情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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15話

 

「・・・・・・それで、レリア、でいいの?」

「・・・・・・もう、それでいいですわ」

 

 厳格な審議の果て、ちなみに僕らは一切なにも言わなかった、レリアに決まりました。はいはい。

 

「・・・・・・私は、一応名乗ったんですよ、あなたは?」

「・・・・・・・・・・・・こっちは、レコウ」

「・・・・・・あなたは?」

「・・・・・・・・・・・・それは、おいおいね」

 

 いや、別に、話の流れで愛称を話すとして、生まれて三番目に呼ばれるのがこいつなのかってだけ。

 いっそ世界で、二人にだけ呼ばれれば十分なのに、

 

「・・・・・・まあいいでしょう。あなたが大人しく、私の力になってくれるならね」

「だからそれは聞いてから考えるって、ほら、ゆっくり話しなよ」

「・・・・・・手短に、話すわ」

 

 ちっ、長引かせて、なし崩し的に町の中に入ってしまえば、こっちの勝ちなのに。

 

「簡単に言えばワタクシ、追放されてしまったのよね。この国から、」

「・・・・・・ほう、」

 

 どこかで聞いた境遇だ、

 

「周囲から、色々と身に覚えの無い冤罪をふっかけられまして。まあ、女の戦争ですから、文句は言いませんが」

「でもムカつくと」

「烏合の衆を取り入れるのも才能、私の力不足ですわ」

 

 ・・・・・・ふむふむ三色、気持ちはわかる。

 でも、だからと言って協力するほどじゃ、

 

「ですが、一番の決定打は」

「・・・・・・、」

「どこからか急にこの国に生えてきた、真の勇者とやらの存在を予見できなかったから、かしら」

「よしわかった全面的に協力しようっ、」

 

 真の勇者だー?

 先にそれを言えよ、だからこの国、協力渋ってやがったのか、よしコロす!!

 

「・・・・・・やけに聞き分けが良くなったわね、あなたも、あの勇者とやらはきな臭いと思ってたのかしら」

「勇者はね、一人でいいんだよ、それでも多いくらいなのに」

「一人? まあ、そうね。そんなには、いらないわよね」

 

 ふふふ、思わぬところで渡りに船だ、

 僕の運なんて無いし、これは、幸運を運ぶドラゴンのおかげかな。抜け殻を財布に入れるらしい。

 

「・・・・・・詳しく話していいかしら」

「うん。僕の持てる全てを使って、そいつを排除すると約束しよう」

「そこまでしなくてもいいのだけど・・・・・・、やっぱり人選、間違えたかしら」

 

 引き返そうったってもう遅い、呉越同舟。僕らはもう、同じ流れに乗っちまったんだよ!!

 

 

 

 話を聞きました。落ち着いて、うん。

 

「つまり、その平民の女が学園に来てから、全てがおかしくなったと」

「ええ、やけに飲み込みが早かったわね」

「夢で見た気がするんだ、良くわからなかったけど」

 

 まとめるとこうだ。

 

 このレリアは、将来この国の王太子と結婚する予定の貴族で、ついでにここの結界を維持してるらしい聖女。

 

「まあ、一応ワタクシ一人で維持しているわけでもありませんけど」

 

 学園に王子と一緒に通っていたが、そこに平民の女が編入して来て、それ以来そいつと王子が二人でいることが多くなった。

 

「別にその程度、遊びとして目くじらを立てるほどではなかったのですが」

 

 ついでにその女は、他の有力な貴族の男どもにも手を出していて、流石に見過ごせなかったが、女の戦争で先手を打たれる、

 

「本人は否定していましたが、あれも一つの才覚でしょうね。いっそ、妾としては悪く無いのかもしれません」

 

 冤罪を押し付けられて、婚約破棄。その上、どこから見つけて来たのか真勇者、ぺっ。なんて見つけて来て、聖女の立場さえ奪われる。

 

