僕は知れる、ここにいい事なんてない。
僕はできる、少しでも悪くならないよう、
僕はわかる、無が、最良なんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・入れ、」
暗く、ジメジメした場所だ。
どこもそうではあるけど、ここは特にかな。
懲罰房、別に僕たちは囚人じゃないけど、それ以下ね。
正式な名前は知らない、多分お仕置き部屋とか、そんなの?
そこに、入る。
僕は、罰を起こした、
そういう事にしたから。
「・・・・・・ぁ、」
房には、先客がいる。
やあ、また会ったね、少年。
さっきぶりだ、元気かい?
「・・・・・・・・・・・・アー?」
目を合わせる。
相変わらず、鏡でも見てるみたいだね、
暗くても、よく感じるよ。
「・・・・・・ナンデ、オマエまでここに来たわけ?」
話しかけてきた、加害者に。
敵意はない、本当にただの困惑。
やめてくれ、こっちの方がおかしくなる。
「・・・・・・・・・・・・君に、お礼を言いに?」
ほら、頭がおかしくなったから、普通に答えちゃったじゃないか。
ここは、怯えて逃げるのが正解だ。
じゃないと、なんで君がこんな所にいるのか、訳がわからなくなっちゃうからね。
でも、そうだよ、見なよ。
これが僕、演技、しかない物。
怯えてたのも演技、戸惑っていたのも演技、君を嫌々害していたのも演技。
はは、恨むといいよ、君がしたのは全部、無駄だったって。
そして、もう、こんな事、
「・・・・・・・・・・・・アー、ベツにいーよ。気にしてねーし?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう。
「で? わざわざその為に、何やったんだよ」
「別に? 何も」
ただ、アレの行動が問題になったんだよね。
思ったより、僕の商品価値は高いらしい。
という事で、僕が悪い事にして、自ら罰を受ける事にした。
従業員には盲目で従順、その上の人には賢く慎みがある、そう見させた。
良い手だった、
一つ問題があるとすれば、今回の件で従業員が変わるとしたら、せっかく媚を売ったのが無駄になってしまうって事だな。
アレは、馬鹿で愚かで御しやすかったのに、
でもまあ今回の件で、人間は頭が弱すぎても面倒臭いということがわかったから、別にいいか。
「ナンダそれ? そんな事まで考えてんのか??」
「そりゃ、そうだよ。少しでもマシにしたいからね」
・・・・・・・・・・・・あれ?
・・・・・・なんで僕は、こんなこと話してるんだろうね。
もしこの事を話されたら、僕はおしまいなのに。
まあいいか、この反抗的な目の君と、それは表面に出さない僕。
どちらを信じるかって言われたら、僕にさせる自信はあるから。
「オレはそんなメンドーなの、できねーなー」
「何で? 便利だよ??」
せめて君もさ、そのわかりやすく不満がありますよーって表情を止めれば良いのに。
僕みたいに賢くやれとは言わないけどさ、せめて黙ってじっとしてるとか。
「ヤだよ。人間に、媚びてるみてーじゃん」
「媚びろって言ってるんだよ、わざわざ苛つかせる必要あるの?」
「ハッ、それで少しでも嫌な気分になってくれんなら、精々するぜ、」
「そしてその皺寄せが、また僕に来ると、」
よくよく考えなくても、そもそもアレが起きたのだって、君がなんかしたからでは?
君からのストレスを発散するついでに、気にいってた僕で遊ぼうとしたんじゃ、
「ウグッ、。それは、悪かったよ」
「いいよ、別に。むしろあの時間は、僕にとってはマシな時間だったしね」
普段はあの逆なんだよ?
それに今も。
ここは良いね、暗くて、ジメジメして、喉が渇く心配をしなくてすむ。
衛生状態に心配はあるけど、寧ろ人の出入りが少ない分、他よりマシかもね。
「それに、どう考えたって、悪いのは僕だ、」
君は、どこまでいっても被害者。
謝られるなんて、僕が余計に惨めだ。
「・・・・・・どう? さっきの続き、する?」
「ア? なにがだよ?」
「そりゃー、ナニ?」
・・・・・・うん、見た限り、まだ薬の影響も残ってるね。
それに、拘束もされてない。
まあいちいち縛り上げるのも、面倒臭いからね。
「・・・・・・・・・・・・ハッ、ダレが人間なんかに、発情するかよ、」
「ふーん? 果たして僕は人間なのかねー?」
ま、こんな貧相な体じゃ、そもそもムリか?
