情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

18 / 124
16話

 

「・・・・・・はぁ、困ったわ。あなたには、殿下の近くであの敵の様子を探って欲しかったのに」

 

 大きな屋敷の前、白く煌く金色な女がため息をつく。

 何だその言い草は、勝手に勘違いしただけなのに。

 

「というか、本当に女?」

「おい、どこ見て言った、お前も大差ないだろ」

「ふふ、比べてみる?」

 

 ) レリア〜ン♪

 

 く セシィーン×

 

「へ、へこむまではいってないし、ちょっと肋骨浮いてるだけだしっ!」

「本当にわからないわね、ちょっとめくって見ていいかしら」

「ど、同姓でもセクハラは成立するんだぞ⁉︎」

 

 というか、それで確認されたら本格的に女として泣く。

 

「まあまあ、それくらいにしといてやるのじゃ」

 

 l レコーン。

 

「うわぁん、レコウー!!」

「おうおう、辛かったのー、」

「あっ、硬い、落ち着く」

「おうおう、いつかおっぱいでぶん殴ってやろうかのー、」

 

 その戦闘力で、はは。

 

「ああ、あなた、いたわね」

「ちょ、ずっと手を置いて黙らせておいて、それは酷くないかの」

「そういえば、僕もなんか右手が生暖かいなって、」

「セシィは何回か目があったじゃろ?」

 

 うん。話がややこしくなりそうだったから。

 

「ふーん。セシィ、ねぇ」

「・・・・・・なに?」

「いえ、本当に女の子なのね」

 

 どうだろ、ただの愛称だけどね。

 それにしても、結局呼ばれちゃったか。

 

「そうねぇ、でもなら、やっぱりちょうどいいのかしら」

「・・・・・・胸見んな」

「あなた、男装しなさい」

 

 ・・・・・・は?

 この僕に、男装しなさいだって?

 うん、いつもしてたわ。

 

「考えてみれば、初めから女の子なら、あの敵に拐かされる心配もないものね〜。・・・・・・そっちの趣味があるならともかく、」

「あ? なに胸見せつけてきてんだ、削るぞ」

「うん、大丈夫そうね」

 

 ・・・・・・まあ、その敵のメスが巨乳だとしたら、別の意味で自分を押さえられないかもしれないけど。

 

「あなたは男子生徒、あなたは女子生徒、留学生として、二人には潜入してもらうわ」

「ちょっと、レコウの事を勝手に」

「おお! おもしろそうなのじゃ〜」

「・・・・・・んーーっ。」

 

 ぷくー。

 というか、生徒って、僕達に学園に通えと? 正気か?

 

「まあ少し小さいけれど、」

「おいどこ見て、」

「話した限り知性はあるから大丈夫。って言おうとしたのに、やっぱりダメかしら」

 

 うぐぐ、だってほんとにちょっと見ただろ、目が動いたぞ。

 

「はいはい! 我は年齢的には問題ないのじゃ!!」

「・・・・・・この子は、大丈夫かしら」

「年齢的には・・・・・・、逆に問題あるか。でも、誰もこんなのが諜報員だとは思わない」

「そうね。一人だけお留守番させるのも、かわいそうだしね、」

 

 ・・・・・・こいつ、こっちが年下の女児二人って分かってから、お姉さんモード発動させてやがるな。別に違うのに。

 

「制服はこっちで用意するわ。あなた達の目的は、あの女と真の勇者とやらの、」

「一片の証拠もなく、消す事。わかってる、」

「証拠を集めてきなさいよ、何か不正の。少なくとも、ワタクシへの冤罪に、どこからか都合よく出てきた勇者と聖女。黒い部分はあるはずだわ」

「そして真っ黒なら。真っ黒は嫌いだ、真っ白にしてやる」

「・・・・・・まあ、それでいいわ」

 

 ・・・・・・それにしても、学園ね。

 夢では、どんなところだったかな。

 少なくとも僕には、一生縁がない場所だと思ってたけど。

 

