「・・・・・・それで、レリア、でいいの?」
「・・・・・・もう、それでいいですわ」
厳格な審議の果て、ちなみに僕らは一切なにも言わなかった、レリアに決まりました。はいはい。
「・・・・・・私は、一応名乗ったんですよ、あなたは?」
「・・・・・・・・・・・・こっちは、レコウ」
「・・・・・・あなたは?」
「・・・・・・・・・・・・それは、おいおいね」
いや、別に、話の流れで愛称を話すとして、生まれて三番目に呼ばれるのがこいつなのかってだけ。
いっそ世界で、二人にだけ呼ばれれば十分なのに、
「・・・・・・まあいいでしょう。あなたが大人しく、私の力になってくれるならね」
「だからそれは聞いてから考えるって、ほら、ゆっくり話しなよ」
「・・・・・・手短に、話すわ」
ちっ、長引かせて、なし崩し的に町の中に入ってしまえば、こっちの勝ちなのに。
「簡単に言えばワタクシ、追放されてしまったのよね。この国から、」
「・・・・・・ほう、」
どこかで聞いた境遇だ、
「周囲から、色々と身に覚えの無い冤罪をふっかけられまして。まあ、女の戦争ですから、文句は言いませんが」
「でもムカつくと」
「烏合の衆を取り入れるのも才能、私の力不足ですわ」
・・・・・・ふむふむ三色、気持ちはわかる。
でも、だからと言って協力するほどじゃ、
「ですが、一番の決定打は」
「・・・・・・、」
「どこからか急にこの国に生えてきた、真の勇者とやらの存在を予見できなかったから、かしら」
「よしわかった全面的に協力しようっ、」
真の勇者だー?
先にそれを言えよ、だからこの国、協力渋ってやがったのか、よしコロす!!
「・・・・・・やけに聞き分けが良くなったわね、あなたも、あの勇者とやらはきな臭いと思ってたのかしら」
「勇者はね、一人でいいんだよ、それでも多いくらいなのに」
「一人? まあ、そうね。そんなには、いらないわよね」
ふふふ、思わぬところで渡りに船だ、
僕の運なんて無いし、これは、幸運を運ぶドラゴンのおかげかな。抜け殻を財布に入れるらしい。
「・・・・・・詳しく話していいかしら」
「うん。僕の持てる全てを使って、そいつを排除すると約束しよう」
「そこまでしなくてもいいのだけど・・・・・・、やっぱり人選、間違えたかしら」
引き返そうったってもう遅い、呉越同舟。僕らはもう、同じ流れに乗っちまったんだよ!!
話を聞きました。落ち着いて、うん。
「つまり、その平民の女が学園に来てから、全てがおかしくなったと」
「ええ、やけに飲み込みが早かったわね」
「夢で見た気がするんだ、良くわからなかったけど」
まとめるとこうだ。
このレリアは、将来この国の王太子と結婚する予定の貴族で、ついでにここの結界を維持してるらしい聖女。
「まあ、一応ワタクシ一人で維持しているわけでもありませんけど」
学園に王子と一緒に通っていたが、そこに平民の女が編入して来て、それ以来そいつと王子が二人でいることが多くなった。
「別にその程度、遊びとして目くじらを立てるほどではなかったのですが」
ついでにその女は、他の有力な貴族の男どもにも手を出していて、流石に見過ごせなかったが、女の戦争で先手を打たれる、
「本人は否定していましたが、あれも一つの才覚でしょうね。いっそ、妾としては悪く無いのかもしれません」
冤罪を押し付けられて、婚約破棄。その上、どこから見つけて来たのか真勇者、ぺっ。なんて見つけて来て、聖女の立場さえ奪われる。
「確かに悪く無い魔力でしたが、あれ一人で聖女としてやっていくのは不可能ですわね」
一度は国外に追放されたが、良識のあった一部の上の人達の手配で、今こうしてこっそり戻って来てる。と、
「彼らも、分かっているのでしょう。もはやワタクシ抜きでは、この結界を長くは維持しきれないと。何せ、これ、ほぼ全て私の魔術で動いていますので」
なるほどなるほど・・・・・・。
「ほぼ全て、これをね・・・・・・。昔は、どうしてたんだろ」
「さあ、人海戦術でもしてたんじゃないかしら? 物凄く効率が悪かったけど、魔力さえ流せば発動してたし」
「良くそれで、国が保ったもんだね」
まあ、最悪なくても、別にたいして変わんないんだろうけど。
「そんなことありませんよ。これは、魔物避けに魔法阻害に加えて、観測や物理的障壁としての機能もありますもの。なんなら最後のは私がつけました、どんな魔族が来ても、そう簡単には突破できませんわ」
「・・・・・・まあ。だと、いいけど」
右から視線を感じる、返してやろうか、
「それよりあなたやっぱり。私の結界、見えてるわよね」
「・・・・・・何の、こと?」
いや、そりゃ、普通見えるだろうけど、
そう聞かれたら、否定しちゃうじゃないか、実際一切見えてない子もいることだし。
「隠さなくていいわよ、あんなもの、少し魔術を理解している人なら誰でも見えるわ」
「・・・・・・まあ、そうだよね、」
「でも、この国の人には見えない。何故ならあれは、神が作ったものだって思考を停止してるから」
「・・・・・・・・・・・・、」
「あなた一体、どこから来たの?」
誘導尋問かよちくしょう。
やられた、この僕が! まあ、こういう貴族特有の駆け引きとかは、別に慣れてないんだけど。
