魔族襲来の危機はさった。
とはいえ魔物の群れはまだ残してあるし、きっと町の中の住人にとってはこれからが本番、
そうアレンの大活躍の!!
こほん、襲撃の。
まあ多少の怖い思いもしてしまうかもしれないが、かっこいいアレンを間近で見れるなら安い物だろう、いいな、町の人は。
ああ、本当に、僕も普通の町娘の人間に生まれたかったのに。でも、そしたらアレンと出会えなかったかもか、じゃあしょうがないか。
きっと子供達はキャーキャー言うぞー、女の子なんてアレンに結婚して〜なんて、は? 殺すぞ? いや、子供に人気なのはいいことだけど、
それにアレンは子供なんかに興味ないし・・・・・・・・・・・・、いや、ちょっとくらい? 興味があっても? いいかな? 少なくともあの赤は女扱いされてたはずだし、コロス、僕もミリナノフェムトくらいは・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・うん。
・・・・・・そうだ、変身魔法。
それを探してるんだった、あの魔族共、いやもう単数系だけど、なんか知ってないか?
「電撃、飛翔、潜伏、対魔防壁・・・・・・。こいつ、ろくなもん覚えてない。いやでも、他の仲間なら、」
もっと身近に使える友達もいるけれど、
「んー、炎が禁止だとするとー、我が使える魔法はー、いちにーさんしー、片手じゃ数え切れないのじゃー」
「・・・・・・・・・・・・ないな、」
うん、ない。
色んな意味で、
「もうこの際、今すぐに大っきくなれるなら、魔法でも魔術でもなんでもいいからなんなかないのか!」
科学? 奴は死んだよ、なんだよ揉まれたら大っきくなるって、なんねーよ。好きな人に? それは、いけるかもしれないけど。そもそもその為の胸がまずねーよ!
「・・・・・・それ二つとも同じ意味じゃないのか?」
「ん、ああ、レコウ。数え終わったの? 僕の指使う?」
「両手を使ったら足りたのじゃ!!」
「そう、良かったね」
くそう、服を買いに行く為の服がない状態だ、やはり裏の人間らしく他人から奪うしかないのか、ぐぬぬ。
「じゃなくて。魔法と魔術って、」
「ん、ああ? ・・・・・・明確な区別はないんだけどね、魔力を使用するのが魔法で、魔力を操作するのが魔術。まあ、僕も聞き齧っただけど」
僕の場合、学ぶよりも前にまず使えだったからね。
多分収納が魔法で整理が魔術でいいはず。
空間魔法はその前に掌握する段階があるから、また複雑なんだけど。
「あと、魔法が得意だと火力が出せて、魔術が得意だと精密に使えて、防御するのも上手くなるらしいんだけど・・・・・・、」
「なるほどのー、初めて知ったわー」
「・・・・・・うん。まあ、そうだろうね」
事前にあの魔族みたいに、防壁でも作っておけば、魔力だけでも・・・・・・、
——それで、制御ができなくなったら?
・・・・・・どっちにしろ、今の僕には空間魔法以外使えないんだから、考えるだけ無駄、
・・・・・・・・・・・・いや、できる。
「・・・・・・ねえ、レコウ。さっきの魔族みたいな防壁、使えるようになるとしたら、どうする?」
「防壁? そんなもん使っとったんか? 一撃で吹き飛んでしまったが」
「そっちじゃなくて上の方。いや、そっちも多分使ってたけど。ほしい?」
「えー、いや、存在すらわからんかったもんじゃしのー?」
そうだ、僕は卑怯者で最低だけど、
「それ使えば、僕みたいな魔術を多少受けても、。・・・・・・いや、レコウの魔力なら、僕も一切何もできなくなるかもね」
この子に、害を与える程にはなりたくない。
「・・・・・・ふむ。我がそれを使っても、セシィの邪魔にはならないのかの?」
「うん、邪魔になんて。・・・・・・それに、洗脳とかされる心配がなくなる分、むしろ助かる」
「・・・・・・そうか。なら、貰ってやってもいいかのー?」
そうだ、これでいい。
もしそれでこの子にいきなり殺されたとしても、アレンの方は問題ないから。
「それで、何をするんじゃ?」
「うん、この収納した魔族がいるでしょ。この頭の中から防壁の魔法を『放出』して、レコウの頭にぶち込む」
「ほー、そんなことまで、」
魔法。それだけでなく、脳裏に刻み込まれるほど高められた技術や技能まで、僕は自由に観測して取り出せる。
「あ、でも、脳波を写すような物だから、ちょっと思考が混ざる可能性があるけど、大丈夫だよね、」
「いやっ、ダメにきまってるのじゃー!?!?!?」
・・・・・・別に、きちんと魔術の知識があれば、すぐに自分の思考に取り込まれるのに。
「・・・・・・あー、でも、確かにレコウだと、すごい時間かかりそうか」
「な、なんて恐ろしいことしようとするんじゃ、」
「いやだって、別に僕なら問題ないし」
空間魔法で手一杯だから、わざわざ別の魔法を取り込んだままにしたことはないけど、
「・・・・・・ん、待てよ。てことはじゃ、」
「なに? 残念だけど、レコウが嫌ならこれは別に、」
「てことは我の変化! セシィに渡せば使えるんじゃないか?」
・・・・・・・・・・・・それはそう、
は?
