけど。結局ここも外貨得られなきゃ意味ないのよっ!!」

「そんな事してんの!?」

 

 仮にも自国崩壊目論んでたテロリストをアイドルにして金稼ぎするとか、

 やっぱ君がいちばん流石だよ、レリアちゃん・・・・・・。

 

「はぁ。なーんで同盟結びに来た国の経営も、ワタクシが調整しなきゃいけないのかしらぁ、、」

「まあいいじゃん、使える手段が倍になったって事で、」

「どっちも泥舟なら、やる事が倍になっただけなのよぉ〜」

 

 ・・・・・・まあ、元々この国は王のいない職業ギルド中心みたいな国だし、何とかなるでしょ知らんけど。

 レリアなら、科学も魔術も全支配、いけるってうんきっと、

 

「まあ落ち着くまでは、僕も手伝うからさ、」

「・・・・・・・・・・・・もう二三個くらい、事件起きないかしら、」

「ちょっとー?」

 

 冗談一つ、冗談ですよね?

 その程度には、この国は大丈夫だろう。

 何せここは科学と魔術の国。

 

 理想も幻想も、等しく揃った国なのだから。

 

 

 

「いや個人の技量のゴリ押しよー、」

「あはは。聞こえなーい、」

 

 

 

 

 

 一つ、町を眺める。

 真っ二つに割れたそれも面白いと思ったが、やはりこれが正しい姿か。

 

「一人が上で支配するよりは、マシかと思ったがのー、」

 

 目を細める。

 流石にもうドラム缶とか呼ばれてた子は見えないから、これは思い出している。

 

「セシィはあの件、いやそれも含めて託すと言ったのか、はたまた忘れているのか、」

 

 交わした感想を思い出す。

 宙を駆けた竜、その中身。

 あれはいったい、どこで知ったのか。

 

「誰か、情報と引き換えた中、か。ま、我には別に、関係ない事じゃがのーー」

 

 瞳を向ける。

 この町から旅立って行く、勇者が見えた。

 魔王の元まであとどれくらい、その結末はいかなるものか。

 

「なあ、これでよかったのか、——」

 

 その声が、友に届くことはなかった。

 

 

 





 今の章が思ったより長くなってしまったので、次は全部終わってからまとめます。
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