「わははー! ゴーゴーじゃー!」
「揺れる。空間の外だし、落ちたら死ぬかも。くっつけとこうかな」
風を切って、ってほど気持ち良くはないけど、悪くない。
誰かに見られても、怪しまれずに微笑ましい光景ってことで流される、ほど遅くもないけれど。
「むー、匂いはするが、」
「いない。いくら裏稼業の人間でも、いや裏稼業だからこそさっさと逃げたか」
どちらにしろ好都合、なら最短距離で行ける。
「あ、そこ真っ直ぐ」
「壁じゃが!?」
「うん、薄い。多分もともと目眩しだ、ぶち抜け」
「えーいままよじゃ!」
あ、ほんとになんの抵抗もなくいけた。
流石ドラゴンだ、
ドラゴンで僕の、。ふふ、
「そろそろ町の外に出るぞ! あの壁はどうするじゃ!!」
「跳び越えて! なるべく低く!!」
「お、よっしゃーじゃー!」
相変わらず、力加減が上手い。
これで、誰にも見られず一番最初に魔物の元まで辿り着ける。
司令塔は、まだ見つからない。
「どうする!? 真っ直ぐ行くか!!」
「・・・・・・敵、位置、見渡せる、後ろ?」
どこだ、心は予想できないが、行動は予測できる。
「上、戦闘中に乱入できる。——真上だっ、」
「お、あの魔物どもの上、」
「違うっ、ここ!!」
バリッ!!
音がしたとしたらそんな感じの、光、
空気が裂けて、ギザギザに、誘導されて。
ああ、僕の方が背負われてる分高いから、直撃するな、この距離ならたいして関係ないけど。
電流、落雷、イカズチ、
空気に彫られた溝にそって、降り注いでくるそれは、僕の慣れ親しんだ音速より、はるかに、
「『収納(遅い)』。——僕に当てたいのなら、せめて光速はもってこ
「ぎゃー!? 凄い音するのじゃー!?」
「・・・・・・おそーい!!」
ゴロゴロー、それはもう済んだ空気の音だってのに。
にしても、手段は大したことないが、魔力は本物だ。
この上に、奴らが、
「・・・・・・一人か?」
「おー、見えるぞセシィ! コウモリみたいな羽で情けなく飛んでおるわ」
「え、うん。・・・・・・自虐?」
コウモリ(哺乳類)の羽と、爬虫類の羽は違うということか? ・・・・・・いや、そもそも爬虫類に羽なんて生えてないか。
「虫から進化したという説も、」
「ん、なんで我の方を見るんじゃ?」
「・・・・・・レコウって、腕は何本?」
「二本じゃ?! じゃからセシィを背負ったままでは上手く戦えんぞ!?」
「あー、うん、降りるか」
このまま乗った状態で飛んでもらっても良いけど、今の体だと百パーセント魔法由来になるだろうし、簡単に落とされそうだ。
なんならこの子、元の姿でも落ちたことあるし、
「まあいいや。『整理』、縦長バージョン」
「お、出たな必殺の!?」
この距離だと、全方位に使うと余計な負担がかかるな。魔術は疲れるんだ、そうほいほい使うわけにも、
「あ、弾かれた」
「な、嘘じゃろ!?」
「うん。あ、今のは肯定じゃなくて嘆息のレコウ『収納(上来てる)』」
「にょわー!? またゴロゴロするのじゃーー!? 我のおへそは飾りで本物じゃないのじゃー!?」
その迷信、ドラゴンにもあるんだ、・・・・・・?
「ま、まずいぞセシィ!? それが効かないってことは」
「え、うん。なかなかの魔術師だね」
とはいえ、この攻撃を見れば相手の実力なんて推して知れる。
最低限の魔術の腕はあるようだけど、結局は魔力による魔法のゴリ押し、
それすら演技ならば驚くが、どちらにしろ悠長にし過ぎだよ。
「『——でも、空間魔法使いに勝てるほどの魔術師じゃない』」
「のじゃ??」
「『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『ほら、』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』」
よし、『収納』っと。
多少は耐えたみたいだけど、あれは本人の腕前ってよりは、魔力で自動発動する防壁かな?
自分でやったにしては雷と質が違う、誰かにかけてもらったのか。
それとも、魔族特有の生まれながらの種族特徴ってやつだろうか、前に見た子は持ってなかったのだけど。
「・・・・・・おー、よく分からないけど、やっぱりセシィは無敵ってことじゃな」
「だからそんなことないって。今回は殆ど棒立ちで受けてくれたから楽だったけど、普通こうはいかない」
「棒立ちって、飛びまわってたがの」
「その程度、棒立ちも同然ってことだよ。あれが、あの雷魔法と同じくらい早かったらあれだけど、」
「ははは、そんな生物、我い——」
あ、フラグ、
来てる、速い、さっきの雷よりも、
相手を収納、同じ防壁があるか、弾かれたら死ぬ。収納空間に潜るか、いやあの速度だ、もうこの町周辺に出られなくなる、アレンを助けられない。
前面に壁、速いのは移動だけか、反応も早いと死ぬ。周囲の空間ごと固めて、掌握しきれてない、間に合わない、死ぬ。
僕の状態を固定、怪我はしないけど、脳まで止めたら反応できなくなるから、次に動いた時に死ぬ。脳を止めなかったら、そこだけ衝撃を受けて、ドロドロになって死ぬ。
収納空間の入り口を置いて削り取る、回り込まれたら死ぬ。合わせて動かして当てる、反応速度で負けてたら死ぬ。手に持って振り回す、死ぬ。自分の全身に重ねる、相手が見えなくなる、隙間を開ける、そこが見つかったら死ぬ。
それでもこれが最良か? いやその場合はレコウも囲わなければ、その時間はあるか?
