学園。それは主に貴族が通って、将来への所作を、学ぶところ。
らしいが、だとしたら、
「何で剣の授業、なんてのあるの?」
「ぶんぶんなのじゃー、」
しかもレコウがいる、男女共同。
流石に打ち合いは男女別らしいけど、このドラゴンに殴られる子がいるのか。
くわらば。くわばらだっけ? かわいそうに。
「おいおい、そんな貧弱そうな体で、大丈夫なのか? 大人しく、見学してた方が良かったんじゃねえの」
と、一応剣を持って参加している僕に、話しかけてくるガタイのいい男。
・・・・・・口が悪いな、次期剣聖、いやただの剣士君と呼んであげよう。
「大丈夫だよ剣士君。これでも、体力には自信がある」
なお、筋力。
今は練習用の木剣だから良いけど、鉄の剣なら自由には振り回せない。
体重が軽すぎて、体の方が吹き飛んじゃうし。
「剣士君だ? オレの事はシュヴって呼びやがれ」
「はいはい、」
いつものーっ、て、短いな。
わかってるじゃないか、それくらいなら、覚えてー、
んー、まあー、学園にいる時くらいは?
「じゃあシュヴ君」
「おう、」
「じゃあ僕は、あっちで打ち合いしてくるから」
あっちの、どっか適当な方に。
ちょうどそこにほら、誰とも組めずにいる、何か地味な感じな男もいるし。
・・・・・・なんだろうこの気持ち、夢の何かが彼を誘えと訴えてくるんだ。
うーんまあ、以外と体幹も悪くないし、ほっとてもいいけど、
「おい待てよ。本当に普通に参加する気か?」
「え、うん。授業だし」
「ちっ、しょうがねえな。オレが組んでやるから、さっさとかかってきな」
「えー?」
「ほら、早く構えろ」
何だこいつ?
何がしたい、弱いものいじめ? そんなに剣で目立ちたいの? もう、別にどうでもいいけど。
「ああ、何ならお得意の魔法を使ったっていいぜ。大々的な攻撃魔法は禁止されてるが、補助的なやつなら問題ねえから」
「必要ないよ、」
杖持ってきてないから、普通の魔法使えないし、
というか、流石にあの杖でも、身体強化とか設計外だ。
それに、元が低すぎて、使っても余計なダメージ受けるだけだし。
「でも言っておく、僕は殴られるのは嫌いだ」
アレンを除く、
それ以外のためなんて、もう嫌だ。
「あー、手加減してほしいってか?」
「大嫌いだ、好きに打ってくるといい」
「はあ? いや、わかんねー奴だなー。ほら、お望み通りだぞっと、」
大きな腕で、剣を振る。
振り下ろし、身長差の関係で、自然とそうなる。
重力を乗せた、力強く、最も速い一撃、
なのに、それは、風切り音すら聞こえない。
「遅い。もっとちゃんとやっていいよ」
「・・・・・・・・・・・・はぁ!?」
少し体をずらしただけで、簡単に真横を通過する。
明らかに、手を抜いた動きだろう。
まあ、僕の外見からしたら、舐めて掛かるのも当然だけど。
「ちっ、なら、これならどうだ⁉︎」
横薙ぎ、なのにさっきより速い。
「うん、体幹がブレてる、僕とは打ち合いずらいかな」
でも微妙、僕の身長が低いせいで、振りが甘い。上体を逸らすだけで空を切る。
頭とかいい位置なのにね、まあそれこそ、首振っただけで避けれちゃうか、
それにまだ、適当にやってるみたいだし。
「・・・・・・本気で、やっていいんだな」
「え、うん」
マジで当たりそうになったら、全力で逃げるし。
授業でそんな、命懸けでやるわけもないしね。
「オラっ!」
「・・・・・・と、」
さっきより速い袈裟斬り、でもそんな地面に向かって振ったら、ちょっと僕が剣を添えただけで折れちゃうよ?
・・・・・・今は授業中だし、受け流すだけにしとこ、
「・・・・・・っ、おお‼︎」
「うーん、怒鳴られるのも嫌いなんだけど。ああそこ、地面へこんでるよ、」
「おっ?!」
あらら、せっかく剣で指して教えてあげたのに、転んじゃったよ。
・・・・・・・・・・・・ちょっと、性格悪いか?
だって、本当に、上から大きな声をかけられるのは、怖いんだもん。
「っ、・・・・・・はは、マジかよ」
「・・・・・・あー、ごめんね。大丈夫?」
「ああ、問題ない。それと、怒鳴って悪かったな」
転んだままの姿勢なのに、笑顔を向けてくる。
コイツ、僕と同じタイプの性癖か!?