君もどうせ初めてだろうし、ならもっと、
・・・・・・いや、この状況じゃ、僕でも十分マシだと思うんだけどね、
贅沢な奴め、この。
「・・・・・・というか、人間人間って、さっきも言ってたけど君、もしかして、」
全身が紫に腫れた肌、痛々しい、
誰のせいだ。
でも、それを抜きにしても、この肌の色は少し特殊。
紫に近い桃色の肌色。これは、
「アア、魔族だぜ。いいだろ、人間とは違うんだよ」
「ふーん? その割には僕と同じように使われてるけど」
「ホットけ」
魔族か、初めて見た。
人間の敵、つまりは、僕の、
ま。どうでもいいか。
「ペタペタ、」
「イタッ、さわんな!?」
「悪いね。まだ、細かいことは感じるだけじゃわかんないんだ。直接は触れてないだろ?」
さて、傷が酷い。
僕のだけじゃない、あの後、暴行を受けたんだろう。
まだ、血が止まってない所もあるな、
「じゃあ、ここを押さえて、こっちを上げて、」
「ア? ナニやってんだ? せめて傷口押さえろよ、」
そんなことしたら、傷口広がるし、バイキン入っちゃうでしょ、
ただでさえここは汚いんだから、僕が直に触るわけにも行かない。
それに、僕と君はここから出たら他人なんだ、仲の悪い。
僕の悪評を触れ回られても問題ないようにね、君がいつでも僕のことをきれるように、
だから、治療した跡なんて、残すわけにはいかないだろう?
「・・・・・・・・・・・・ホントに止まった」
「うん。知識様々だね、」
流石は僕の夢。
でも、それにしても早いかも。
魔族の体の作りについては、夢にも無かったからね、興味深い。
「・・・・・・基本は、人間と同じなのか?」
「・・・・・・オ、おい、なに見てんだよ」
「見えてはないよ、ここ真っ暗だし」
真っ黒なのは悪くない。
これ以上底がなくて、安心する気がする。
あと、何を見てるかって言うと・・・・・・、
ナニ?
「・・・・・・やっぱ、一緒なんだ。そりゃ、そうなのか?」
「ウオィ!? ホントに何やってんだテメー!?!?」
「声大きいよ、外に聞こえたらどうするの」
ま、近くに誰もいないけどね。
流石に、壁一枚や二枚の距離に人がいるかくらいはわかるよ。
それ以上の距離から聞いてくるとしたら、化け物すぎてどうしようもないね。
ま、流石にそんな奴、いないだろうけど。
「いや、もしかしたら、ツインとかドリルとかパイルバンカーとかビックマグナムかもしれないし」
「言ってることがマジでわかんねえが、ロクなことじゃねえってことだけは分かるぜ」
そうかな、ほら僕の夢も、男のロマンだって言うよ多分。
・・・・・・どうだろうね、君はもう何も言ってくれないや。
何で。僕だけが残っちゃったんだろうね。
「オマエ、もうちょっとだな」
「そうだね、君だけ見られるのは不公平か」
——なら、見てみるかい?
さっきもちょっと見えたと思うけど、
ああでも、こんな真っ暗じゃ僕以外は見えないか。
なら触ってみる?
身体はともかく、ここはそれなりに綺麗なままだと思うけど、
「どうだい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アー、」
なんだよ、反応してくれないと僕が変な奴みたいじゃないか。
二重の意味で、一切反応しないで、
・・・・・・なに、手握り込んでるの?
