「・・・・・・はぁ、困ったわ。あなたには、殿下の近くであの敵の様子を探って欲しかったのに」
大きな屋敷の前、白く煌く金色な女がため息をつく。
何だその言い草は、勝手に勘違いしただけなのに。
「というか、本当に女?」
「おい、どこ見て言った、お前も大差ないだろ」
「ふふ、比べてみる?」
) レリア〜ン♪
く セシィーン×
「へ、へこむまではいってないし、ちょっと肋骨浮いてるだけだしっ!」
「本当にわからないわね、ちょっとめくって見ていいかしら」
「ど、同姓でもセクハラは成立するんだぞ⁉︎」
というか、それで確認されたら本格的に女として泣く。
「まあまあ、それくらいにしといてやるのじゃ」
l レコーン。
「うわぁん、レコウー!!」
「おうおう、辛かったのー、」
「あっ、硬い、落ち着く」
「おうおう、いつかおっぱいでぶん殴ってやろうかのー、」
その戦闘力で、はは。
「ああ、あなた、いたわね」
「ちょ、ずっと手を置いて黙らせておいて、それは酷くないかの」
「そういえば、僕もなんか右手が生暖かいなって、」
「セシィは何回か目があったじゃろ?」
うん。話がややこしくなりそうだったから。
「ふーん。セシィ、ねぇ」
「・・・・・・なに?」
「いえ、本当に女の子なのね」
どうだろ、ただの愛称だけどね。
それにしても、結局呼ばれちゃったか。
「そうねぇ、でもなら、やっぱりちょうどいいのかしら」
「・・・・・・胸見んな」
「あなた、男装しなさい」
・・・・・・は?
この僕に、男装しなさいだって?
うん、いつもしてたわ。
「考えてみれば、初めから女の子なら、あの敵に拐かされる心配もないものね〜。・・・・・・そっちの趣味があるならともかく、」
「あ? なに胸見せつけてきてんだ、削るぞ」
「うん、大丈夫そうね」
・・・・・・まあ、その敵のメスが巨乳だとしたら、別の意味で自分を押さえられないかもしれないけど。
「あなたは男子生徒、あなたは女子生徒、留学生として、二人には潜入してもらうわ」
「ちょっと、レコウの事を勝手に」
「おお! おもしろそうなのじゃ〜」
「・・・・・・んーーっ。」
ぷくー。
というか、生徒って、僕達に学園に通えと? 正気か?
「まあ少し小さいけれど、」
「おいどこ見て、」
「話した限り知性はあるから大丈夫。って言おうとしたのに、やっぱりダメかしら」
うぐぐ、だってほんとにちょっと見ただろ、目が動いたぞ。
「はいはい! 我は年齢的には問題ないのじゃ!!」
「・・・・・・この子は、大丈夫かしら」
「年齢的には・・・・・・、逆に問題あるか。でも、誰もこんなのが諜報員だとは思わない」
「そうね。一人だけお留守番させるのも、かわいそうだしね、」
・・・・・・こいつ、こっちが年下の女児二人って分かってから、お姉さんモード発動させてやがるな。別に違うのに。
「制服はこっちで用意するわ。あなた達の目的は、あの女と真の勇者とやらの、」
「一片の証拠もなく、消す事。わかってる、」
「証拠を集めてきなさいよ、何か不正の。少なくとも、ワタクシへの冤罪に、どこからか都合よく出てきた勇者と聖女。黒い部分はあるはずだわ」
「そして真っ黒なら。真っ黒は嫌いだ、真っ白にしてやる」
「・・・・・・まあ、それでいいわ」
・・・・・・それにしても、学園ね。
夢では、どんなところだったかな。
少なくとも僕には、一生縁がない場所だと思ってたけど。
「本当は、私が強引に決着をつけた後、その結末を伝えてくれる人がいればよかったんだけど」
「・・・・・・残念、そんな人、いなかった」
「ええ、思いがけず協力的だったから、つい頼っちゃったわ。ごめんなさいね」
「・・・・・・荷馬車の乗車賃にしては、高くついた」
「この国一番の聖女公認の入国証としては、安いでしょう?」
元、だけど。
「そうね、何かお礼は考えておくわ。・・・・・・あなた達は、何でこの国に密入しようとしたの?」
「・・・・・・何でだっけ、」
われのざいほうー!