僕はもっぱら、相手の求めている反応を探って、従順に返していただけだし。
「別に、言ってもいいのに言いたくないから困る。あっちの方、だよ」
「暗くて良くわかりませんね。まあいいでしょう、今は」
「・・・・・・本当に、良く僕に事情を話す気になったね」
「人を見る目には自信があるので、聖女、ですから」
元、だし、それで戦いに負けて敗走してるけどね。
「・・・・・・ちなみに。少し魔術を理解している人ならと言ったけど、ワタクシ基準で少し、ですわ」
「・・・・・・僕は大して、魔術に詳しくは無いよ」
「ふふふ、先ほどのここに侵入して来た魔法。私、理解できませんでしたよ。大したことない魔術師、ですね?」
「・・・・・・本当なのに、」
使えるだけ、悠長に学ぶ暇なんてなかった、使えなきゃ死んでただけ、
「・・・・・・やはり、いい出会いをしました。聖女として、神に祈っておいた甲斐がありましたね」
祈りね、そんなものに効果があるとは思えないけど。
「神、やっぱり信じてるの?」
「ええ、昔にそんな凄い魔術師がいたんでしょう。験担ぎとしては、悪くありませんわ」
・・・・・・こんなんだから、追放されたんじゃなかろうか。
「そろそろ、城門よ」
長い列、のように見えたが、意外とするする進んでもう着いた。
多分、話を引き延ばしても何とかなったな。
「・・・・・・ところで、本当に大丈夫なの、これ」
潜伏魔法使ってたみたいだけど、僕が来たから解いちゃったみたいだし、
「ええ、だって結界に頼きりのガバガバだから。むしろ道中より危険性が低いわね。人目につきさえしなければ、どうにでもできるわ」
「結界か、ちなみに僕は?」
「ワタクシにかかれば、魔王だろうが連れ込めますし、勇者だろうが弾けますわ。だってこれは、私の魔術なのですから」
「うわぁ、」
大丈夫か、この国。
今もこうして、国一つ簡単に滅ぼせる大災害を、素通りさせてるんだが。
「だから実は、どうしても話に応じてくれなさそうなら、あなただけここで弾いてみたり」
「それやったらどっちにしろ全員、バレるでしょ」
「どうかしら?」
「まあ、協力することになったんだからいいか」
そうなっても、ここを通るくらいなら造作もないしね。
「一応、身を寄せる予定の屋敷までは、このまま隠れて行くわ」
「ふむ、僕もそこに?」
「ええ、もちろん。それから、ここからはあまり大きな魔法を使っちゃだめよ。ワタクシの魔術だけど、観測は私以外もできるようにしてあるから」
確か相手は、この元聖女から聖女の座を奪ったんだっけ。
そもそも、聖女が一人ってわけでも無いらしいけど、折角の結界は相手の手の中か。
「・・・・・・面倒臭いね、君も魔法を使えないの?」
「面倒臭い、手順を踏めば、できないこともないわ」
「なるほど、覚えておこう」
まあ、本当に面倒臭さが限界になったら、気にせず使っちゃうけど。
「そうね、あと、今のうちに、大切なことを伝えておくわ」
「なに、急に改まって」
「今回の件の発端の彼女、いえワタクシの敵って言ってあげますわ」
ちなみに僕はとっくに敵認定してる、真勇者を見つけた女? 纏めていなかったことにしてやるよ。
「・・・・・・メート、長い名前を言っても覚えなさそうだから、桃色でピンク色なホワホワした女と覚えておいて」
メート、どんだけ甘ったるいメスが出てくるんだろう。闇吐きそうだ。
「悔しいですが、あの女の籠絡術は本物です」
「ふーん、」
「くれぐれも! 絆されないようにしてくださいね!!」
「え、うん」
いや、大丈夫でしょ、聞いてるだけでなんかムカついてくるし。
「・・・・・・ちなみに巨乳?」
「あなた・・・・・・。少なくとも、私よりは、大きいわ」
「・・・・・・ふむふむ。あんまり参考にならない」
「ぶちのめしますわよ?」
何を言う、せっかく家族だと認めてやったのに。
しかも僕よりも年上で、おまえもナカーマー。
「ああ、もうそろそろ着いちゃいそうだわ。本当に、ころっといかないでよ」
「どこに? そう言うのは、僕じゃなくて・・・・・・っと、着いたね。あの大きめの屋敷か」
「ええ。・・・・・・って、あなた、何が見えて、」
ふう、これでようやくこの窮屈な空間から抜け出せる。
余裕を持って作られていたが、流石にキャパがオーバーだ。
真っ暗な中で、一人だったら、耐えられなかったかも、慣れてるけど。
「・・・・・・止まった。本当に着いたのかしら」
「そうでしょ、あ、御者が開けに来る」
「・・・・・・と、先に説明しなくちゃね」
レリアが外に声を上げて事情を話す。
確かに、荷馬車の中に人型が、知らない間に増えていたら、単純にホラーだ。
「というわけで、彼は私の以前からの知り合いなの、一緒に屋敷に入れてあげて」
光が差し込む、積荷が開かれる。
・・・・・・というか、何で僕が許可を、ん、いや、なんかおかしいな、
「彼?」
「そう、彼が・・・・・・・・・・・・、って、」
「・・・・・・?」
目が合う。深い金色だ。
きちんと顔を見合わせた、白銀のような金髪が光り、
そして何だ、その表情は、
「・・・・・・あなた、暗くてよく見えなかったけど、普通に女じゃない」
・・・・・・一度も、僕は男だと言ってないのにな。