どうした、まだどっか痛む、
いや全身常に痛いか、何でもない。
「ナア、それやめろよ」
「なにが?」
ふむ、こんなシチュエーションは、男の夢だと思ったんだけど、それとも、やっぱ貧相すぎてダメか? 一応、こういうのが好きな人もいるらしいぞ、知識でも、実際に会ったこともあるし。本当に君は贅沢だね、僕はそんなにも何もできない無力な子供か、そうかそうだねそうなんだよ。
僕は、
「・・・・・・ベツに、オマエだからじゃねえよ。この状態で、手を出す男なんていねからだ」
「・・・・・・・・・・・・僕の経験上、九割以上の人間はここで手を出す」
「ジャア、そいつらは男じゃねえんだよ」
・・・・・・何だそれ、
それじゃあ、僕は今までオカマかなんかとしか会ったことがないって言うのか。
「・・・・・・・・・・・・こんな、震えた奴にな、」
呟くなよ、聞こえちゃうだろ。
違うよ、僕が震えてるとしたら、そんな声を聞き逃さない為。
ただ空っぽな器が、外からの反応で揺れてるだけ。
だから、
「水分補給、する?」
「イヤ、なんもでてねーよ」
しまった、少年のために感極まった演技をしようとしたのに、そもそもの水分が足りなかった。
うぐぐ、いくら湿ってるとはいえども、流石に外に出す余裕がなかったか、
こうなったら、
「しょうがない、一度下から補給する」
「ハ? なに言って、ってオマエ!?!?」
うーん、器がない、直で行くか。
暗いから良いけど、流石にまじまじ見られたら恥ずかしかったかも、
「オマ、ホントにやめろよ!? なんだ、マジで襲われてーのか!?」
「あはは、自分から襲われに行く人なんているわけないでしょ」
そんなん変態じゃん。
なんて言うんだっけ夢?
・・・・・・マゾヒスト、そうそうドMだ、
いやぁ、そんなんなるわけないじゃん、
僕は常に、こんな世界壊れてしまえって呪ってるんだよー?
「はいはい、そうなったら付き合ってやるから、マズそれヤメロ!?」
ありゃりゃ、やっぱ君が飲む?
「ヤメロって、この、情報過多ニンゲンが!?」
「あはは、なにそれー、」
僕は空っぽだ。
僕なんて精々、
夢と今の記憶、
二物持ちくらいが、限界だよ。
それ以上になったら、忘れちゃうかもね。
彼とは、その後も話をした、でもそれだけ、
しばらくしたら、いなくなった。
すぐに、僕の担当は変わった。
前までの、直情的で扱いやすい人間と違って、より合理的で理性的な人間。
より、僕を商品として、物として扱うようになった。
だから、僕もアプローチを変える事にした。
従順に、だけど何も無い。
感情も、思想も、拘りも、執着も、何も無い、完全な無。だけど外面は完璧。
道具として、とても使いやすいように。
演技するのは簡単だった、だってもはや演技じゃないから、
従順な所だけが嘘、それ以外は僕のからをそのまま見せつけてるだけ。
僕は君たちに従っている、何故だろう、理由はないよ、だって感情がないから当然だろう?
僕を従えていた鎖はもう無い、僕はいつだって自由になれる、でもそんな気はない、何故なら思想が無いから、
何だろうね、矛盾してるかい?
さあ、僕にもわからないよ。
でも、自由になれるなら、せめて、
ああ、そうだ、僕以外に、誰か、
誰だろうね、拘りが無いからわかんないや、みんな等しく覚えられない。
でも、会ったら知識として使えるはずなのにね、会えないね、誰か。
誰だろう、執着がないから思い出せない、わかんない、そもそもそんなもの無かったのかも、
だって僕は無だから、今動いてるのは惰性。止まる理由もないから動いてる、動く理由もないのに動いてる。
何だろこれ、気持ち悪い
誰か、共感してくれるかな、僕以外見れもしない、このバケモノ
・・・・・・そうだ、最近偉い人に会った。
名前は覚えない、どうせ合えば使えるし、
何でも、ついに僕を使う人を決めたらしい。
どんなんだろうね、興味ないや、
今と変わんないよ、なんでもいい、
どうせ、どこも真っ黒、
ああ、そうだ、それならいっそ、全部そうしちゃおっか。
僕は無、つまり全てが無、変わんない。
やる理由も無いけど、やらない理由も無い。
うん、そうしようか、何でだろう、そっちの理由は少しだけあった気がする。
外に出た、じゃあ、
外に出る。
「・・・・・・なんだお前、気持ち悪いな。俺様にそんな顔見せんなよ」
僕は、
「お? なんだその顔。・・・・・・ふんっ、そっちの方がマシじゃねえか。さっさと来い、この俺様の荷物持ちの人間になれる事、光栄に思うんだな」
真っ黒が、嫌いになった。
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