「本当は、私が強引に決着をつけた後、その結末を伝えてくれる人がいればよかったんだけど」

「・・・・・・残念、そんな人、いなかった」

「ええ、思いがけず協力的だったから、つい頼っちゃったわ。ごめんなさいね」

「・・・・・・荷馬車の乗車賃にしては、高くついた」

「この国一番の聖女公認の入国証としては、安いでしょう?」

 

 元、だけど。

 

「そうね、何かお礼は考えておくわ。・・・・・・あなた達は、何でこの国に密入しようとしたの?」

「・・・・・・何でだっけ、」

 

 われのざいほうー!

 

「ああ、ダンジョンに行くために」

 

 あとなんか、まあ真、いや偽勇者を倒せば何とかなるだろ。

 

「・・・・・・なるほど。なら、やっぱりちょうど良かったかしらね」

「なにが、」じゃ?」

「この国のダンジョン。学園の中にあるわよ」

 

 

 

 制服は、あっという間にできた。

 

 その間、貴族の屋敷でお姫様生活。

 正直、慣れなさすぎて気持ち悪かったから、助かる。

 

「レコウは、楽しんでたみたいだけどね」

「おう、流石にこの経験は無かったからの。まあ、十分堪能したが、」

「食いしん坊属性を発揮していた、困らせてた、ちょっと気分が良かった」

「ふふ、セシィが食べなさすぎじゃ」

 

 だって、今食べすぎて胸が成長したら困るからね。

 ・・・・・・何だよ、何か間違ったこと言ったか。どうせズボン履くだけで男装完成ですよーっと。

 

「・・・・・・ふぅ、男性用の服に無理なく胸が入ってしまう、それどころか隙間が空く、くそう」

「痩せすぎじゃからの。しかし、これが制服か、なかなか可愛いのじゃ。セシィも後で、こっちを着てみせるのじゃ」

「その時は交換ね。多分レコウもこっち着れるから、フフフフフ」

「ま、まあ、そうじゃろうけど」

 

 そう、僕には仲間がいる。

 最近一人増えたと思ったけど、やっぱりあいつは敵だ、ぺっ、

 

「あらー、似合ってるじゃないお二人とも」

「ぺっ、」

「あらー?」

 

 ゆったりした格好しやがって、僕には無駄だからな。その奥の慎ましいやつまで丸見えだからな、

 僕の倍以上の戦闘力、いや僕が小さいだけだし、何の慰めにもならない。

 

「んー、気になるとしたら、目元かしら。セシィちゃんは、髪で隠したらいい感じになったけど」

「慣れてる、」

 

 完全に隠した陰鬱モードじゃなく、ちょっとだけ隠したアンニュイモード。

 自分、演技は慣れてますんで、

 

「レコウちゃんは・・・・・・、ちょっと怖いかもしれないわね。凄い眼力だわ」

「んー? やっぱこの目はダメなんかの。むにむに、」

「うーん、僕は好きだけど」

「ならいいか、じゃ!」

「伊達メガネでもかけてみるといいかしら。持ってくるわね」

 

 ・・・・・・あの女、完全に僕達を着せ替え人形にして遊んでるな。

 まあ僕も、ちょっと眼鏡をかけたレコウは見てみたいけど。

 

 

 

 ・・・・・・学園だ。

 聖、なんちゃらかんちゃら、名前がついていたけど、覚える気にはならない。

 

「どうも、魔導国から留学にやって来た、セレンです」

「同じく、レコウなのじゃー!!」

 

 セシィじゃ、男装の意味がない。

 それに、そんな大多数の人に、呼ばれたくもないし。

 後、細かい設定も付け足された。

 

 魔導国、確か魔術の発展した国だったか。

 だから、神の魔法とやらを妄信するこの国とは、あんまり相性が良くないんだけど。

 近いから、留学生が来るぐらいの交流は普通にある。

 

 僕の魔法を見て、あっちがその国だと勘違いしたか? それとも、あえて詮索しないで、適当にそれっぽいのを考えてくれたのか・・・・・・。

 

「魔導国から、我が国に学びに来てくれるとは、光栄だ」

 

 男が、立ち上がった。

 ふむ、他の生徒よりは魔力があるか?