剣を丁寧に置いて起き上がってくるが、手を差し出したりはしない、
僕の筋力だとまとめて転ぶだけだし、アレン以外の男に触られるの嫌だし。
「それより、まだ時間あるよな。もっとオレと、」
・・・・・・ん、誰か来る。
「まだ時間あるよな、ではないだろ!」
「あ? ・・・・・・何だよ、ラインか。何のようだ?」
ライン? ああ、あの護衛君か。
「何のようだ、でもない! お前が来ないせいで、私が組む相手がいなくなってしまっただろ!」
「ああ? 王子の奴でも誘えばいいじゃねえか」
「貴様が! 先に相手をしろと言うから!! 今日も待ってやったんだろうが!?」
「あー、そうだったっけか? めんどくせーなー」
いやほんとに面倒臭い。
もう僕見学でいいから、そこ二人でやってろよ。
「それに。私が殿下と剣を交わせられる訳がないだろ。お前も、軽々しく殿下のことを呼ぶな」
「はいはいっと。——あっ、そうだ。せっかくなら、お前もコイツとやってみろよ」
「は? 私が?」
は? 僕が? こいつと? 何で面倒臭い。
「本気で言ってるのか?」
「ああ、お前こそ、見てなかったのか? すげえぞ、コイツ」
「・・・・・・からかってるわけじゃ、なさそうだな」
視線が向いた、逃げられそうにないな。
はあ、まあ、しょうがないか、
「えっと、どうも、ライン君?」
ならせめて、先に名前を呼んで名乗りをキャンセルしておくか。
「・・・・・・ああ、まあいい。それより、本当に打ち込んでいいのか?」
「ぶたれるのは超嫌いだけど、」
「おいシュヴ、こんなことを言っているぞ」
「あー、いーんだよ。どうせお前も、一発も当てらんねーから」
怪訝な目をして、こっちを見つめる。
外見で相手に舐められるのは、隙をつけて合理的だと思ってたけど、
こうもいちいち引っ掛かられると、効率的ではないかも。
「では、行くぞ?」
「うん。本気でいいよ?
「はあ、文句は言うなよ。——はッ‼︎」
ふむ、事前に面倒な行程はさんだおかげで、最初からそれなりの速度。
実直、シンプルで万能、でも軽いな。
それに、動きが直線的すぎて、受け流す必要すらない。
「っ、なるほどっ、」
「・・・・・・ねえ、本気でやっていいんだよ」
「これでも、本気のつもりなんだが‼︎」
ダウト、嘘だ、なんて、
「魔法。補助系なら問題ないんでしょ、使わないの?」
「ッ、・・・・・・何故私が、魔法を使うと思った?」
「え、だって、」
弱すぎるし、とは、言わないでおこう。
少なくとも、黄色よりは、いやあれより酷いかも。
「癖がね。元々、身体強化に中距離の魔法も前提の動きでしょ?」
多分、合理的には。
これで感情的に違いますって言われたら、恥ずかしいな。
「それにしては、前の魔法の授業でもパッとしてなかったけど・・・・・・。あ、もしかして、あんまり本気だして目立ちたくないの?」
まあ、気持ちはわかる。
僕も、アレンも命もかかってないのに、全然本気でやる気になんて、ならないし。
「・・・・・・私は、殿下の剣だ」
「え、うん」
・・・・・・あ、なるほど、護衛だから、目立っちゃダメと。
確かにそれは合理的だし、それに、
「敬愛する人より、凄くなるわけにはいかない、ね、」
「・・・・・・わかるか? いや、お前も、」
どこか、遠い目をしている。
何見てんだ、あ、人が飛んでる。
え、あれ、レコウ? 何してんの??
いや怪我はさせないように、してるだろうけど、たぶんおそらくきっと。
というか、ふっ飛んでったのピンクちゃんじゃなかった? ほら、王子も駆け寄ってるし、うわー。
何か、遠いものを、アレンを見ていたい。
見えるかな、いや僕ならきっと、見えるさ。
「そうか、お前も。同じというわけか」
「・・・・・・・・・・・・うん、」
見える、見えるぞーー!!
・・・・・・ふう、満足した。
って、あれ?
もう、剣はやんないの?
「いや、『我が身を超えよ』。もう少し、付き合ってもらおうか」
「おいおい後から来て、お前ばっかりずりーぞ」
「貴様がやれと言ったんだろ? 責任持って、私に譲れ、」
「ああ? むしろちょっとでも貸してやったオレサマに感謝しろよな!!」
あー、もう、うるさい。二人でやれよ。
というか、オレサマって、何様のつもりだよもう。
「二人まとめて、まあ、問題ないか」
「「言ったな!?」」
ははは、事故に見せかけてお互いの剣ぶつけたろ、
まあ、そのくらい、学生のお遊びで許してくれるだろ。
・・・・・・・・・・・・んで、今日のお昼。
「おいおい、それっぽっちしか食わねえ気か? だからそんなにほせーんだよ、肉食えほら肉」
「おい、貴様と違って脳まで単調な筋肉じゃなく、細部まで繊細だからこそ彼は強いのだろう。バランスだ、これも食べろ」
何こいつら、何で自分で頼んだもん押し付けてこようとするの、普通そんな人いないだろ。
肉、野菜、パン、肉、野菜、パン、肉、野菜、パン、水、
ちょ、そんなに乗せんな。アレンもそんなに食べきれないから、
「ふむ、今日は一人ではないのだな。そうだ、作られた物は嫌いと言っていたが、ならこれはどうだ」
果物!?
おいメガネ! お前もか!! どっから現れた!?
あ、これはアレンも食べれるし、ありがたく頂戴しまーすって、
ちょっと、持ち帰らせてよ、席に付かせないで、
「あん? 何だよ、てめーもか?」
「なるほど、果物、確かに悪くない」
「ふん、当たり前だ。わたしが選んだのだから、」
いや、あの、ほんと、別に僕は水だけで、
全然聞いてないな、こいつら。
何で僕を囲むんだよ、というか護衛君、君は王子のそば離れちゃダメだろ。
ほら、あっちも見てるし、・・・・・・というかピンク!? すっごい凝視してくんな! 何だこれ?
「いや、ほんと、僕はその、」
背の高い男三人に囲まれる、怖い!
あーん、助けてレコウー!!
——てめえ、この前はよくも、
——邪魔じゃーー!
——ぐわぁー!!
ボキッと、いい音。
・・・・・・うん、まあ、悪意がないなら、いっか。