「ほら、前に使いたいって言っとったじゃろ〜。あ、前に言ってた裏技って、これのことじゃったのか!」
「・・・・・・・・・・・・確かに、言ったし、そうだけど」
「ならほれほれ〜、我もセシィが成長したらどうなるか、見てみたいぞ!」
・・・・・・・・・・・・魔法を取ると言うことは、それに関連する脳の機能を奪うのと同義だ。
よしんば、綺麗に取れたとしても、それを戻すなんて、
いや戻す前提ではなかったっけ?
「愛しのオスにアピール流するんじゃろ〜、どんな姿になるんじゃろうなー」
そうだ、アレン、アレンのためにっ、
それに、僕が綺麗に取れさえすれば、別にレコウだってキズを負うわけじゃ、
いや、でも、そうしたら、もうこのレコウの姿と一緒には。
一緒に町に入って、観光したりもできなくなるのか。
・・・・・・それは、嫌だな。
————じゃあ、それを、アレンのことより優先するのか?
アレンのことは世界の全てより優先する。
でも、そのために、何も関係ない友達を、
何を迷っているんだ、今までだって散々アレン一人のために、僕は関係ない人を殺してきたじゃないか、
っ、悪人だけだ、僕と同じ、ゴミクズだけ、
本当に? 彼らにだって家族はいただろ、僕と違って、
うるさいっ、
アレンのためなんて言って、ただ僕の復讐をしたかっただけしゃないのか?
うるさいうるさい!!
そうだ、僕の本質は、どこまでいったって人になれない出来損ない、
うるさいうるさいうるさい!!!
なら、何を躊躇っているんだ僕は、
うるさいうるさいうるさいうるさい黙れ! 止めろ、考えるな、思考に浮かべるな!!
アレンとそれ以外、僕がどちらを取るかなんて明白だろ、
止めろ、それ以外じゃない、レコウ、覚えられたんだ。名前、僕の、大事な、
大事な、僕の、
レコウっ、アレンっ、僕は、僕は!?
何のために!?!?
・・・・・・・・・・・・巨乳になって、アレンにペットにしてもらいたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。
これ。思いっきり僕の願望じゃん。
「・・・・・・・・・・・・あっぶなー」
「・・・・・・どうしたのじゃ、やらんのか?」
「・・・・・・うん、もう、いいよ」
何をやっているんだろう。
アレンとレコウで悩むんじゃなくて、友達と胸の大きさで悩むなんて、根っからの最低だ。
魂レベルで貧乳だ。
「・・・・・・それに、・・・・・・うん。レコウの変身魔法を使っても、大っきくならなそうだし」
「おい待てこらどこ見ていったじゃ」
「しょうがないよ、卵生だもんね」
「そこはせめて子供だからにするのじゃ! この体型だからないだけなのじゃ!?」
「一緒に、巨乳の変身魔法使いのクズを探そうね」
「いや、別に我は蔑まれたから怒っただけで、気にしてないのじゃが、」
うんうん、大丈夫、僕はわかってるよ。
世界の全ての恵まれた物が敵に回っても、僕だけはずっと味方だよ。あと赤も。
緑はシネ。
「その優しい目線は止めるのじゃー!? いつもの世界全てを呪ったような、濁った目に戻るのじゃー!?!?」
ひどい言われようだ、でも大丈夫、僕達はずっと仲間で、家族だよ。あと赤。
黄色は削れろ。
・・・・・・・・・・・・考えるな、思考に浮かべるな、もし本当にどちらかを選ばなくてはいけなくなった時、僕がどうするかなんて・・・・・・。
直近の記憶がない。
直近の記憶に僕の胸がない。精神レベルで胸がない。根源レベルで胸がない。
でも大丈夫、なぜなら僕には仲間がいるから。
「あー、アレン戦ってるー、かっこいいなー」
「おー、どんなもんじゃー?」
「小さい魔物を切り裂いた、すごーい! あ、お前、二体一は卑怯だろ『止まれ』。お、相手の隙を見逃さず、すかさず攻撃、さっすが〜! ちっ、そこ、いいところだろ、不意打ちしようとすんなよ『消えろ』」
「・・・・・・あー。多分、いっつもこうだったんじゃろうなー」
不自然にならないよう足『止めて』〜、遠距離攻撃しそうな奴は思考『抜いて』〜、
あ、黄色が攻撃受けた、どうでもいいな、足引っ張りやがって。
緑が回復、いやそこでやんなよ敵が来てんだろうが。
赤が守って、不意打ち気づいてないな、死ぬか?
・・・・・・まあ、同じ恵まれない仲間のよしみだ、今回だけ『ずらして』やろう。
あれの近くでやりすぎると、バレかねないんだけど。
「さて、一通り済んだ。名残惜しいけど、そろそろ行こうか」
「お、もういいのか?」
「うん、アレンの方を見てる子供がいたから。これ以上見てると、嫉妬でやっちゃいそう」
普通に生きれて、その上でアレンに会えるなんて、ズルいよね、
「そ、そうじゃの! 早く行くぞ!?」
「おー、目指すは巨乳のクズー!」
「それはもはや無差別テロなのじゃ、」
「つまり緑ー、このままここでー」
「わ、我のお宝を探すのじゃー!!」
えー、まあ僕なんかのことより、レコウのことを優先しないとね。
とりあえずは遠くでお宝、ついでに巨クズ。なんかいい場所あったかなー。
19時にも、更新あります。