「ああ、ダンジョンに行くために」
あとなんか、まあ真、いや偽勇者を倒せば何とかなるだろ。
「・・・・・・なるほど。なら、やっぱりちょうど良かったかしらね」
「なにが、」じゃ?」
「この国のダンジョン。学園の中にあるわよ」
制服は、あっという間にできた。
その間、貴族の屋敷でお姫様生活。
正直、慣れなさすぎて気持ち悪かったから、助かる。
「レコウは、楽しんでたみたいだけどね」
「おう、流石にこの経験は無かったからの。まあ、十分堪能したが、」
「食いしん坊属性を発揮していた、困らせてた、ちょっと気分が良かった」
「ふふ、セシィが食べなさすぎじゃ」
だって、今食べすぎて胸が成長したら困るからね。
・・・・・・何だよ、何か間違ったこと言ったか。どうせズボン履くだけで男装完成ですよーっと。
「・・・・・・ふぅ、男性用の服に無理なく胸が入ってしまう、それどころか隙間が空く、くそう」
「痩せすぎじゃからの。しかし、これが制服か、なかなか可愛いのじゃ。セシィも後で、こっちを着てみせるのじゃ」
「その時は交換ね。多分レコウもこっち着れるから、フフフフフ」
「ま、まあ、そうじゃろうけど」
そう、僕には仲間がいる。
最近一人増えたと思ったけど、やっぱりあいつは敵だ、ぺっ、
「あらー、似合ってるじゃないお二人とも」
「ぺっ、」
「あらー?」
ゆったりした格好しやがって、僕には無駄だからな。その奥の慎ましいやつまで丸見えだからな、
僕の倍以上の戦闘力、いや僕が小さいだけだし、何の慰めにもならない。
「んー、気になるとしたら、目元かしら。セシィちゃんは、髪で隠したらいい感じになったけど」
「慣れてる、」
完全に隠した陰鬱モードじゃなく、ちょっとだけ隠したアンニュイモード。
自分、演技は慣れてますんで、
「レコウちゃんは・・・・・・、ちょっと怖いかもしれないわね。凄い眼力だわ」
「んー? やっぱこの目はダメなんかの。むにむに、」
「うーん、僕は好きだけど」
「ならいいか、じゃ!」
「伊達メガネでもかけてみるといいかしら。持ってくるわね」
・・・・・・あの女、完全に僕達を着せ替え人形にして遊んでるな。
まあ僕も、ちょっと眼鏡をかけたレコウは見てみたいけど。
・・・・・・学園だ。
聖、なんちゃらかんちゃら、名前がついていたけど、覚える気にはならない。
「どうも、魔導国から留学にやって来た、セレンです」
「同じく、レコウなのじゃー!!」
セシィじゃ、男装の意味がない。
それに、そんな大多数の人に、呼ばれたくもないし。
後、細かい設定も付け足された。
魔導国、確か魔術の発展した国だったか。
だから、神の魔法とやらを妄信するこの国とは、あんまり相性が良くないんだけど。
近いから、留学生が来るぐらいの交流は普通にある。
僕の魔法を見て、あっちがその国だと勘違いしたか? それとも、あえて詮索しないで、適当にそれっぽいのを考えてくれたのか・・・・・・。
「魔導国から、我が国に学びに来てくれるとは、光栄だ」
男が、立ち上がった。
ふむ、他の生徒よりは魔力があるか?
見たところクラスの中心人物、それに我が国、こいつがもしかして、
「俺がこの国の第一王子、————
なんちゃからんちゃらなんとかかんとか、やばい、全く覚える気がしない。
「・・・・・・ケイン殿下ですね。よろしくお願いします」
「ああ、是非とも、この国の素晴らしさを心より堪能してほしい」
「はい、楽しみにしてます」
これが僕が一番に取り入るべき第一王子。
えっと、それから、将来の宰相予定に、筆頭騎士家の学生護衛に、なんか剣技が凄いやつに、魔法が凄いクラスの主席。
これが、注意しておくべき人って話だった。
後なんか、クラスの先生も? ・・・・・・え、こいつら全員と、さっきと同じやりとりするの? うわーやだなー、
・・・・・・んで、あそこの嫌でも目立つ、砂糖漬けピンクが、
ん、別の男が立った、視線ブロックされた。
「席に案内しましょう、こっちですよ」
こいつは、宰相の男だな。
いや、まだ違うんだけど、既に王子の右腕的ポジションか。
それにしても、今の露骨で自然な動き。少なくとも、僕の演技は無駄じゃなさそうってところかな。
「おお、くるしゅーないなのじゃ」
・・・・・・この子の矯正は諦めた、最初からする気もなかったし。
まあ、おかげで警戒されないから。魔導国の評判は下がるかもしれないけど。
「・・・・・・なかなか、個性的な奴だな。お前は、比較的まともそうだが、」
王子の左腕の位置。身長の高い男。
警戒心、僕からすれば、そんなものを見せてる時点で隙だらけだけど、
こいつは、護衛騎士君か。
「はっ、魔導国の奴は線が細くて貧弱そうだな。ちゃんと飯食ってんのか?」
ガタイが良い、こいつは、剣が上手い奴。
将来は剣聖、なんて地位があるらしいけど、どっちかって言うと冒険者って感じだ。
「魔導国か、興味深い。是非とも、学ばせてもらおう」
んで、こいつがインテリ眼鏡の主席君。
レリアいわく、魔術の腕はワタクシの方が圧倒的に上ですが、学園という場への適応はそっちの方が高いので、らしい。
負け惜しみかな。
「はい、ではみなさん、この国の民として、恥ずかしいところは見せないようにしてくださいね」
壇上、先生、こいつもなんか言ってたな。
腹黒鬼畜サイコパスわかめ野郎? 何か、嫌なことでもあったのかな。
・・・・・・それで、件の偽勇者は、
・・・・・・・・・・・・このクラスにはいないのか? 学生だって話だったはずだが、
「あ、はじめまして〜。わたしはー、」
・・・・・・甘ったるい。気持ち悪くなりそう。
わざわざ視線を封鎖されていたのに、自分から向かって来たのか。
桃色ピンクの、ちっ胸でかい、メートちゃん。
平民だって話だけど、今こうして立ち上がって話しかけて来るさまは、完全にクラスの中心人物のそれだ。
頭に目立つ大きな飾り。
腰に何それ、もこもこ? 結構でかいな、どこで売ってんの?
ワンポイントのハートのアクセサリー、というか制服にそんなごちゃごちゃつけるなよ。
じっと見てると気持ち悪くなりそう。
しかし、何だ、本当に見た目通りの、臭いがする。
甘くて、粘い、底を思い出す。
僕を、ヘドロをうみ出した根源の。
・・・・・・これは、自分を抑えるのに、
一番苦労しそうだ。
19時にも更新あります。