「確かに悪く無い魔力でしたが、あれ一人で聖女としてやっていくのは不可能ですわね」

 

 一度は国外に追放されたが、良識のあった一部の上の人達の手配で、今こうしてこっそり戻って来てる。と、

 

「彼らも、分かっているのでしょう。もはやワタクシ抜きでは、この結界を長くは維持しきれないと。何せ、これ、ほぼ全て私の魔術で動いていますので」

 

 なるほどなるほど・・・・・・。

 

「ほぼ全て、これをね・・・・・・。昔は、どうしてたんだろ」

「さあ、人海戦術でもしてたんじゃないかしら? 物凄く効率が悪かったけど、魔力さえ流せば発動してたし」

「良くそれで、国が保ったもんだね」

 

 まあ、最悪なくても、別にたいして変わんないんだろうけど。

 

「そんなことありませんよ。これは、魔物避けに魔法阻害に加えて、観測や物理的障壁としての機能もありますもの。なんなら最後のは私がつけました、どんな魔族が来ても、そう簡単には突破できませんわ」

「・・・・・・まあ。だと、いいけど」

 

 右から視線を感じる、返してやろうか、

 

「それよりあなたやっぱり。私の結界、見えてるわよね」

「・・・・・・何の、こと?」

 

 いや、そりゃ、普通見えるだろうけど、

 そう聞かれたら、否定しちゃうじゃないか、実際一切見えてない子もいることだし。

 

「隠さなくていいわよ、あんなもの、少し魔術を理解している人なら誰でも見えるわ」

「・・・・・・まあ、そうだよね、」

「でも、この国の人には見えない。何故ならあれは、神が作ったものだって思考を停止してるから」

「・・・・・・・・・・・・、」

「あなた一体、どこから来たの?」

 

 誘導尋問かよちくしょう。

 やられた、この僕が! まあ、こういう貴族特有の駆け引きとかは、別に慣れてないんだけど。

 僕はもっぱら、相手の求めている反応を探って、従順に返していただけだし。

 

「別に、言ってもいいのに言いたくないから困る。あっちの方、だよ」

「暗くて良くわかりませんね。まあいいでしょう、今は」

「・・・・・・本当に、良く僕に事情を話す気になったね」

「人を見る目には自信があるので、聖女、ですから」

 

 元、だし、それで戦いに負けて敗走してるけどね。

 

「・・・・・・ちなみに。少し魔術を理解している人ならと言ったけど、ワタクシ基準で少し、ですわ」

「・・・・・・僕は大して、魔術に詳しくは無いよ」

「ふふふ、先ほどのここに侵入して来た魔法。私、理解できませんでしたよ。大したことない魔術師、ですね?」

「・・・・・・本当なのに、」

 

 使えるだけ、悠長に学ぶ暇なんてなかった、使えなきゃ死んでただけ、

 

「・・・・・・やはり、いい出会いをしました。聖女として、神に祈っておいた甲斐がありましたね」

 

 祈りね、そんなものに効果があるとは思えないけど。

 

「神、やっぱり信じてるの?」

「ええ、昔にそんな凄い魔術師がいたんでしょう。験担ぎとしては、悪くありませんわ」

 

 ・・・・・・こんなんだから、追放されたんじゃなかろうか。

 

 

 

「そろそろ、城門よ」

 

 長い列、のように見えたが、意外とするする進んでもう着いた。

 多分、話を引き延ばしても何とかなったな。

 

「・・・・・・ところで、本当に大丈夫なの、これ」

 

 潜伏魔法使ってたみたいだけど、僕が来たから解いちゃったみたいだし、

 

「ええ、だって結界に頼きりのガバガバだから。むしろ道中より危険性が低いわね。人目につきさえしなければ、どうにでもできるわ」

「結界か、ちなみに僕は?」

「ワタクシにかかれば、魔王だろうが連れ込めますし、勇者だろうが弾けますわ。だってこれは、私の魔術なのですから」

「うわぁ、」

 