 見たところクラスの中心人物、それに我が国、こいつがもしかして、

 

「俺がこの国の第一王子、————

 

 なんちゃからんちゃらなんとかかんとか、やばい、全く覚える気がしない。

 

「・・・・・・ケイン殿下ですね。よろしくお願いします」

「ああ、是非とも、この国の素晴らしさを心より堪能してほしい」

「はい、楽しみにしてます」

 

 これが僕が一番に取り入るべき第一王子。

 えっと、それから、将来の宰相予定に、筆頭騎士家の学生護衛に、なんか剣技が凄いやつに、魔法が凄いクラスの主席。

 これが、注意しておくべき人って話だった。

 

 後なんか、クラスの先生も? ・・・・・・え、こいつら全員と、さっきと同じやりとりするの? うわーやだなー、

 

 ・・・・・・んで、あそこの嫌でも目立つ、砂糖漬けピンクが、

 ん、別の男が立った、視線ブロックされた。

 

「席に案内しましょう、こっちですよ」

 

 こいつは、宰相の男だな。

 いや、まだ違うんだけど、既に王子の右腕的ポジションか。

 それにしても、今の露骨で自然な動き。少なくとも、僕の演技は無駄じゃなさそうってところかな。

 

「おお、くるしゅーないなのじゃ」

 

 ・・・・・・この子の矯正は諦めた、最初からする気もなかったし。

 まあ、おかげで警戒されないから。魔導国の評判は下がるかもしれないけど。

 

「・・・・・・なかなか、個性的な奴だな。お前は、比較的まともそうだが、」

 

 王子の左腕の位置。身長の高い男。

 警戒心、僕からすれば、そんなものを見せてる時点で隙だらけだけど、

 こいつは、護衛騎士君か。

 

「はっ、魔導国の奴は線が細くて貧弱そうだな。ちゃんと飯食ってんのか?」

 

 ガタイが良い、こいつは、剣が上手い奴。

 将来は剣聖、なんて地位があるらしいけど、どっちかって言うと冒険者って感じだ。

 

「魔導国か、興味深い。是非とも、学ばせてもらおう」

 

 んで、こいつがインテリ眼鏡の主席君。

 レリアいわく、魔術の腕はワタクシの方が圧倒的に上ですが、学園という場への適応はそっちの方が高いので、らしい。

 負け惜しみかな。

 

「はい、ではみなさん、この国の民として、恥ずかしいところは見せないようにしてくださいね」

 

 壇上、先生、こいつもなんか言ってたな。

 腹黒鬼畜サイコパスわかめ野郎? 何か、嫌なことでもあったのかな。

 

 ・・・・・・それで、件の偽勇者は、

 ・・・・・・・・・・・・このクラスにはいないのか? 学生だって話だったはずだが、

 

「あ、はじめまして〜。わたしはー、」

 

 ・・・・・・甘ったるい。気持ち悪くなりそう。

 わざわざ視線を封鎖されていたのに、自分から向かって来たのか。

 桃色ピンクの、ちっ胸でかい、メートちゃん。

 

 平民だって話だけど、今こうして立ち上がって話しかけて来るさまは、完全にクラスの中心人物のそれだ。

 

 頭に目立つ大きな飾り。

 腰に何それ、もこもこ? 結構でかいな、どこで売ってんの?

 ワンポイントのハートのアクセサリー、というか制服にそんなごちゃごちゃつけるなよ。

 じっと見てると気持ち悪くなりそう。

 

 しかし、何だ、本当に見た目通りの、臭いがする。

 甘くて、粘い、底を思い出す。

 

 僕を、ヘドロをうみ出した根源の。

 

 ・・・・・・これは、自分を抑えるのに、

 一番苦労しそうだ。






19時にも更新あります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。