レコウが相手に突っ込む、死ぬ。
レコウが雷よりも早い相手に接近して、殴り飛ばす、死ぬ。
レコウがドヤ顔でこっちを見てくる、死んだ、
・・・・・・相手が。
は?
「どうじゃセシィ! 今回は、我が倒す方が早かったの!!」
返り血で、いつもよりさらに紅に染まったレコウが話しかけてくる。
そうか、獲物の血で紅く色づいていたのか、なんて、
「・・・・・・そうだね、両方が速かったせいで弾け飛んだね、ミンチよりひでーね」
「ふっふっふー、やはり人間の体は小回りが効いて良いの〜。まあ、それ以外は本来の我の姿の方がもっと速いがの、」
「・・・・・・情報、」
「・・・・・・・・・・・・あっ、」
返り血を『収納』して、綺麗になった彼女を見る。
いま急に殴りかかられたら、多分抵抗できずに死ぬな。
「・・・・・・あー、そのー、じゃ」
いや、レコウのことは咄嗟に守れるよう、掌握したままだっけ。
何が守れるようにだ、これじゃあ僕が卑怯者になってしまうじゃないか。
「っ、でも、洗脳とかされたら、穴の空いたコイン一つでかかりそうだし、うん」
「・・・・・・えっと、余計なことしてしまったかの? 怒ってるのじゃ?」
「・・・・・・いや、別に、です」
そして、そんな事を考えてるせいで、素直にレコウを褒めてあげることができなかった。
感謝一つ、伝えることができなかった。
話の流れで、言う必要がなかったから、
違う。
僕は本当に最低だ。
記憶を読む。
「雷速兄弟、か。本当に雷速だったのは兄の方だけだけど」
捉えた弟らしい魔族は、あの魔法通りに単調なのか、簡単に知りたいことが浮かび上がる。
「少なくとも、この人の記憶では、襲撃に来ていた魔族は二人だけみたい。まあ、あんまり当てにならない気もするけど」
一応、自分でも周辺を『整理』しながら確認中。
広範囲に広げると高速で接近してくる敵に対応しずらいが、まあ光速でもない限り、彼女がなんとかしてくれるだろう。
「全力で潜伏されてたら見えないな。とりあえず周辺一帯の空気を固めて囲っておこう」
流石に疲れるが、まあ魔物達もまとめて捕まえられるし。
ああ、でも、これはアレンが倒す魔物だから全部殺しちゃダメか。程よく抜いて解放しよう。
まだ、アレンは街の中か、斥候の魔物はともかく、本体は誰にも見られてないな、よし。
「『収納』っと、あとは一応魔族と余計な魔物か」
足がつくから売り辛いな、それにアレンが倒す魔物と同じ種類だから、数が増えて価値が下がっちゃ駄目だ。
なら、素材を残さないよう徹底的に、ついでにもしかしたら隠れてるかもしれない魔族も、
「・・・・・・ねえ、レコウ」
「なんじゃ?」
「レコウが全力で、いや、ちょっと疲れるぐらいで魔法を使ったら、どうなるの」
別に、これはちょっとした好奇心だ、他の意図なんてない。
「お、なんじゃ! セシィも明けの明恒と言われた我のブレスを見てみたいのか!!」
「何それ?」
「しょうがないの〜。まあ我も、最近全力で放ててなくて、溜まっとったしのー」
「うん、中の物は保護してあるから、思いっきりいっていいよ」
前に見た時は、確かこけおどしの為の炎を、出してもらった時だっけ。あの時は、全然普通の炎魔法だっが、
「あ、元の姿に戻った方がいいかの?」
「まあ、ここは見られてないだろうし、いいよ」
「んー、でもあっちの方が大っきいのは出せるんじゃが、喉が痛くなるからのー。このままでいいか」
「喉? ドラゴンってそう言うものなの?」
まあいいや、囲った中とレコウの手元の空間を繋げて構えさせる。
流石に自分の方に炎が返ってくることなんてないと思うが。・・・・・・喉、痛くなるのか。
撃ったらすぐに閉じよう。
「じゃあいくぞー、『火龍の獄炎』、ちょっと本気バージョン、なのじゃー!!」
・・・・・・迂闊だった。
中途半端な空気の壁じゃなくて、きちんと空間を断絶して覆うべきだった。
しょうがないだろ、僕は真っ黒が嫌いだから、わざわざ収納空間内もレイアウトを変えて真っ白にしてるんだぞ、
ああ。
目が、焼ける、
「っ、なっ、地面から熱が逃げてる——。空間がズレた? いや星が動いた!?」
ズレたのはほんの僅かだったが、それでも直ぐに止めなければ、あたり一帯焼き尽くされていた。
幸いにも、周囲も既に整理してあったから、なんとかなったが、
「ふぅ、いい一息だったのじゃ。まあちょっと、手を抜き過ぎた気もするがの」
・・・・・・それにしても目が痛い。
僕が元々目が良かったら、失明していたかもしれないぞ。
「・・・・・・・・・・・・レコウ。それ、この星で使うの禁止ね」
「星で!?」
全くこの子は、
それと同じやつ、僕と初めて会った時にも使おうとしてただろ、近くの国まで消し飛んでくれるところだったぞ。
まあ、でも、なんやかんや本当に撃たれていたとしても、案外死にすらしなかったのかな。
だってこの僕の友達は、やたらと力加減が上手だから。