 大丈夫か、この国。

 今もこうして、国一つ簡単に滅ぼせる大災害を、素通りさせてるんだが。

 

「だから実は、どうしても話に応じてくれなさそうなら、あなただけここで弾いてみたり」

「それやったらどっちにしろ全員、バレるでしょ」

「どうかしら?」

「まあ、協力することになったんだからいいか」

 

 そうなっても、ここを通るくらいなら造作もないしね。

 

「一応、身を寄せる予定の屋敷までは、このまま隠れて行くわ」

「ふむ、僕もそこに?」

「ええ、もちろん。それから、ここからはあまり大きな魔法を使っちゃだめよ。ワタクシの魔術だけど、観測は私以外もできるようにしてあるから」

 

 確か相手は、この元聖女から聖女の座を奪ったんだっけ。

 そもそも、聖女が一人ってわけでも無いらしいけど、折角の結界は相手の手の中か。

 

「・・・・・・面倒臭いね、君も魔法を使えないの?」

「面倒臭い、手順を踏めば、できないこともないわ」

「なるほど、覚えておこう」

 

 まあ、本当に面倒臭さが限界になったら、気にせず使っちゃうけど。

 

「そうね、あと、今のうちに、大切なことを伝えておくわ」

「なに、急に改まって」

「今回の件の発端の彼女、いえワタクシの敵って言ってあげますわ」

 

 ちなみに僕はとっくに敵認定してる、真勇者を見つけた女? 纏めていなかったことにしてやるよ。

 

「・・・・・・メート、長い名前を言っても覚えなさそうだから、桃色でピンク色なホワホワした女と覚えておいて」

 

 メート、どんだけ甘ったるいメスが出てくるんだろう。闇吐きそうだ。

 

「悔しいですが、あの女の籠絡術は本物です」

「ふーん、」

「くれぐれも! 絆されないようにしてくださいね!!」

「え、うん」

 

 いや、大丈夫でしょ、聞いてるだけでなんかムカついてくるし。

 

「・・・・・・ちなみに巨乳?」

「あなた・・・・・・。少なくとも、私よりは、大きいわ」

「・・・・・・ふむふむ。あんまり参考にならない」

「ぶちのめしますわよ?」

 

 何を言う、せっかく家族だと認めてやったのに。

 しかも僕よりも年上で、おまえもナカーマー。

 

「ああ、もうそろそろ着いちゃいそうだわ。本当に、ころっといかないでよ」

「どこに? そう言うのは、僕じゃなくて・・・・・・っと、着いたね。あの大きめの屋敷か」

「ええ。・・・・・・って、あなた、何が見えて、」

 

 ふう、これでようやくこの窮屈な空間から抜け出せる。

 余裕を持って作られていたが、流石にキャパがオーバーだ。

 真っ暗な中で、一人だったら、耐えられなかったかも、慣れてるけど。

 

「・・・・・・止まった。本当に着いたのかしら」

「そうでしょ、あ、御者が開けに来る」

「・・・・・・と、先に説明しなくちゃね」

 

 レリアが外に声を上げて事情を話す。

 確かに、荷馬車の中に人型が、知らない間に増えていたら、単純にホラーだ。

 

「というわけで、彼は私の以前からの知り合いなの、一緒に屋敷に入れてあげて」

 

 光が差し込む、積荷が開かれる。

 ・・・・・・というか、何で僕が許可を、ん、いや、なんかおかしいな、

 

「彼?」

「そう、彼が・・・・・・・・・・・・、って、」

「・・・・・・?」

 

 目が合う。深い金色だ。

 きちんと顔を見合わせた、白銀のような金髪が光り、

 そして何だ、その表情は、

 

「・・・・・・あなた、暗くてよく見えなかったけど、普通に女じゃない」

 

 ・・・・・・一度も、僕は男だと言ってないのにな。

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